映画館での5.1chサラウンドの仕組みは、前面中央・前面左右のフロントスピーカー3本、背面左右のスピーカー2本、低音用のサブウーファーといったシステム。前からの音声だけではなく、後ろに配置したスピーカーの効果により、会場そのものを音で包囲してしまおう、という考え方だ。スピーカーを増やすことでチャンネル数は増加し、現在では背面スピーカーをさらに中央に1本追加した6.1chも主流になっている。これによって、より「音の移動感」が出しやすくなり、まろやかに音が取り囲むようになったのである。そもそも、ホームシアターという言葉が広く浸透し始めたのは、5.1chサラウンドを可能にしたDVDソフトが市場に出回り始めた90年代後半から。家庭用に小型化したシステムが各メーカーから発売されたものの、設置と導入だけで手間がかかり、普及が進んだとは言いがたい。
何とか簡単なスピーカーシステムでサラウンド環境を作れないものか――ヤマハはこの開発を2000年代初頭から始めた。そして2004年12月に発売を開始したのが「YSPシリーズ」だ。「YSPシリーズ」には、「ビームスピーカー」という小型スピーカーがびっしりと埋め込まれ、そのひとつひとつを制御することにより“音のビーム”を作り出し、音をななめ方向に飛ばすことができる。それが部屋の壁に跳ね返りサラウンド空間を実現する、というわけだ。サラウンドは7.1chに対応する。これによって、家庭で使用するフロントサラウンド商品でも映画館並みの音場を体験できるようになった。
■「設置の簡単さ」と「壁面反射サラウンド」が大きな魅力
ヤマハの「YSPシリーズ」は、「デジタル・サウンド・プロジェクター技術」を採用する。これは、フロントのみにスピーカーを設置しながら音をビーム化し、壁面に反射させることで、リアルなサラウンドを作り出すホームシアターシステムである。「YSPシリーズ」は何と言ってもその設置性の高さがポイント。大型テレビとテレビ台を既に備えている場合、フロントサラウンドスピーカーをテレビの前面に置くだけで完了だ。スピーカーはスリムでインテリアにマッチするデザインだけに、これまでの環境に干渉しない。背面の配線は、システムとテレビをHDMIケーブルでつなぐだけ。もちろん、3D映像・音声伝送対応のHDMI端子も備えている(エントリーモデルの「YSP-600」は非搭載)。
今回、ここで紹介するのは主力機の「YSP-2200」(実売価格は89,800円前後)。このシリーズのみ、バー状のフロントスピーカーとサブウーファーからなる2体1組のユニット(他はすべてフロントスピーカーのワンボディスタイル)。かつてのホームシアターからは想像できないコンパクトなボディで、幅944×高さ79~89×奥行き145mmの非常にスリムなボディが特徴だ。他のYSPシリーズ製品と比較してみると、高さがぐっと抑えられており、実際に設置してるとラックの上に置いてもテレビ画面を遮ることがなく、テレビインテリアとしてもマッチする。このスリムなボディに、直径28mmの小型スピーカーが16個が横並びに埋め込まれているという。
これらセンターユニットとサブウーファで7.1chサラウンドを実現しているが、その効果を最大限に生かすため、音響測定・最適化技術「インテリビーム」を搭載している。前回の「YRS-1100」の紹介時にも説明したが、設置する部屋に合わせてビームの向き・音質を設定する技術で、付属のマイクを使うことで自動設定してくれるスグレものだ。なお、ドルビーTrueHD、DTS-HD Master Audio、マルチチャンネルPCMに対応するなど贅沢な仕様となっている。
このようなスピーカーシステムやAV機器で初心者が思い浮かべるのが、配線の複雑さだ。「YSP-2200」はHDMIケーブル1本でテレビ音声を楽しめるオーディオリターンチャンネル(ARC)に対応。HDMIのリンク機能にも対応しているため、大手テレビメーカーのテレビリモコンで、YSPの電源ON/OFFと音量調整や入力切替が行なえる(一部機種を除く)。
■「YSPシリーズ」の視聴結果は?
「YSP-2200」についても、前回の「YRS-1100」と同様にヤマハの特別室で視聴してみた。視聴にはBlu-rayディスクを選択し、アニメ「カーズ」、アクション映画「ダークナイト」を聴き比べてみた。
「カーズ」のディスク仕様は、HDオーディオ対応の6.1chサラウンド。アニメの場合、もちろん音は後から重ねていくわけだが、「YSP-2200」で聴くと細やかな音の配置がよく分かる。内容は車を擬人化したストーリーで、まずはカーレースでのドップラー効果(車が過ぎ去る際に音が変わること)がよく聞こえる。セリフと効果音の分離が非常にクリアで、それぞれの音が鮮明に耳に入ってくる。これによってBGMが絶えず流れているシーンでも、主人公の動きに集中しながらストーリーを追っていくことができる。エンジンのブースト音も迫力があり、ここにサブウーファーの効果が出ていると感じた。
それ以上に感動したのが5.1chサラウンド/HDオーディオ対応の「ダークナイト」だ。同作品は音作り評判がよく、1つ1つの「音のこだわり」が半端ではない。バットマンとジョーカーの鬼気迫るカーチェイスシーンを中心に視聴。バットマンの特製バイクのタイヤがきしむ音、エンジンをかける音やエンジン音、ヘリコプターが墜落する音、トレーラーが横転する音、そしてもちろん、銃撃の音などなどが、ごく自然にサラウンドで迫ってくる。単に画面を追うだけでも緊張感溢れるシーンの連続なのだが、それに輪をかけて芳醇な音のかたまりが迫り来る。正しく映画館にいるようにぐいっと引き込まれてしまいホームシアターの醍醐味を堪能した。
【変わるテレビライフ(Vol.3)】インテリアとしてもマッチ!薄型テレビの前に設置可能な「YSP-2200」
《小口@RBBTODAY》編集部おすすめの記事
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