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【Shoot It】第67回 いま『カウンターストライクネオ』に必要なもの

10月18にカウンターストライクネオ全国大会『THE CLAN WAR 2』を観戦しました。場所川崎のショッピングモール「ラゾーナ」にあるゲームセンター「ヒーローズベース」でした。「ヒーローズベース」は大型のアミューズメントスポットで、プライズゲームや格闘ゲーム、対戦型ゲーム、メダルゲームなど、いわゆるアーケード筐体が揃っています。さらに、イベント用のステージまで用意されています。格闘ゲームの全国大会「闘劇」の地区予選もここで開催されています。ゲームプレイヤーにスポットライトを当てる場所を設けるとは、なかなか粋な店だと思いました。

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【Shoot It】第67回 いま『カウンターストライクネオ』に必要なもの
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10月18にカウンターストライクネオ全国大会『THE CLAN WAR 2』を観戦しました。場所川崎のショッピングモール「ラゾーナ」にあるゲームセンター「ヒーローズベース」でした。「ヒーローズベース」は大型のアミューズメントスポットで、プライズゲームや格闘ゲーム、対戦型ゲーム、メダルゲームなど、いわゆるアーケード筐体が揃っています。さらに、イベント用のステージまで用意されています。格闘ゲームの全国大会「闘劇」の地区予選もここで開催されています。ゲームプレイヤーにスポットライトを当てる場所を設けるとは、なかなか粋な店だと思いました。

『THE CLAN WAR 2』の様子


カウンターストライクネオは、PCゲームの世界的ヒット作「カウンターストライク」を当時のナムコが日本版にアレンジし、アーケード筐体に仕込むという、珍しい形態で誕生させたゲームです。当初は東京・蒲田に専門店の「LEDSZONE」を設置して運営していました。その後、LEDZONEは京都でも展開しました。しかし、その後方針が変わり、カウンターストライクネオは既存のゲームセンターで展開していきました。LEDZONE京都は約2年の稼働で終了。カウンターストライクネオの中心的存在だったLEDSZONE蒲田も今年4月に終了しています。しかし、既存ゲームセンターへの導入は進み、全国77店舗で稼働しています。シンボルはなくなりましたが、むしろ範囲は拡大し、知名度も参加人数も増えたことでしょう。

しかし『THE CLAN WAR 2』のファイナルを観戦した私は、選手たちの盛り上がりとは反対に、なにか寂しい気持ちになりました。試合はとても面白く、全国トップクラスの選手たちの戦いは白熱していました。実況も分かりやすく、試合を盛り上げてくれました。選手たちの真剣な表情、敗者チームの悔しさ、勝者チームの喜び。ここにはEスポーツのドラマがありました。それでも、私は寂しさを感じてしまった。その理由を挙げてみます。

まず、観客があまりにも少なかった。参加選手以外の観客が数えるほどしかいませんでした。LEDZONE時代のイベントは試合に関係ない常連客も集まって、ちょっとしたお祭り状態でした。『THE CLAN WAR 2』は全国大会ですし、LEDZONE蒲田店があった蒲田と川崎はJRの駅で隣同士です。蒲田に集まっていたカウンターストライクネオのファンたちが来ても良さそうなものなのに……と思いました。

次に、周囲のゲームファンがカウンターストライクネオに無関心だったことです。ステージの隣はプリントシール機のエリアでした。観客席はプリントシール機を楽しもうとするカップルや女の子のグループが横切っていきます。ステージ横にはトイレやジュース販売機への通路もあり、こちらは男性や家族連れが通ります。しかし、誰ひとりとして立ち止まってくれませんでした。ゲームの内容からして女の子が通り過ぎてしまうことは仕方ないとして、ゲームセンターを訪れる男性には立ち止まってほしかった。そこで何が起きているのか、ゲームが好きな人なら興味を持ってもらえると思うのですが。

LEDZONEが閉店して、カウンターストライクネオは中心を失ってしまった。私はまだ、そんな気持ちを引きずっているかもしれません。カウンターストライクネオの設置店舗は増えていて、プレイヤーも増えているはずです。でも、その盛り上がりが見えてこない。これはたぶん、カウンターストライクネオとそのプレイヤーたちが作るコミュニティが、コミュニティの外側へ発信していないからだと感じます。カウンターストライクネオの世界は閉じている。このままでは、新しいプレイヤーは参加してくれないのではないか。カウンターストライクネオの情報が流通していないために、興味を持つ人も、ゲームセンターに行こうとする人も少ないのではないか。そんな不安を感じます。

カウンターストライクネオはとてもよくできたシステムです。LEDZONEのように店員が初心者プレイヤーをサポートする仕組みはなくなってしまいました。しかし、公式サイトには遊び方や対戦ルールが詳しく紹介されていますし、プレイヤーやクランのステータスはリアルタイムに更新されて、自分たちの実力がいつでも解ります。とくに秀逸な仕掛けは「戦譜」のダウンロード機能です。クラン戦の結果からテキストデータをダウンロードできます。これを無料でダウンロードできる「戦譜ビューワー」で開くと、戦闘結果がテキストとマップの表示によって時系列で把握できます。これは戦術の参考になります。

「戦譜ビューワー」は秀逸なツール


初心者が迷わずに遊べる仕組み、すべてのプレイヤーがクランを作り、強さを競う仕組みができている。しかし、この面白さがなかなか「外側の人」に伝わりません。この状態では、新規プレイヤーの獲得は厳しいのではないか。時間とともにプレイヤーが減っていくことを考えると、ここでなにか強力なプロモーションが必要ではないかと思います。カウンターストライクネオに足りないモノ、それは、面白さを発信する仕組みではないでしょうか。もちろんこれは運営会社だけの問題ではなくて、カウンターストライクネオの楽しさを正しく伝え切れていない、私たちゲームライターやメディアも努力しなくてはいけません。

たとえば、グラフィック素材を無料ダウンロードできるようにして、プレイヤーやクランがブログで戦績を自慢したり、戦術の研究をできるようにするとか、クラン戦のログからムービーを再生できるようにするとか、プレイヤーたちがもっとネット上で話題を盛り上げられるような仕掛けがあったらいいかもしれません。PC版のカウンターストライクでは、プレイヤーが動画を作成し、音楽と組み合わせてかっこいいムービーを作る、という文化があります。そのムービーを観て楽しむ人もいます。

あるいは、スタープレイヤーを誕生させてプロモーションに活躍してもらったり、アニメやコミックとのタイアップもいいかもしれません。これだけのプレイヤー人口があれば、様々な才能が揃っているでしょうから、公募してもいいかもしれません。魅力あるコンテンツには、必ず魅力的なストーリーが生まれ、話題になると思います。

突飛な例えになりますが、かつて政府は地方自治体を活性化させるため、ふるさと創生基金を創設し、1億円単位で自治体にばらまきました。純金を買うとか、全額で宝くじを買って大損するとか、無駄な建物を造って笑いものになるという事例もありました。そんな中で、島根県大田市仁摩町は砂時計の博物館を作りました。ここには一年を刻むコンピュータ制御の巨大な砂時計があります。これだけなら、全国にある様々な博物館のひとつに過ぎません。しかし、この博物館に着目した漫画家の芦原妃名子氏か、砂時計をキーアイテムとした物語「砂時計」を発表しました。この作品は初恋が成就するか、という身近なテーマのストーリーで話題となり、後にドラマ化、映画化されました。すると、物語に登場する「砂時計ミュージアム」が話題となり、ファンが訪れるようになりました。キーアイテムの手作りの砂時計も常に売り切れの状態だそうです。あの漫画がなければ、「砂時計ミュージアム」はこれほどまでに集客できなかったのではないでしょうか。

他にも、「らき・すた」というアニメで、作品の舞台となった埼玉県の鷲宮神社を訪れるファンが増えるなど、期せずしてメディアミックスの恩恵を得た施設があります。良い素材があり、しかし伸び悩んでいる。そんなときにメディアミックスは有効ではないかと思います。カウンターストライクネオに必要なモノは外側に向けた話題作りです。プレイヤーやアマチュア作家に素材を提供することで、新たな才能を発掘し、盛り上げてみてはいかがでしょうか。
《杉山淳一》
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