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【CEDEC 2008】ゲーム作りの考え方を家電や他のジャンルに応用すると〜ゲームUIの特性と応用の可能性

ゲームの操作性やプレイヤーを熱中させていく仕掛けなどについて「ゲームニクス」として体系化し、ゲーム以外にも応用していこうという考えが注目されていますが、CEDEC初日の14:50〜「ゲームUIの特性と応用の可能性 2008」としてゲームニクスの提唱者である、立命館大学 映像学部教授のサイトウ・アキヒロ氏と、インサイドでも執筆頂いている小野憲史氏(モデレーター)がラウンドテーブルを開催しました。

任天堂 Wii
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ゲームの操作性やプレイヤーを熱中させていく仕掛けなどについて「ゲームニクス」として体系化し、ゲーム以外にも応用していこうという考えが注目されていますが、CEDEC初日の14:50〜「ゲームUIの特性と応用の可能性 2008」としてゲームニクスの提唱者である、立命館大学 映像学部教授のサイトウ・アキヒロ氏と、インサイドでも執筆頂いている小野憲史氏(モデレーター)がラウンドテーブルを開催しました。

非常に盛況でした。左・小野氏、右・サイトウ氏


ラウンドテーブルという形式上、20〜30名の参加が想定されていたようですが、会場には100人を超える参加者が集結。ゲームニクスの注目ぶりを感じさせました。

まずはサイトウ氏からゲームニクスについての概略が説明されました。サイトウ氏は元々HAL研究所に在籍し、岩田聡氏(現・任天堂社長)らと仕事をしていく中で、任天堂のマリオクラブなどの存在で、ゲームの面白さはその操作性の良さ/悪さに大きく左右されることを学んだとコメント。任天堂は製造したROMの買い取りをライセンシーに求めたこともあり、品質に対するこだわりがゲーム業界に共有されたとしました。

ゲームはストレスと快感のバランスが基本であり「ゲーム以外の事でストレスを与えてはいけない」。ゲームの前段階でストレスを与えないためにも「コントローラーの存在はゼロ(空気)にしなくてはならない。その結果としてゲームのUIは高度に発展していった」とコメント。この非常に優れたインターフェイスの方法論がゲームニクスとなるとしました。

具体的には、テレビゲームは「マニュアルを読まなくてもそうさが覚えられてプレイできてしまう」「いつの間にか段階的に攻略法を学習してクリアできてしまう」「長時間にわたって集中してハマってしまう」といったことがゲームにして実現されます。



ここまでがサイトウ氏の著書である「ゲームニクスとは何か―日本発、世界基準のものづくり法則」「ニンテンドーDSが売れる理由―ゲームニクスでインターフェースが変わる」や昨年のCEDECでのセッションで語られた内容の復習となります。しかし、近年ではWiiやDS、iPhone、マイクロソフトのTouch Wallなど、デジタルではなく、アナログな入力方法を取り入れたインターフェイスが登場してきていて、今回のセッションではこうしたアナログデバイスにおけるゲームニクスについて語られました。

この変化は、正確さ主体のデバイスから、感覚的なデバイスへの変化となります。インターネットのブラウジングで考えると、PCのマウスでは正確にリンクやボタンのクリックができますが、Wiiの『インターネットチャンネル』でWiiリモコンを使うと、PC用そのもののサイトではリンクやボタンのクリックは困難になります。そこで、Wiiブラウザ用のサイトでは大きなボタンが用意されるといった工夫が一般的です。サイトウ氏は「ボタンが6つ並んでいれば、ポインターを近づけたボタンのサイズを自動的に大きくするような工夫」が考えられるとしました。

ゲームニクスは、常にプレイヤーの先回りをして、押しつけがましくないように、さりげなくサポートする「おもてなしの文化」だということです。一方で、その配慮がユーザーの創造性を否定してしまうのではないかという懸念がありますが、サイトウ氏は「少しアバウトであっても、双方向的でより感覚的で手軽に操作出来る物」というインターフェイスを作ることで、ゲームニクスとしてのホスピタリティを保持しながら、ユーザーのクリエイティビティを引き出すことができるのではないかとしました。



セッションタイムでは「Wii、DSのデバイス特性に向いたゲームアイデア」「創造性を刺激するUIのありかた」「判定の幅の持たせ方」といった点で議論がされました。

議論ではまず前提となるWiiリモコンについて、「そもそもWiiリモコンで取れる数値の限界がある。MotionPlusになってようやく任天堂も作りたいものが実現できたのでは?」という現場のゲーム開発者ならではの指摘があり、その一方で「MotionPlusになって人間からゲーム機に送る情報量が増えても、コンピューターは不完全なもので、問題の解決にはならない」という意見もありました。

機械の限界もありますが人間の限界もありそうです。人間工学について学んだ経験があるというある参加者は「人間はそもそもアナログ的じゃなくて、意識しなければ3段階くらい、意識しても7段階くらいの入力しかできない」とコメント。不完全な機械と、不完全な人間を、いかにして判定して、不完全なところをプレイヤーの思いを汲み取ってゲームに反映できるかがゲームニクス的な課題となりそうです。

ある参加者は「例えば360゜開けた空間があるとして、斜め35゜のところにいる敵をプレイヤーが攻撃したとして、機械的に判定したら32゜くらいの所に攻撃が行ってても一番近くの敵に当たったと判定するのがゲーム。それが作っていて面白いところ」という考えを披露。Wiiタイトルを作ったという別の参加者も「(リモコンの判定が難しくて)剣を振る時はAボタンを押しながら、Wiiリモコンを振ってください、というような操作でも、プレイヤーの身体的な動きと画面内のキャラクターの動きがシンクロすれば、それは直観的な操作だと感じられるもの」と、必ずしもリモコンだけにこだわらず、そこにデジタルのボタン入力が混在しても問題ないという経験談を話してくれました。

デジタルからアナログなデバイスにかわることで、大きくゲームの作り方は変わりましたが、これらのコメントはヒントとなりそうです。



最後にサイトウ氏からは現在取り組んでいるゲームニクスのゲーム以外への応用についての事例の紹介がありました。具体的には家電メーカーやインフラ系企業へのコンサルティングなどを行っているそうです。ITやデジタル家電は進歩し、多機能なデバイスが溢れる一方で、UIは不完全な物が多く、ゲームニクスの提案は驚きを持って受け入れられる事が多いようです。

非常に沢山の仕事が舞い込んでいるようで、「皆さんがゲーム開発者として培ってきたゲームニクスの経験は他の業界でも生かしていけるものです。もしゲームを作るのに疲れたとしても色々な可能性があるんです」と暗にスカウトの言葉(?)。ちなみに、サイトウ氏がこの分野の研究を手がけることになったきっかけには、ゲームが人々を楽しませるエンターテイメントなのに、様々な面で批判を受けることが多く、でもゲームには他の分野でも活用できる素晴らしい面が沢山あることを証明したからかったからだとのこと。ゲームニクスによって色々な物のUIが変わっていくことに期待したいですね。
《土本学》
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