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【hideのゲーム音楽伝道記】第28回:『星のカービィ 夢の泉の物語』― カービィの冒険を彩るポップでファンタジックな音楽

インサイドをご覧の皆さま、こんばんは。ゲーム音楽好きライターのhideです。ゲーム音楽連載「hideのゲーム音楽伝道記」第28回目となる今回は、『星のカービィ 夢の泉の物語』をご紹介します。

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【hideのゲーム音楽伝道記】第28回:『星のカービィ 夢の泉の物語』― カービィの冒険を彩るポップでファンタジックな音楽
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インサイドをご覧の皆さま、こんばんは。ゲーム音楽好きライターのhideです。ゲーム音楽連載「hideのゲーム音楽伝道記」第28回目となる今回は、『星のカービィ 夢の泉の物語』をご紹介します。



『星のカービィ 夢の泉の物語』は、1993年3月23日に任天堂からファミリーコンピュータで発売されたアクションゲームです。開発はHAL研究所が手掛けました。2002年にはゲームボーイアドバンスにて、リメイク版の『星のカービィ 夢の泉デラックス』が出ています。現在はWiiおよびWii Uのバーチャルコンソールでファミコン版がプレイ可能で、ニンテンドー3DSでは「3Dクラシックス」として3D表示に対応したバージョンが配信されています。

本作は任天堂&HAL研究所の人気アクションゲーム、『星のカービィ』シリーズの第2作目となる作品です。カービィの代表的な特技である、敵を吸いこんでその敵が持つ能力をコピーし、使うことができる「コピー能力」がはじめて登場した作品です。コピー能力の総数は24種類にもおよび、「ファイア」「ソード」「UFO」など様々なバリエーションがあります。コピー能力は以降のシリーズ作品でも毎回登場しており、カービィには欠かせない要素になっていますね。本作は、コピー能力をはじめとした、カービィの多彩なアクションが軽快な操作性で楽しめる、ファミコン屈指の名作アクションゲームです。

本作の舞台は、地球から遠く離れた小さな星の平和な国「プププランド」。ある日、夢を見ることができなくなってしまったプププランドの人々。カービィが、原因を突き止めるために「夢の泉」という場所に向かうと、そこにはかつてプププランドの食べ物を泥棒したデデデ大王の姿が――。どうやらデデデは、プププランドに伝わる、みんなに楽しい眠りを与えてくれる秘宝「スターロッド」を子分たちに配ってしまったようです。カービィは、みんなの楽しいお昼寝タイムを取りもどすため、スターロッドを取り戻す旅に出ることになります。

◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆

さて、そんな本作の大きな魅力のひとつが音楽です。本作の音楽を担当したのは、HAL研究所の安藤浩和氏と石川淳氏。20年以上にわたって長年カービィシリーズの音楽を担当し続けている、カービィサウンドの産みの親といえる2人です。

本作は全体的に、ポップでノリの良い、そしてファンタジックな楽曲が多いです。ファミコンの3和音をフルに活かしきった軽快なチップチューンサウンドで、カービィの冒険を盛り上げてくれます。僕はこの作品を初めて遊んだのは小学生の頃でしたが、当時からゲームの面白さに熱中するとともに、「音楽がすごく気持ちいいなぁ」と思っていました。あれから20年ほどが経つ今改めてプレイしても、そう思いますね。

それでは、本作の音楽で印象的なものをピックアップしてご紹介していきます。

●「絵書き歌」、「タイトル画面/デモ」
ゲームを開始してまず流れてくるのは、「まるかいて、おまめがふたつ、おむすびひとつ……」という可愛らしいカービィの絵描き歌です。カービィが描きあがるとタイトル画面に移行し、鳴り響くポップでキュートなメロディ。プレイヤーをカービィの世界にぐいぐい引き込んでくれます。

●「平地の面」
LEVEL1の、「ベジタブルバレー」ステージで流れる楽曲です。元気よく冒険に旅立つカービィの姿にぴったりの、明るくアップテンポなサウンドが、心地よくゲームを盛り上げてくれます。

●「ボス」
その名の通り、各LEVELの最後に待つボス戦で流れる音楽です。アップテンポのリズムと、ずっと鳴り響き続けるパーカッション風の音がとてもノリノリにボス戦を盛り上げてくれます。本作のボスは、口から空気弾を発射してくる大木の「ウィスピーウッズ」、ローラースケートを履いて移動しながら絵を描き、その絵を実体化させて攻撃してくる「ペイントローラー」、カービィと同様に吸い込み攻撃をしてきたり、空気を吸い込みふくらんでボディプレスを仕掛けてきたりする「デデデ大王」などコミカルな面々も多いのですが、そういったボスとの戦いを表現するためか、戦いの緊張感とともに、少しコミカルな雰囲気が音楽で表現されているように思いますね。“殺伐としていない”ところが、とてもカービィのほのぼのとした世界観らしくて好きです。

●「面クリア時の踊り」
ボスを倒した後に見ることができる、カービィのダンスの時に流れる音楽です。ボスを倒し、スターロッドを取り戻した喜びを、音楽にあわせて全身で表現するカービィの姿は、見ていてとても微笑ましいです! 各LEVELごとにダンスの動きが全部違うのも、芸が細かいなぁと感心しましたね。

●「城の面」
LEVEL3の「バタービルディング」ステージで流れる楽曲です。アップテンポで冒険心をかきたててくれますよ。前半はややコミカルな雰囲気があるのですが、後半に入ってくる、ちょっとせつなげなメロディが素敵です。塔を登っていくというステージなので、冒険のほんのちょっぴりの不安さが、音楽で表現されているのかもしれませんね。

●「雲の面」
LEVEL4の「グレープガーデン」ステージで流れます。雲の上を進むステージだけあって、ふわふわゆったりとしたテンポで、ファンタジックな旋律が展開されます。ふんわりとした曲調が聴いていてとっても心地よく、魅力的にゲームを盛り上げてくれます。個人的には『夢の泉の物語』の中で一番好きな楽曲ですね。

●「LEVEL6のレベルマップセレクト」
LEVEL6「オレンジオーシャン」のステージセレクトマップ画面で流れる音楽です。“夕焼けの海”というロケーションをうまく表現した、ものさびしく、せつない印象のメロディが耳に残りますね。曲としてはわりと短めなのですが、胸をえぐられるようなせつなさがとても印象深い1曲です。

●「夢と寒冷地の面」
LEVEL7の「レインボーリゾート」ステージで流れる楽曲です。幻想的でさびしげな旋律が印象深く残ります。冒険が終盤を迎え、これまで1人きりで長い旅をしてきたカービィの心情が表現されている部分もあるような気もしますね。せつなさと美しさをあわせもった、不思議な魅力のある楽曲です。

●「GREEN GREENS」
1992年にゲームボーイで発売された、初代『星のカービィ』の最初のステージで流れる楽曲です。『夢の泉の物語』でもゲーム終盤のとあるステージで聴くことができるのですが、もう、このステージの演出にはやられました(笑)。「そうきたかぁー!」と。明るくポップなメロディで、まさにカービィシリーズを代表する1曲だと思います。

●「最終ボス」
本作の最後に待ち受ける黒幕との戦いで流れる楽曲です。緊張感あふれるアップテンポの熱い旋律が、血が沸き立つほど格好よく、最後の闘いを存分に盛り上げてくれます! あと、楽曲のイントロ部分が終わるとともに戦闘が始まるという、音楽とシンクロした演出も素晴らしいです。何回プレイしても鳥肌が立ちます(笑)。

●「エンディング・デモ」
最終ボスを倒し、ワープスターに乗ってプププランドへと帰還するカービィのデモシーンで流れる楽曲です。やっと平和な日常が戻ってくることが実感できるような、とても穏やかでやさしく、幻想的な旋律が胸に沁みわたってきますよ。

◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆

本作は発売からすでに20年以上が経ちますが、完成度が非常に高く、今プレイしてもじゅうぶん楽しめる大傑作だと思います。軽快な操作性をはじめ、練られたステージ構成、隠されたスイッチを探し出す探索要素、多彩なコピー能力など、何度プレイしても楽しめる魅力が満載です。アクションゲームの楽しさがぎゅっと凝縮されている作品だと思いますね。僕はもう何度もクリアしているのですが、今でも時々無性にプレイしたくなることがあります。

そして今回ご紹介したように、本作は、カービィのポップでファンタジックな世界観と、アクションゲームの爽快感を見事に両立して表現された音楽が、ゲームをより楽しく盛り上げてくれます。「よくぞファミコンの3和音でここまで!」と唸らされる楽曲群は、今聴いても本当によく出来ていると思いますし、何度聴いても飽きることがありません。純粋に音楽として素晴らしいなと思えますね。

あと、ものすごく細かい点なのですが、僕が『夢の泉の物語』でとても好きなところがあります。それは、各LEVELを初めて訪れる時の音楽の流れです。

本作では通常、各ステージと、ステージセレクトをするマップ画面では異なる音楽が流れるのですが、新しくLEVELを訪れる際には、音楽が切り替わることなく、同じ音楽がずっとそのまま流れ続けるのです。

具体的に言うと、新しくLEVELを訪れる際には、まずカービィのちょっとした寸劇を描いたデモ画面が流れた後、前のLEVELとつながったドアから、カービィがステージセレクトのマップ画面に登場します。そして「1」と書かれたドアにカービィが入るとそのLEVELのステージ1が始まる……という流れなのですが、この間、ずっと同じ音楽なんです。これが、ものっっっすごく心地いいんですよ。音楽がこまごまと切り替わらずにずっと同じ音楽なのは、流れとして非常にスムーズで綺麗だなと。……文章だけで説明するのは難しいのですが、この流れが本当に心地いいので、ぜひ実際にプレイして体感してみていただきたいです。

カービィは見た目が可愛らしいので、子ども向けの作品のように思われがちかもしれませんが、そんなことはありません。老若男女、どんな方でも楽しめる作品です。ぜひ先入観を持たずに、興味をお持ちの方は遊んでみていただきたいです。あまりゲームをしない初心者の方から、アクションゲーム好きの上級者まで、どんな人にでも楽しめる、間口の広い作品ですよ。3DSやWiiU、Wiiなどでもプレイできますので、これまでカービィシリーズをプレイしたことがない方も、ぜひ気軽にプレイしてみてくださいね。



なお、本作のサウンドトラックCDは1994年7月に発売されているのですが、現在は相当なプレミアになっていて、数万円単位の値段がついています。ゲーム音楽のサントラの中でも、トップクラスにレアだと思いますね。僕はこれまで一度も現物を目にしたことがありません(苦笑)。CDの内容は、歌手の宮田まこ氏の歌とオリジナルゲーム音源が入っているようです。CDとしての再販は非常に難しいと思いますが、できればいつの日か、デジタル配信などでサントラが復活することがあれば……と願っています。本当に音楽が素敵な作品ですから!

【筆者プロフィール】
 hide / 永芳 英敬


ゲーム音楽ライター&ブロガー。ゲーム音楽作曲家さんへのインタビュー記事、ゲーム音楽演奏会のレポート記事など、主にゲーム音楽関係の記事を執筆しています。『逆転裁判6』で真宵ちゃんが再登場するのがうれしい!

[Twitter] @hide_gm [ブログ] Gamemusic Garden

(C)1993 HAL Laboratory, Inc. / Nintendo
《hide/永芳英敬》
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