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記野直子の『北米ゲーム市場分析』2014年6月号― コンソール向けFree to Playの課題

年末商戦に向けて世界のゲームメーカーが各地でいろいろな発表をしていきます。注目していきましょう。さて、6月の北米市場データの速報が入りましたので報告します。

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こんにちは。6月のE3から始まり、7月初旬にフランス/パリでJapan Expoが行われ、来週は米国サンディエゴでコミコンが行われるというイベント続きの夏です。7月31日からは中国上海で行われるChinaJoy 2014に行ってまいります。それが終わるとお盆のころにドイツ・ケルンで行われるgamescom、9月の東京ゲームショウが待っていますね。年末商戦に向けて世界のゲームメーカーが各地でいろいろな発表をしていきます。注目していきましょう。さて、6月の北米市場データの速報が入りましたので報告します。


■市場全体動向

6月の北米市場は7億3,640万ドル(約740億円)と前年の5億9,350万ドル(約600億円)から比べて24%売上規模が向上しました。特にハードが好調で前年比106%増とのことですが、残念ながらソフト売上は前年比-3%で足を引っ張っているようです。ただし、この現象は、前年同月に発売された強力タイトル(『The Last of Us』、『Animal Crossing: New Leaf』、Xbox 360版『Minecraft』など)と比べると本年6月の発売タイトルが弱かったためとNPDがコメントしています。


■ハードウェア動向

マイクロソフトはこの6月北米セールス速報の直前に「北米におけるXbox Oneハード売上は前月の2倍以上になった!」と発表しました。これは前回の記事に書きました6月9日に発売された「Kinect非同梱版」(Kinect同梱版より100ドル安)のお陰で、発売以来評判がよかったのを覚えています。

しかし、NPDの速報を見れば、PS4が6カ月連続でナンバー1セールスハードとなったとのこと。100ドル安いバージョンの発売もPS4のイケてる感を払拭することはできなかったことになります。

話が少し逸れますが、米国時間7月17日(木)マイクロソフト社の最高経営責任者(CEO)Satya Nadella氏から全社員向けに18,000人の人員削減を伝える電子メールが出たというニュースがあり、Xbox事業においても2012年に設立したばかりのXbox Entertainment Studios (XES)が閉鎖されるとの発表がありました。

Xbox事業売却の噂が途切れなかったマイクロソフトですが、この大きなリストラがゲーム事業にどこまで波及するのか注目していきたいところです。


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『Mario Kart 8』のおかげでWii Uも引き続き好調です。Wii Uの売上は前年比233%アップと任天堂にとっては良い兆しが見えてきています。3DSも不調ではないのですが、NPDによれば3DS、PS Vitaなどの携帯ゲーム機の需要は年々落ちてきているのも事実で、ハードウェアの売上規模にはそれほど寄与していないようです。


■ソフトウェア動向

ソフトウェアランキングを見てみましょう。

    1. Watch Dogs (PC/PS3/PS4/X360/X1) - Ubisoft
    2. Mario Kart 8 (Wii U) - Nintendo
    3. Minecraft (X360/PS3) - Microsoft/ Sony Computer Entertainment
    4. EA Sports UFC (PS4/X1) - Electronic Arts
    5. FIFA 14 (PS3/PS4/X360/X1/PSV) - Electronic Arts
    6. NBA 2K14 (PC/PS3/PS4/X360/X1)  - Take-Two Interactive
    7. Wolfenstein: The New Order (PC/PS3/PS4/X360/X1) - Bethesda Softworks
    8. Call of Duty: Ghosts (PC/PS3/PS4/X360/X1/Wii U)  - Activision Blizzard
    9. Tomodachi Life (3DS)  - Nintendo
    10. Grand Theft Auto V - (PS3/X360) - Take-Two Interactive

『Watch Dogs』はUbisoftの発表によると全世界800万本の売上を達成した模様です。同タイトルはPS4版の売上が一番大きく、Xbox 360版Xbox One版PS3版と続くのですが、プラットフォームの明暗がここに表れていると読むアナリストもいます。

『Watch Dogs』は売上本数で1位となっていますが、SKU(ハード別)売上本数で考えれば『Mario Kart 8』がダントツ1位のようです。6月は47万本売り上げ、5月の販売数を含めて北米だけで88万5千本の売上を達成したようです。過去の実績を見ても、『Mario Kart』シリーズは息の長いソフトウェアであり、これを軸にWii Uのテコ入れを本格化する旨の声明を米国任天堂が発表しています。


ちょっと前に同性婚対応の可否で話題になった『Tomodachi Life(日本名:トモダチコレクション 新生活)』も無事6月に発売されました。米国任天堂は今回のゲーム内容を変更して対応することは困難としながらも、続編が出る場合には同性婚に対応する意向と表明しました。


■コンソール向けFree to Playの課題

6月にLAで行われたE3のカンファレンスで気になったのが、コンソールにおける「Free to Play」。マイクロソフトからはXbox One版『Happy Wars』が発表され、また、ソニーではPS4向け『PlanetSide 2』がSOEから展示されていました。

インディーにフォーカスする流れを考えても、当たり前の進化方向と感じますが、コンソールにおいては、ハードメーカーによるソフトの承認/認証の在り方がモバイルやタブレットのそれと大きく違うため、「Free to Play」タイトルへの追加コンテンツ、イベントなどのアプローチが難しいという開発者の声が聴こえてきました。

モバイル/タブレットでは当たり前の、ユーザーの動向を見ながらパッチを当ててゲーム自体を進化させていくという文化がコンソールにはないため、小回りが利かない。言い方を変えれば「最初から仕込んでおかないといけない。」DLC、またはアンロックキーのDLとなる可能性が高いのです。

これらはハードメーカーによるマインドセットの問題で、この自覚をしていただかないと「Free to Play」での課金モデルは成立しにくいという課題も残っているようです。開発者が作りやすい環境の下、乗り遅れずにユーザーが楽しめるソフトウェアを提供できるハードこそが本来の「ゲーム機」と考えるのなら、この波を無視することはできないはずです。

それでは、また来月!

記事提供元: Game*Spark
《Game*Spark》
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