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enchantMOONに込められた清水亮氏のプログラミング哲学…黒川塾(十壱)レポート

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enchantMOONに込められた清水亮氏のプログラミング哲学…黒川塾(十壱)レポート
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7月26日、サイバーエージェント・ベースキャンプにて黒川文雄氏が主催する「黒川塾(十壱)」が行われました。今回はゲストに株式会社ユビキタスエンターテインメント代表取締役社長の清水亮氏を招き、「全人類プログラマー化計画のすべて」というタイトルでトークショーが行われました。

「人類プログラマー化計画」とは、5月20日に行われた「黒川塾(九)」で清水氏が発表した計画です。ユビキタスエンターテインメントが開発するプログラミング学習のためのゲーム開発フレームワークenchant.js、さらに先日、出荷されたenchantMOONと常に野心的な試みを見せる清水氏の活動の根底にあるのが、「プログラム(program)」に関する独自の哲学です。

今回はこの思想をより深く紹介するために開かれましたが、トークは脱線を含めて大波乱の内容になりました。残念ながら、多くの興味深い裏話は記事では触れられませんが、それらを除いても清水氏の一貫した「プログラミング哲学」は十分に興味深い内容でした。

■プログラムとは何か?清水氏の哲学
黒川氏に紹介されて登場した清水氏は、いきなり参加者に謎の封筒を配り始めました。中には清水氏のポケットマネーから工面された3000円が入っており、「今回のトークが面白くなかったら帰ってもらって結構です」と大胆な発言を行いました。これはイベント前に黒川氏が清水氏の集客力に愚痴をこぼしたことへの反抗でもありましたが、実際には今回のテーマである「プログラム」について来場者に考えを深めてもらうための実験でもありました。

つまり、人々が通常価値と考えている「紙幣」は、実際にはただの紙切れであり、その価値が成り立つためには、法制度や慣習といった「プログラム」が必要だというわけです。集客を嘆いている黒川氏は、清水氏にとっては「お金というプログラムに洗脳されている」だけだと一刀両断。他方で、人間は法律や倫理といった様々なプログラムによって縛られており、社会生活を営むためには避けることはできないと説明しました。

波乱に満ちたオープニングでしたが、ここから清水氏のプログラムに関する哲学が説明されました。「プログラム(program)」とは、語源的にはギリシア語の「公文書」に由来しており、清水氏によれば時代の特権階級が民衆を支配するために作った文章を指します。我々の社会生活における宗教儀式、法制度などもこの観点からはプログラムと考えることができ、それらは事実として人々をコントロールしています。

オープニングで参加者に与えられた「紙幣」といった貨幣もまた、本来的には無価値のものですが、我々はその価値に疑いを持つことはありません。もちろん、通貨には過去に貴重な素材である金と交換が可能であるという「金本位制」によって価値の担保が存在していました。しかしながら、現在では「金本位制」は崩壊しており、貨幣は純粋に発行者の信用によって成り立っています。よって、清水氏の立場から言えば、貨幣とは社会に存在するプログラムによって価値が生じているというわけです。

また貨幣制度以外にも興味深いプログラムの事例が紹介されました。ひとつはITの発展法則として有名な「ムーアの法則」です。半導体の集積回路は18~24ヶ月ごとに倍増するというこの法則は、経験則としてある程度、通用してきました。しかしながら、実はこの法則には根拠はありません。

「ムーアの法則」を提唱したのは、米インテル社の共同創業者であるゴードン・ムーアであり、これは法則というよりインテルにおける目標達成のための指標であったと、清水氏は説明します。とはいえ、そのような単なる目標であった「ムーアの法則」がある程度まで実現したことこそ、清水氏が考える「プログラム」の本質です。

次の興味深いプログラムの事例として、アメリカの発明家レイ・カーツワイルが提唱した「収穫加速の法則」が説明されました。半導体進化の法則であった「ムーアの法則」に対して、「収穫加速の法則」はその生物・文明の進化におけるバージョンだそうです。カーツワイルは、生物史・人類史における重大なイノベーションであった「キーイベント」を時間軸上にマッピングすると対数グラフで表せることに気づきました。つまり、文明の進化のスピードは、指数的に加速していることになります。

清水氏がこの「収穫加速の法則」をどの程度、法則として認めているかは分かりませんが、話の流れから言えば、これもまた「プログラム」というわけでしょう。つまり、特別な根拠はなくとも、人類の進化は今後も指数的に加速するように「仕組まれている」というわけです。

清水氏は植木等の「無責任シリーズ」、松田優作の「蘇る金狼」、舘ひろしと柴田恭兵の「あぶない刑事」といったドラマシリーズを例に人間の仕事がいかにコンピュータに置き換わったかを振り返りました。今から振り返ると驚くべきことですが、無責任男こと植木等が最初に正社員として働いた業務内容は「宛名書き」だそうです。現在に置き換えると、Eメールのアドレスを書くだけの仕事ですが、当時はそれが人間のやる業務内容だったのです。

このようにコンピュータの指数的な進化のスピードは、圧倒的な時間短縮をもたらします。清水氏は1890年のアメリカ国勢調査で人力での集計からパンチカードシステムに変更することで8倍以上の時間短縮に成功した事例を挙げながら、コンピュータによる圧倒的な時間短縮を説明しました。人間が2分かかる100マス計算は、現在のコンピュータではたった25ナノ秒で終わり、おおよそ48億倍の時間短縮です。

このようにコンピュータが登場した後の人類の進化はまさに思考が加速していく現象と捉えることができます。このような現代において、プログラムに一方的に支配されるのではなく、自身でもプログラムを扱えるかどうかが、今後の人間にとって非常に重要な能力になると清水氏は指摘しています。そして、ここでの「プログラム」とは、いわゆるコンピュータプログラムに限らず、物事の本質を見極め、合理的に解決することであると、清水氏は具体的な例と共に説明しました。

■プログラマーからみた黒川塾のイベント戦略
清水氏が具体例として上げたのは、なんと本イベント「黒川塾」の戦略についてです。今回のテーマは「全人類プログラマー計画」というものでしたが、これだとプログラマーにしか興味を持ってもらえないと、清水氏は黒川氏に厳しい指摘を行いました。

それに変わって、黒川氏と清水氏に現在関心を持つ顧客のニーズの中から共通項を見出してくると、「クラウドファンディングとenchantMoon」が持ち上がってくると、清水氏は指摘。実際に黒川氏はゲームプロジェクトの「モンケン」での資金調達、清水氏はenchantMoonの先行予約販売でお互いに似たような苦労をしているため、「クラウドファンディングの理想と現実」というテーマが顧客にはキャッチャーに響いただろうと、清水氏は分析しています。

このようにイベント中にイベント戦略について分析するというなんともアクロバットな展開でしたが、清水氏の主眼はこの時の思考法にあります。このような「共通点を見つけて、まとめる」という技法を、清水氏は「プログラマー秘技48の3」と名付け、組織の編成・運用、戦略・企画の立案などに効果を発する重要なスキルだと説明しました。

このような「プログラマー秘技」は他にもたくさんあり、清水氏はenchantMoonの製造の監督のために中国へ行っていた際に本として書いていたそうです。これは余談になりますが、清水氏の中国生活はインターネットなどの娯楽も遮断され、ひたすらジムでトレーニングするか、自分で本を書いてコンテンツを作るくらいしかやることがなかったそうです。

■機械と機械がコミュニケーションを行う未来
しかしながら、人類がこのようにプログラマー的な思考を行えたとしても、それは社会や世界のプログラムから完全に解放されることを意味するわけではないと、清水氏は指摘しています。というのは、現在のコンピュータの進化は圧倒的であり、いつかは機械同士がコミュニケーションを行うような時代がやってくるというからです。

オルダス・ハクスリーのディストピア小説『すばらしい新世界』などを例に挙げながらも、清水氏は「Augmented Human」や「受動意識仮説」といった人間と機械の新しい関係についての思想を説明しました。「Augmented Human」とは、端的に言えばサイボーグであり、人間の知性や身体能力を機械によって拡張する試みです。他方、「受動意識仮説」とは、慶應大学理工学部の前野隆司教授が提唱する人間の意識についての仮説です。それによれば、自由意志とは実際には幻想であり、我々の行動に対する後付として発生するものだそうです。

このように「Augmented Human」や「受動意識仮説」といった思想によれば、機械と人間の境界は日々曖昧になってきています。そのような現状において、人間が機械に対して唯一、抗う手段がプログラムを使いこなすことであると、清水氏は自身のプレゼンテーションを締めくくりました。

以上、今回の黒川塾では、清水亮氏のプログラムについての哲学が多くの脱線と共に詳細に語られました。冒頭でも述べたように、記事にはできない裏話も多くありましたが、そちらに興味がある方は実際のイベントに足を運ぶことをおすすめします。

enchantMoonの出荷の対応という多忙な中でも、常にサービス精神旺盛に会場を沸かせた清水氏に対して、来場者たちはオープニングで配られたお金を返却することで応えています。その光景は、お金というプログラムから来場者たちを解放する一方、「人類プログラマー化計画」というまさに新たなプログラムで清水氏が会場を魅了(enchant)する瞬間だと思えました。
《今井晋》

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