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【インタビュー】「不思議の幻想郷」作曲家・豊田竜行が手がける『大神』サウンドとは…演奏家・土屋玲子との特別対談をお届け

『大神 編曲集』シリーズ第4弾『大神 編曲集 其の四、ヒーリング』でアレンジを手掛けた豊田竜行氏と二胡とバイオリンとヴィオラの演奏を担当した土屋玲子氏にインタビューを敢行。

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PS2用ソフトとしてリリースされてから約10年、作品としての人気に留まらず、楽曲の人気も非常に高い『大神』。ゲーム同様2006年にリリースされたゲームのBGMを収録した「大神 オリジナル・サウンドトラック」は、現在でも途切れることなくメーカーに受注のオーダーが入るロングヒット商品となっているそうだ。



そんな音楽面の人気を受けて昨年からシリーズ化されているのが「大神 編曲集」シリーズ(カプコン セルピューターレーベル)。『大神』の音楽ファンの方に人気の曲を様々なアレンジで聴かせてくれる同シリーズもオリジナルサントラと合わせて人気のシリーズとなってファンに支持されている。


そのアレンジアルバム第4弾「大神 編曲集 其の四、ヒーリング」が2015年12月にリリースされた。アレンジを担当したのは『不思議の幻想郷』の作曲で一躍注目され、コアな人気を誇る作曲家の豊田竜行氏、二胡とバイオリンとヴィオラの演奏にはGANGA ZUMBAのメンバーとして現在宮沢和史氏のラストツアーに同行している土屋玲子氏。その注目の2人のスペシャルインタビューをお届けしよう。


■豊田竜行氏 プロフィール
サウンドクリエイターとしてベック(現・B.B.スタジオ)に勤務し、2012年からはフリーランスとしてのを活動を経て2015年にオストロムを設立。ゲーム音楽だけに留まらず、映画音楽や業務映像用音楽等も積極的に手掛けている。代表作は『不思議の幻想郷』シリーズ、『物部布都と7つの試練』、『鋼の錬金術師 背中を託せし者』等

■土屋玲子氏 プロフィール
1992年よりプロとして活動。自らの演奏活動の傍ら、サポートメンバーと して、数々のアーティストのレコーディング、ツアーに参加(絢香、元ちとせ、杏子、クミコ、山崎まさよし等)。2004年、コロムビアレコードよりソロアルバム『二胡の世界』リリース。同年より宮沢和史率いる多国籍バンドGANGA ZUMBAのメンバーとして活動。avexよりデビュー。ワールドツアー参加。2008年NHK紅白歌合戦出演。現在、プレイヤー、アレンジャー、コンポーザーとして多岐に渡り活動中。

◆楽曲制作で二胡の奏者が必要になり、土屋玲子氏と知り合うきっかけができた

──まずはお2人のこれまでの活動などを簡単に聞かせていただけますでしょうか。

豊田:2007年に神戸の会社に入ってパチンコや携帯アプリゲームのサウンド制作をしていました。翌年にベック(現・B.B.スタジオ)に移籍しまして、2012年からフリーランス、そして昨年オストロムを設立しました。代表作は『鋼の錬金術師 背中を託せし者』(PSP)、『バトルスピリッツ デジタルスターター』(DS)、『朗読少女』(iPhone)、『不思議の幻想郷 THE TOWER OF DESIRE』(PS Vita)、『物部布都と7つの試練』(PS Vita)等のBGM制作、『機動戦士ガンダム EXTREME VS』(AC)の効果音製作、等です。

土屋:バイオリン、二胡のプレイヤーとしてレコーディングやアーティストのサポートとして活動しています。作曲家としては主に舞台の音楽を作っています。ポップス、ロックから演歌まで幅広いジャンルの音楽に参加させていただいています。

──豊田さんはメディアへの登場が初ということでお聞きしたいのですが、元々ゲームの音楽を作る仕事をしたかったのでしょうか?

豊田:元々は大阪芸大時代に映画の演出の勉強をしていたんです。そこで途中から音響をやり始めたのと、子供の頃にエレクトーンをやっていたので、そういった関係で劇伴を作るようになりました。で、途中でゲーム音楽にも興味を持つようになったので、卒業後にゲーム関連の会社に就職したという感じですね。

──お2人はゲーム音楽のコンポーザーをで好きなタイトルってありますか?

土屋:実は私はゲームはほとんどやったことがないんです(笑)

豊田:私は『デビル メイ クライ』シリーズですね。実は『鋼の錬金術師 背中を託せし者』の制作をする時に、何曲か外注にお願いすることになって、その時の候補リストに『デビル メイ クライ』シリーズを作曲している柴田徹也さんの名前があったんです。それで「『デビルメイクライ』の方だ!」ってことで柴田さんを指名させて頂いたことがありました。

──では「大神 編曲集 其の四、ヒーリング」について伺いたいのですが、演奏で土屋玲子さんが参加されていますが、お2人が知り合ったのはいつ頃なのでしょうか?

豊田:3年前に楽曲提供した『不思議の幻想郷』シリーズの過去作品で、二胡の奏者が絶対に必要だってことになったんです。でも自分の知り合いにはいなかったので、作曲の師匠である矢萩秀明先生に相談したところ、土屋さんを紹介して頂いたんです。

──今回のアルバムはアレンジのジャンルが“ヒーリング”と決まっていた上での依頼だったんでしょうか?

豊田:そうですね。カプコンさんのほうでヒーリングなら二胡の演奏がほしいということで、土屋さんと仕事をしている弊社にカプコンさんが連絡を取りたいということを柴田さんから連絡頂き、その後カプコンさんとお話させて頂いて正式に依頼を頂いたという感じですね。

──「大神 編曲集 其の四、ヒーリング」を聴かせて頂いて思ったんですけど、いわゆる睡眠を誘うヒーリングミュージックではなく、音やメロディがかなり主張してくる癒しサウンドという感じですよね。なので、音楽作品として聴きたくなるアルバムになっていると思います。

豊田:ヒーリングミュージックっておおまかに分けて2通りあるんですよ。安眠やリラックス等の医療的な効果を謳うものと、リラクシング・ミュージック・コンピレーションCDの『image』シリーズのような、作家性のあるイージーニリスニングミュージックですね。で、「大神 編曲集 其の四、ヒーリング」で目指したアレンジの方向は後者になります。

──確かに前者のような音楽とは全然違いますもんね。

豊田:そうですね。なぜかというと、医療効果を狙ったヒーリングミュージックって医学的根拠が証明されていないんですよ。それにそういった音楽って単調な2~4小節のメロディを繰り返し聴かせて、その裏で水の流れる音等の自然音を入れたりするんですね。そういったアレンジ曲を作って『大神』ファンに喜んでもらえるかっていうと、そこも微妙かなと思うんですよ。だったらもう最初から土屋さんの二胡とバイオリン演奏の魅力を前面に出したアレンジにしたほうがいいだろう、ということになりました。

◆2人が出会ったきっかけとは

──選曲に関してはどのように進めていったのでしょうか?

豊田:カプコンさんからはある程度人気のある曲に加えてこちらでヒーリングミュージックにアレンジしやすい曲を選曲してくださいという要望がありました。あとは「大神 編曲集」シリーズがこれまでに3枚リリースされていたので、過去にまだアレンジされていない楽曲を意識的に選んだりもしていますね。

──では、実際に選んだ楽曲の決め手になったものなどがあれば教えてください。

豊田:一聴してメロディがわかる曲ですね。ゲームミュージックってやっぱり劇伴なので、メロディがはっきりしない曲もあるんですよ。そういったタイプの曲はアレンジしにくいので、人気があってかつメロディがはっきりしている楽曲から選びました。面白かったのはカプコンさんからも候補曲を出して頂いたんですが、それと自分でピックアップした曲と一致しない曲が結構あったことですね。

──どんな理由で選曲の相違があったんでしょうか?

豊田:『大神』の曲って結構カッコいい曲が多いんですが、カッコいい曲ってだいたいマイナースケールで作られているんです。でもそういった曲をテンポ落としたヒーリングミュージックにアレンジすると、すごく暗い曲になってしまうんです。なので、私の選曲ではそういった曲を全て避けていたんです。でもカプコンさんの要望では、そういった曲もアレンジしてほしいということでしたので、今回は挑戦して何曲かアレンジしています。方向としてメロディはそのままでコード進行を大幅に変えることで、結果的に明るい曲にアレンジしています。

──実際にアルバムを通して聴いても暗いイメージは全く感じないですよね。

豊田:そうですね。アルバム通してさらっと聴けるように作っていますが、頻繁に転調もしていますし、かなり複雑なアレンジになっています。その上で『大神』の世界観は崩したくなかったので、そこは苦労しました。あと『大神』の曲は西洋楽器で演奏されているオーケストラの曲が多いんですね。で、バイオリンは弾ける幅が広くて何オクターブも出るので原曲でもその幅をフルに使って作られているんですが……

土屋:でも二胡を含む民族楽器って演奏できる範囲がすごく狭くて、2オクターブ出るか出ないかくらいの幅しかないんですよ。なので二胡の演奏範囲に他の楽器のアレンジをいかに縮めるかっていうのが、豊田さんと苦心したところですね。

豊田 結果的にはうまくいったんですが、土屋さんにはかなり無理をさせてしまっています(笑)。

──ただアレンジするだけじゃなくて楽器の演奏できる範囲に合わせたアレンジをされていたんですね。

土屋:それに、二胡って2オクターブ出るとは言っても全てが綺麗に出るわけじゃないんです。音が高くなればなるほどキツくなるというか、金切り声みたいな感じになってしまうので、その範囲にかからないようにするのも苦労したところです。でもどうしてもそこを演奏しなきゃいけないっていう場合にはオクターブ下の同じフレーズを弾くという工夫をしています。

──すでに映像や世界観などが存在するゲームの音楽を、土屋さん自身演奏することについてどう意識しましたか?

土屋:私のほうはあえてオリジナル曲を聴かずに アレンジャーである豊田さんの視点での『大神』の世界を生の弦の力で、より豊かになるように意識して演奏しています。先ほども言ったように豊田さんのアレンジは少ない音域である二胡の味わいを最大限に引き出したアレンジになっていて、弾いていても楽しかったですね。

──各楽器ごとの演奏のアプローチはどんな感じで挑まれたのでしょうか?

土屋:二胡は中国の楽器でバイオリンはヨーロッパの楽器ですが、それをあまり意識させないような和のテイストになるように演奏しました。とは言え、私も日本人なので自然体で弾くことが出来ましたね。

──実際に土屋さんの演奏が入ったトラックを聴いた時の率直な感想ってどうでしたか?

豊田:私が最初に作ったデモは全てシンセで打ち込んだトラックなので、アレンジは完成していてもその時点では物足りないんですよね。で、土屋さんの情緒的な演奏……我々の間では「メロディの歌い方」って言い方をするんですけど、それが土屋さんの場合は凄く独特なんです。なので、自分の作ったデモの段階からは全く別のものになったな、って思えたのが印象的でしたね。“曲が命を持った”なって実感しました。

土屋:私が弾く時点ではアレンジはほぼ出来ていたのですが、打ち込みの中に生楽器を入れることによって曲が息づく感じがしましたね。しかしそれではまだ終わらず、不自然にならないように緻密なトラックダウン作業によって生音と打ち込みの音が融合したひとつの音楽が作り出されています。このアルバムはそれがとても上手くいっていると思います。

──確かに、打ち込みと生演奏の融合はより密接で自然なミックスになっていますよね。なかでも特に印象に残ってる曲はありますか?

豊田:人気曲の「太陽は昇る」ですね。この曲から作り始めたんですが、アレンジのテイストをカプコンさんとしっかりと共有しながら作ることが大事だなと思ったので、細かくやりとりをさせていきながら完成させたんですが、結果「太陽は昇る」のアレンジがアルバムの方向性を決めてくれた1曲になりました。

土屋:私はどの曲も同じように気に入っていますね。アルバム1枚でひとつの曲のような印象を受けます。

豊田:あともう1曲印象的だったのが「勇者オキクルミ」。この曲は土屋さんが一切演奏に関わってないアルバムでは異色の曲なんですが、この曲で豊田耕三さんって方にアイリッシュフルートを演奏して頂いてるんです。アイリッシュフルートってピッチ等が不安定な楽器なんですけど、逆にそれが哀愁を漂わせている面白い楽器なんですね。で、「勇者オキクルミ」はカプコンさんとの打ち合わせで他の曲とはちょっと違った感じにしたいですねって話をしていたんですが結果的にアイリッシュフルートを使ったことによって、他の曲と違う雰囲気を出すことができて、思い出深いというか印象に残る曲になりました。
《風のイオナ(シティコネクション)》
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