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TPSの形をした日本的アクションの最新形態『VANQUISH』稲葉敦志プロデューサーに聞く・・・中村彰憲「ゲームビジネス新潮流」第11回

三上真司氏は『バイオハザード』シリーズの生みの親として、また『バイオハザード4』で、シリーズの雰囲気はそのままに、欧米で主流になっていた、FPS、TPSといったアクションシューティングゲーム的要素を加えながら新境地を切り開いたクリエイターです。

ゲームビジネス 開発
TPSの形をした日本的アクションの最新形態『VANQUISH』稲葉敦志プロデューサーに聞く・・・中村彰憲「ゲームビジネス新潮流」第11回
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三上真司氏といえば、『バイオハザード』シリーズの生みの親として、また『バイオハザード4』で、シリーズの雰囲気はそのままに、欧米で主流になっていた、FPS、TPSといったアクションシューティングゲーム的要素をうまく加えながら新境地を切り開いたことで知られる世界的なクリエイター。

その三上氏の最新作がこの『VANQUISH』です。以前から期待していたこともあり、作品をさっそくプレイ。近未来、スペースコロニー、ロシア対アメリカという往年のハリウッド製アクション映画や、日本のSFアニメで培われた文脈を継承しつつ、先端技術やCG、VFXをふんだんに用い、壮大なスケールとリアリティでプレイヤーを圧倒します。

ただし、実際にコントローラを握ってプレイして実感したのは、『VANQUISH』は紛れもなく純正の国産アクションゲームである、ということです。一見、欧米的なシューターでありながら、筆者が感じたこの日本的な感覚はどこから来るのかを確かめたくなりさっそく大阪にあるプラチナゲームズを訪問。同作品のプロデューサーである稲葉敦志氏を訪ねました。

稲葉プロデューサー


―――まずどのようなきっかけで『VANQUISH』が生まれたのか教えてください。

稲葉敦志(以下、稲葉):開発がスタートしたのは2年半位前ですね。『BAYONETTA』の開発がピークを迎えていた時期なので。最初に三上ディレクターから、宇宙を舞台にした、具体的にはスペースコロニーを舞台としたゲームをつくりたいという企画があがって、そこに僕らの経験をベースに何か新しいモノを生み出していこうという気持ち、そして会社としてこれまでチャレンジしたことがないシューターをやってみようという思いが重なりあい、最初のドロドロとしたアイデアの塊のようなものが生み出されたという感じで開発がスタートしました。

開発チームとしては最終的にはのべ70-80人位の体制になっていました。コンポーザーとして『killer7』『ゴッドハンド』の楽曲を担当した高田雅史氏や、キャラクターデザインとして『戦国BASARA』シリーズで数々のメインキャラクターをデザインした土林誠氏といった外部のクリエイターの方も参加しています。

―――ソビエト連邦が解体されている未来において敢えてロシアとアメリカ間での対立構造を持ち出したわけですが、それを説明するうえでどのような工夫を凝らしたのでしょうか?

稲葉: 実は当初はもっと複雑な世界観だったんです。いろんな国の間に対立構造があって、みたいな。で、宇宙で決着をつけるというストーリーを構想していたのですが、やはりいまいち分かりにくいというのがあって、ここの構図はシンプルにしたほうがいいよねという意見が、当社の国内スタッフならびに外国人スタッフ双方からありました。それで、最終的に「古き良き構図」とも言える、一番誰もが理解できる大国対大国といった構図にしたんです。近未来だからといってそれに合わせた世界構造を考えても誰もがなじめるわけではありませんから。同時に、本作はロシア人が国としてアメリカと対立しているというよりは、一部の過激派が引き起こした事件としているのでロシアに対して悪意を感じさせることはありません。プロモーションなどで、ロシア人も関わっているのですが、非常に楽しんでやってくれていますよ(笑)。

■日本アニメや往年のハリウッド映画で培われたストーリテリングの文法を『VANQUISH』で生かす

―――スペースコロニー内部の巨大さには圧倒されました。登場するステージもバラエティ豊かですよね。

稲葉:もともと、巨大なシリンダー形であるコロニーは生かそうと思っていました。大自然ではなく巨大な人工物の雄大さを出したいという思いがあったので。ただ、人工的な建築物だけだと飽きると思うんです。特に宇宙を舞台にしたりすると同じ様なシーンが続いてしまうので、変化は絶対に必要ですね。「宇宙」というテーマを最初に印象づけているからこそ、森のシーンが逆に生きるんです。そして森のシーンを潜り抜けた後の宇宙的シーンがより印象深いものになる。同時に、『ガンダム』の宇宙世紀のようなアニメ的な文脈で育ってきたひとたちも、SF映画の中で育ってきたひとたちにも理解してもらいたいのでこれらの人たちがスペースコロニーに感じる文脈はしっかりと押さえたつもりです。

巨大なコロニー


―――主人公サムが装着する特殊スーツ(ARS)のデザインも非常に先鋭的なのですが、これについては、三上氏も日本アニメからインスピレーションを得たとおっしゃっていましたね。

稲葉:アニメ版「新造人間キャシャーン」です。僕らのスタッフは、リアルタイムではないにしても「キャシャーン」を知っている世代がメインなんです。子供の頃に見たカッコ良さ、僕らの血となり肉となっているカッコ良さを追求しようとした結果として「キャシャーン」が選ばれました。ブーストを随所に入れられる設定も三上ディレクターが様々なメディアで語っているように、「シューティングときどきキャシャーン」を地でいってます(笑)。

普通のシューティングゲームのテンポは本作と比較して割とゆっくりとしたテンポになります。カバーして敵弾を逃れ、攻撃して、カバー、といった繰り返しで、点と点を結ぶようなゲーム展開ですが、『VANQUISH』はステージを面として使ったゲームプレイが出来るアクティブなものになっています。従来のシューターにこの側面を加えたのがゲームデザインとしての変革だと思っています。

特殊スーツ


―――ブーストなどに見られるような日本的アクションゲームの爽快感とシューターの醍醐味が見事に融合していますが、この辺のバランスはどのようにつくりあげてきたのでしょう?

稲葉:『VANQUISH』でデザインしたテンションは、ある意味シューターとは別モノであると考えています。 シューターの面白さも当然入っていますが、ガンガンと前に出て行って自分の力で倒すというのがこのゲームが生み出した新しい爽快感です。隠れるのではなく前に出る。接近して何かを行うというのがこのゲームの迫力につながっていますし、敵に倒されかけても素早くブーストによって回避が出来たりと、自分のテンションとペースで戦場を支配できるのが、本作のアクションゲーム的側面だと思っています。そこはすごく大事なところですね。巨大なボス戦もアクションゲーム好きにとって本当に楽しめる作りになっているんです。



―――それに対して脇を固めるキャラクターはいかにもアメリカ人という感じですね。

稲葉:もともと「男くさい」というのも重要なコンセプトだったんです。サムの横で常に戦っている
ロバート・バーンズもめちゃくちゃ男っぽいんで、スタイル自体はスマートなサムもコンセプトはどちらかといえば、「カッコ良いおっさん」だったんです。JRPGにあるような髭も生えないしご飯も食べていなさそうなキャラクターではなく、しっかりと生きている、生物的な強さをもったおじさんというのを思い描きました。分かりやすく言えば、若いときのクリント・イーストウッドですね。渋さと強さをキャラクターデザインに求めました。

―――そう言われると、タバコもサムのトレードマークのように使われていますよね。

稲葉:タバコはもともと「カッコ良さ」を演出するための男のアイテムですよね。三上ディレクターもすごいヘビースモーカーですし。また、タバコやお酒といった嗜好品を様々な事情からゲームに登場させにくくなっているという状況があります。そのような現状に対して、僕らはこういう形で「カッコ良さ」を描くんだ、といった気概を示すというのも三上さんの中にはあったと思います。

―――ロックオンレーザーをはじめ各種武器のエフェクトも一般的なシューターのそれとはまったく違いますね。

稲葉:ミサイルやレーザーのカッコ良い表現というのは自然に出てくるものなんです。アニメの世界では、割とこのような表現は使われているのですが、本作のようなハイパーリアルな映像でこのような表現が使われたことはなかなかないことだと思います。リアル系近未来ミリタリーモノの『VANQUISH』に日本のアニメ的な誇張表現が重なったことで本当に面白い効果になったと感じています。「糸ひきミサイル」とかね(笑)。 たくさんミサイルが飛ぶとなったらやっぱりそうなりますよ!

―――サウンドエフェクトも特殊ですよね。

稲葉:もともとこのゲームは四方八方から銃弾が飛び交うようになっているので音もその中で目立たないと自分で撃っている感覚が出ないのでそうしています。そこのデザインはすごく大事ですね。戦争ゲームではありながら近未来ということをふまえた、「このような音がありそう」という雰囲気も大切にしました。音、グラフィックともにそうですが、それぞれ面白さは感じてもらえてもそれがウソ臭さにならないように注意しました。

―――初回限定のダウンロード専用コンテンツ(以下、DLC)として、ブーストマシンガン、レーザーキャノン、そしてアンチアーマーピストルが使用できるわけですが、これらの兵器は通常兵器よりも特徴が際立っていますよね。

稲葉:ゲーム中はオーソドックスな武器から序々に近未来的な兵器を登場させるようなゲームデザインになっているのですが、DLCではそういったことは切り離して、単純に「これ、面白え~!」と言ってもらえるようなインパクトがあるものを選別しています。

■シューターをベースにしつつも本質は日本のアクションゲーム

―――作品をプレイして20~30分程度でボス級の巨大兵器アルゴスを登場させていますが、なぜそのようにしたのでしょうか?

稲葉:デザインのケレン味でいうとすごく日本人の感性が出ていると思います。ロボットというところに対しての日本人の得意さ、海外の作り手が直面してしまうリアルを追求した結果地味になってしまいがちなところをアニメ的なテイストを入れることと、アクションゲームの文法ですよね。巨大な敵を倒すことで爽快感を感じるというのは。僕らのスタジオが作ってきたアクションゲームの得意さはそこにあると思うのですが、この2つの得意な部分を掛け合わせて『VANQUISH』が生まれたと思っています。

―――ライバル的な存在である赤色のバトルスーツで身を包んだボギーは日本の敵キャラクターっぽいですよね。

稲葉:このゲームがアクティブなゲームである、アクションを駆使すべきゲームであるということは敵にもそれなりのアクティブさが必要になってきます。だとすれば、自分だけがヒーローというわけではなくそれを鏡に映すような存在がゲームの中で必要となってきますよね。更に自分の装備を凌駕するものが登場するゾクゾク感も忘れてはいけません。これはアニメでもよくある状況ですが、定番でもワクワク出来る状況はゲームに取り入れました。

―――総じて、作品としてアニメ好きな方もかなり意識したイメージがあるのですが、その辺のこだわりについても教えてください。

稲葉:昔のアニメと言わずに今にいたるまでのロボットモノのアニメが好きな幅広い世代が楽しめる作品になっていると思います。『ガンダム』シリーズや『マクロス』シリーズで育ってきた世代がこのゲームを遊ぶと、思わず笑ってしまうようなシーンがいくつか出てくるかもしれません。そんな人たちにも是非遊んでもらいたいですね。

また、一見、「難しそうなゲーム」というイメージがあるかもしれませんが、アニメ好きだろうが、アクションゲーム好きだろうが、最初から入り込めるゲームデザインになっています。「カジュアルオート」モードを選択すると自動照準になるので、楽なプレイではなく面白いプレイが出来るようになっています。楽なプレイだと面白みがごっそりと抜けてしまいますので。上級者でも一回目はカジュアルオートでプレイすることをオススメする位です。ゲーム進行は早くなりますが、その分ドラマを十分楽しめるんです。またクリア後にノーマルでプレイすることで得られる楽しみも残しています。

―――また、三上真司ディレクターのテイストも全編にわたって感じることが出来るんですね?

稲葉:三上真司ディレクターもいまでこそ東京にいますが、当時は大阪在住でずっと開発チームに張りついてもらいました。ゲームのクオリティ、撃って敵を倒す面白さや激しいアクション、全てにわたって三上ディレクターのこだわりが貫かれています。「キャシャーン」的要素に関しても、三上ディレクターはリアルタイムで見ているので、そのテイストと面白さを存分に『VANQUISH』につめこんでもらえたと思っています。

―――では、最後に読者の皆さまにも一言。

稲葉:TPSのようなシューターというと一般的に日本のみなさんには敬遠されがちですが、『VANQUISH』は前に出て行ってアクションを楽しむゲームです。アクションゲームファンだろうが、シューターファンだろうがアニメファンだろうがだれもが遊べる間口の広い作品となっているので恐れずにやってほしいなと思います。プレイさえしてもらえば満足してもらえる自信はもっているので是非一度プレイしてみてください。

―――ありがとうございました!
《中村彰憲》
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