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【CEDEC2007】セガ小口氏が語る「“あそびをつくる”……その本質とは」

セガ 代表取締役副社長 小口久雄氏

ゲームビジネス その他
【CEDEC2007】セガ小口氏が語る「“あそびをつくる”……その本質とは」
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セガ 代表取締役副社長 小口久雄氏


■2007年のCDECのオープニングはセガのトップクリエイターの語る「ゲームの作り方!」

CESA主催によるコンピュータゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC2007」が、東京大学にて開催された。期間は28日までの3日間で、60以上もの講義が用意され、例年にない規模となっている。

そんなCEDEC2007のオープニングをつとめたのは、セガ 副社長である小口久雄氏。今でこそ、セガの副社長を務め経営主体の業務だが、実は数多くのヒット作を生み出した、トップクリエイターでもあるのだ。そんな氏の、講義タイトルは、“「あそびをつくる」…その本質とは”というもの。日本を代表するトップクリエイターの考える“ゲーム作り方”を紹介していこう。



■衣食住に“遊”を加えた形こそ本当の意味になる

早速の本題は、“「遊び」とは何か、考えてみよう”というもの。“衣食住”を国語事典で調べると、“人間の生活の基本的な要件(欠かせないもの)”と書かれているという。そんな、辞書の意味から“衣食住”は、本当に言葉の意味をみたしているのだろうか? と逆に問題定期をする小口氏。そんな、氏が出した答えが、“衣遊食住(いゆうしょくじゅう)”なのだという。そして、刑務所とは、楽しさを奪っている場所であり、楽しさを奪うことは、すなわち刑罰になる。そんなことからも、人間の生活の基本的な要件は、“衣遊食住”であるというのだ。そして、“衣遊”とは、生体に直接関与することがらであり、“食住”とは、生体に間接的に関与するものだという。



■“遊び”とは快感である

そして、再び小口氏は、先ほどと同じ“「遊び」とは何か、考えてみよう”という問題定義をだす。今回、氏の出した別の答えは、“人間の行動衝動は「快感原則」でなりたっているというものだ”ということ。この答えは、精神分析学者であるフロイトの“快感原則論”、「人間は(他動物も)常に快感を得るために、または不快感を避けるために行動する」から来ているという。

受験勉強なども一見快感とは別のストレスの元にあるが、合格という結果の快感を目標にストレスの中にあるため、受験勉強も結果的には“快感原則論”の中で行われているモノになるという。また、変化がない状況の継続もまた、ストレスになるというのだ。



■“遊び”とはさまざまな意味を含んでいる!

さらに、“「遊び」とは何か、考えてみよう”は、続き、今度は言葉の定義で、より考察する。辞書を引くと、その内容には、下記のようなモノが含まれている。

遊び
1)仕事や勉強をせず、遊技などをして楽しく過ごすこと
5)離れた場所にいって風物を楽しむ。また、勉強する。
(※表示されたものの一部)




これをみて小口氏は、「本質が快感なので、“勉強をせずに”と“勉強をする”のような、逆の意味を含むようなこともあり、遊びとは非常に解釈の範囲が広いのがわかる」と紹介。それをさらに、決定付けるものとして、英語の“PLAY”の意味も紹介する。英語の“PLAY”の意味は非常に多彩で多くの動作を表す言葉に該当視するが、そこには“楽しい”に関係した動作が“PLAY”になると、小口氏は分析する。

“楽しい”を辞書で引くと、“心が満ち足りて、うきうきするような明るく愉快な気分である”などの、意味がでる。では、楽しいの関連語“楽しさ”を辞書で調べると、“楽しさ”という単語はないという。小口氏はここから、「“楽しさ”流動的で、定義できないから、辞書にも載っていない」と述べる。そして、空腹時には、美味しいと思えても満腹の時は食べたくないものになるといった例で紹介した。



また、日本は、先進国でも自殺者の多い国だという。「日本では、“遊ばないのが美徳”とされているような傾向があり、快感に触れるチャンスが少ないからの結果ではないか」と小口氏。この、楽しまない日本人にもチャンスを与える上でも“衣遊食住”の考え方は大事であり、さらに「退陣した安部首相は“美しい国、日本”といっていたが、ボクなら
“楽しい国、日本”を宣言したい」と、遊びの重要性をまとめた。



■良いゲームは満たされる欲求の種類が豊富

“遊びの重要性”の後は、“楽しいゲームをどう作るか?”に話題が移る。そして、小口氏の考える楽しいゲームは、“欲求が満たさされるゲーム”であると語った。現実の自分に起こっているような人間の欲求を満たすゲームが、“楽しいゲーム”であり、欲求を満たさないゲームはプレイが作業になり“クソゲー”になると解説。リアルなゲームを追究する傾向が強いのも、ゲーム内のキャラクターが自分の分身であるかのように思わせるため、つまり“欲求を満たすため”だという。

小口氏は、人間の欲求には4つの要素があると述べる。

1)生理的・本能的欲求
2)主に身体内部の情報に基づいた欲求
3)主に体の外部からの情報に基づいた欲求
4)心理・社会的な欲求

※欲求は、1)→4)へ高次元的となる。低次元ほど本能的である。



ゲームで重要になる欲求は、“3)主に体の外部からの情報に基づいた欲求”からだという。ゲームでおなじみの“逃避”と“闘争”といった欲求もこの部分を刺激している。また、“4)心理・社会的な欲求”は、さらに高度な欲求であり、“獲得”、“保存”、“秩序”、“保持”などのさまざまなものが含まれている。ヒット商品には、これらの要素が数多く含まれているとし、『ポケモン』を例にして、その要素を紹介した(※下の写真を参照)。



また、「“3)”の“闘争”、“逃避”の欲求は、ゲームにしやすくおもしろい物も多いが、企画としてはあまりクリエイティブではない」と指摘。実際に、『どうぶつの森』や『脳を鍛える大人のDSトレーニング』など、“3)”の要素を含まないヒット作も数多く存在しており、『倉庫番』のようなクラシックなゲームにもそのようなものは存在しているという。

そして小口氏は、「ゲーム制作者は、“4)”欲求を企画段階から整理してゲームに盛り込むと新しい面白さが発見できるのではないだろうか?」と、また、ゲーム化されていない欲求探しをゲーム制作に盛り込むこと提案した。



■ゲームは、世の中の役となり平和な世界の役に立っている

駆け足で進んだ講演だが、講演の締めくくりとして、「遊び(ゲーム)は、自由なので何をしてもいいとは思うが、反社会的なことは、避けるべき。ゲームといっても、反社会的なことを行って、現実を区別のつかないことも起こる。我々の社会は平和と秩序によってなりたっており、遊び(ゲーム)を作る上で、社会的な影響を充分に配慮すべきである。我々が、やっている仕事は、世の中の役に立って、平和な世界になる。私自身もそれを願っているし、皆さんもきっとそう思っていると思います」と語った。
そして、最後に「業界の発展と、遊びを作る皆さん自身も楽しい人生を送れることを願っています」とコメントし、“楽しい国、日本”の表示のもと、講演をしめくくった。

《内田幸二》
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