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【GDC 2009】面白いタイトルをしっかり売るには!? レベルファイブのプロデュース術を日野社長が大公開

俗に隠れた名作と言われるような、内容は面白いのに売れなかったゲームというのは世の中に五万とあります。しかし、いかに名作でも売れなければ多くの人には伝わらないし、開発者もハッピーでないし、次のゲームを作る資金も得られない、ではいかに。

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俗に隠れた名作と言われるような、内容は面白いのに売れなかったゲームというのは世の中に五万とあります。しかし、いかに名作でも売れなければ多くの人には伝わらないし、開発者もハッピーでないし、次のゲームを作る資金も得られない、ではいかに。

滅多にない日野社長の講演ということもあって海外からも多数の参加者がありました入場の列はまるで基調講演に来てしまったかのようでした


受託開発を中心とするデベロッパーとして成長し、2007年に『レイトン教授と不思議な町』でパブリッシャーとなったのも束の間、昨年は『イナズマイレブン』を成功させ、新たなる10年を踏み出した今年はデベロッパーとしては『ドラゴンクエストIX』があり、自社では『二ノ国』や『ダンボール戦機』『うしろ』など注目タイトルが目白押し。そんなレベルファイブの日野晃博社長が、いかに売れるゲームをプロデュースするかというレベルファイブの考えを披露しました。

まず日野社長はレベルファイブの紹介をしながら、これまでに開発してきた21タイトルの日米欧3地域での平均出荷本数は184万4000本という衝撃の数字を披露します。日野社長はレベルファイブを「毎回ヒットを飛ばすイチローのようなゲームメーカー」と喩えました。

過去の作品1平均受け上げはなんと


そしてその秘訣は、企画段階から制作者もプロモーションや、そのゲームにどんな魅力があるのかを考えて制作を進めていく点にあると日野氏は話しました。その中心となるのが「キャッチコピー」と「ブームトリガー」というポイントです。

■キャッチコピー プランニング

キャッチコピーはこの場合、キャッチコピーそのものというよりは、キャッチコピーにできる要素と考えた方が適切かもしれません。

1.レイトン教授の場合

レイトン教授の場合に武器となったキーワードは「謎解きとストーリーの融合」「1200万部の多湖先生の監修」「映画級のアニメーションと声優」です。レベルファイブの場合は、発表会を効果的に使っていきます。そこでは大体の場合ゲームのPVが上映されるのですが、日野社長によれば、PVはゲーム開発の初期段階で、着地点を見据えて大胆に制作し、むしろPVに近付けるように開発を進めていくというスタイルを取るそうです。講演で日野社長に並んで登壇したプログラム担当の熊谷氏も「PVができた段階でチームの全員が世界観を共有できる」と評価していました。

そしてゲームが完成すると、前述の3つのキーワードを最も受け入れるだろう層、レイトンの場合はパズルゲームであり、女性が好むであろうタレントを起用したこともあって、普段はゲームを余りプレイしないような女性にターゲットを絞ってプロモーションを展開しました。的確なキーワードで、的確な層にアピールすることで、レイトン教授シリーズは国内外で累計365万本以上というセールスを記録しています。

2.イナズマイレブンの場合

一方で昨年発売した『イナズマイレブン』はレイトンとは全く異なる形で、「漫画やテレビアニメとの完全連動」「笑いが出るほど非リアルな技」「1000人以上の収集可能なキャラクター」というキーワードを企画書の段階から用意していたそうです。日野社長は、多くのキャラクターが登場する点について、作っている途中で面白いキャラクターが増えて結果1000人になったのではなく、最初の段階から「数字のインパクト」や「長く遊べる感」を狙って1000人というのを明確にしていたと説明してくれました。

これらのキーワードを魅力的に思う層ということでターゲットとなったのは8〜11歳という低年齢層です。人気の漫画雑誌やテレビアニメとのコラボレーションで訴求していきます。『イナズマイレブン』はレベルファイブのタイトルの中では、現時点で32万4000本と、それほど多い数が出ているわけではありませんが、メディアミックスで継続的にアピールしている甲斐があって、まだ週間5000本前後で推移していて、今後発売する続編ではスタートから期待が持てるのではないかということでした。また、キャラクターグッズが非常に好調で、ゲーム以外でのビジネスも大きくなっていると指摘していました。

3.二ノ国の場合

DSなどで発売予定の『二ノ国』はレベルファイブ10周年記念作品として、スタジオジブリがアニメーションを、久石譲氏が音楽を担当するというゲームです。ただ、当初は10周年を記念した「売れなくても意義のあるゲームを作ろう」という事でスタートした企画だということで、戦いを描いたゲームが多い中で「戦わずに冒険する」や、「魔法の本を本当に手に持ってプレイする」といったところをキーワードにしていたそうです。それがスタジオジブリとのコラボレーションが決定したことで、全てのウリはそことなったと日野社長はコメントしていました。


これらの事例から分かるように、一般的にゲーム開発とプロモーションというのは分離されていて、ゲームを開発した後に、生まれたアピールポイントをプロモーションに活用していくスタイルを取るところを、レベルファイブの場合はゲーム開発者が企画書を書く段階からプロモーションやPVで使う言葉までイメージして明確に定めて制作に入っていきます。日野社長は「面白いけど売れないという不幸な作品は本当に勿体ない。企画する段階、作る段階から企画者や開発者がしっかる売ることを意識して作れば、面白くかつ売れる作品になる。そしてその魅力を一番受け止めてくれそうな人にプロモーションをしていくのが非常に大事」とコメント。「多くの人に楽しんで貰える可能性のあるエンターテイメントにも関わらず、そういうことを考えて作るのはヨコシマだという風潮もあるが、買ってくれるユーザーをどう楽しませるか考えるのは非常に重要なこと」と指摘していました。

■レベルファイブのもう一つの秘密


《土本学》
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