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【オンラインゲーム一週間】ゲームにおける罪と罰、GTA模倣殺人から見えること

今週はタイで起こったGTA(Grand Theft Auto)模倣強盗殺人がゲーム界を震撼させました。オンラインゲームの動向をまとめるべきこの連載で、少しだけ脱線することをお許し願いたいと思います。それだけショッキングな事件だったのです。

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今週はタイで起こったGTA(Grand Theft Auto)模倣強盗殺人がゲーム界を震撼させました。オンラインゲームの動向をまとめるべきこの連載で、少しだけ脱線することをお許し願いたいと思います。それだけショッキングな事件だったのです。

2008年8月2日(土)、タイでは高校生が金目当てにタクシー運転手を刺殺する強盗殺人が起こりました。自分が刺したタクシー運転手を乗せて逃走しようとしたところを掴まったのですが、高校生は取り調べに対し「ゲーム代が欲しかった。『GTA』を見て犯行を思いついた」と供述しました。

これを受けてタイ政府は暴力描写のある危険なゲームを選別。『GTA』、『バイオハザード4』、『キラー7』、『マンハント』、『ゴッド・オブ・ウォー』、『ヒットマン:ブラッドマネー』、『ゴッドファーザー』、『300:The Video Game』、『50 Cent:Bulletproof』の10本を子供がプレイしないように注意を呼びかけるという異例の事態となりました。

若年層の起こしたショッキングな事件をゲームと無理矢理結びつける……という事例は我が国でも多く見られます。しかし今回の事件では犯人の高校生が『GTA』を模倣したと明言しています。この自供のみを見るのであれば、常々危険視されてきた「ゲームに影響されての犯罪」が現実となったことになります。では、過激なゲームは犯罪の起爆剤となるのでしょうか?

もしも犯罪の起爆剤となるのであれば、それはきっと面白おかしく犯罪を描いているのでしょう。映画「プライベート・ライアン」を見た人が「戦争になんか行きたくない」と思うように、辛く苦しいこととされているなら起爆剤とはならないでしょう。

『GTA』では確かにタクシー強盗は可能です。タクシーに近づき運転手を引きずり出して攻撃し、お金を手に入れることができます。但しこれはれっきとした犯罪です。警察官が出動してきますし、最終的には軍隊さえ登場します。捕まればもちろん罰則があります。捕まれることができるのであれば良い方で、過激に抵抗すると全身を蜂の巣にされます。警察と軍隊の戦力は無限大です。

『ゼルダの伝説 夢をみる島』では、お店からお金を払わずにアイテムを持っていくことができます。アイテムをタダで持ち去った後、プレイヤーは「どろぼー」と呼ばれ続けることになります。お店に戻ると店長に一撃で倒されてしまいます。この店長は『ゼルダ』世界最強存在との呼び声も高く、その一撃には抵抗すら許されません。また、真のエンディングを見られなくなります。お店に戻らなければ真のエンディングが見られるのですが、これは決して犯罪推奨ではありません。「どろぼー」と呼ばれての真のエンディングは、本当の真のエンディングといえるのでしょうか。法の抜け道をうまく利用した訳でプレイヤーの心には大きなしこりが残ります。ただ一度泥棒したばかりに、永遠に会えない人ができてしまう。誰かに会わないように町を歩く。それは愉快な体験とはいえないでしょう。

『ウルティマIV』では目が不自由な人から買い物をする時、お金を幾ら払うか自分で選べます。大量の買い物をして支払いがたった金貨1枚ということも可能です。しかしゲーム内部では心の徳が失われています。自分がどの程度の徳を積んでいるはゲームの後半で目に見えるようになるのですが、支払いをごまかした時の徳の減り方は壮絶としかいいようがありません。『ウルティマIV』はプレイヤーが徳を積むゲームなので、徳が失われた状態ではクリアーすることは不可能です。

ゲームとはインタラクティブの娯楽であり、ゲームにおける犯罪は、その後の報いがセットになっています。ゲームの中で罪を犯した自分と向き会い続けなければならないのです。

罪を犯すことを限りなく美化する、そんなゲームがあれば、それは犯罪の起爆剤となるのでしょうか?必ずしもそうは言い切れないのではないでしょうか。フィクションの中で、フィクションであることを理解した上で罪が美化された状態を快く感じるのは、それが罪であるという意識があるからこそです。例えば恋愛モノであれば禁断の恋や不倫は盛り上がるテーマです。「ロミオとジュリエット」は禁断の恋を推奨するものでしょうか?もしもゲームの中で罪が美化されたとしても、それは社会通念状認められない行為であること……文字通りの「罪」であることを際だたせることになるのではないでしょうか。

罪を扱うのであれば、罪と罰のインタラクティブ性をもったメッセージを入れること。そして若年層にゲームの外で罪と罰を説くこと。送り手と受け手が共にできることをやるべきなのではないでしょうか。
《水口真》

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