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【TGS2008】業界トップか語る グローバル時代におけるトップメーカーの戦略と野望

CESA会長でありスクウェア・エニックス社長でもある和田洋一氏の基調講演に続いては、カプコン社長辻本春弘氏、バンダイナムコゲームズ副社長鵜之澤伸氏も加わったパネルディスカッションが行われました。和田氏の基調講演を大胆に要約すると「日本のゲーム業界は資金が潤沢で勉強が足りない」ということです。パネルディスカッションは、日本のゲーム業界が再び世界のリーダーとなる可能性を模索するものでした。抄録は以下の通り。

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CESA会長でありスクウェア・エニックス社長でもある和田洋一氏の基調講演に続いては、カプコン社長辻本春弘氏、バンダイナムコゲームズ副社長鵜之澤伸氏も加わったパネルディスカッションが行われました。和田氏の基調講演を大胆に要約すると「日本のゲーム業界は資金が潤沢で勉強が足りない」ということです。パネルディスカッションは、日本のゲーム業界が再び世界のリーダーとなる可能性を模索するものでした。抄録は以下の通り。



■各社の2008年の見通しについて

経済不況が叫ばれる中、ゲーム業界は影響を受けるのでしょうか。

確かに最近の経済ニュースを見聞きすると不安になるかもしれないが、人は遊びたいものだし、ゲームは安価で大勢で長時間楽しめる。そうかんがえると、そう悲観することではないと思う。世界市場は慎重に推移を見守る必要はあるが、この年末、ハードが売れればソフトも売れる。その勢いを来年にも続けたい。(カプコン・辻本春弘氏)

需要は基本的に落ちないだろう。いくらでもチャンスがある。経済でよくないことは停まっちゃうこと。よくても悪くても動いていればいい。(スクウェア・エニックス和田洋一氏)

ゲームは手軽なエンターテイメントだから、大丈夫。来期は今期よりいいかと言うとコミットはできないけど(笑)。(バンダイナムコゲームズ 鵜之澤伸氏)

カプコン 辻本氏スクウェア・エニックス 和田氏バンダイナムコゲームス 鵜之澤氏


■グローバル化について 各社のグローバル化への取り組み

世界中の人たちにうちのソフトを認知してもらっている状態。グローバル化の達成度はまだ1合目か2合目。当社の売り上げ構成比は日本とそれ以外が半々。これはまずい状態だと思っている。世界の市場へ拡大する必要を感じる。FFは500万本クラスのタイトルだが、日本でしか売れない。日本で売れているというと聞こえはいいけれど、グローバル化と言う面では1合目となる。日本で売れているからいいとは思わない。むしろ危機感を感じている。(和田氏)

当社は3合目くらいという認識。昨今、カプコンのタイトルは欧米を強化している。大きな課題としては、会社としてはグローバル化をやるんだと決めているけれど、全社的な意識がついてきていない。ゲームを作る側はかなり意識している。そうして出来上がったものを海外へプロモーションしていくという部分でまだまだ足りない部分がある。米国向け拠点の拡充などやるべきことはある。全社的なグローバル化への意識改革が必要だ。売り上げの理想は、ゲーム産業における世界の市場構成比と同じ比率に持っていきたい。世界で売ろうという視野を持つと、ゲーム製作にかけるお金が大きくなる。海外のメーカーは1タイトルあたり10億円をかける。日本国内でそれだけのお金を投じる覚悟があるか。意識改革、組織作りとはそういうことも含まれる。(辻本氏)

当社の場合はバンダイのキャラクタービジネスが強み。キャラクター売り上げて言うと、世界の何処が盛り上がっているかと言うより、どの国でウチのキャラクターを使ったアニメなどが放送されているか。これに依存する。ドラゴンボールのゲームは世界でヒットしていて、アメリカで200万、ヨーロッパで100万本。トータルで350万本以上売った。でも、ゲゲゲの鬼太郎は日本でしか売れない。たまごっちは世界中で売れている。コンテンツの中身ではなくてキャラクタービジネスだ。ナムコ側のゲームも世界を見据えたゲームを作り始めた。ソウルキャリバーは世界で220万本売れた。しかし日本は18万本にとどまっている。ゲームの特性が欧米向けだったからだ。ただ、それは結果であって、マーケティングで狙ったことではない。ソウルキャリバーによってやっとマーケティングが判ってきたという状況だ。(鵜之澤氏)

■各社の地域別売り上げ比率 実際にグラフを提示し、現状を説明する

日米欧アの比較グラフ カプコンスクウェア・エニックスバンダイナムコゲームス


日本が高いという現状。売り上げは何百万本と景気のいいことを言うけれど、売り上げ比率としては日本高し。欧米のメーカーに比べても比ではない。日本で売れたタイトルは海外にもって行けばそれなりに売れる可能性はある。日本で売れたという事実が海外から値注目されてることになるから。ただ、そのまま持っていけば売れるかというとそうではない。モンスターハンターポータブルの場合、日本では公共交通機関を利用する人が圧倒的に多い。だから携帯ゲームとして売れた。しかしアメリカは来るまで移動する人が多い。生活習慣が違うから、日本スタイルをそのまま持っていってもダメだと思う。モンスターハンター自体は面白い良いゲームなので北米にもって行くつもりだが、マーケティング面では見直しをするところだ。(辻本氏)

(グローバル化というテーマでは)あんまり見せたくない図(笑)。いま、会社としては海外向けのタイトル開発の戦略を練っているところ。ただし、そこで若いクリエイターに「海外ではこんなのが受けるんだ」という話をされても任せないようにしている。コンテンツの部分では、海外をあまりにも意識過ぎると失敗すると思う。ちょうど、アメリカ映画にヘンテコな日本人が出てきて私たちが失笑するように、私たちが海外を意識しすぎると、海外の人々からはヘンテコな表現に見えてしまうだろう。コンテンツと同じくらい注意すべき点はインターフェースだと思っている。ボタン配置、どのボタンを押すとキャラクターがどう動くのか。ここで操作感のずれが出てしまっては受け入れてもらえない。(ドラクエやFFを海外に売り込むときに、どうカテゴライズするかという問いに)あれはひとつのジャンル。ストーリーとインタラクティブの融合したエンターテイメントの一形態。それをわざわざ違和感のあるカテゴリーに入れても戦略的には意味がない。(和田氏)

年度によってばらつきはあるが。タイトル数が多いので本数は多い。このグラフは奇しくも、バンダイとナムコの統合後の3年間という内容だ。特に欧州はいい推移となっている。北米のほうが苦戦しているかもしれない。レースゲームなど欧米で受け入れられやすいタイトルも貢献している。海外ではRPGというジャンルが厳しいという話もあるけれど、今後認知される分野だと考えている。アメリカだけではなく、ヨーロッパでも理解されつつある。ただし、コマンドを入れて戦うというスタイルが旧泰然としているという考え方はある。では、世界観を欧米向けに設定して、操作も欧米向けにして、それを突き詰めていくと、結局は私たちが日本で「洋ゲー」と呼ぶタイトルに近くなる。要するに、日本のクリエイター洋ゲーを作れるか。それは難しいと思う。10年前は大雑把にローカライズして日本で売るというスタイルだった。あの頃の洋ゲーを知らないクリエイターが意外と多い。そこも意識改革に必要だ。(鵜之澤氏)

■世界の中の日本 いま、日本のポジションはどのあたりなのか

位置づけと言うとトップではない。ただ、技術力や開発力は海外のクリエイターに遜色はないと考える。日本は日本独自のアイデアが強みだと思う。FFがひとつのジャンルという話があった。当社のバイオハザードもアドベンチャーホラーと言う独自のジャンルを作った。日本の開発者たちが原点に立ち返り、日本独自のアイデアを取り戻すべきだ。ただ、日本国内で作りたいかと言うと、本心では日本だけでオリジナルなものを追求したいけれども、開発者の数が足りない。社内外含めて協力会社と連携する必要がある。その流れの中で海外のクリエイターに参加してもらい、海外ではどういう考え方、作り方をしているのか、それを学ぼうという考え方もある。日本と海外の融合が必要だ。(辻本氏)

リーダーではないかもしれないが。日本が沈んでいるという実感はない。日本のデータはセールスランキングなど集計してくれる会社もあってわかりやすいが、海外に関してはデータが少ない。1ヶ月遅れのデータが突然入手できたり、信頼性について疑問を持ちつつも海外の情報サイトを参照するという程度。海外市場のリアリティが感じられない。(鵜之澤氏)

日本のゲーム産業はプレステ2の頃に楽をしすぎた。海外で差がついた思う部分は、海外ではPCの市場がしっかりある。私たちがプレステ2のときの技術でずっとゲームを作っていたとき、海外メーカーは日々進化していくPCゲームで新しいチャレンジを続けていた。だから次世代機でPCプラットフォームの技術が採用されたときに、海外メーカーはすぐに対応できたけれど、日本のメーカーにとっては(次世代機が)ハードルの高いものになってしまった。ネットワークにしてもそうだ。相対的に、日本のメーカーは研究が足りなかった。(和田氏)

■危機感を持った改革が必要 日本のゲーム企業がグローバル化するために

携帯電話プラットフォームができて、それが日本独自の仕様と海外のスタンダードとかけ離れていたり、Googleが新しい携帯電話ゲームプラットフォームを提案したりと、どんどんゲームに関する環境が変わっている。Googleが動くということは、世界のスタンダードが変わる可能性もある。そういう中で、日本はきちんと対応できるのか。気付かないところでおいていかれてしまうのではないか。(司会)

私はヘビースモーカーだが、明日がんで死ぬぞ、とまで言われない限りタバコをやめないだろう。日本の今のゲーム業界はそんな位置にいる。明日死ぬ。それくらいのショックを与えないと、この状況は脱却できないのではないか。(和田氏)

以前、別の会合で辻本春弘氏さんに会ったとき、ちょうどカプコンさんがグローバル化を推進していて「なんでうまくいったの」って言ったら「だってあんたたちタバコ吸ってるでしょ」って言われた(笑)。(鵜之澤氏)

だって迷惑なんだもの! 遠慮ないんですよ(笑)。(辻本氏)

(グローバル化も)頭では変えなくちゃって判ってる。たしかに即死するくらいまで切羽詰らないと、過去を捨ててまでやり方を変えられない。(鵜之澤氏)

日本の豊かなゲーム市場がグローバルの足かせになっているのか。(司会)

そこまでは言わないけれど、日本も日本以外を見ないといけない。見たときに、あまりにもひどい状態だと「見なかったこと」にしたくなる。そうなったら末期症状だ。(和田)

■2010年、グローバルになるという意思は実を結ぶか まとめ。各社の選択について。

経済だから勝たなくてはならない。開発だけではなく、経営、セールスも含めて、総合的に意識を変える必要がある。当社としては独自の戦略を考えている。自社のコンテンツの映像化を進めている。映像コンテンツとゲームでグローバルな展開を進めていく。まずは欧米、次に中国、アジアの順でやっていく。(辻本氏)

2010年はそんなに遠い時期ではない。そこに出すソフトはもう仕込みの時期に入っている。経営的に言うと、統合して3年間が過ぎて、中期的な目標を立てた時期。グローバルな戦略に基づいて開発ラインを引いていることになる。そのとき、グローバル化についてはカプコン方式、任天堂方式がある(マルチプラットフォームで広く展開するか、機種を絞って強みを出していくか)。そこで言うと、Wiiに関しては、かつてファミコンが世界に出たときに、日本のソフトメーカーも一緒に世界に出て、日本製のシェアが6割を取っていた。あの頃の状況に似ている気がする。もうひとつは表現技術で、欧米はフォトリアル志向だ。しかしウチはアニメーションを得意としている。両者は融合する可能性もあるけれど、キャラクターを持っている強みを考えるとアニメーションだろう。これは僕らのグループの独自性、武器になると考えている。(鵜之澤氏)

業界の垣根がなくなってくる。(市場や開発者たちにとって)国境もなくなってくる。ネットワークのハブとなることが重要だ。なにかやろうと思ったときに、いかにハブにたどり着き、あるいは自分がハブになるつもりで取り組む必要があるだろう。企業体や産業がどうなるか。われわれがやらなくちゃいけないのは、シェアでも、心理的にも、新しい技術やビジネスの仕組みでも日本がリードすること。新しい遊びが提案できたのか、新しいモデルが提案できるのか。そこが重要だ。(和田氏)
《杉山淳一》
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