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【Gamefest Japan 2007】『Forza Motorsport 2』のコミュニティに注目

マイクロソフトは7日、ゲーム開発者向けの技術カンファレンス「Gamefest Japan 2007」で「Forza2のオンラインフィーチャー/実りあるゲームコミュニティ世界」と題した講演を行い、「Forza Motorsport 2」におけるユーザー・クリエイテッド・コンテンツ(UGC)がもたらした効果と、その教訓について講演した。スピーカーは同社XNA Developer Connection Development LeadのBrendan Vanous氏。

マイクロソフト Xbox360
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マイクロソフトは7日、ゲーム開発者向けの技術カンファレンス「Gamefest Japan 2007」で「Forza2のオンラインフィーチャー/実りあるゲームコミュニティ世界」と題した講演を行い、「Forza Motorsport 2」におけるユーザー・クリエイテッド・コンテンツ(UGC)がもたらした効果と、その教訓について講演した。スピーカーは同社XNA Developer Connection Development LeadのBrendan Vanous氏。



「Forza Motorsport 2」(Forza2)は本年5月に発売された、Xbox360向けのドライブゲーム。リアルなドライビングシミュレーターという特性に加えて、ペイント機能を用いて車の外観を自由にペイントしたり、写真を撮ってブログに飾るなどができる。ゲーム内で獲得した賞金ポイントを使って、カスタマイズした愛車をオークション売買するなども可能だ。発売以来、日本でもアニメやマンガのキャラクターでペイントした自動車の出展が相次ぐなど、いわゆる「痛車」がネット上でムーブメントになったことは記憶に新しい。

Brendan氏はこうしたオンラインサービスの部分をデザインするにあたって、「Forza1」のコミュニティ機能を観察するなどして、どのようにすればコミュニティ創造に役立つ機能を追加できるか、詳細に検討したと語った。その上で「レース/写真/ペイント/チューニング」という「Forza2」の仕様に基づき、「オークションハウス/フォトモード/ギフト/トーナメント」を柱にデザインすることが決められた。もちろんこれらは、Xbox LIVEがあったからこそできたことだ。

さらに、Xbox LIVEとPCの連動要素も盛り込まれた。それがブログ機能を備え、コミュニティの拠点となる公式サイト「forzamotorsport.net」の作成だ。このサイトに「Forza2」のオークションサイト、フォトモード、スコアボード機能を統合することで、ゲーム体験をXbox360内に留めることなく、インターネット上で広げられるようになった。サービス全体の開発がスタートしたのは、「Forza2」のゲーム部分が形になりはじめた2006年の1月。ストレステストが始まったのは、1年3ヶ月後の本年4月。5月の日本版発売になんとか間に合った。

Brendan氏はこうした機能を盛り込むことで「核となるゲーム体験をさらに豊かにする」「ゲームの再挑戦性を高める」「信頼性のある口コミマーケティングを広める」というメリットがあると指摘した。「forzamotorsport.net」には、米・欧発売月の2007年6月だけで、110万人のユニークユーザーのアクセスと、2950万件のページビューがあったという。

中でも人気を集めたのがオークションハウスだ。Brendan氏は「ebayなどを参考にして、理想のオークションサイトを作るように努力した」と述べた。特に留意されたのは、「自動延長機能の採用」「安全性の確保(スナイプ入札などの防止)」「入札が失敗した際に、確実にポイントが入札者に戻されること」の3点だ。「オークションハウスを実装したことで、ゲーム内に用意された310車種を超えて、何万種類ものスペシャルカーが誕生し、ユーザーのコレクション欲が刺激された」という。現時点ではサーバ記憶領域のうちオークションハウスに使われているのは300GBほど。他のゲームにも利用できるように、当初から汎用性を備えた設計が行われている。

実際にオークションハウスは予想以上の成功を収めた。これまでのオークション出品件数は440万件で、1兆以上のクレジット取引が成立。最高落札額は24億クレジットに上り、32人の入札者が入札競争を行った結果、自動延長機能によって2時間も落札が延長された。ユーザーの46%が少なくとも1台の車を購入または転売しており、もはやこれはコアユーザー向けのニッチなサービスとはいえないという。

またコミュニティ機能の活用度合いも予想を上回るものだった。全ユーザーの34%が写真をサーバにアップロードした経験があり、総枚数は170万枚に上る。これは1日あたり5GB以上の増加となり、当初予想されていたサーバ容量が10日以内になくなることがわかったため、あわててストレージの追加が行われたほどだ。総オンラインユーザーは65万人で、このうち28%が他のユーザーにプレゼントを贈った経験があり、贈られた車種数は170万台にも上った。これは当初予想されていた10倍の件数となり、開発チームを驚かせた。

ただし、UGCの増加でさまざまな問題も発生した。わかりやすいのは著作権侵害だが、文化的・レーティング的に問題のあるコンテンツをユーザーが作り出してしまうことも、それに劣らず重要な問題となっている。全世界共通のオンラインサービスのため、ある地域では一般的な表現でも、他の地域では大きな問題を引き起こす可能性がある、といったことも珍しくない(特にこれらはゲームコミュニティの外側に飛び火した場合、問題が深刻化しやすい)。Brendan氏は「Forza2」がもたらした教訓として、不適切なコンテンツを検索し削除するための、優れた管理ツールが必要だと語った。同社としても引き続き、投資とツールの改善を行っていくという。

ユーザーが自分で作り出したデータに対する、著作権保護のあり方も大きな課題となった。あるユーザーが作り出したカスタムカーのデータを、オークションハウスで落札した別のユーザーが、データの所有権をebayに出展したところ、1200ドルで落札されたことがあったという。これに腹を立てた元のユーザーは、同じ自動車のデータを10台オークションハウスに出品し、価値を暴落させようとした。このようにデジタルデータは複製により、簡単にインフレが発生する。この対策として、デジタルオブジェクトのデータプロフィールを暗号化する、またはオンラインのみで使用するなどして、あらゆる段階で保護することが重要だと述べた。

このようにUGCを中核としたオンラインサービスは様々な問題を抱えているが、Brendan氏は今後も推進していくべきだし、マイクロソフトとしても力を入れているという。その理由として氏は、「活気があり、予想を上回る売り上げがある」「スポンサー収入が期待できる」「実際にゲームジャンルが広がる」などを上げた。また現在でも「プロジェクトゴッサムレーシング3」「あつまれ!ピニャータ」「Halo2 Vista」「Shadowrun」「Forza2」の各オンライン機能は、同一のプラットフォームに構築されている。こうしたプラットフォームはXbox Liveと密接に関係していることから、Xbox Liveサーバープラットフォーム(XLSP)と呼ばれている。

マイクロソフトでは今後もXLSPを用いた新機能をタイトルに実装していく予定で、直近では「Halo3」におけるリプレイ再生サーバや、「プロジェクトゴッサムレーシング3」のコンテンツサーバなどが予定されている。XLSPを利用したタイトルは現在のところファーストパーティに限られているが、現在サードパーティが活用できるように改良している最中だと説明された。今後はLIVE対応と同じように、XLSP対応がXbox360で当然となる時代が来ると思われる。

日本では一般的に、ツールを用いてコンテンツを作り出すような、創造性のあるユーザーは少ないと言われているが、「Forza2」の「痛車」に見られるように、適切なツールと環境などが与えられれば、その限りではないことがわかる(それが適法か否かはさておき)。これにはYouTubeやブログなど、コンソールやゲームの枠に囚われない、多くの外的要因が影響を及ぼしたことは言うまでもない。「Forza2」はオンラインゲームを巡る、こうしたさまざまな環境がクロスした、節目のタイトルだったといえる。これまでコンソールゲームはコンソール内だけで完結する点がメリットとされてきたが、今後のゲーム開発においては、当初からこれらの要素も考慮することが求められそうだ。
《小野憲史》
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