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【CEDEC 2008】BioWareの技術者が「最新の米国ゲーム開発プロセス」を紹介

CEDEC初日の午後13:00〜より、東陽テクニカの提供により「海外トラック」の一つとして、米エレクトロニック・アーツ傘下のBioWareよりシニア・ソフトウェア・エンジニアのJason Spangler氏が招かれ、「最新の米国ゲーム開発プロセス」(Recent Trends in U.S. Game Development Process)と題したセッションが行われました。

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CEDEC初日の午後13:00〜より、東陽テクニカの提供により「海外トラック」の一つとして、米エレクトロニック・アーツ傘下のBioWareよりシニア・ソフトウェア・エンジニアのJason Spangler氏が招かれ、「最新の米国ゲーム開発プロセス」(Recent Trends in U.S. Game Development Process)と題したセッションが行われました。



BioWareは今年初頭にEAが買収したゲーム開発会社で、『Sonic Chronicles』『Star Wars: Knights of the Old Republic』『Neverwinter Nights』などで知られる、従業員400人強を抱える大手メーカーです。Spangler氏は過去にOrigin System、Mythic Entertainmentに在籍、そしてBioWareと複数の企業で技術のリーダーシップを取り、主にオンラインゲームを手掛けてきました。その氏から聞かれる米国における開発事情は非常に興味深いものでした。

■開発プロセスを改善していくことの重要性

Spangler氏は現代のゲーム開発現場において、個々の技術的な課題やゲームデザイン面での取り組みだけでなく、チーム作りや運営手法などの開発プロセスを改善することの重要性が高まっているとして、その理由や、同氏が実践している手法について紹介しました。

まず開発プロセスを意識すべき理由としては「チームが大規模化し、管理が困難になってきている」「クオリティを維持する必要性」「プロジェクトが複雑化し、リスクを軽減するために適切なツールを選択する必要が出ている」といった理由を挙げました。また、「Quality of Life」(生活の質)も重要な観点で、特に米国ではベイエリアやシリコンバレーを中心に、ゲーム業界以外、例えばYahoo!やGoogleといった企業とエンジニアの取り合いをしていて、その中でゲーム業界に従事してもらうためには、労働環境を整備したり、適切なモチベーションを継続的に与える必要があるとしました。

これらの課題に取り組むには、個々人の意識や、リーダーの気配りといったレベルを超えて、全体としてのゲーム開発プロセスを変えていく必要があるとSpangler氏は主張します。

■アジャイルな開発という考え方

そこで挙げられたのが、Agile Software Developmentという考え方です。そのマニフェストによれば、

 プロセスやツールよりも、開発者同士の交流を
 仕様書よりも、動くソフトウェアを
 契約の交渉よりも、ユーザーとの協調を
 計画に従うよりも、変化に対応を

を重視するというものです。

この原則に従うと開発プロセスはこのようになります。まず重要なのはモチベーションある人間の周囲にプロジェクトを構築することです。そして必要なサポートは惜しまず、成果を信じます。アジャイルな開発プロセスでは、定期的に動くソフトウェアを構築し、それが進捗の指標となります。継続的に成果が形になることでモチベーションとなり、更なる開発の進捗にも弾みが付きます。そうすることで上層部や発注者との意向の乖離を防ぐことにも繋がります。

Spangler氏は、開発とそれによって成果物が出来上がるという流れの反復作業とすることが必要だと言います。また、ロードマップや仕様書は細かい部分まで作る必要はなく、その作成は往々にして変更があるため無駄な時間になるだけでなく、柔軟性を失わせる結果になると指摘します。常に最上のプライオリティは顧客を満足させることであり、そのための仕様変更などは受け入れなければならないとしました。



■スクラム / チーム作りの面から

アジャイルな開発のためにチーム作りも工夫が可能で、Spangler氏はスクラムという米国ではメジャーとなっているチーム運営を紹介しました。これは元々は一橋大学の野中郁次郎氏と竹内弘高氏が提唱したもので、開発スタッフを、5〜7名程度のスクラムというチームに細分化し、それぞれのスクラムがゲームの各部分を担当してゲームを作り上げていくというものです。

スクラムという非常に小規模なチームを作ることで、各メンバーがそれぞれ何をすべきが明確になり、当事者意識を持ってゲーム開発に取り組むことができるようになります。スクラムは、直近で実装すべきものを決定するスプリント・バックログ、実際に開発を行うスプリント、そして動くソフトのリリースという工程の繰り返しで運営されます。日々ミーティングが実施され、今日や昨日にしたこと、明日すること、直面しそうな課題について話し合います。

スクラムは大規模なプロジェクトでも、小規模なプロジェクトでも用いることができ、例えば20名程度のプロジェクトであれば3つ程度のスクラム、数百人に上るプロジェクトであれば、スクラムofスクラムという形でスクラムを統括するスクラムを使うことで運営ができているということです。

■その他の開発事情

セッションでは、EAで広く使われているアセット管理ツール「Perforce」の紹介や、ゲーム開発でどうしても必要となるビルドを効率的に行うためにツールを導入した事例なども紹介されました。Spangler氏によれば、米国のメーカーは自社のツールからツールメーカーのものに置き換える傾向にあるそうです。機能として優れているほか、バグも少ないということで、活用できるものは外部で、という流れのようです。

セッションは80分程度でしたが、質疑応答では様々な疑問がぶつけられるなど、米国の最新ゲーム開発プロセスについては非常に大きな注目が集まったようです。国産ゲームも規模は大きくなってきていて、EAの取り組みも参考になりそうです。
《土本学》
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