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宮本茂氏インタビュー(前編)

Computer And VideoGamesに掲載されている宮本茂氏インタビューの前編です。『パックマン』の話からゲーム感、そしてリアル版『ゼルダの伝説』を匂わせる発言など見所沢山。

任天堂 その他
Computer And VideoGamesに掲載されている宮本茂氏インタビューの前編です。『パックマン』の話からゲーム感、そしてリアル版『ゼルダの伝説』を匂わせる発言など見所沢山。


―――パックマンで一番関心させられたのはどの部分ですか

最も良いと思う点はとてもシンプルなゲームということです、このシンプルは多くの人たちをゲームなに入り易くしました。私がゲームを作るとき、プレイヤーが何をしたら良いか分り易くすることが大切だと考えました。またそうすることで、プレイヤーが何を終わらせたか、何に失敗したかが良く分ります。

私達は当時このようにゲームを作っていました。しかし、長い年月が経ちユーザーはシンプルなゲームプレイやルールでは満足しなくなり、ゲームは複雑になっていきました。ハードウェアやグラフィックの進化でそれは加速しました。ある点ではゲームは良くなったと言えますが、同時に多く人がそれを遊ぼうとはしなくなりました。

パックマンは同じシステムでもまだ面白さを感じるゲームだと思います。一部の人は現代の他のゲームのように豪華な要素を持っていないので退屈するかもしれませんが、まだ面白さのコアは失われていません。これにコネクティビティの要素を加えることで、既に多くの人が楽しんだゲームにこれまでにない新しい要素と新しい体験が実現できます。

単純化された面白さと、パックマンでなくその後を追うゴーストを体験するような新鮮さを楽しむ事が出来ます。任天堂がコネクティビティで他の開発者やサードパーティに見せたいと思っているのは、より複雑で美しいゲームを作る必要は無く、コネクティビティのようなシンプルなシステムを持つゲームや、非常にシンプルなゲーム性を持ったゲームでもユーザーを楽しませ興奮させられるということなのです。

それで私達は変えない事に焦点を置いています。オリジナルのゲームの何処が優れていて何処が悪かったかという事も見てません、オリジナルのコンセプトを変えずそこにコネクティビティの要素を加えて、ユーザーがオリジナルのゲームを遊んだ時に感じた感覚をもう一度、というのが私達のしている事です。1つだけ変わった所はゲームキューブで3Dになったという事でしょうか、他にもいろいろオプションは付きますがまだ秘密です!

―――メトロイドはこれまでのところ最も成功したゲームキューブタイトルです。私達は続編に何を期待したらよいでしょうか。

私達が『メトロイドプライム』でしたのは各地に散らばっていた開発者やプログラマをレトロスタジオに集めた事です。全てのメンバーが一緒に仕事をするのは初めてで、私達は本当にこのチームがどんな長所や短所があるのか全く分りませんでした。

『メトロイドプライム』は最初のプロジェクトとしてとても上手く行きました、またこの経験からどんな長所があるのかも分りました、、、『2』についてあまり多くは喋れませんがこの経験を生かし新しい長所を発見しながら、もっともっと良いゲームを作ってくれるのではないかと思っています。

そしてもちろんチームは多くの評価や賞を獲得した事をとても喜んで、次のゲームを作る事に興奮しています。前作で付けられなかったマルチプレイヤーモードを含めるのは確実でしょう、しかしネットワークに対応するかは分りません!(笑)

―――あなたは任天堂のチャレンジの1つは暴力表現なしに『Grand Theft Auto: Vice City』のように興味をそそるゲームを作る事だと言いました。具体的なアイデアはありますか。

今年の焦点はコネクティビティの可能性を示す事で、そういう意味で『Grand Theft Auto』に対するゲームは見せられていません。来年か再来年になるでしょう。今年はコネクティビティによって他には無い楽しみを実現できて、それによってユーザーにアピールするであろうタイトルを集めました。

私は『ピクミン2』が私達が持つ今年最も面白さを提供出来るゲームだと思います。オリジナルにあった時間制限を無くした事で、ゲームの自由さが広がりました。もちろん『GTA』と『ピクミン』では大きく異なるゲームです。しかし根底に流れる自由さというアイデアは2つのゲームをヒットさせた要因の1つではないかと思います。

―――小島秀夫氏について聞きます。彼はゲームは商品だと言いました。彼は自分自身をどう見ていますか、アーティスト、プロデューサー、商品?(なんか違うな、、、答えと離れてるし)

他の人がどう見るかは置いておいて、私は自分が作るゲームは売る為の商品だと思っています、芸術作品ではなく。ゲームは自分の持つ考えや表現をフルに注ぎますが、結局の所、目的はユーサーを幸せにする事です。ゲームを作るというのは自分の思うように開発するだけではなく最終的にはマーケットに投入するものなので、単に自分の思いを入れるだけでなくユーザーを本当に幸せにするようなものにしなくてはいけません。

ゲーム開発者であることは、創造性やデザイナーとしての才能が必要とされます、しかし同時に彼らが作っているのは最終的に消費される為の商品です。

多くの人々は単にゲームを、続編、続編、また続編と代わり映えの無い物を作っていきます。私達がマリオゲームを作る時はまずアイデアや創造性を注ぐ事から始めます。それで以前のマリオと今作っているものは異なるゲームになります。そういう意味で開発者である事は多くの芸術的な表現を持ち、自分の創造性に触れそれをゲームに生かす能力が必要と言えます。しかし私はゲームが芸術だとは言いません。

ゲームは多くの芸術的な要素を持っています。しかし同時にゲームの究極的なゴールは可能な限りのユーザーにゲームを届けるという事なのでゲームシステムをデザインする時にあまり多くの芸術要素を入れるべきではないでしょう。私達がゲームを作る時に、私は絵で示して「こんなゲームを作りたい」なんて事はやりません、まずシステムの骨格やコアになる要素から詰めていくのです。

ちょっと違う話になりますが、オペラは非常に興味深く面白いものです。人々はオペラは「芸術」だと考えます。しかし一度見てみるとそれはエンターテイメントだという事に気がつきます。もちろん昔脚本を書く時は、ちゃんと書いていたと思うんです。でも時には即興で作って演じて、その後に完成させるような事もあったと思うんですね。同じようにゲームでも素晴らしいストーリーがあるんだけども、それがゲームとちゃんとマッチしてない、例えばストーリーが削られたり、その他のマーケット的な理由によってね。

―――しかし全く自分の好きなようにマーケットを無視して開発すると良くないことになりませんか。

結局の所、私が作りたいのは何かユーザーを幸せにするようなものなのでそれがマーケットと大きく外れているという事は無いと思います。しかし一方でマーケットに対して「どんなゲームが欲しい?」と尋ねて会社に帰ってそれを開発すると言う事はありません。なぜなら必ず「うーん、今売れてるもの」という返事しか返ってこないからです。

―――マイクロソフトはオンラインに注力する姿勢を明確に示しました。任天堂がビジネスとしてオンラインを行わない理由と、オンラインに対する個人的な考えを聞かせてください。

任天堂はオンラインに全く興味が無いとは行ってませんし、ゲームデザイナーとしてはもちろんオンラインで何かやりたいと思っています。私達が言ってるのはビジネスとしてオンラインはまだ実現可能な事では無いという事です。これからそれが実現できる環境が整うまでオンラインをやるつもりはありません。

しかし任天堂は今年のE3でLANによって8台を繋いだ『マリオカート』を見せました。会場では見せませんでしたが『カービィのエアライド』もネットワークケーブルに対応しています。また『どうぶつの森e+』では3Dメモリーカードを使ってインターネットを通じてデータを交換出来るようにします。

エンターテイメンとは何か面白いことの事です、ルービックキューブはその良い例です。それは店で思わず手に取ってしまったり、ショーウインドウで見かけて思わず「面白そう」と声を上げてしまうようなものでした。歩きながら遊べて20ドルで買えるものでした。そして誰にでも簡単に楽しめるものでした。

しかしインターネットは誰にでも出来るとはまだ言えません。まだまだ多くのアクセス出来ない人が居ます。私はエンターテイメントで最も重要なのは誰にでも与えられるという事だと思っていて、それで任天堂は限られた一部のユーザーをターゲットにする事は無いと思います。

―――NSWにてセルシェイドのゼルダを発表してから、『マオサンシャイン』を発売した頃から、ずっとそれぞれもう1タイトルずつ作っているという噂があります。

噂で言われるような意図でやっているわけではありませんが、情報開発部は常に多くの実験をやっています。そういう意味でリアルなゼルダとセルシェイドのゼルダを作っているという噂はいくらか正しいと言えます。

マリオについて言えば確かにNSWで見せた『マリオ128』デモを開発しました。また別に『マリオサンシャイン』の実験も行っていました。それはユーザーが求めるものを全く考えず自分の作りたいものを作ろうというものでした。

セルダやマリオについて次に何を作るかという具体的なプランはありません。ただ、今やっている色々な実験を見ながらそこから次に作るものを見つけるつもりです。

次にどんな物を作るという事は言えません。しかしグラフィックは複雑になり多くの開発期間が必要とされるようになってゲームを開発する事は段々と難しくなっています。私達が既存のサンプルやモデルなどを改善して新しいゲームを構築するチームを持っているのは確かです。また私達は専らまだ見たことが無いような新しいアイデアを作ろうというスタッフも抱えています。

―――岩田氏は次の数年間、任天堂の戦略の基礎は強力なフランチャイズになると言いました。次のゼルダやマリオはいつごろ期待出来ますか。

今、私達は『風のタクト』向けに開発したシステムを次の作品でも使う事を考えています。また『ソウルキャリバー2』ではリアルなリンクを実験しましたが、このようなリアルなリンクを見たがっている人が沢山居ることも知っています。

『マリオサンシャイン』のエンジンを使って続編を作るのはとても簡単に出来ます。しかし今私達が考えなくてはならないのはどこに焦点を当てれば本当に楽しいゲームが作れて、もっともっと多くの人に楽しんで貰えるか考えるという事です。


以上、宮本茂インタビュー with Computer And Video Games(前編)でした。続きは今日か明日中には掲載します。あまり自信の無い部分もあったりしますが、そんなに大意として外れている部分は無いと、、、思います。
《土本学》
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