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クロックタワー後継作『NightCry』河野一二三氏インタビュー「開発は地獄、それでも楽しい」

名作ホラー『クロックタワー』の魂を受け継いだ、新作『NightCry』。今回はヌードメーカーの開発スタジオを訪問し、河野一二三氏にゲーム内容や開発の裏側などについてインタビューを行いました。

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クロックタワー後継作『NightCry』河野一二三氏インタビュー「開発は地獄、それでも楽しい」
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名作ホラー『クロックタワー』の魂を受け継いだ、新作『NightCry』。オリジナルクリエイターの河野一二三氏率いるヌードメーカーのチームが、PC/PS Vita/スマートフォン/タブレット向けに開発している注目タイトルです。今回はヌードメーカーの開発スタジオを訪問し、河野氏にゲーム内容や開発の裏側などについてインタビューを行いました。


――『NightCry』は日本のユーザーからの反響も大きく、是非お話を聞かせていただきたいと思いました。

河野一二三氏(以下 河野): 非常に苦戦はしていますが、いま一丸となってがんばっています。先日発表したトレイラーは突貫で作りまして、夜9時から撮り始めて満足のいくものに出来上がったのが朝の9時。ほぼ12時間がかりで編集しましたが、このトレイラーを出した後からまた盛り上がりまして、これからまた色々な手を使って反撃をしていこうと考えています。




――それでは、今作『NightCry』のコンセプトやどのような経緯で作られたのかについて教えてください。

河野: 一番基本のコンセプトは、『クロックタワー』の原点であるポイント&クリックタイプをきっちり守ろうというところです。ホラーゲームの企画立案も継続してやってきたのですが、色々迷いがあって……普通にコントローラーで操作する方が無難に受けやすいです。しかし、それでは演出力が低くなってしまう。アクション性が高い操作系だと『クロックタワー』で起こるようなホラー的なイベントを見せようとすると、あまり長いイベントは嫌がられてしまいます。アクションゲームにムービーシーンが入っているみたいになってしまいますからね。

ところがポイント&クリックだと、基本的には『MYST』みたいなアドベンチャーゲームの一環として捉えられるので、そういう演出も許してもらえる。僕としてはやっぱりホラー的な演出をできるだけ入れたいという欲求があって、そういうのも含め演出に思いっきり振れるこのシステムを守ってやろうと思いました。

ゆえに、一般性はないのでインディーズでやらなければいけないし、資金調達はKickstarterなどのクラウドファウンディングでやらないといけない。でも時代がそういう時代になってきたというか、日本ではまだあまり認知はされていませんが、海外ではインディーズもすごく栄えていますし、クラウドファウンディングにも抵抗が少ないということで、今こそ時代の流れの力を借りて実現できるチャンスなのかなと。コンセプト部分では演出力を高めたホラーを作るということですね。

もうひとつは、本当に逃げ隠れに特化したゲームってあまりないですよね。木の棒で倒すものなどはありますが。僕は、人間は人知の及ばないものがあると心の片隅で思っていないと、畏れを忘れてしまい、傲慢になってしまうだろうと考えています。これは中学生の頃に読んだラヴクラフトの影響だと思いますが、圧倒的な力を表現したいというのがあるのでそれはうちがやりましょうと。ホラーゲームを作られている方もたくさんいて、僕もすごく好きなゲームが多いのですが、自分が作りたいものと同じような良いゲームがあるなら僕は作らないで楽しむ側ですませます。こうした考えから、一般性が低くなっても譲れない部分もあるのですね。




――『クロックタワー』との共通点、つながりについてお話いただければと思うのですが。

河野: ストレートに物語として繋げるわけにはいかないですよね。あくまで他社さんのIPですから。しかし、作っている人間が同じならどうしても同じような感性になります。それはアメリカンなホラーではなく、どちらかいうとヨーロッパ的なホラーなのかなと。こうした感覚はできるだけ残したいと思っていて、そういう意味では精神的続編であると言えますね。

武器に関しては、ハサミって『クロックタワー』を象徴するものなので避けようかと思っていたのです。ただ、あれを超える武器が本当に思いつかなくて。ハサミは身近な武器、身近な道具で、誰でも使ったことがあるからイメージしやすいですよね。あと、音。やっぱりあの音の良さには敵わなくて、ハサミに匹敵する空気感を持っているのって、ちょっと雰囲気が変わってしまいますがチェーンソーぐらいなんですよね。映画「悪魔のいけにえ」のウィーンっていう音がすごく良いのですが、逆にいえばそれは本当にアメリカ的なホラーというか、少し騒がしい方向でちょっと違うので。

5年間、色々考えてきたのですが、全部ハサミに勝てなかったので、勝てないものを無理に変えたいからといって入れるのはクリエイターの自己満足だと思うのです。ユーザーさんにとってはクリエイターがベストと思っていないものを渡されるわけじゃないですか。だったらもうバッティングしても、いまの自分のベストだと思うハサミにしました。

ダリオ・アルジェントのあるスリラー作品がありまして、そこでは釣りに使うリールを改造したような道具で殺人鬼が犯行を繰り返すのですが、何がどうなってるのかさっぱり分からない。巻き付いて首が切れるなら分かりやすいけど、そうじゃないんですよね。小さいドリルみたいな物が改造して付けてあって。やっぱり彼も新しいものを生み出そうとして挑戦したのでしょうが、見ているこっちが痛みを実感できないというか、想像できないので怖さも伝わらないと思って、そういう失敗はしないほうがいいなというのもありました。


――音といえば、今回トレイラーなどで赤ちゃんの鳴き声が出てきましたが、作中ではどのような役割を担うのでしょうか?

河野: 今回のコアになる部分と密接に絡んでいます。もう1つ、赤ちゃんというところから母性とか女性的なものを想像するので、ヒロイン2人も女性であることからテーマ性も出てくるかなと思っています。




――モニカとルーニーという2人の女性が出てきますが、「クロックタワー2」のようにルートが分岐するのでしょうか?

河野: トレイラーではモニカばかり出てきますが、今回はマルチヒロインというイメージで、本当のメインヒロインはルーニーです。実はモニカは、元々チュートリアル専用のキャラとして作られて、開始10分ぐらいで死ぬ役でした。だからモデリングも淡泊ですね。当初は、10分間でチュートリアルをやって、最後に死んで、そこから本編という予定だったのです。本当にアホそうな感じの子ですが……「どんだけここもうパット詰まってんだよ」と。




――すごいですよね。

河野: 昨日もモデリングの女性スタッフとミーティングをした際、「胸でかすぎないですか?」と言われて、「セレブの男捕まえたくて、めちゃめちゃ張り切ってる子なんです。すごい寄せて上げてるんですよ」と。僕の中で、『クロックタワー』って理知的な女性しか出てきませんでした。ある程度冷静さがあってかなり賢い感じで。ジェニファーは元々そうですけど、ヘレンもやっぱり頭のいい女性で。でもそうじゃないタイプの女性像っていうのも年齢的に書けるようになったというのもあります。彼女の設定を考えた時に、貧乏で兄弟がいっぱいいてバイトして養いながら大学通っている。



そういう子が今の生活から抜け出したいからセレブになりたくて──。それはそれで魅力があって良いんじゃないかと。若い頃はそういうのよりはピュアで綺麗な感じのを求めますけど、僕も年齢を重ねて広がった分の幅でカバーできるキャラクターになったかなと思っています。で、やっているうちに好きになってきたので、じゃあこの子もメインクラスに昇格しようと。今トレイラーで大活躍していますが、実はあれサブヒロインなのです。




――他のキャラクターについても少し教えてください。

河野: ジェロームはイケメンで、ちょっとメンタルが弱いのですが、本当に大事な役割を持っています。レナード教授は、当初イメージは星野之宣の宗像教授で、最初のデザインは丸坊主にヒゲという風貌でした。ただ、あまりにもそのままだろうということで今のデザインに変わりました。ダンディですよね。




――開発されていて楽しい点、困っている点はありますか?

河野: いや、もうね、地獄ですよ。今までの開発では作業量の負荷だったのですが、今回は作業量プラスお金。これまでは予算が決まっていてその範囲内でランニング計算してやっていたのですが、今回はいくらになるかが分からない。ギリギリの中で色々な方にご協力をいただいています。Kickstarterの結果が分からない以上、作品のボリュームも見えないから、シナリオを今も書いていますが、書きづらいんですよ。本来はある程度構想を練って、ここは後々のマップで伏線を回収したりしますが、その後々のマップが作れるかどうかがわからないわけですからね。これはもう地獄なのですが、その地獄さがすごく楽しい。

インディーズってそいういうものかと改めて実感したことがあって、これまでトレイラーやスクリーンショットを撮るのは機材もちゃんと持っているパブリッシャーさんの宣伝部の方がやってくれる。でも今回は何もない状態で、どういう機材でやったら画質が劣化しないのかとか考えながらやらなきゃいけない。ピッチビデオのときに出ている映像って、ボヤけているのですが、今回のトレイラーではすごいクリアになっています。違いは撮影機材が変わっただけで、元々クリアでした。カラーも黒が引き締まらない感じだったのですが、今回はすごく黒のエッジ部分が引き締まっていて、ほぼ開発画面通りのクォリティで出ている。当初のチープな機材では画質が劣化し過ぎていたんですね。


――今回のトレイラーもご自身で作られたのですか?

河野: 自分たちで撮って、カッティングして繋げて、最後にノイズとかテロップを協力会社の方に入れてもらって、だから編集は自分ですね。それと今回のトレイラーのライティングは全部自分でやっています。テクスチャのベイク(焼き付け)と言って、ライティングしたものを直接テクスチャに入れて最初から光がぼんやりしている部分をテクスチャに描いてしまうんですが、そちらも。もちろん僕だけではなくて、スタッフ全員で二役三役やっている状態ですね。そういう意味では本当に地獄だし、かと言ってクオリティが今も日々上がってきているので、厳しいのが愉快でしょうがないですね。『鉄騎』の頃以来の感覚……いや、ここまで苦しいのは初めてかもしれない。本当にみんながんばってくれているので、それが良い結果になってくれるのを祈っています。


――KickstarterやCAMPFIREももっと頑張っていきたいと。

河野: Kickstarterは、単純に「いいもの作るよ、どう?」じゃだめだなというのが最近分かってきて、ツイッターやフェイスブック、ファンコミュニティに顔を出すというのを地道にやらないと成功しないですね。ユーザーに寄り添って、反応をみて、1日単位で細かくページを直して、またレスポンス返して──というのはソーシャルゲームの運営に近い感じもしました。そういう感覚は今までの開発とは違うし新鮮だなと。




――清水崇監督はどういった部分を一緒に作られているんですか?

河野: 初期の設定のときにみっちりミーティングに入っていただいて、PVで撮られたシーンなどは清水監督がアイデアを手掛けたものになります。シザーウォーカーの演出も、監督の方で「こんな映画があるよ」「この映画のこういう演出が参考になるよ」とかどんどん紹介していただいて、「じゃあライティングはこういうのがいいんですか?」みたいなやりとりをさせていただいてます。僕からみたら偉大な雲の上の人というイメージでしたけれど、すっかり仲良くなって、大晦日のもうすぐ年明ける1時間前に何度も世間話メールをやりとりして「遠距離の恋人か」みたいな。


――今回はPC版とモバイル版がありますが、機種ごとの違いはありますか?

河野:現状だとそのまま移植は難しいでしょうね。今回はUnityで作っているので移植自体は楽なはずではあるのですが、シェーダーやアクティブライトなどを結構使っているので、今の絵のままタブレットで遊ぶというのは無理でしょうね。でも、それ以外の部分の移植は楽かなと思います。普通のアクションゲームだとボタンをいくつも使うので、それをタッチパネルでどうするのかなどの問題が出るじゃないですか。『NightCry』はポイント&クリックなので、タッチパネルと非常に相性が良いです。元々スマホ用に考えたのはそういうところでもあって、UI周りの移植はそれほど難しくないかなと思っています。




――通常モードと逃走モードについて教えてください。

河野: 基本的には『クロックタワー』の通常と逃走のような形になります。通常モードの時は、キャラクターによって人との会話などのミステリー的な操作が必要なキャラクターもいます。今回、『クロックタワー』の問題点だったシザーウォーカーに対する慣れをどうやって緩和するかというのに心を砕いています。キャラクターによっては、「仮面の者たち」がメインの相手になり、シザーウォーカーが登場しないシナリオがあるかもしれません。


――シナリオはどんな形で進行するのでしょうか?

河野: キャラクターはこの人、この人という形で順番に提示するつもりです。ブランチポイントが多いので、キャラクターが交代する前にエンディングになってしまったりなど、マルチエンディングの数はできるだけ増やしたいと思っています。クトゥルフ系のオーガスト・ダーレスの作品やラヴクラフトのような連作物で、最初のキャラが死んで次のキャラがその人の日記を見てまた探索に行くというのがあるじゃないですか。もちろん別に全員死ぬわけではないのですが、そんな感じが出るといいのかなと。実は今回、スマートフォンに関するシステムが重要なんですよ。




――スマートフォンですか。

河野: スマートフォンが重要アイテムで、ゲーム内でメインのアイテムとして出てくるというのを考えています。トレイラーでもスマートフォンを手に入れる場面がありますが、あれが大事。例えば、ルーニーは友だちが少ないから、誰かに連携を取ろうにもアドレスが空っぽ。モニカはパーティーに出席していたのでスマートフォンを自室に置いていて、拾ったスマホも見知らぬ死体からなので、アドレスを見ても誰が誰だか分からないみたいな。ただの現代風『クロックタワー』には収まらないシステムも近々発表できると思います。


――作品の舞台は豪華客船の中だけになりますか?

河野: 豪華客船の中だけだと飽きると思うので、ちょっと違う場所のシナリオもあります。マスホ版ではコンパクトにまとめるつもりでしたが飽きるので。そんなに長いシナリオにはならなくて、『クロックタワー2』のリックの家みたいなイメージでいてもらえばいいかと。




――ゴア表現とかグロ表現についても教えてください。

河野: わざわざ悪趣味なだけでグロくしようとは思いませんが、お話的にそういうものが必要であるときにそこから逃げる気はないです。やっぱり流れとか構成の中でどう出るかというのが大事だと思うので、単純にグロいシーンを入れて「どうですグロいでしょ」じゃだめだと思っています。バックボーンが怖さにつながると思うんですよね。


――初代『クロックタワー』から20年経ちましたが、同じ精神を持った作品を作るにあたって、ゲームにおける怖さの表現方法に変化はありましたか?

河野: 怖いという感覚を海外の作品で出せているのは少ないかなと思っています。結局、どう敵を倒すかというところに思考がいっちゃうのでなかなか怖がれない。そういうところで『サイレントヒルシリーズ』は常に一線を画しているんじゃないかと。

映画でもホラーの流れ自体変わってきたじゃないですか。『オーメン』、『エクソシスト』のオカルトブームがあって、サイコキラーやゾンビのスプラッターものになって、だいぶ飽きられてきたところに、ピーター・ジャクソンの『ブレインデッド』が集大成として出た。あの時代の1つの節目だったと思うんですよね。そこから一気に下がっていって、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』みたいな手法が出てきて、モキュメンタリーや『SAW』みたいなものも出てきた。それらは僕がかつて好きだったホラーとは違う新しい方向性を生み出していて、それはそれで良いと思うのです。ホラーって懐の深いジャンルで、みんなホラー好きでも好きな方向性ってバラバラなんですよ。ゾンビが好きだとか。どれが好きでも良いと思いますが、クリエイターとして自分が提示する場合は、一番好きなものはその中でもこれだっていうのを一個決める必要があるじゃないですか。

そういう意味では、僕はオカルトブーム、スラッシャーブームの80年代ホラーの空気感っていうのをもう一回、でも現代でも楽しめるようにしたいと思っています。映画でも少なくなっているので。今一番熱いのは、最近のフランスのホラー映画ですね。『屋敷女』、『ハイテンション』とか。『NightCry』のクローゼットに隠れるシーンは、『ハイテンション』のワンシーンをイメージしています。こうした感覚は、今作の「息潜めシステム」というのにも活かされてるんですよ。




――その「息潜めシステム」について、教えてください。

河野: トレイラーにもあったシーンなのですが、元々スマホ向けだったので息を潜めているときにじーっとしている感を出したかったんです。そこでアイコンが動いていて、傾きでそのアイコンの中にカーソルを入れている間は息を潜められると。トレイラーのは未調整でちょっと動きすぎですが。『ハイテンション』でも「だん!」と音がしてウワッてなるところがあるんですが、そうした感覚をゲームで再現するには「だん!」ってなったときにプレイヤーがビクッとして手元がぶれる。そうするとカーソルがアイコンからはみ出してしまって、キャラクターが「あっ」って声を出して見つかるっていう感じなんです。でもそれは使い方の一例であって、例えば魔法のロウソクがあって、持っている間、悪魔がよってきません。で、この橋を渡りなさいと。カーソルを入れながら渡っている間は大丈夫だけど、驚いたりしたらロウソクがふっと消えてがーっと喰われるとかね。




――では、最後に日本のゲーマーの方に向けたメッセージをお願いします。

河野: スタッフ全員、とにかく自分たちが世に出したいものを作ろうとがんばっています。今回はインディーズということで、ユーザーのみなさん1人1人のご支援が僕らの力になります。どうぞ最後まで応援よろしくお願いいたします。

記事提供元: Game*Spark
《Game*Spark》

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