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記野直子の『北米ゲーム市場分析』2014年12月号―年間データも発表!

2014年が終わり、欧米では空前のコンソール販売台数をたたき出したようです。日本もこの恩恵に預かりたいところですが、2月の『ドラゴンクエストヒーローズ 闇竜と世界樹の城』を待つことにしましょう。

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記野直子の『北米ゲーム市場分析』2014年12月号―年間データも発表!
  • 記野直子の『北米ゲーム市場分析』2014年12月号―年間データも発表!

あけましておめでとうございます。2年目を迎えたこの連載ですが、本年もお手柔らかによろしくお願いします。2014年が終わり、欧米では空前のコンソール販売台数をたたき出したようです。日本もこの恩恵に預かりたいところですが、2月の『ドラゴンクエストヒーローズ 闇竜と世界樹の城』を待つことにしましょう。

さて、12月の北米セールスデータの速報が来ました。

■市場全体動向

年末商戦最後の締めくくり、クリスマス商戦の結果が出ました。12月の北米の市場規模総額は前年比1%ダウンの32億5,000万ドル(約3,900億円)。ハードウェア売上を見ると4%ダウンの13億1,000万ドル(約1,570億円)、ソフト売上は12億5,000万ドル(約1,500億円)。周辺機器は8%アップの6億8,120万ドル(約815億円)となっています。

売上総数ではなく金額ベースの発表なので、ハードウェアの値下げやソフトウェアのバンドル版等を考えるとむしろ売上台数は増えていることが容易に推測できます。また、ソフトウェアの売上ダウンに関してはいつも申し上げておりますが、このデータ、デジタルダウンロード版の売上は入っていませんので、あくまでもお店で買われたパッケージの売上のみと考えてください。北米では間違いなくパッケージ販売からダウンロード販売のレシオ(比率)が増えています。

それにしても…昨今の急激な円安の問題はあるものの、すごすぎる北米ゲーム市場。日本の2013年年間の日本国内の家庭用ゲーム機総市場(約4,100億円)に肉薄する金額を12月単月でたたき出しているのです。

■ハード動向―Xbox Oneが2カ月連続販売台数トップ!

11月に引き続き12月もXbox Oneが首位の座をキープしました。NPDが詳細を発表しないので各ハードの台数は明らかになっていませんが、NPD以外のソースからの情報によると、Xbox One とPS4だけで12月には233万台を北米で販売したとのことで、どちらもそれぞれ日本国内のPS4インストールベース(総売上台数)90万台前後を上回る台数を12月だけで売ってしまったということですね。

2014年11月2日からのXbox Oneの50ドル値下げ(現在、Kinectナシ版が350ドル)は2015年1月3日までの期間限定だったので、それ以降は厳しくなるなぁと言われていたのですが、現地時間1月15日のマイクロソフト発表で「明日(16日)からXbox Oneをキャンペーンで50ドル値下げします」とのこと。おそらく、もう元の値段には戻せないでしょう。この再びの値下げを知らずに1月4日~15日に買った人たちはいないのか?と言う話は抜きにしても、1年前のしくじった発売を仕切り直しての再ローンチ(2回目の発売)と揶揄する声も聞かれます。いずれにしてもマイクロソフトの年末商戦戦略は「成功」と言えるでしょう。

PS4は北米でも欧州でも好調をキープしていますが、先月イギリスでもXbox OneがPS4を上回る販売だった、というニュースがありました。Xbox Oneが価格戦略をアメリカ同様に仕掛けたためと言われており、実は「タマ(在庫)不足」も要因とのこと。お店にPS4を買いに来たユーザーが欠品で買うことができずに、代わりにXbox Oneを買っていくというチャンスロスもあったわけです。

いずれにしても、11月同様PS4とXbox Oneの好調さに大きな差はなかったと考えています。インストールベースではXbox OneはPS4にまだ追いつくことができません。1月のソニーの発表によるとPS4は2013年末の発売から1,850万台を全世界で売り上げ、PlayStationフォーマット史上最速の売上達成とのことです。また、マイクロソフトの過去発表(最近あんまり発表してくれません)によるとXbox Oneは同じく2013年末の発売から2014年11月末現在で1,000万台出荷したそうです。

材料を合わせてみると、北米だけでPS4もXbox Oneもそれぞれインストールベースで軽~く500万台を超えています。PS4は700万台に突入な感じですね。これだけ出回ってくれればソフト供給側としても安定的に開発費を注ぐことができるようになります。ただし、日本のメーカーにとっては日本の台数が増えないとちょっと厳しいかもしれませんね。欧米と真逆で出回りが鈍い日本における現世代機。ゲーム機が家庭に一台あった時代ではなくなっているのは残念なことです。日本のゲームが爆発的に海外で売れてくれるようになるか、日本国内だけで十分にマーケットになる状況を作るか、いずれかの起爆剤がないと打破できない感じがしてやみません。

Wii Uは目立った報道がなく、発売以来一番売れた月になったということだけでした。PS4、Xbox Oneより1年先行して発売されたハードですが、一気に抜き去られ大きな水をあけられています。ただし、同社のソフトウェアパワーは相変わらず健在です。またそれは2014年のまとめのところで。

■ソフト動向―『Call of Duty: Advanced Warfare』強し。任天堂も頑張ってる!


早速2014年12月度のソフトウェアランキングです。


1. Call of Duty: Advanced Warfare (PS3/PS4/X360/X1/PC) - Activision Blizzard
2. Grand Theft Auto V (PS3/PS4/X360/X1) - Take 2/Rockstar
3. Madden NFL 15 (PS3/PS4/X360/X1) - Electronic Arts
4. Super Smash Bros. (Wii U/3DS) - Nintendo
5. NBA 2K15 (PS3/PS4/X360/X1/PC) - Take 2/2K Games
6. Minecraft (PS3/PS4/X360/X1) - Microsoft/Sony Computer Entertainment
7. Far Cry 4 (PS3/PS4/X360/X1/PC) - Ubisoft
8. Just Dance 2015 (360/XB1/PS4/PS3/WiiU) - Ubisoft
9. Destiny (PS3/PS4/X360/X1) - Activision Blizzard
10. FIFA 15 (PS3/PS4/360/X1/Wii U/3DS/PSV) - Electronic Arts


Activisionの『Call of Duty: Advanced Warfare』は11月12月の年末商戦ピークで2カ月連続首位をマークするなど圧倒的な訴求力を見せており、北米だけで全プラットフォームで800万本ほど販売した模様です。この『Call of Duty: Advanced Warfare』もそうですが、ランキングされているタイトルは11月のものとほぼ変わりありません。つまり11月までに発売されているタイトルがランクインしていることが多いということです。

いくら12月が年間で一番売れる月と言っても、12月当月に発売しても口コミなどの効果が得られないので、北米での年末商戦に参戦するには11月中に発売することがほぼ必須というのが長年の定説です。

NPDによると、2013年12月におけるハード売上台数全体のうち32%にソフトウェアがバンドル(同梱)されているものだったのですが、2014年12月に至ってはなんと71%がソフトウェアとのバンドル版だったとのこと。まさにソフトがハードを牽引したクリスマス商戦だったようです。

また、上記バンドルにも関連することですが、11月と12月はソフトウェアの売上本数もXbox One向けソフトがPS4向けを押さえた、との報道がありました。ハードとソフトは連動しますからね。ハードだけ売れてソフトが売れないということはあまり考えられません。

日本発タイトルとしては唯一ランキング圏内の『大乱闘スマッシュブラザーズ』。なんだかんだ言ってもソフトメーカーとしては日本が誇るパブリッシャー任天堂です。発表によるとパッケージ+デジタルダウンロードで130万本ということですからWii Uを持っているユーザーの半分弱はこのソフトを購入していることになります。

ただ、年末と言えばファミリー向け!と相場が決まっていた北米市場ももはや任天堂の独壇場ではなくなってきているというのも時代の流れでしょうか。北米では子供たちは3DSかタブレットで遊んでいる様子がよく見受けられます。

■2014年北米市場はどうだったのか?

NPDが2014年の北米市場全体の速報も流してくれました。ただ、NPDも少し前から限定的な情報しか開示しなかったり、北米市場では日本のファミ通のようにハード売上台数や全体のインストールベース、ソフトの売上本数などを公にしてくれるメディアがないため(有料で企業にデータを販売しています)、私たちのように市場を分析する人たちにとってはいろいろな材料を集めて推量するという手間をかけるのです。

おっと、文句はこれくらいにして、NPDの発表によると北米2014年の年間でハードウェアの売上総額規模は前年比20%アップの50億7,000万ドル(約6,080億円)。ソフトウェア売上(パッケージのみデジタルダウンロードを含みません)は13%ダウンの53億ドル(約6,300億円)となっています。本当にソフトが13%ダウンとは考えられませんので、それだけパッケージからデジタルダウンロードの波が大きくなった、とも言えるでしょう。

いずれにしても、現世代機のローンチから1年、北米ではコンソールビジネスが盛り上がっているようです。日本との乖離が激しくなってきたことに危惧を覚えるのは私だけでしょうか?

年間のソフトウェア売上ランキングは下記の通りです。


1. Call of Duty: Advanced Warfare (PS3/PS4/X360/X1/PC) - Activision Blizzard
2. Madden NFL 15 (PS3/PS4/X360/X1) - Electronic Arts
3. Destiny (PS3/PS4/X360/X1) - Activision Blizzard
4. Grand Theft Auto V (PS3/PS4/X360/X1) - Take 2/Rockstar
5. Minecraft (PS3/PS4/X360/X1) - Microsoft/Sony Computer Entertainment
6. Super Smash Bros. (Wii U/3DS) - Nintendo
7. NBA 2K15 (PS3/PS4/X360/X1/PC) - Take 2/2K Games
8. Watch Dogs (PS3/PS4/360/X1/Wii U/PC) - Ubisoft
9. FIFA 15 (PS3/PS4/360/X1/Wii U/3DS/PSV) - Electronic Arts
10. Call Of Duty: Ghosts (PS3/PS4/360/X1/Wii U/PC) - Activision Blizzard


11月、12月のTopランキングとあまり変わりません。これをご覧いただいても年末商戦のすごさを感じて頂けるかとは思いますが、北米では年間の売上の大きなシェアを年末商戦が稼ぎ出すと言われていて、ハードメーカーもソフトメーカーもターゲットにするのはそのためです。

特にActivisionの『Call of Duty: Advanced Warfare』は、映画、音楽、本を含むエンターテインメントビジネスにおいて2014年で初動の最高額の売上を達成したと11月発売直後に発表がありました。また、2003年から続く『Call of Duty』シリーズは全世界の売上を合わせると100億ドル(約1兆2,000億円)を超え、大作映画『トランスフォーマー』『アイアンマン』 『アベンジャーズ』などの興行収益を合わせてもこれを超えるものではないとのこと。

「ゲームコンテンツビジネス」というエンターテインメントが世界においても大きなインパクトを与えていることは確かです。この波に日本のゲームコンテンツが乗れることを業界関係者として切に願います。

それでは、また来月!

記事提供元: Game*Spark
《Game*Spark》
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