E3の帰り、ロサンゼルス空港のバーでのことです。偶然にもアジア地域で日本のテレビゲーム機の輸出を手がける貿易商と知り合いになりました。彼の担当エリアはシンガポールからタイ、インドネシア、インド、そしてドバイからサウジアラビアまで。中でもドバイではニンテンドーDSがホットだと語っていました。
一方、2年ぶりに復活した「E3」ですが、一見華やかな会場の舞台裏で、パブリッシャー間の激しい生き残り競争が感じられました。エキスポに巨大ブースを構えた企業のうち、来年何社が生き残るかといった声も聞かれたほど。今後も大規模な再編劇が続くと見て、間違いなさそうです。
会場では主催団体のESAから最新の市場情報も発表されましたが、アメリカのゲームソフト販売ランキングでWiiがトップ4位を占め、大作RPG『フェイブル2』よりも、カジュアルガンシューティングの『リンクのボウガントレーニング』が販売本数で勝ったのを知り、驚かされました。利益率は桁違いで、投資家としての判断は自明の理です。
マイクロソフトとSCEAが共にモーショントラッキング技術を用いた新デバイスを発表し、任天堂も脈拍センサーを発表するなど、インターフェース競争が目立ったハードメーカーのメディアブリーフィングでしたが、任天堂、マイクロソフトが共にfacebook対応を打ち出すなど、新しい流れも見受けられました。さらに会場を一歩出ると、iPhoneユーザーが街中でそこらかしこで闊歩しています。
不況に強いと言われるゲーム業界。E3会場の華やかさだけを見ていると、未来は安泰と感じがちですが、ここだけが特別な「温室」なのでしょう。今後景気が回復したとしても、かつてのようなハードメーカー三国志といった事態は、もはや過去のものになりそうです。個々のゲームの良さを見きわめる「蟻の目」と、広く業界全体を俯瞰する「鳥の目」の両方が必要だと、改めて感じさせられた今年のE3でした。
小野憲史
フリーライター/ゲームジャーナリスト。「ゲーム批評」編集長を経て、現在はフリー。共著に「ニンテンドーDSが売れる理由―ゲームニクスでインターフェースが変わる」など。
※インサイドでは7月1日よりゲームビジネス専門メディア「GameBusiness.jp」を立ち上げます。ゲーム開発、市場、人材、流通の明日を切り開くオンラインメディアをお楽しみに。
編集部おすすめの記事
ゲームビジネス アクセスランキング
-
アバターの口の動きがより滑らかに!音声認識リップシンク「CRI LipSync」が「Animaze」に標準搭載
-
ゲームコントローラーの市場規模、2027年に29億7350万米ドル到達予測─技術的進歩や新型コロナの影響で
-
「Alienbrain」と画像管理ツールの融合でゲーム開発が「見えるようになる」
-
スクウェア・エニックス時田氏・鈴木氏、Tokyo RPG Factory橋本氏がゲーム企画から就職までを語る―ヒューマンアカデミー「ゲーム企画塾」第1回レポート
-
令和に新作ファミコンカセットを自作!その知られざるテクニック&80年代カルチャーを「桃井はるこ」「なぞなぞ鈴木」らが語る【インタビュー】
-
DeNA守安社長、プロ野球買収について「なんとか参入に漕ぎ着けたい」・・・3つの狙いを明らかに
-
シフトがWW向け新作アクションRPGを開発中と明らかに!『ゴッドイーター』や『フリーダムウォーズ』を手掛けたスタジオ
-
ゲームプロモーションは何が大事? ネクソン最新作「カウンターサイド」担当が語る“今やるべきプロモーション術”
-
ポケモンUSAの社長が交代
-
ゲーム会社の総合力とソーシャルの融合・・・躍進するKONAMIのソーシャルコンテンツ(1)