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【CEDEC 2013】家庭用ゲームでのFree to Playの形~『機動戦士ガンダム バトルオペレーション』

B.B.スタジオの神戸氏、近藤氏、バンダイナムコ桑原氏は、PSNで配信されているPS3専用タイトル『機動戦士ガンダム バトルオペレーション』について「家庭用ゲーム機でFree to Playゲームを開発したらこうなった! ~バトオペの事例~」と題した講演を行いました。

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株式会社B.B.スタジオの神戸秋義氏、近藤亮次氏、株式会社バンダイナムコゲームス桑原顕氏は、PlayStation Networkで配信されているプレイステーション3専用タイトル『機動戦士ガンダム バトルオペレーション』について「家庭用ゲーム機でFree to Playゲームを開発したらこうなった! ~バトオペの事例~」と題した講演を行いました。

『機動戦士ガンダム バトルオペレーション』は、2012年6月に正式サービスを開始した基本無料のいわゆるFree to Playと呼ばれる形式の対戦型アクションゲームです。当初、パッケージゲームとして開発されていた本作は2010年のアルファ版の完成を期に販売方式の検討に入ったといいます。この頃、業界は家庭用ゲーム機におけるダウンロードコンテンツの売上にたしかな手応えを感じていたそうで、携帯電話向けの『ガンダムカードコレクション』の好調による後押しもあり、Free to Playを選択したと神戸氏は話します。

そんな本作の課金体系の基本コンセプトは「お金を使ったプレイヤーが、そのほかのプレイヤーから反感を買わない」というものです。というのも『機動戦士ガンダム バトルオペレーション』は対戦型のゲームであり、ゲームテクニックを無視して支払った金額によって勝敗が決してしまうようなことを避ける必要があったからです。支払った額でプレイヤーの強さが決まってしまうと、お金を払っていないプレイヤーは自身の負けに納得しづらくなります。さらにそういったほかのプレイヤーからの反感を買ってしまうを恐れ、支払いを考えているプレイヤーまでもが課金をしづらくなってしまうということもありえます。

そこで神戸氏は「出撃エネルギー」というアイテムを採用しました。これはゲームをプレイするための仮想コインのようなもので、ゲームを遊ぶのは一定回数まで無料ですが、「出撃エネルギー」を購入することでさらに遊ぶ回数を増やせるというものです。これによってゲームをたくさん遊んだ人ほど強くなる、という対戦型ゲームの自然な図式を維持することができます。この図式はゲームセンターでアーケードゲームをプレイする感覚に近いうえに、さらに本作では1日あたり1時間弱を無料でプレイすることができます。したがって、本作を遊ぶのはゲームセンターより経済的であると神戸氏は分析します。

「出撃エネルギー」の導入に加えて、神戸氏が意識したことはいくつかあり、ゲーム内のそのほかの部分で支払いを必須のものとしないこと、プレイを重ねた先には必ず何かしらの報酬が与えられることを挙げました。実際に本作では、強さに影響しないモビルスーツのカラーやパイロットカラーを変更する機能は、階級に応じて自動でアンロックするようになっているのだそうです。今では「出撃エネルギー」が『機動戦士ガンダム バトルオペレーション』の売上の70%を占めるようになり、とあるメディアの調査したデータでは、PlayStation Nextworkのコンテンツごとの売上で1位を獲得するほどの売上であったとのことです。

そこで気になる残りの30%の売上ですが、これは既存のFree to Playのタイトルにあるような経験値ブーストや性能の高いユニットの売上が占めています。ただし、これらは既存のそういったアイテムとは異なる、と神戸氏は説明します。

本作ではブースト系と称されるような成長促進効果アイテムは、普段は購入したプレイヤーにしか影響がありませんが、対戦の勝利時のみ周囲のプレイヤーにも影響するようになっています。これによってアイテムの購入は周囲のプレイヤーから感謝される要素となりえること、また、この仕組み自体が勝利とゲームプレイへのモチベーションへと繋がっているとのことでした。

高性能ユニットの販売についてもユニットを直接販売することは避けています。ユニットを購入するためにはプレイを重ねて設計図を入手する必要があり、たくさんのモビルスーツを所持しているプレイヤーはあくまでも「ゲームをたくさん遊んだプレイヤーである」という印象になるように工夫したとのことでした。

さらに神戸氏は『機動戦士ガンダム バトルオペレーション』のプレイヤーを対象として行った定性調査の結果を参照しました。すでに本作においてお金を支払ったプレイヤーを対象としたこの調査によると、無課金でもモビルスーツや装備といった基本的な要素がすべて入手できる点が魅力として受け取られているほか、いわゆるガチャにありがちな無駄な投資が起こりづらいことなどが本作の好意的なイメージに繋がっているそうです。

また、課金によって単純に強くなるシステムに変更したらどうか、という問いに対してはほぼ全員が否定的な反応を示しており、その理由として苦労してユニットを手に入れたほうが楽しい、レベルをコツコツと上げていく過程が楽しいといったことを挙げていたようです。

最後に神戸氏は『機動戦士ガンダム バトルオペレーション』が成功したことについて、「ぶっちゃけガンダムであったから」という理由を挙げました。しかし、実際にはガンダムだけが成功要因だったわけではなく、お金を払ったプレイヤーがそうでないプレイヤーの反感を買わないように注意し、課金によってのみゲーム要素が拡張するようなことを避けたことが大きかったのではないか、と本講演を締めくくりました。
《千葉芳樹》
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