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【TGS2007】オーストラリアブース ワークショップ「オーストラリアのゲーム産業の概要と世界市場におけるその位置づけ」

立命館大学映像学部准教授 中村彰憲氏

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立命館大学映像学部准教授 中村彰憲氏


■海外への進出に生き残りをかけるオーストラリアのゲーム産業

9月21日に東京ゲームショウ2007のオーストラリアブースのワークショップとして、立命館大学映像学部准教授 中村彰憲氏が「オーストラリアのゲーム産業の概要と世界市場におけるその位置づけ」と題して講演を行った。

オーストラリアのゲーム産業は、10億オーストラリアドル(約970億円)にも迫る大きさがあるが、ソフトウェアのみでは6億オーストラリアドル(約600億円)程度。世界規模でみると市場としては、それほど大きくないという。また、数値的には台湾にているという。オーストラリアの人口は約2000万人で、台湾の人口と同じくらいだが、ゲーム産業の規模も(台湾の場合は、オンラインゲーム産業)にも近い産業規模だというのだ。

このオーストラリアの持つ市場規模を考えると、オーストラリアのゲーム会社は、国内需要のみでのゲーム産業では成り立たないと中村氏。結果的、オーストラリアのゲーム産業はアメリカなどのゲーム市場に割り込む形でビジネスを構築しないと経営な成り立たない構造になっているという。そのため、ゲーム会社の経営戦略は、必然的に「凱旋型戦略」になるという。「凱旋型戦略」とは、グローバルな市場を目指して、グローバルなメガパブリッシャーと手を組み、世界中で販売しヒットとなり、結果的にオーストラリアでも売れるということになるというものだ。また、『Biosock』や『Total War』シリーズなどもこの戦略のもとに、ヒットしたタイトルだという。



■30年近いキャリアを持つオーストラリアのゲーム開発

オーストラリアのゲームの歴史は、予想以上に古いと言う。講演では、その古参の1社である「Beam SoftWare」の歴史について紹介された。設立は、1980年で、1982年にはライセンス契約を結んで開発した『Hobbit』なども発売されている。初期の頃より、ライセンスを結んでの発売が行われていたという部分では、注目すべき点だと中村氏。また、1989年には、PC-9801やPCエンジンなどのタイトルを開発し、日本市場をにらんだ開発も行われていたという。その後も『レッドオクトーバーを追え』(ゲームボーイ版)や、『スターウォーズ』(NES版)などを開発。オリジナルタイトルとしては、『スーパースマッシュTV』なども手がけている。1999年には、インフォグラムに買収され「Infograme-Melbourn」とし、2003年にはインフォグラムの社名変更に伴い「ATARI-Melbourn」となった。そして、2006年には、Kromeに買収されて現在に至っているという。

オーストラリアのゲーム開発は、Beam SoftWareをみても30年近いキャリアがあり、ソフト開発のノウハウも継承されてきているという。実際に、1995年以前に設立されたゲーム会社は、全体の23パーセント超え、1995年から2000年では20パーセント、2000年から2004年では56パーセントとなっている。データでは比較的新しい会社が多いが、重要なのは1995年以前に全体の23パーセントの会社が起業していることだという。もし、ここで、欧米的な情報共有が各企業間で行われているのであれば、かなりの確率でゲームデザインのノウハウが継承されている可能性が高いからだという。



■クライアントとの関係を重要視した特殊な開発環境

オーストラリアのゲーム産業の売上げは、90パーセントが海外向けであり、残りの10パーセントが国内での売上げだという。この特殊な環境下のため、オーストラリアのゲーム開発者は、いかにクライアントとの付き合いを良好にしていこうという心構えができているという。また、2年間でオリジナルタイトルを10作以上開発した会社が、全体の9パーセントほどしかなく、オリジナルタイトルを作ろうという土壌ができていないと紹介。

しかし、中村氏は、「この結果はクライアントからオーダーを的確に対応するオーストラリアゲーム産業の特徴の現れでもある」と語る。



■優秀な人材の揃うオーストラリアで日本はどのように接するべきか!?

オーストラリアでのゲーム開発者のサラリーは、一般的なサラリーよりも高いという。一般的なサラリーの平均が、5万7000オーストラリアドルなのにたいして、中堅の開発者であれば、平均で6万オーストラリアドルの給与を支給されているという。この結果からも、ゲーム業界に優秀な開発者が集まっていることが分かる。

また、オーストラリア製のヒット作の中には、FPSやRTSなどの日本のなじみの少ないタイトルの人気も高く、欧米的な傾向が強いのも特徴だという。そのため、日本人には分かりにくい、FPSやRTSなどのゲームの文脈的な部分にも理解が及んでいる現れであり、それらを理解している人材がいるというのだ。

また、オーストラリアのゲーム会社は、確実なる経営方針を持っており、中村氏が取材した3社のトップ共、「納期とコストは最重要課題」とコメントしていたという。アメリカの開発者にみられる、「オリジナル性が重要」や「自分たちが成功したと思った時にゲーム開発が終わる」などとはメンタリティの部分から大きく異なるという。そのため、ライセンス契約をするには、非常に受け入れやすい人材が揃っているというのだ。

また、技術面でも特筆すべき部分があり、MMORPGのサーバー技術で世界的なシェアを確保している、「Big World」はオーストラリアの会社である。また、ハリウッド級の3Dスタジオも数多く存在しており、それらをゲーム開発の環境下でも利用できるような風土的な物もできているというのだ。



では、日本のゲーム会社はどんなアプローチでオーストラリアに望めばよいのだろうか? 「欧米向けのソフト開発を望むのであれば、現地に子会社を設立することが望ましい」と中村氏。アメリカ製では出し切れない、ストーリー感があり、かつボリュームの多いFPSなどの制作には、オーストラリアの開発や適任ではないかとし、話を締めくくった。

《内田幸二》
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