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【ゲームニュース一週間】クラウドゲーミングはソーシャルゲームを駆逐するのか?

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今週はクラウドゲーミングとソーシャルゲームに関する発言が話題を提供してくれました。

調査会社EEDARのGreg Short氏は「クラウドゲーミングがソーシャルゲームを駆逐する」と語っています。

「クラウドゲーミングはゲーム産業がどう働くかを完全に変えるかもしれません。同じPCで『World of Warcraft』が遊べるというのに、わざわざ『FarmVille』を遊んだりするでしょうか。ソーシャルゲームはプレッシャーの下にあり、充分な速度で進化を遂げることができません。今や人々はリッチなゲーム体験を探しているのです」

クラウドゲーミングとは、非力なPCでも高級PCと同じゲーム体験ができるというもの。「ゲーム体験はそれぞれが持っているPCの性能に依存する」というPCゲームの常識を覆します。同じゲームソフトであっても、高級PCならリッチな画像と軽快な処理で楽しめまずが、廉価なPCならそうはいかないのがこれまでの形式。しかし、クラウドゲーミングであれば、処理は遠隔地のPCにお任せしてしまい、自分のPCは処理の結果(わかりやすくいえばゲームの画像)のみを受け取ります。

ここで問題となるのは「リッチなゲーム体験」の中身です。Short氏が例として挙げる『World of Warcraft』は世界最大規模のMMORPG。日本ではサービスされていないので実感が薄いのですが、海外では数年単位で遊ぶ人も多い、究極のリッチコンテンツ。いわばコア層向けの極北的存在です。

対する『FarmVille』は農場型ソーシャルゲームの代表作であり、ライト層向けです。氏のいう「リッチ」さがゲーム内容のことをいうのであれば、クラウドゲーミングがソーシャルゲームを駆逐する未来はいささか怪しくなります。

美しいグラフィック、消化するだけでも何百時間もかかる膨大なコンテンツ、ゲーム内での濃密な人間関係・・・こうしたものを突き詰めた先に起こったのが開発費の高騰とユーザーの先鋭化。つまり、コア層のみがゲームを遊ぶ世界です。

ここで2000年代のヒットを見てみましょう。ソーシャルゲーム、ニンテンドーDS、Wii、モーションコントロールといったキーワードはいずれも「ライト層への訴求」という点が共通しています。

コア層向けのHDゲーム機すらモーションコントロールでライト層への訴求を試みる時代ですから、「高度な処理能力で実現されるリッチなゲーム世界に没入するコア層ユーザーたち」というビジョンだけではゲーム界を支えきれない時代が来ているのです。

氏のいう「リッチ」さがゲームへの没入を指すのであっても、クラウドゲーミングがソーシャルゲームを駆逐するような未来は難しいかもしれません。むしろ、クラウドゲーミングの技術でソーシャルゲームを遊ぶような未来が来るのではないでしょうか。そこでは氏が挙げるPCよりもモバイルの方に大きな恩恵があるような気がします。

同系ゲームが林立する状況、特にオンラインゲームの世界における「競争力」には「プレイヤーを拘束する力」が含まれます。ライバルの他社ゲームを遊ばないよう、プレイヤーを引きつけ続けるのです。

Short氏が全く相反しているという文脈で取り上げた『World of Warcraft』と『FarmVille』ですが、ある意味共通している部分があります。それはどちらのゲームも没入型であるということです。

『World of Warcraft』は何時間もプレイヤーを拘束し続けます。熱中すれば3時間や8時間といったプレイも珍しくありませんし、ライバルとなる他のMMORPGを遊んでいるような暇はありません(もちろん、プレイヤーはその間中ずっと膨大なコンテンツを消化し続けている訳ですから幸せです)。

『FarmVille』はいつでも都合のよい時間に遊べるようになっています。
農場に指示を出し、作物が実るのを待つ・・・というのが『FarmVille』の基本的な流れ。作物が実るまでには実時間で数時間ほど必要ですから、その間はゲームから離れても大丈夫です。しかし、完全に放置すると作物は枯れてしまいますし、一日一度友達からギフトをもらうことでゲームをスムーズに進められます。生育サイクルが短めの作物をこまめに売ればそれだけ利益が上がるため、ゲームにはまればはまるほど、断続的なプレイ時間が増えていくことになりますので、やはり他社製ゲームを遊ぶような時間はありません。

『World of Warcraft』のようなコア層向けゲームは「連続拘束型」であり、『FarmVille』のようなライト層向けゲームは「断続拘束型」と呼んでもいいかもしれません。「断続拘束型」は「連続拘束型」よりも無害とされていますが、どちらのタイプにも遊びすぎたあまりに生活を破壊する例が報告されているのが興味深いところでしょう。

こうした「競争力」を保持し高めていくためには、ゲームが限りなくユビキタスであるのが理想です。家でチェック、通勤時間にチェック、仕事の合間にチェック、昼休みにチェック・・・というわけです。

ライト層への訴求を狙うのであれば、「PCでゲームを遊ぶ」というビジョン自体が過去のものとなり得ます。普通の人はいくらゲームにはまっているといっても1kg前後あるようなノートPCを持ち歩いたりはしません。そうなると、PCがない通勤途中などの空き時間がライバルのソフトに狙われます。

これを防ぐため、ネットブックのソーシャルゲーム版ともいえるソーシャルゲーム特化型の小型PC、いわば「ソーシャルブック」とでも称すべき存在がこれからのキーになっていくのではないでしょうか。処理そのものは遠隔地のPCに任せてしまい、ゲームの結果のみを受け取ることができればいいのですからスペックはさして必要ではありません。

こうなると逆に携帯ゲーム機との差別化が難しくなります。いくらクラウドゲーミングがリッチなゲーム体験を作れるといっても、自前で処理を行う携帯ゲーム機のダイレクトさは魅力です。

クラウドゲーミング、ソーシャルゲーム、携帯ゲーム・・・三つどもえの戦いは簡単に結論が出るものではないようです。
《水口真》

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