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Shoot it! - #038 日本Eスポーツ協会への期待

8月13日にソウルで開催されたInternational E-Sports Symposiumに、日本Eスポーツ協会準備委員会から代表者が出席した。日本でのアナウンスが何もなく、いきなりソウルでデビューしたことが寂しいけれど、ともかく日本でEスポーツを代表する組織が作られつつあることは歓迎すべきことであり、どのような形で成就するか見守りたい。

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日本Eスポーツ協会はEスポーツ選手の活躍の場を広げるはずだ
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8月13日にソウルで開催されたInternational E-Sports Symposiumに、日本Eスポーツ協会準備委員会から代表者が出席した。日本でのアナウンスが何もなく、いきなりソウルでデビューしたことが寂しいけれど、ともかく日本でEスポーツを代表する組織が作られつつあることは歓迎すべきことであり、どのような形で成就するか見守りたい。

日本Eスポーツ協会はEスポーツ選手の活躍の場を広げるはずだ


日本Eスポーツ協会は日本においてEスポーツ活動を自ら実施し、あるいはEスポーツ活動をする人を支援する組織だ。日本のEスポーツを代表し、社会に対してEスポーツを広めていく役割も持っている。他のスポーツ協会の多くがそうであるように、公式競技として地方予選から全国大会を独自に開催していくことになる。協会が認める公式競技から世界大会の代表者を選出するという認定機関でもある。このほかに、Eスポーツ大会を開きたい人を応援する活動やEスポーツの指導者や審判員の養成なども行われていくことになるだろう。

日本Eスポーツ協会など無くてもEスポーツ大会は開催できるし、世界大会の日本代表も選出できる。確かにその通り。しかし、Eスポーツをもっと盛り上げていくためには日本Eスポーツ協会が必要なのだ。Eスポーツ協会への参加者の協力も必要になる。Eスポーツ協会があると、日本のEスポーツがどれだけおもしろくなるか考えてみよう。

まずは国内公式大会の開催だ。地方予選から決勝大会へ、日本のEスポーツの最高峰として君臨すべき大会が行われる。この大会にエントリーする選手たちはEスポーツマンとしての自覚を持ち、スポーツマンシップとフェアプレイの精神で闘うことになる。その姿がゲームとスポーツの違いを示してくれることを期待する。

それを含めてEスポーツの社会的認知の向上だ。Eスポーツについて知ろうと思ったとき、今まではネットで検索し、私を含めた様々な意見や理論を読み通す必要があった。これからはそうした疑問に対する答えはEスポーツ協会が公式見解として用意することになる。もちろんEスポーツとは何か、どうあるべきかという議論は引き続き様々な人が語っていくだろう。協会にはそれらの意見を集約し、一定の見解を広報する役割を持つ。

その次に着手すべきはEスポーツの地位向上である。これは対戦ゲームの地位向上と置き換えてもよい。「相手を尊敬して闘う」「礼に始まり礼に終わる」という【精神】、チームワークやクラン活動による協調性やコミュニケーション能力の【鍛錬】、国際大会や国際対戦による国境を越えた【交流】といった、今まで私たちが唱えていた対戦ゲームのメリットはいくつもある。こうしたEスポーツのメリットが『教育』というひとつのキーワードに集約されるのだ。大人から子供への教育指導という狭い意味ではなく、すべての世代が試合や練習を経験し、そこからスポーツマンシップを学び取っていけるということを正々堂々と主張し、社会に対して貢献していく。その役目もEスポーツ協会が担うべきだ。

Eスポーツの地位向上と教育というキーワードによって、今まではゲームの教育的な価値が評価されなかった学校でEスポーツクラブの創設を促していく。Eスポーツ協会が啓蒙していくことで、ゲームが上手い子も個性として尊重され、ピアノが弾ける子、絵が描ける子と同じくらい尊敬される。その個性を伸ばすことによって、未来のクリエイターが育つことにも期待できよう。

Eスポーツの地位向上の目標は、やはり国際競技最高峰のオリンピックへの参加だろう。あるいは自動車のFIA、サッカーのFIFAのような国際大会への参加だ。日本Eスポーツ協会の活動の意味は日本国内向けだけではなく、国際協議会へ参加できる組織になることである。

私はかつて、オリンピックに詳しい人に日本代表選考について聞いたことがある。日本代表派遣については実にシンプルな考え方で決まるそうだ。それは「メダルを取れる可能性がある」かどうか。もし将来、Eスポーツがオリンピック競技になったとして、日本代表となるためには「メダルを取れる選手」を育てる必要がある。それも、Eスポーツ協会の会長が「メダルを取ってきます」と言うだけではダメだ。納得できる根拠を提示しなくてはいけない。そこで鍵になる要素が、世界統一団体の大会で上位の成績を収めていることである。

これをEスポーツに照らし合わせると、Eスポーツをオリンピック競技にするには、日本Eスポーツは協会だけの問題ではないこともわかってくる。Eスポーツは日本統一団体どころか、世界統一団体が無い。WCG(WorldCyberGames)を初めとする世界大会はいくつもあるけれど、これらは参加者の多国籍ぶりから「事実上の世界大会」と認められているだけで、世界のEスポーツ協会を代表する公式大会とは言えないのだ。そもそも、Eスポーツを国内で統括する組織がある国も韓国や中国などほんの僅かである。

私は日本のEスポーツを「欧米やアジアに比べて発展途上」だと感じていた。しかし、他のスポーツから見れば、実はEスポーツ自体も世界統一団体を持たない発展途上のスポーツだと言える。オリンピックスポーツになることだけが至上だと言うつもりは無いけれど、世界的規模で各国のEスポーツ協議会が連携していくという方向は望ましい。そうした意味からも「2007 International E-Sports Symposium」は重要な会議であり、そこに日本代表の名があることに安心する。これは国際大会に選手を派遣することと同じくらい意味のあることだ。世界のEスポーツ関係者がひとつにならなくてはいけない。そのためには、各国内、もちろん日本のEスポーツ関係者も団結すべきだ。

いま、日本と世界のEスポーツは重要な局面を迎えている。日本のEスポーツ普及のため、国際的なEスポーツの発展のためにも、日本Eスポーツ協会の早期立ち上げが望ましい。では、そのために私たちが何をすべきか。9月20日から始まる東京ゲームショウで本格的な会員募集活動が始まるようだ。Eスポーツの素晴らしさを理解し、もっと活動しやすくするために、ぜひ会員となって活動しよう。クランを超え、企業を超え、日本のEスポーツのために成すべきことをしよう。
《杉山淳一》
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