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【レポート】舞台「天元突破グレンラガン~炎撃篇~其の弐・其の参」7年後の物語が2本立て、熱い演出とキャストで一体感

■ あれから7年後の物語を2本立てに、一体感のある劇場での上演 ■ 全員での台詞で物語は最高潮に!

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高浩美の アニメ×ステージ&ミュージカル談義 
連載第144回

■ あれから7年後の物語を2本立てに、一体感のある劇場での上演

『天元突破グレンラガン』、昨年、初の舞台化が話題を呼んだ。しかもキャストをオーディションで選び、それも2000通もの応募の中から選ばれたキャストの熱演も評判だった。
今回は昨年の物語から続き、7年後の物語となる。もちろんGAINAX全面協力も変わらない。ロボットアニメではあるが、その根底はヒューマンドラマだ。
演出・プロデュースはIZAM。2008年に演劇ユニット、ベニバラ兎団を旗揚げし、劇団公演では演出だけでなく、自らも舞台に立つ。表現者としてのこだわりを感じる。
今回の公演は北千住にあるシアター1010。前回の公演の劇場より客席数も多く、701席。プロセニアム形式で客席との一体感が味わえる劇場だ。しかも7年後の物語(17話~27話まで)を2本立てにするという。どんなステージになるのだろうか、期待は高まる。

■ 「合体だ!天元突破グレンラガン、俺たちを誰だと思っていやがる!」
全員での台詞で物語は最高潮に!

まず、炎撃篇~其の弐 、テッペリン陥落から7年後、螺旋王を倒し、地上で平和な生活を満喫する人類。僅か7年もの間に急速な文化の発展と人口の拡大を続け、人間達は暗い地下暮らしを忘れていた。新都カミナシティ、人民を統率するために新政府を設立したシモン達だが……。
其の弐の”本編” に入る前に、まず、簡単に前回の舞台の”復習”から入る。前回観劇してない観客にもわかりやすい導入だ。「俺はシモンだ、穴掘りシモンだ!」そして文字が浮かび上がる、これがロージェノムの言葉「百万匹の猿が……」この言葉は深い意味を持つ。そして物語が動き出す。
アニメを観ていればわかるのだが、シモンはニアに結婚の申し込みをする……。そんな時、人間達は自らをアンチスパイラルと名乗る謎の敵からの空襲を受ける。そしてニアに異変が起きる。無情な”運命”に翻弄されるシモンだが、懸命に立ち向かう。シモンがニアと対峙するところまでが”其の弐”だ。

そして、炎撃篇~其の参 カテドラル・テラを制御可能にして地球への激突を食い止めたシモン達。シモンがニアに贈った指輪を頼りにアンチスパイラル母星の位置を掴んだ大グレン団は、 カテドラル・テラを超銀河ダイグレンと改名、全ての戦いに決着を付けるべく敵母星へと向かう...。
其の弐、其の参、これを分けずに2幕ものとして構成することも可能であるが、演劇の場合、たいていはそれぞれが1時間ぐらい、長くても1時間10分程度だったりする。今回の舞台はそれぞれが上演時間は1時間30分強はあった。つまり、2幕ものにする場合、かなりの部分を省略しなければならない。それをせずに2つに分けたのは制作側のこだわりであろう。物語やキャラクターの心情や行動を丁寧に描きたい、という思いが感じられる。
また、アニメとは違う部分、それはすでに亡くなった”アニキ”、カミナを登場させていることである。舞台上に現れて、”残していった仲間たち”を見守る立場となっている。シモンの心の中にカミナは生きている、いや、シモンだけではない、皆の心の中にカミナがいる。”カミナは皆と共にいる”、それをビジュアル、映像を使っての表現も可能だが、生身の俳優を登場させているのは、シモン達にとってその存在が大きいからである。演じるのは昨年と同様に本川翔太であるが、お亡くなりになっている役なのに、登場した瞬間、圧倒的な存在感であった。

今回も背景には、あのアニメの映像をメインに使っている。戦いのシーンは俳優とアニメの画像をシンクロさせたり、あるいはアンサンブルで表現したり、と極めてアナログだ。舞台だからこそ、の見せ方だ。
伊藤孝太郎、成長したシモン、キャラクターと俳優の成長がシンクロ、観客は感情移入しやすく、熱いシモンぶりで当たり役。シモンを取り巻く様々なキャラクター、皆、愛すべき人物ばかり。ロシウ役の松本寛也、クールなルックスで納得のビジュアル。
ヴィラル、其の参の後半では熱く、まさに”漢”。演じるは峯田大夢、前回も同役であったが、今回はさらに熱量がアップしたようだ。また、キタン役の千葉誠太郎、其の参の見せどころでは、渾身の演技で感涙シーンを創っていた。熱いキャラクターが多い中で、リーロン、アニメを観ているファンなら先刻承知だが、”グレーゾーン”な人である。演じているのは澤田拓郎、クネクネと登場しては観客の笑いを誘っていたのが印象的だ。
それ以外のキャラクター、ニア(知念沙也樺)、キノン(小林亜美)、ヨーコ(柴小聖)等、アニメファンを裏切らないビジュアルとキャラクター創り、俳優陣のこだわりが感じられる。そして、ダークなキャラクター、アンチスパイラル、其の弐では映像のみ、其の参で”見参”したが、映像だけでも迫力と凄みを感じさせており、其の参では、大勢を相手に大立ち回り。野久保直樹が演じているが、これが見事なまでのアンチスパイラルぶり。ひとつひとつの言葉にしっかりと重みを持たせており、キャスティングされた理由がよくわかる。

 『天元突破グレンラガン』の最大の特徴のひとつである、”決め台詞”。其の参のラスト近く「合体だ!天元突破グレンラガン、俺たちを誰だと思っていやがる!」と全員での台詞で物語は最高潮に。これこそが、この作品の真骨頂ではないだろうか。近年の劇場不足故なのか、公演数が少なく9月22日までの公演、せっかくの2本立て、ちょっともったいない気がする。

『天元突破グレンラガン~炎撃篇~其の弐・其の参』
2015年9月17日~9月22日
シアター1010
(C)GAINAX・中島かずき/アニプレックス・KONAMI・テレビ東京・電通
(C)天元突破グレンラガン~炎撃篇~製作委員会

舞台「天元突破グレンラガン~炎撃篇~其の弐・其の参」 7年後の物語が2本立て、熱い演出とキャストで一体感

《高浩美》
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