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【レポート】世界を救うのに飽きた人に贈る『ソフィーのアトリエ』は“ゆるふわ”な日常系RPGだった

僕たちは、今まで、何度、世界を救っただろうか?

ソニー PS4
【レポート】世界を救うのに飽きた人に贈る『ソフィーのアトリエ』は“ゆるふわ”な日常系RPGだった
  • 【レポート】世界を救うのに飽きた人に贈る『ソフィーのアトリエ』は“ゆるふわ”な日常系RPGだった
僕たちは、今まで、何度、世界を救っただろうか?――そんなフレーズを盛り込んだ映像が2014年11月に公開(現在は非公開)されました。この映像はPlayStation発売20周年を記念してSCEJAが公開したもので、ユーザーやクリエイターに対する感謝の意を込めて制作。その心に刺さる内容が話題になりました。



私自身も10年以上ゲームをプレイしており、救った世界は数知れません。ただゲームジャンル問わず“世界を救う”というのは非常にカロリーを消費します。私含めて最近“ゲーム疲れ”を感じている方も多いのではないでしょうか。

そんな中、ガスト(コーエーテクモゲームス)が日常系アニメならぬ日常系RPG『ソフィーのアトリエ~不思議な本の錬金術士~』をPS4/PS3/PS Vita向けに発売しました。



ガストの「アトリエ」シリーズといえば1997年発売の『マリーのアトリエ ~ザールブルグの錬金術士~』から続く人気シリーズで、他のRPGではおまけ的な要素だった“アイテム合成”をメインシステムに据えた作品群です。比較的新しい作品では人気イラストレーターの岸田メル氏を起用した「アーランドの錬金術士」シリーズがヒットし、次の「黄昏」シリーズ2作品目の『エスカ&ロジーのアトリエ』がアニメ化するなど、歴史のあるシリーズながらも常に時代と共に変化し続けています。



今回ご紹介する『ソフィーのアトリエ』は、そんな「アトリエ」シリーズの最新作。そしてそのキャッチコピーは「そろそろ世界を救うのにも飽きてきた。」という刺激的なものでした。

◆世界を救いに行かないソフィーご一行




「RPG=世界を救う」と言えば強引ですが、多くのRPGは“明白な敵が居て、何らかの問題が発生しており、主人公ご一行がそれを解決するために旅に出る”というのがお決まりです。ですので『ソフィーのアトリエ』もその類だろうと勝手に思って20時間ほどプレイした頃、ふと疑問に思ったわけです。「いったい何時になったら世界の脅威が現れて、この素晴らしい錬金術を使う日が来るのだろうか……。」と。



そこで過去のトレーラーなどを見返していると、「そろそろ世界を救うのにも飽きてきた。」というキャッチコピーを発見。「なるほど」と納得しました。主人公のソフィーは前向きで明るく可愛らしい女の子だし、周りの仲間達も凄く個性的でいいやつら。街も平和で錬金術の鍛錬も非常に楽しい――そう、本作はそんな“ゆるふわ”な雰囲気を楽しむ作品だったのです。

◆“ゆるふわ”だが楽しい




『ソフィーのアトリエ』にはワールドマップという要素があり、様々なフィールドを探索することができますが、街は一つしかなく、ワールドマップの移動はオートなため“冒険感”というものはあまり味わえません。さらに敵(本作では魔物という)やダンジョンも少なく、何か壮大な物語が待っているわけでもあけません。



それでも、いやだからこそ『ソフィーのアトリエ』は面白い作品なのかもしれません。本作の基礎となる要素は「錬金術」というシステムで、複数のアイテムを組み合わせて新しいアイテムを生成することができます。ゲームの目的はこの「錬金術」や戦闘などをこなし、新しいレシピを発想していくこと。そのためあらゆるゲーム要素が「錬金術」に集約されており、そのシステムの完成度が非常に高いためゲームを進めるのが苦になりません。

◆「錬金術」を繰り返せばゲームが進む




本作では「錬金術」のレシピを発想することでストーリーが進行していくのですが、「錬金術」にはアイテムが必要で、それは魔物が徘徊するフィールドで採取することができ、安全に採取するにはキャラクターを強くする必要があります。また新たなレシピを発想するには、指定の場所を調べたり新たなアイテムを入手する必要があるなど、「錬金術」を行うサイクルの中にゲーム進行に必要な要素が織り込まれているので、このサイクルを繰り返すだけでゲームが進行していきます。

◆なによりも「錬金術」が面白い




『ソフィーのアトリエ』は「アトリエ」シリーズ17作品目のタイトルですが、本作では「錬金術」システムを一新。パズルゲームのようにピースを組み合わせ、その配置によってアイテムの性能が異なるという視覚的な面白さを搭載しています。これが適度に頭を使う良い設計になっており、同じ材料でもピースの配置によってまったく性能が異なるものができることがあります。また各材料には“特性”という概念があり、完成品に材料で使用したアイテムに付いている特性を引き継ぐことができるのです。



たとえば「スキル威力増加」「破壊力増加」「鋭さが増す」といったものがあり、爆弾系のアイテムに「破壊力増加」という特性を付ければ威力がUP。この特性の組み合わせを考えるのも面白く、目的の特性を引き継ぐために、材料の材料から作ることもしばしば。「ハクスラ的なアイテム収集の面白さをアイテム合成で表現している」と言えばわかりやすいでしょうか。生産系コンテンツは単調かつ作業になりがちですが、このシステムのおかげで毎回楽しく錬金することができました。

◆バトルや資金稼ぎにも「錬金術」




バトルについても触れておきましょう。本作のバトルシステムは「ロジカルターンバトル」と名づけられており、プレイヤーの“ロジカル(論理)”が非常に重要なターン制バトルです。そのため攻撃ボタンを連打しているだけだと、雑魚戦でも大ダメージを食らってしまうことに。ですので、戦略の組み立てが非常に重要になってくるのですが、同じぐらいアイテムの役割も重要。特に攻撃・回復系のアイテムは高い効果を発揮しますので、ここでも「錬金術」に繋がるわけです。



一方でキャラクターレベルの上限はLv20ですので、キャラクター育成の要素は薄く、装備の種類もあまり多くはありません。しかも装備は価格が高く、魔物からはお金がドロップしないため、依頼でお金を稼ぐか、採取した材料か錬金したアイテムを売却するのが主な収入源に。ただ装備にも特性の概念がありますので、種類は少ないですが様々な装備を造ることができます。

◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆



実は、この「錬金術をストレスなくとことん楽しむ」というバランスは、シリーズ第一作目『マリーのアトリエ』と同じであり、同作のキャッチコピーも「世界を救うのは飽きてきた」であることからも、『ソフィーのアトリエ』は「アトリエ」シリーズの原点回帰的な作品だといえます。その上で現代風にシステムを再構成しているため、物足りなさを感じることなく、世界を救わない軽めのRPGの面白さを実感しました。

作風的には好き嫌い分かれる内容かもしれませんが、ハードな内容のRPGに"ゲーム疲れ"を感じている方にはマッチする作品ではないでしょうか。
《栗本 浩大》
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