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【CEDEC 2013】翻訳家の「推測」をなくして、質の高いローカライズを

日本と欧米のゲーム開発の"架け橋"を目指す、架け橋ゲームズ(Kakehashi Games)の矢澤竜太氏とザック・ハントリ氏は「翻訳者が欲しい情報とその理由: 開発者にできる事とするべき理由」と題した講演を行いました。

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日本と欧米のゲーム開発の"架け橋"を目指す、架け橋ゲームズ(Kakehashi Games)の矢澤竜太氏とザック・ハントリ氏は「翻訳者が欲しい情報とその理由: 開発者にできる事とするべき理由」と題した講演を行いました。

矢澤氏はフリーランスでゲームの翻訳家として活躍した後、サイバーコネクトツーでローカライズ業務に携わりました。ザック氏はゲーム業界16年というベテランで、ゲームデザイナーでありアナリストです。

矢澤氏はまず、ゲームのローカライズにおける解決すべき3つの問題点を挙げました。これらはこの業務に携わっている人なら誰しも遭遇するような問題でしょう。

・一番忙しい時にローカライズバグ修正が山ほど上がってくる
・低品質な翻訳がゲームの評価に影響する
・協力しているのに翻訳品質に反映されない

これらは非常に複雑な問題に思えます。しかし矢澤氏は根本的な原因は「ローカライズチームの誰かが推測している」ためではないかと提起しました。例えば、ある海外製ゲームの日本語吹き替えに参加した声優さんが「どんな場面で使われるか分からず苦労した」とインタビューで述べたそうです。これは推測の一例です。単純なテキストにおいても、どういう場面で、どういう感情で、どういう関係性で発せられた言葉なのか、推測で翻訳が行われる場面は少なくないでしょう。そして推測で行われた仕事は上手く行ったとしても、ほどほどの品質以上にはならないはずです。

ここでの問題は翻訳者が与えられる情報の不足です。幾つかのパターンが紹介されました。「(1)話し手/聞き手の性別と数」「(2)省略された主語/目的語」(言葉遊びのような)「(3)タイトル固有の専門用語」「(4)ビジュアルを伴うテキストの詳細」「(5)更新前のテキスト」です。

(1)~(3)は言葉の背景説明の不足と言えます。例えば(1)ではイタリア語の「Bravo」が例に挙げられました。賞賛を表す言葉ですが、実は向けられる相手の性別、単数か複数かで「Bravo」「Bravi」「Brava」「Brave」と変化するそうです。(1)の情報が無ければ正確に訳すのは不可能です。これを回避するためには翻訳用のデータに項目を追加すれば理想です。現実的には絵コンテや台本を提供するという手段が考えられます。重要なシーン、例えばカットシーンの箇所だけでも追加のデータを提供できればユーザーの満足度を上げる翻訳が可能になりそうです。

(3)の専門用語は用語集を作るのが最適解ですが、ゲームデザインドキュメントの提供、開発Wikiへのアクセス権の付与なども良いのではないかとのこと。矢澤氏によれば、「アルティメットダッシュ」「マーベラスダッシュ」といった用語があった時に、「Ultimate Dash」「Marvelous Dash」というように直訳されてしまうケースが多いそうです。この2つの用語を、その国に最適な言葉に置き換えるためには、やはり用語の背景や技の効能を翻訳家は知る必要があります。

(4)は「ほげほげヘルメット」や「筆記用具」といったアイテム名で起こる問題です。画像が提供されないと翻訳家はイメージで翻訳をするしかありません。ヘルメットがどんな計上のものなのか、筆記用具はペン単体なのか用紙や定規などが含まれるのか、想像することになります。ベストなのは画像を提供することです。

(5)は少々機微な問題で、何度も修正が入るようなケースです。「原文が変わったので、翻訳も変えてください」というリクエストは多々あることだそうです。そうした際に更新前の原文が提供されない場合が多く、差分を確認せずに翻訳することになるケースがあるそうです。これも翻訳品質を落とす結果になりそうです。理想的には管理ツールで自動的に表示されるようになれば良いですが、現実的にはExcelのマクロを組んで簡単に確認できるような形が良いでしょうか。

以上、幾つか翻訳者に「推測」を強いるケースが紹介されました。もちろん、ローカライズは一方向の仕事ではありませんから、不明な点があれば尋ねるというアプローチもあるはずです。しかし矢澤氏は「大規模なプロジェクトになれば疑問点は莫大な数になり、都度回答を求めるのは現実的ではありません。本当にどうしようもない点だけ訪ね、後は無難な翻訳をすることになりがちです。また、ローカライズは大抵が非常にタイトなスケジュールで、時間的な制約からも現実的ではありません」と話していました。

矢澤氏はまた、こうした現実を改善するために用意すると良い幾つかの資料をサンプルを交えて紹介しました。用語集は海外のAAAタイトルなどでは一般的に用意されているようです。また、動画やスクリーンショットも翻訳家がゲームを理解するために有益だとのこと。概要ドキュメントのようなものも必要でしょう。

矢澤氏は業務フローの変更は抵抗を受けやすいとして、「すんなり承認される規模から始めよう」と呼び掛けました。これはGDCのローカリゼーションサミットでもよく聞かれた言葉だそうで、小規模に改善を行い、成果を明確にしてから大きく広げるアプローチが良いのではないかとのこと。ゲーム開発の規模が拡大する中で、理想的な体制を作るのは難儀な事業ですが、まずは現実的に少しでも品質を改善するための現実的な施策をと呼び掛けていました。
《土本学》
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