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『スペースインベーダーエクストリーム2』アオキプロデューサーに聞きました

『スペースインベーダー』がスタイリッシュになった『スペースインベーダーエクストリーム』。海外で評価の高い作品ですが、続編が発売されることとなりました。発売直前にプロデューサーのアオキヒロシ氏にお話を伺いました。

任天堂 DS
『スペースインベーダー』がスタイリッシュになった『スペースインベーダーエクストリーム』。海外で評価の高い作品ですが、続編が発売されることとなりました。発売直前にプロデューサーのアオキヒロシ氏にお話を伺いました。


―――まず前作に関してお聞きしたいのですが、開発はどれくらいの時期からスタートしていたんですか?

アオキ:話を出したのは2007年の頭くらいでした。『スペースインベーダー』(以下『インベーダー』)が翌年(2008年)に30周年を迎えるということで、各部署で色々動きつつあったんですが、CS開発部として『インベーダー』をのコンシューマソフトの発売計画がないのはおかしいなと思ったのが発端でした。
『スペースインベーダーエクストリーム』(以下『SIE』)は上司からの指示で作ったと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、開発スタッフが自発的に取り組んでいます。

―――『インベーダー』を開発することに対し社内スタッフの反応はいかがでしたか?

アオキ:最初からやる気があったのは私だけでした。『インベーダー』は正直、アレンジしにくい。シリーズは今までにも沢山出過ぎていて、部下のモチベーションも上がりにくかったんです。ただ、『SIE』には私的にビジョンがあったんです。「クールで、インベーダーのデザインをスタイリッシュに持ち上げて、ノリがいいゲームにしたい」という話を部下にしたら、やっとやってみようかという話になりました。部下の説得からスタートした企画でしたね。

―――発売後の評判は良かったですよね。

アオキ:ありがとうございます。購入して頂いた方の8〜9割には「面白い」と言って頂けました。「また『インベーダー』かよと思って買ってみたら全然別もので面白かった。こういうゲームをもっと出して欲しい」という好意的なご意見が多かったですね。
反面、ゲームファンの『インベーダー』に対する偏見みたいなものも感じました。
今のゲーマーは『インベーダー』をあまり歓迎してない風潮があるように感じられます。『SIE』も昔のものと同じように思われていたのではないかと。『スペースインベーダーエクストリーム2』(以下『2』)を作ったきっかけはまさにそれです。『SIE』はスタッフ的にも納得いくできだったので、この面白さを伝えたかった。

―――今回は体験版を配信されてますよね。

アオキ:『2』では体験版を配信しています。『SIE』も触って頂くと良くできていることは分かって頂けるんですけれど、諸事情で体験版を作れなかったんです。

―――『2』を作る前はいかがでしたか?

アオキ:作るかどうか悩んでいたところはありますが、背中を押してくれたのは海外の業績でした。評価も高いし売れてもいる。GOを決めたのは昨年9月でした。開発部隊は温度が高いので、やるかやらないかやきもきしたと思います。改良版という開発スピードを重視した案もありましたが、最終的には練り込んで作ったものをリリースしようということになりました。

―――短めの期間での開発だったと。

アオキ:超タイトですね。前作よりも全然短い。

―――何人くらいでの開発だったんですか?

アオキ:必要最低限に抑えたメンバー構成にしました。企画一人、グラフィック一人、ソフト三人。音楽はZUNTATAのコンポーザー一人と外部に三人。背景部分は外部のクリエイターにやっていただきました。社内のメンバーは全員、前作と同じなので作業内容が明確でした。昨年9月以前の準備期間に構想を練ることができたのも大きかったです。

―――今回はDS版だけとのことですが、主にどの部分を工夫されましたか?

アオキ:『SIE』はフリッパーピンボールをベースにゲームデザインをしたんですが、フリッパーピンボールになりきれてないと思うところがありました。「ラウンド」というミニゲームがあるのですが、前作ではラウンドが起きるとプレイフィールドが別世界のように変化します。この仕様はゲーム的な流れが一度止まってしまうという問題点と同時に、ゲームフィールドが別物になるのはピンボールらしくないという悔いのようなものがありました。そこでヒントにしたのが昔のピンボール台なのですが、スコアを表示するパネル部分にもゲームフィールドがあるものがあったんです。その台はターゲットに玉を入れるとパネルに玉が移動して、そちらでゲームが進行するようになっていました。今回のラウンドはそのことをヒントにして、上画面に持っていきました。個人的には前作よりピンボールっぽくできたんじゃないかと思っています。

―――今回のフィーチャーである「ビンゴシステム」に関してお聞きしたいのですが。

アオキ:「ラウンド」をクリアするとビンゴパネルが点灯するので、それを揃えるというシステムです。ラインを揃えるためにどこを狙うか計画できるので、「ラウンド」が独立していた『SIE』より遊びのサイクルが長くなっています。これはメダルゲームの大型プッシャーがヒントになっています。今の大型プッシャーは「ジャックポットを当てる」という最終的な目的のために布石を置くシステムです。チャッカーにコインを入れたり、スロットを回したり。『2』は「ラウンド」をクリアすることが布石に当たります。

―――「ビンゴシステム」が複雑にならないかという危惧があるんですが。

アオキ:複雑だとは思っていますが、遊びの流れはイメージしやすいので心配はしていません。これは作り手のワガママな部分ですが「ゲームが面白かったら遊び方を見つけようとして頂けるのではないか?」と考えています。勿論、見つけて頂くために調整はしています。『SIE』でも「フラッシングUFO」を呼ぶ条件を自然に見つけられるよう、敵の配置を調整しました。

―――試行錯誤はありましたか?

アオキ:「ビンゴシステム」は最初からあったものでしたが、ラインを揃えてもパネルが消えないようにして、パネルを全て点灯させるのを目的としていた時期がありました。今はラインを揃えると消えるので、複数ラインを同時に揃える苦労を評価するシステムになっています。「フィーバー」の際にアイテムが落ちて来るのはスタッフからのアイデアです。最初は『SIE』と同じ落ち方をしていましたが、メダルが落ちてくるイメージに変更したりもしました。開発に当たってスタッフにはメダルゲームを遊んでもらったのですが、そこから彼らなりに何かを掴んでくれた結果です。

―――『SIE』は直線的に面白くなるというより、分かってくると面白くなるゲームだという印象があります。

アオキ:『SIE』は奥が深いゲームですが、「派手なパワーアップ」「音楽に乗ってインベーダーを倒す」という直感的な要素が底辺にあるので、そこを楽しんで頂ければ嬉しいです。時間つぶしとして、5分遊んでおしまいでもいい。そのために、たまにカートリッジをさして頂くだけでもこのゲームの価値はある。

―――『SIE』の魅力であるスコア稼ぎに関してお聞きしたいのですが。

アオキ:「簡単だけどスコア稼ぎを意識すると途端にハードルが上がる」と評価されることが多いのですが、これは意図通りです。シューティングは慣れてくると最初のステージが退屈になったりしますが、序盤から気を抜けないゲーム、最初からパーフェクトを狙うために失敗したら即リセットしたくなるゲームにしようという意図がありました。

―――『インベーダー』への偏見をどう考えられますか?

アオキ:『インベーダー』が毎回アグレッシブな作品であったら、状況は違ったと思います。だから『SIE』に旧作の『インベーダー』は絶対に入れたくなかった。旧作を作るのではなく発展型を作りたいという主張があり、マンネリ感を打破したかったのです。

―――インベーダーのデザインが旧作に準拠していたのが印象的でした。これは最初の時点からのコンセプトでしたか?

アオキ:「インベーダーのデザインを崩すな」が絶対条件でした。インベーダーは代替えの効かないキャラであり、変えることはウリを放棄すること。モデルチェンジでSFロボットのようにするのは何か違う。欧州での『スペースインベーダー アニバーサリー』の発売イベントでは、日本と海外でインベーダーに対する見方が違うと肌身で感じました。海外ではインベーダーはクールなもの。ノスタルジックではなくスタイリッシュにいくべきで、スタイリッシュに作れば絶対成功するという確信がありました。

―――ノスタルジーで昔のままのデザインにしているのではない?

アオキ:ノスタルジーではなく、決して消してはいけないデザインだっただけです。『SIE』では外部のデザイナーさんとお仕事させて頂いたのですが、ゲーム業界の人とは違ってアートとして捉えている。『インベーダー』に携われることを喜んで下さった。アートに入った『インベーダー』ではなく、ゲームにアートを取り入れたかった。

―――『2』の狙いはどんなところにありますか?

アオキ:今回の狙いは「Cool&Pop」。ファンシーすぎない&クールすぎないということです。『SIE』がスタイリッシュな男の子向けゲームになりすぎたという反省で、格好良さを追求した反面、女性は絶対に買わないだろうということに発売後に気づきました。

―――今回のステージ構成はどういったものですか?

アオキ:ゲームの歴史を紐解く構成になっています。8ビットから始まって、技術が進歩してポリゴンになって、最後は萌えの世界。萌えの世界にはZUNTATAのイメージを覆す、凄い曲を用意しています。リミッターを外した『2』ならではのチャレンジャブルさですね。

―――音楽はどんな感じになっていますか?

アオキ:テーマとシンクロさせるというよりは好きに作って頂いてます。ZUNTATAの小塩(広和)がサウンドディレクションをやっていて、『SIE』DS版のゲームミュージックっぽさとPSP版のクラブミュージックをあわせたようなものになっています。

―――サントラは発売するんですか?

アオキ:今のところは未定ですが、ZUNTATAでは出したいと希望していますね。

―――サントラを出して欲しい、という人はどうすればいいですか?

アオキ:売れればサントラ発売への弾みになると思います。あとはアンケートサイトでサントラを希望して頂くとか。

―――今回も対戦モードはありますか?

アオキ:ソフト1本で対戦できます。『SIE』では引き分けになることが多かったですが、『2』ではちゃんと決着が付くようになっています。相手にボスUFOを送ることができますし、ボスUFOを送った後に自分の側でUFOを落とせば追加攻撃をさせられます。

―――DSiウェアに興味はありますか?

アオキ:容量との戦いになりそうですよね。今のところはちょっと考えていません。

―――今後のパッケージ販売はどうなると思われますか?

アオキ:パッケージは無くならないと思っています。ゲームが好きな人はソフトを形として持っておきたい。設定資料集やサントラといったコレクション要素を付けやすいタイトルはパッケージの方が人気が出るでしょうね。

―――追加ダウンロードはありますか?

アオキ:ありません。このカートリッジ1枚に我々の全てが入っています。

―――ダウンロード販売には興味はありますか?

アオキ:個人的には楽しいと思いますし興味はあります。

―――『2』をどんな人に遊んで欲しいですか?

アオキ:女性と『SIE』をやってない人です。アイテムがキラキラ光りながら落ちてきたり、「スーパーフィーバー」の際に黄金色になったり、女性を意識した演出を多く入れています。女性が手に取りやすいゲームやパッケージにして敷居を下げる試みもしています。『SIE』も女性がハマったというお話が多かったです。25周年の際にオープンしたアンテナショップも女性の企画ですし。

―――『2』を遊ぼうと思っている人に一言お願いできますか?

アオキ:誰でもエンディングにいける「ビギナーコース」を用意しています。残機が減りませんし、敵が弾をほとんど撃たない、仮免許的なコースです。シューティングをやったことがなくても大丈夫です。『インベーダー』のいいところはよける方向が左右しかなく、敵の弾も真上からしか来ないところだと思っています。シューティングを遊ばない人に一番入りやすいのが『インベーダー』じゃないかと思います。

―――では、最後に『SIE』を遊ばれてない方に一言お願いできますか?

アオキ:誰でも遊べることは確かです。見えてくると底が知れない魅力もありますので、自分のペースで遊んで頂ければ幸いです。

―――本日はありがとうございました。
《水口真》
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