本作は1999年から2000年にかけて放送されたテレビアニメ『デジモンアドベンチャー』の後日談。現在26歳の私は当時10歳になろうかという頃で、とにかく『デジモン』に熱狂したのを覚えている。この作品を語る上で外せない要素に、和田光司さんの歌うオープニングテーマ「Butter-Fly」の存在がある。
『デジモンアドベンチャー tri.』では、八神太一ら“選ばれし子どもたち”のほとんどは高校生になっている。成長し、視野が広がったことで自分の行動の意味を理解し始め、葛藤する太一の姿がそこにはある。このストーリーに初めて触れた時、私は「Butter-Fly」の歌詞と、高校生の太一がリンクしているのではないかと感じた。
「Butter-Fly」は、1番のサビに“Stayしがちなイメージだらけの 頼りない翼でも きっと飛べるさ On My Love”というフレーズがある。
『デジモンアドベンチャー』ファンの方にはおなじみかと思うが、この一節が歌われる時、オープニングアニメには今にも泣き出しそうな表情の高石タケルと、彼のパートナーデジモンであるエンジェモンが映る。
特段深く考えたことはなかったものの、“頼りない”“翼”といったワードはそれらのカットにマッチしており、この歌詞はタケルのことを指していると思っていた。
ここで思い出して欲しいのが、『デジモンアドベンチャー』第38話「復活! 魔王ヴェノムヴァンデモン」で挿入歌に使われたキャラクターソング「勇気を翼にして ~八神太一のテーマ~」の存在だ。この歌により、太一にとっての翼=勇気であることが示されている。
持ち前のカリスマ性を発揮し、どんな時もリーダーシップに溢れていた太一の姿は、これまで“頼りない”というフレーズに結びつくことはなかった。しかし、『デジモンアドベンチャー tri.』で描写される太一はとても“頼りない”。それは大人へと「進化」するために不可欠な、思春期特有の不安定さだ。
第1章「再開」では何とか目前の危機を退けた太一だが、彼の迷いに明確な答えが出た訳ではない。この先、“きっと飛べるさ”と言える日が来ることに期待しつつ、第2章「決意」の公開を楽しみにしている。
▽プロフィール
キャプテン住谷
1989年7月5日生まれ。アニメをメインにゲームや声優の分野でも記事を書くフリーライター。『テニスの王子様』に影響を受けるも、通っていた中学校に硬式テニス部がなかったため、ひとまずソフトテニス部に入部。以後、大学を卒業するまで続ける。クリスマスには自分へのプレゼントとして『メダロット9』を購入した。
歌詞から読み解く「デジモンアドベンチャー tri.」「Butter-Fly~tri.Version~」が歌うもの【2015年の一本】
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