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発売直後の辻本氏と藤岡氏に訊く『モンスターハンター4』を作る上でのミッションとは ― 新要素導入の経緯も公開

『モンスターハンター4』の発売を記念して、インサイドでは先週から『モンスターハンター4』関連の記事を続々と公開してきましたが、その締めとして本作のプロデューサーである辻本良三氏とディレクターの藤岡要氏のインタビューをお届けします。

任天堂 3DS
プロデューサーの辻本良三氏
  • プロデューサーの辻本良三氏
  • ディレクターの藤岡要氏
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『モンスターハンター4』の発売を記念して、インサイドでは先週から『モンスターハンター4』関連の記事を続々と公開してきましたが、その締めとして本作のプロデューサーである辻本良三氏とディレクターの藤岡要氏のインタビューをお届けします。

――本作では高低差を利用したアクションが可能となりましたが、それは全フィールド共通でしょうか。

辻本:エリアによって使いやすい、使いにくいはありますが共通です。

藤岡:今回は全フィールドを見直しているので、旧フィールドは登場しません。

――それでは、ゴア・マガラについて教えて下さい。

辻本:『モンスターハンター』シリーズでは毎回看板モンスターがいるのですが、本作ではそれがゴア・マガラです。ゲーム中の進行や遊びの面でプレイヤーの目標となるモンスターで、今回の様々な新要素をふんだんに盛り込んだモンスターですね。様々な特徴があります。

藤岡:デザイン的に、ストーリーを盛り上げたかったので、従来のモンスターと比べても謎めいたデザインにしています。そこから「あのマントみたいに棚引いているのってなんなの?」という感じで、その特徴を『モンスターハンター』的に解釈して、「このモンスターは、目が無いから鱗粉をばら撒いて感知能力を高める」などとしていきました。そういった部分にゲーム性を絡めて、「感知能力が高まったときにどうなるの?」という考えから、生態とゲーム性に紐付けて行きました。

遊びの面では、ゴア・マガラは狂竜化するんですが、「ばら撒かれる鱗粉を避けつつ、狂竜化する回数をいかに少なくするか。」という遊びをさせようとなりました。

辻本:狂竜化した時にゴア・マガラは姿勢が変わるんですが、新たな状態異常である狂竜ウイルスを体感できるモンスターです。

――つまりゴア・マガラは、ウイルスに感染しなくても自力で狂竜化できるんですね。

辻本:ゴア・マガラは自分でできるんですよ。その辺りの謎はストーリーを進めていくと明らかになっていきます。

――その狂竜化ウイルスの発想はどこから来たのでしょうか。

藤岡:今まではモンスターの難易度が上がる高難易度クエストを遊んでもらってレアリティーの高い素材が出るという感じに設定していたんですが、難易度が高いだけという部分を見直したくて、何かモンスターを凶暴化できるステータスが作れないかなと思ったのが始まりでした。それをどのモンスターでも使えるネタとして狂竜化ウイルスを考えました。これには世界観的にも意味があって、ゴア・マガラ同様にストーリーを進めると明らかになっていきます。

――それはどのモンスターでも感染するのでしょうか。

藤岡:することは出来ますが、どのモンスターが狂竜化して登場するかはご自身の目でということで。

――アイルーの進化はどうでしょうか。

辻本:オトモアイルーの登場自体が久しぶりなのですが、今回はメインオトモとサブオトモがいるんです。それで藤岡がずっと言っていたのが、「オトモに対しての感情移入度を高めたい」と。そのため、メインオトモとサブオトモに分かれた仕様になったんです。メインオトモはずっと一緒に居るパートナーで、サブはいろいろと切り替えたり、集めることによりメインオトモをサポートします。

藤岡:メインオトモっていう存在を作ったのは、ストーリーを盛り上げる時に、個性のあるキャラクターを出したくて、それがメインオトモなんです。そのため、メインオトモはキャラクターメイキングでき、サブオトモは新要素の「トレンド」により集める楽しみを導入しました。

――久しぶりと言えば、懐かしいモンスターも復活しますよね。

藤岡:『モンスターハンター3(トライ)』の時の作り方からモンスターを見直して、ある程度整理しました。そして『モンスターハンター3(トライ)』以降は新しい顔ぶれのモンスターで遊んでもらうようにしてたんですけど、旧モンスターも人気が高く、出すタイミングを伺ってはいたんです。ただ、人気があるという理由だけで出してもゲームがマンネリ化しますし、新しい行動を足して感覚を変えることは出来るんですけど、それだけで出してもなぁと。ただ今回は、ゲームの根本に変化を与えることが出来ましたので、開発側としても「昔のモンスターを出したらどうなるかな?」という思いがあったので、古龍やイャンクックなどを復活させました。

――では、それらのモンスターから作れる武具はどうでしょうか。

藤岡:やはり武具のデザイン込みで、そのモンスターが好きというユーザーが多いので、そこはユーザーの期待を裏切らないようにしています。

辻本:ただ、性能は変わっていますよ。

――性能は見直されているんですね。では既武器の仕様面ではどうでしょうか。

辻本:高低差を利用したアクションが可能になったからといって、ジャンプボタンが追加された訳ではないので、ジャンプからの派生アクションを追加しました。でも、それだけで大分変ったよね。

藤岡:立ち回りは結構変わりますし、武器の個性は増やしたと思います。

――アイテムの仕様変更について教えて下さい。

藤岡:捕獲用麻酔玉などは調整しました。やはり高低差があると当たりにくいので、地面に当てて広範囲に効果の出る投げ方と、今までの様に投擲出来る様にしています。

――新武器の採用経緯を教えて下さい。

藤岡:採用点では、まず1種類は必ず何かを入れて出来れば2種類増やそうとなりました。まず操虫棍ですが、考える時は自由な発想で、モンハンらしいユニークな武器を求めました。そこで「虫」に至ったわけです。昔から細々と「虫使い」みたいな設定とかの資料はあったので、今回はそこに踏み切ろうと。作ってみると、アクション自体は爽快なのですが、猟虫を使うなど結構テクニカルな武器となりました。そこでもっとストレートな武器が欲しいとなって「合体」をキーワードにチャージアックスを作りました。

辻本:操虫棍の猟虫は、エサを与えることにより育てて進化させていけるんですけど、蝶々やテントウムシなど様々な外見の猟虫がいます。

――武器の他にも、モンスターに乗るって攻撃できるようになりましたよね。

藤岡:開発的にも生理的に乗ってみたいというのが昔からあったんです。そして今回ジャンプ攻撃が可能になって、それを当てたときに見返りを付けたくて、このシステムが産まれました。これによりゲームのテンポや戦略性が変わったりしましたね。

辻本:「乗り」は皆やりたがるんですよね。なお、製品版ではRのしがみ付きを離さなくても攻撃できるようになっています。

――PVでマップの崩落がありましたが、あれはムービー上の演出でしょうか。

藤岡:あれは、ある一定の条件を満たすと実際に崩落しますよ。

辻本:また段差があったのに崩されてなくなるってこともあります。

――本作では、かなりストーリーに力を入れているようですが。

藤岡:アクションを少し見直そうとか、コミュニケーション要素を見直そうといったコンセプトを複数立ち上げたんですが、その1つが世界観です。ゲーム的な考え方をすると、オフラインだけでプレイする人もまだまだ多いので、ストーリーを用意して『モンスターハンター』の世界観に没入してもらうことは必要だと前々から考えていました。今までは、村に放り出されて、クエスト行っては戻っての繰り返しでしたが、そこにダイナミックな演出が入ったり、シチュエーションを変えていくことは出来ないので、本作はストーリーを作りこみました。

――村も複数個所いけるんですよね。

藤岡:これも「『モンスターハンター』にはこういう村があって、こういう民族がいるんだよ。」というのを知ってもらいたいなと言うのが始まりです。今まであえて「冒険」というキーワードを使ってこなかったんですけど、このキーワードを軸に「キャラバン」を作りました。今までは村長に雇われるんですけど、今回はキャラバンの団長に雇われるんです。

――PVではNPCが登場するイベントムービーの一部を見ることが出来ますが、ストーリーは村以外でも進行するのでしょうか。

藤岡:その通りです。これは今までの『モンスターハンター』シリーズにはなかった試みです。

――ところで、バルバレとはどういう場所ですか。

藤岡:ど真ん中に集会所があるんですけど、そこを中心にいろんなキャラバンが集まって来ます。なので、集会所が移動すれば、キャラバンが集まる場所も変わるので、特定の住所を持たない集落というイメージです。

――そんな設定があったんですね。他に裏設定などはありますか。

辻本:実は、団長は帽子の中に大事な物を隠しているんですよ。

藤岡:裏設定ではないんですけど、序盤だと団長が持っている謎のキーアイテムがあって、その謎を解くためにキャラバンメンバーを募集して旅をしているんです。それで、団長は大事なアイテムは帽子の中にしまう癖があるんですが、プレイヤーと出会ってそうそうに帽子が飛ばされてしまうんです。それを団長は、プレイヤーに取ってこさせるんです。

辻本:普通なら「たかが帽子やろ」って思いますよね(笑)

藤岡:で、帽子を見つけてアイテムもあって、よかったよかったと。またストーリーの中では見えない設定も、村でのNPCとの会話で知ることが出来ます。そのためストーリーを遊び尽くした後も、キャラクターに触れて世界観を紐解いていって欲しいですね。

――ではボリュームも相当あるんですね。たしか、シリーズの中でももっともボリュームがあるとか。

辻本:ボリュームっていう意味が繰り返し遊ぶという意味ならかなりあって、もちろん普通に遊ぶ面でもかなりあって、少なくともシリーズ至上最高レベルではあります。中に入っている質量やユーザー間のコミュニケーションで展開していく面白さは本作がもっともボリューミーだと思います。

―本作のキャッチフレーズとして「進化したのはハンターか、モンスターか」というのがありますが、進化というのはモンスターが強くなったと言う意味でしょうか。

藤岡:地形に適した対応や、今までやってこなかった対応をやってくるだけではなく、今までは段差上がったら一息つけた場所でも上ってくるんで、強い弱いではなく幅が広がった感じですね。

辻本:今まであったものが良くなったと言うよりも、なかったものが実装された感じです。例えば「向こうに飛びたいのに飛べない」というのが飛べるようになったら進化じゃないですか。つまりはそういうことです。

――待望の続編ということで、本作を作る時に何かミッションはありましたか。

藤岡:新しい感覚で楽しめる『モンスターハンター』を作らないとなぁと。それは、あくまでも『モンスターハンター』じゃないといけないし、進化した『モンスターハンター』でもある必要があるので、そのバランスを正しく見極めることですね。

辻本:シリーズをずっと作ってきているので、弱気にならないことですね。新しい試みをすると不安になったりするんですけど、そこはスタッフを信用しているので『モンスターハンター』のままステップアップするという思いの元、何を言われても前に進む意思を持ち続けることでした。

藤岡:他にも辻本から言われたのが、「新しい要素は入れてもいいけど、古い要素はなくしちゃ駄目」ということです。そのため高低差を入れた影響であれができなくなったでは駄目なんです。つまりは、今までの形を残しながら新しい要素が違和感なく入ってくる『モンスターハンター』を作ることがミッションでした。

――1作目の発売から9年が経ちましたが、シリーズ開発の発端は「オンラインゲームを作る」でしたよね。

藤岡:オンラインゲームの捉え方次第なんですが、ユーザー間のコミュニケーションから広がるゲーム性や世界観がオンラインゲームのいいところだと思うんですよ。それはいわゆる無印からやって、携帯機による新しい広がり方を経験しました。そのため、ずっとオンラインゲームを作っている感覚ですね。

辻本:オンラインゲームを目指したからこそ、知らないうちにいろいろ経験していて、例えばダウンロードクエストとかって1作目からやっていますし、発売後のサービス展開ってオンラインゲームと同じなんです。

藤岡:なので、ずっとローカルで遊んでもらっていますが、それもある意味オンラインゲームなんですよね。ハードは進化しても、根本は変わっていません。

――最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。

辻本:開発スタッフのみんなが本当に踏ん張ってくれたおかげで、良い内容に仕上がりました。今回の『モンスターハンター4』はアクション要素を強く伝えていますが、シングルやすれちがいなど様々な要素を入れているのでそれを感じて欲しいです。

藤岡:長らくお待たせしましたが、その分短い時間では語りつくせないぐらいの要素を入れていますので、コミュニケーションツールとしてどれぐらい広がるか我々から見ても未知数です。なので、ユーザーがどのような楽しみ方をするか開発側としても楽しみですので、『モンスターハンター4』を一緒に楽しみましょう。

――ありがとうございました。

『モンスターハンター4』は発売中。価格は通常版が5,990円(税込)、数量限定の「モンスターハンター4 スペシャルパック」(オリジナルデザイン本体同梱)が各26,000円(税込)です。

(C)Nintendo
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《栗本 浩大》
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