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ガゼル法院の音まで再現、缶詰も楽器に!ファン心をくすぐるオニオン弦楽合奏団『ゼノギアス』演奏会レポート

2013年12月1日、ゲーム音楽演奏団体『オニオン弦楽合奏団』の演奏会、「SCHWINGT FREUDIG EUCH EMPOR ~喜び勇みて羽ばたき昇れ~」が、東京・江戸川区の小松川さくらホールにて開催されました。この演奏会の模様をお届けします。

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ガゼル法院の音まで再現、缶詰も楽器に!ファン心をくすぐるオニオン弦楽合奏団『ゼノギアス』演奏会レポート
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  • 会場の小松川さくらホール
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  • 多くの観客が詰めかけました
  • オニオン弦楽合奏団のみなさん
  • リハーサル風景
2013年12月1日、ゲーム音楽演奏団体『オニオン弦楽合奏団』の演奏会、「SCHWINGT FREUDIG EUCH EMPOR ~喜び勇みて羽ばたき昇れ~」が、東京・江戸川区の小松川さくらホールにて開催されました。この演奏会の模様をお届けします。

1998年に発売されたプレイステーション用RPG『ゼノギアス』。作曲家の光田康典氏によって作曲された『ゼノギアス』の音楽は、発売から15年という月日を経た現在でも、ゲームと共に高い人気を誇ります。本公演では、『ゼノギアス』の楽曲群が、十一の楽章で構成された組曲として、弦楽とピアノで演奏されました。

演奏を担当したオニオン弦楽合奏団は、昨年『ファイナルファンタジーIII』を弦楽合奏で演奏するために生まれた楽団で、今回が2度目の一般公演となります。

■「SCHWINGT FREUDIG EUCH EMPOR ~喜び勇みて羽ばたき昇れ~」プログラム
・第1楽章 冥き黎明
・第2楽章 エピソード2・原初の時代 星の涙、人の想い その他テーマ
・第3楽章 エピソード3・ゼボイム文明期 神無月の人魚 - 遠い約束 - 死の舞踏 - 夢の卵の孵るところ(部分)
・第4楽章 エピソード4・ソラリス戦役期 傷もてるわれら 光のなかを進まん - つわものどもが夢のあと - 憧憬(部分)- 紅蓮の騎士 - グラーフ 闇の覇者 - 星の涙、人の想い(部分)
・第5楽章 ラハン村~シタン先生の家~ワールドマップ おらが村は世界一 - 風のうまれる谷 - 憧憬
・間奏曲 熱砂の街ダジル
・第6楽章 若とマルー 海と炎の絆 - アヴェ いにしえの舞 - やさしい風がうたう - 傷もてるわれら 光のなかを進まん(部分)
・第7楽章 ビリーと孤児院とレンマーツォ 悔恨と安らぎの檻にて - 大空と雲ときみと - 蒼き旅人
・間奏曲 タムズ 海の男の心意気
・第8楽章 マリア 風が呼ぶ、蒼穹のシェバト - 星の涙、人の思い(部分) - 夜空一杯の星を集めて
・第9楽章 飛翔~翼 飛翔 - 翼
・間奏曲 ガゼル法院
・第10楽章 ソラリスにて 天上の楽園ソラリス - 引き裂かれしもの
・第11楽章 ラストダンジョン 予感 - 覚醒
・神に牙むくもの
・盗めない宝石
・最先と最後
・SMALL TWO OF PIECES ~軋んだ破片~
[アンコール]
・鋼の巨人
・まどろみ(ロングバージョン)


『ゼノギアス』について少し説明させていただくと、この作品は、1万5000年以上にもわたる壮大な時間軸を持つ物語として企画されました。全部で6つのエピソードから構成されており、ゲームとして世に出ている『ゼノギアス』は、そのエピソード5にあたります。ゲーム中では、主人公・フェイの記憶という形で、エピソード2、3、4の物語が断片的に語られていました。

本公演の指揮と編曲を担当した、オニオン弦楽合奏団代表の大澤久氏によると、第二楽章から第四楽章については「エピソード2から4までの物語を、『ゼノギアス』の音楽でその印象を味わえるような編曲を目指しました」とのことです。また、第五楽章以降は、エピソード5、つまり『ゼノギアス』本編の物語を追った楽曲構成で、『ゼノギアス』という作品を音楽で追体験できる内容になっていました。


■ガゼル法院まで再現! ファン心をくすぐる演奏
今回は弦とピアノのみの演奏会でしたが、演奏にはさまざまな工夫が凝らされていました。ラハン村の楽曲「おらが村は世界一」では、奏者の皆さんが自身の太ももをぱしぱし叩いてパーカッションの音を再現していたり。「天上の楽園ソラリス」では、原曲に入っていた「カカカカ」という音を、ヴァイオリン奏者が弓の部分で楽器を叩いて再現したりと……。原曲のイメージをとても大切に演奏されていて、感心しました。

間奏曲「熱砂の街ダジル」でも、原曲に入っているポコポコという音を、チェロ奏者が楽器を叩いて出していたのですが。曲のラストでは、指揮の大澤氏が、缶詰の空き缶を「スコンッ!」と叩いて音を鳴らしていました!これには観客からも笑いが起こります。缶詰というのが、『ゼノギアス』ファンとしてはトラウマを呼び起こされますね(笑)。

特筆すべき点としてぜひ書き記しておきたいのが、間奏曲の「ガゼル法院」です。これは厳密に言うと楽曲ではなく効果音のため、サウンドトラックには収録されていません。あの「ブオーン・・・」という重低音を、弦楽器で実に巧みに再現していました。『ゼノギアス』をプレイしたファンとしては、思わずニヤリとしてしまう演出です。

弦とピアノのみという制限をものともせず、様々な工夫を凝らして、観客を楽しませてくれたオニオン弦楽合奏団。“制限がある中での表現”という部分では、ゲーム音楽の本質に通じるものを感じました。

演奏会で筆者が特に心打たれたのは、第八楽章の「風が呼ぶ、蒼穹のシェバト」、「星の涙、人の思い」からの「夜空一杯の星を集めて」ですね。息をもつかせぬ巧みな編曲と、艶やかなピアノと流麗な弦のハーモニーが心奪われるほど美しく、心地よかったです。さらにそこから間髪を入れず演奏された、『ゼノギアス』屈指の人気曲である「飛翔」の疾走感ある弦の響きも、心を躍らせてくれました。


■『FFVI』のエドガーとマッシュも顔を出す!
この演奏会は、編曲も非常に凝っていました。筆者が特におおっと思わされたのは、第四部で演奏された「つわものどもが夢のあと」に、『ファイナルファンタジーVI』の「エドガー、マッシュのテーマ」がさりげなく入っていたことです。

『ゼノギアス』にはロニ・ファティマと、レネ・ファティマという兄弟が登場するのですが、この2人は、『FFVI』に登場するエドガー&マッシュと外見がよく似ているのです。また、「ロニ」はエドガーのミドルネーム、「レネ」はマッシュのミドルネームになります。

これは『ゼノギアス』開発当時、『FFVI』でエドガー&マッシュの設定を担当したスタッフが関わっていたことによるもので、一種のセルフパロディというわけですね。演奏会の編曲でこういったネタを仕込むところに、大澤氏の『ゼノギアス』への愛の深さが感じられますね。ちなみに、この「エドガー、マッシュのテーマ」の他にも、『FFVII』の「闘う者達」や、『クロノ・トリガー』などの楽曲が随所に隠されていたようです。


■神聖な弦の響き「最先と最後」
演奏会が終盤を迎えると、たたみかけるような演奏が展開されていきます。ラストダンジョンの楽曲である「予感」がピアノと弦で神秘的に奏でられた後は、最終ボス戦である「覚醒」。弦だけとは思えないほどの音量で、激しい戦いを思わせる演奏が繰り広げられます。続いては「神に牙むくもの」。原曲にはコーラスが入っていたのですが、その部分も弦の音色によってうまく表現されており、原曲のイメージを損なうことのない演奏でした。

続く「最先と最後」の原曲は、ブルガリアの合唱団「THE GREAT VOICES OF BULGARIA」によるコーラスが印象的な楽曲です。オニオン弦楽合奏団の演奏では、美しい旋律が繰り返し弦の響きで奏でられ、ホール内は教会のような聖なる雰囲気で支配されます。その澄みわたった神聖な音色は、邪気が払われ、心が洗われるかのようでした。ラストにしっとりと奏でられた「SMALL TWO OF PIECES ~軋んだ破片~」の演奏が終了した瞬間、盛大であたたかい拍手がホール内を包み込みました。

アンコールでは「鋼の巨人」と「まどろみ(ロングバージョン)」の2曲が演奏されたのですが、アンコールにこの2曲を持ってくるというセンスが素晴らしいですね。タムズでプレイできるカードゲーム(この2曲が使用されています)をまたやりたくなった、という方も多いのではないでしょうか(笑)。


■再会を願って……やさしく響く「遠い約束」
終演後、ホール内に流れ出す、やさしい旋律……。それは、オルゴールの「遠い約束」でした。ホールを包み込むようなあたたかい音色が、観客を見送ります。

これはCDの音源を流したわけではなく、「オルガニート」と呼ばれる手回し式のオルゴールを、実際に手で回して音を出していたとのことです。ただ単に回すだけではダメで、一定のテンポを保って回す必要があるとのことで、意外と大変なのだそうです! 最後まで『ゼノギアス』ファンの心をくすぐるニクい演出、おみそれしました。

オニオン弦楽合奏団による今回の演奏会。『ゼノギアス』の音楽を、それを好きなファンと一緒に最大限に楽しもうという、団員の皆さんのあふれんばかりの『ゼノギアス』愛がたっぷり詰まった、素敵な演奏会でした。開演前の諸注意アナウンス放送でも、「スタッフの指示に従っていただけない方は、ソイレントシステムに連行します」といった細かい『ゼノギアス』ネタが盛りこまれていたりと(笑)、『ゼノギアス』ファンとしては本当に楽しい時間でした。

オニオン弦楽合奏団は、今後も活動を続けていくようです。次回演奏会の詳細は未定ですが、また演奏会が開催される際には、ぜひ読者の皆さんも足を運んでみてください。
《hide/永芳英敬》
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