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日本におけるゲーム内広告の可能性を探る -BBAオンラインゲーム専門部会 第13回研究会

9月13日、有限責任中間法人ブロードバンド推進協議会は東京のソフトバンク本社ビルにて、オンラインゲーム内広告をテーマにしたBBAオンラインゲーム専門部会の第13回研究会を開催しました。

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9月13日、有限責任中間法人ブロードバンド推進協議会は東京のソフトバンク本社ビルにて、オンラインゲーム内広告をテーマにしたBBAオンラインゲーム専門部会の第13回研究会を開催しました。

日本ではかつて、ゲーム内に現実世界の企業名や商品を掲出するタイアップが実施されていました。当時はゲームの広告媒体としての価値は定まっていませんでした。しかし今日、米国ではゲーム内広告が盛んで専門代理店が数社ほど誕生しており、マイクロソフトもXbox360でゲーム内広告に積極的です。

その流れは日本にも影響を与えており、セカンドライフのような仮想空間への広告掲出や、国内のオンラインゲームへの出広などが動き出しています。オンラインゲーム専門部会長の新清士氏によると、日本のゲーム内広告は第二の盛り上がりを見せているそうです。そこで今回は学術研究者、オンラインゲーム広告事業者、オンラインゲームサービス業者それぞれの視点で、日本のオンラインゲーム広告の実情や今後の展開、解決すべき課題について報告しました。

●成蹊大学経済学部准教授 野島美保氏

野島氏はネットビジネスに関する研究を主なテーマとしています。インターネットオークション、ショッピング、ゲーム、コミュニティサイトを調査し、ユーザーの動向とビジネスの可能性を検証し、主にユーザーの視点で広告ビジネスとゲームの親和性について発表しました。

野島美保氏


野島氏はオンラインゲームに参加するユーザーの行動について、主に3つの理由を挙げました。「娯楽としてゲームそのものを楽しむ」、「他のユーザーとの交流を楽しむ」、「実生活以外のもうひとつの世界で新たな価値を見出し、自己実現を達成する」というものです。これらの価値観の違いにより、ゲームに対する消費行動に差が出ます。

また、ユーザーはゲーム内での公平性に対してこだわりを持っているという実情も披露しました。完全定額制のゲームではすべてのユーザーがゲーム内で同じ条件となり公平だと考えられる一方で、アイテム課金制度は現実の財力によって有利/不利になりがちなため、不公平感があると考えられます。

しかし、最近話題となっているセカンドライフは、ゲームコンテンツではなく3D空間のプラットフォームとして位置づけられています。ユーザーが制作したオブジェクトの所有権はユーザーにあるため、現実の通貨を介在させた経済活動も魅力のひとつになっています。ユーザーの自由度が高いことが、経済的な不公平感を和らげているようです。

これらのことから、今後の仮想世界と広告との関わり方は二通になると考えられます。ひとつはユーザーに最大限の自由を与えるセカンドライフ的なコンテンツで、さまざまな広告手法が許容されやすい環境です。インタラクティブな仕掛けを利用でき、広告表現の手法も多様化するでしょう。その反面、情報の種類や量が多く、広告のターゲット層からの注目度が散漫になりがちです。

もうひとつは従来のオンラインゲームのように、ゲームコンテンツとの親和性や公平性に配慮する環境です。制約はあるものの、ユーザーの熱中度が高いため、成功すれば高い支持率を得られるようになるでしょう。

野島氏はこれらの調査結果を踏まえて「ユーザーの属性・嗜好を踏まえた広告が効果的で、リサーチを十分に行う必要がある。また、仮想世界の広告と現実世界の商品をリンクさせる導線を工夫する必要がある」とまとめました。

野島氏の講演は、序盤にMMORPGのユーザーの行動と課金システムの違いについて概略を示し、中盤にユーザーを調査した分析結果、最後に考察という構成でした。序盤は本日の研究会参加者にとって承前の部分が多く、中盤の分析については調査サンプル数や調査方法が明示されませんでした。考察ではユーザー視点からの広告への考え方を示すに留まりました。さらに踏み込んで、既存の国内外のゲーム内広告について、どのような手法が歓迎でき、あるいは許容できるかなどの具体的な調査結果や示唆がほしかったところです。

(左)仮想世界の広告はゲームとセカンドライフライクな方向性へ分化する
(右)ゲームの運営ノウハウが仮想世界の構築に役立つか?


●株式会社アドブレイン 代表取締役社長 川村佳央氏

川村氏は日本でゲーム内広告を手がける広告代理店を設立し、すでに実績を上げている立場です。ゲーム内に広告を出す価値、ゲーム媒体としてのゲームの魅力について、ゲーム内広告をめぐる日本の環境について、業務経験を踏まえた考察を発表しました。

川村佳央氏


川村氏はまず、近年になってオンライン広告の指標が変わりつつあること、それによってゲームというメディアが注目されていくと説明しました。具体的には、米国の大手調査会社がWebサイトの評価について、ページビューではなくサイト滞在時間を基準にする傾向があることを挙げました。"何人見たか"ではなく、"何分見たか"が重要です。

例えば検索サイトは多数のヒット件数がありますが、検索結果からすぐに別のページへ遷移するため滞在時間は短くなります。滞在時間が短いと広告を見てくれる時間も短くなります。しかし、動画閲覧サイトでは、ユーザーは動画が終るまで別のサイトに遷移しないため、ページの滞在時間=広告表示時間が長くなります。

日本人のオンラインゲームの一日平均プレイ時間は平日が約2時間、休日が約3時間です。これをひとつのゲームに対する滞在時間と考えて、世界のウェブサイトの滞在時間ランキングと比較するとトップのYahoo!の次の位置に到達します。このことから川村氏は「ゲームというメディアはWebサイトより価値が高い」と説明しました。

ゲーム内広告はWebサイトと違い、クリックしたら別のサイトに移動というわけにはいきません。看板テクスチャを見せるだけのブランディング広告が主体です。しかしアメリカの調査結果によると、ブランディング手法だけで、クルマやスナック菓子、ファストフードなどの購買意欲が大幅に伸びたそうです。

川村氏は米国でXbox360のカーレースゲームを使った実験結果を紹介し「画面遷移の激しいゲームの看板広告も意外と見られている」、「一瞬の露出でもサブリミナル的に刷り込みが行われている可能性がある」と考察しました。また、ゲーム内に広告を挿入する場合、ゲームと広告商品の分野が一致したり、広告とゲームのターゲット顧客層が一致すると効果が高いのではないか、という仮説を披露しました。

最後に川村氏は日本のゲーム内広告が抱える課題として、雑誌の実売部数やテレビの視聴率調査のような広告効果の指標が確立されていないこと、海外のようなダイレクト配信型広告管理システムがないなど設備面が整っていないこと、WebポータルやSNSのように何千万ビュー単位の規模感がないことなどを挙げました。

広告効果指標に関しては広告媒体となるゲーム運営会社の各社にまたがる横断的な統一仕様の策定が求められます。システム面では自社開発か第三者のシステムの導入かの判断を迫られています。規模感については、複数のゲームを束ねた数字の見せ方も検討する必要がありそうです。川村氏の講演はゲーム内広告に携わる現場の声、とくに広告主への売り込みの難しさに基づいた貴重な体験談とも受け取れました。

(左)人気Webサイトの滞在時間はゲームの滞在時間より短い
(右)カーレースゲームのブランディング測定結果


●株式会社ハイファイブ・エンターテインメント 澤紫臣氏

『ブライトキングダム・オンライン』、『テニクル』、『ネトゲット』などを運営するハイファイブ・エンターテインメントはゲーム内広告の取り組みに積極的です。澤紫臣は冒頭にオンラインテニスゲーム『テニクル』を動画で紹介しました。テニスコートの周囲や壁面に広告スペースがあります。違和感を感じない理由は、実際のスポーツ大会もこのような広告掲出を行っているからでしょう。この広告スペースの参考価格として、コート一面のすべての広告部分を4週間買い占める「コートジャック」が50万円だそうです。広告代理店の手数料を含めているとはいえ、具体的な数字が登場したことで現実味を感じます。

澤紫臣氏


ゲーム運営会社にとってゲーム内広告の魅力は、収益構造の多様化が課題になっているためです。主にMMORPGを手がけるハイファイブ社では、時代の流れとしてアイテム課金制度を採用しています。しかし、無料ユーザーの増加はシステムやサポート人件費の面で大きな負担となっています。

無料ユーザーがMMORPGの賑わいを演出するために必要であり、有料プレーヤーが自慢する相手だったり、気軽に友人を誘うための仕掛けであることを考えると、有料ユーザー限定というスタイルもとりにくい。そこで広告収入を模索しています。

『テニクル』の場合、ゲーム内広告で収益を上げるには、ゲーム運営会社側にふたつの協力会社が必要です。ひとつは広告代理店です。広告販売のノウハウはゲーム運営会社には把握できません。広告販売については広告専門のパートナーに任せよう、という方針でした。もうひとつはゲーム開発会社です。ゲームの中に広告を載せるには、新規広告主か決まるなど、新しい広告原稿が決まるたびに画像データを書き換える必要があります。原稿素材のデータ化、校正用の画面キャプチャーの作成、修整など、ゲーム開発以外の工数が大量に発生します。ハイファイブではこの問題を、将来的な広告掲載も含めた開発委託契約を結ぶことで解決しました。広告料金も分配するという約束をすれば、開発会社も利益の源として広告データ作業ができます。

ゲームとゲーム内広告の親和性について澤氏は「MMORPGの広場に現実世界の商品の看板を出した場合、広告の内容より広告掲載の是非が話題になりやすい」と危惧していました。ポジティブな反応とネガティブな反応が同時に発生します。ゲームを提供する側としてはネガティブな要素が発生することは避けたいわけです。しかし、看板でなくても、健康食品の場合は回復アイテムとしてゲームになじませるという手法はあります。また、ゲーム内ではありませんが、ゲームに関連付けた広告として、キャンペーン商品を買うとゲーム内アイテムがもらえる、というアプローチも有効だそうです。

ハイファイブの『ネトゲット』はこの「アイテムがもらえる」という部分を前面に押し出した広告モデルです。ゲームプレイヤーがアフィリエイト広告をクリックして商品を買ったりアンケートに答えたりすると、『ネトG』というポイントが貯まります。このポイントで課金アイテムを購入できるという仕掛けです。ネトゲット対応ゲームの公式サイトでアイテムを購入しようとすると、クレジットカード、電子マネーなどの決済方法の選択の中に、『ネトGポイント』が現れます。ポイントを貯めておけば、現金と同様の手順でアイテムを購入できます。厳密にはゲーム内広告ではありませんが、ゲーム内に広告を掲出しにくいMMORPGの広告モデルとしては斬新なアイデアです。

ハイファイブ社ではゲーム内看板、ローディング画面のタイアップ、お菓子などとのコラボレーション、ネトゲットなどさまざまな広告プロモーションを経験しており、ゲーム内広告に積極的な会社だといえます。海外で主流となっているダイレクト配信型広告管理システムも、提携先の中国のソフトハウスで開発されたものをライセンス契約できる状態で、あとは広告主と対応ゲームがあれば実用化できる見込みです。ゲーム内広告の日本モデルを探すときはハイファイブ社のゲームが参考になるでしょう。

(左)無料プレイヤーの許容と増加が広告への期待になる
(中)広告売上に関して開発会社との分配契約が肝要
(右)ハイファイブは広告モデルの可能性を探ってきた
《杉山淳一》
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