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CEDECのキーマンに10年目のCEDECやゲーム開発事情について聞きました

9月9日 (火) 〜11日 (木) の3日間の会期で昭和女子大学 (東京都世田谷区) で開催されるCEDEC (CESA Developers Conference)。ゲームデベロッパーによる、ゲームデベロッパーのためのカンファレンスとして今年で記念すべき10年目を迎えます。過去最大の講演数、参加者で開催されるCEDECについて、そして世界のゲーム開発事情について、CEDECの講師の選定など開催を取り仕切った CEDEC アドバイザリーボードの吉岡氏、斎藤氏、そしてCEDEC事務局からCESAの小林氏にお話を伺いました。

ゲームビジネス その他
9月9日 (火) 〜11日 (木) の3日間の会期で昭和女子大学 (東京都世田谷区) で開催されるCEDEC (CESA Developers Conference)。ゲームデベロッパーによる、ゲームデベロッパーのためのカンファレンスとして今年で記念すべき10年目を迎えます。過去最大の講演数、参加者で開催されるCEDECについて、そして世界のゲーム開発事情について、CEDECの講師の選定など開催を取り仕切った CEDEC アドバイザリーボードの吉岡氏、斎藤氏、そしてCEDEC事務局からCESAの小林氏にお話を伺いました。

参加者
・吉岡直人 CEDEC 2008 アドバイザリーボード 委員長 (スクウェア・エニックス 研究開発部 チーフ・テクノロジスト)
・斎藤直宏 同 ビジュアルアーツ分野プロデューサー (バンダイナムコゲームス 制作統括デビジョン 制作部 ゼネラルマネージャー)
・小林岳人 同 運営事務局統括 (社団法人コンピューターエンターテインメント協会)

■健全な成長を遂げる10年目のCEDEC

ゲーム開発者が集い、様々な技術的な成果や挑戦について発表されるCEDECですが、10年前、東京ゲームショウに併催される形で始まったものが非常に健全な成長を遂げてきたと3名は一致するようです。

「元々の動機付けとしてあったのは、(特に日本では)なかなか技術者同士の交流が図るための場が少ない、そうだと技術レベルも上がりにくいという問題意識です。ゲーム開発に携わる人たちが一堂に会する場を設けて、技術者同士の交流をすることで、業界全体のレベルを上げていければという思いですね。特に現行機種においては、欧米のメーカーが技術力をつけてきていて、こちらもレベルを上げなきゃという意識は例外なく共有されるようになりましたね。真剣な場として確立してきていると思います」(吉岡氏)

各ゲームメーカーが持っている技術やゲームの作り方は重要な秘密であって、それは社外に流れてはいけないという風潮が過去のゲーム業界にはありましたが、近年ではその考えは薄れ、共有し高め合うことの重要性が認識されていっているようです。

「ビジネスとして競合しているので、技術者同士の交流がしづらい時代も確かにありました。ただ、自分達がより良いものを作ろうとすると、他がどういう努力をしているのかを知ることは非常に重要ですし、自分達の業績を広く発表したいというのは自然な欲求でもあります。参加して話を聞くこともできるし、発信してそこからフィードバックを得ることもできる、そういう重要な場にCEDECはなっていると思います」(斎藤氏)

「CEDECが健全に育っている面があるとすると、傷のなめ合いにはなっていなくて、非常に前向きでテクニカルな話がほとんどを占めている点でしょうか」(吉岡氏)

「それに講師の皆さんにはボランティアで動いてもらってるんです。運営も、CEDEC アドバイザリーボードの皆さんを中心に手作りでやってます。メンバーも吉岡さんや斎藤さんを始めとして各社の技術のトップにあるような方に参加していただいて、質の高い運営ができていると思います」(小林氏)


CEDEC昨年の様子


■日本と海外のゲーム開発事情

続いて、日本と海外のゲーム開発事情について伺いました。

現行世代機になり、技術のレベルも上がってきて、日本が世界のレベルから置いて行かれるのではないかという危惧も一部でありますが、そこまで危惧はしてないようです。

「ゲームの作り方、目指す方向性の違いはあるかもしれません。GDCに行っても、日本の技術の方が凄いこともあるし、勝ってるところもあります。技術レベルが違うというよりは、ゲームジャンルによっては海外が先行していることでの差がありますので、向こうの大型タイトルと同じようなものを作ると遅れはあるかもしれませんが」(斎藤氏)


吉岡氏
「この問題は幾つかに別けて考える必要があると思います。第一に、人間のレベルが違うかというと、それはないと思います。ただ、近年の欧米においてはCGやシミュレーション分野の人間がゲーム産業に来るケースが増えていて、トップのレベルを持つ人間は多いかもしれません。それでも全体で見て技術者のレベルが違うとは思いません。日本人も頑張ってますよ」(吉岡氏)

「技術レベルで圧倒的に欧米が勝ってるのは層の厚さだと思います。人口の差もありますし、コンピューターに関する教育レベルの差は否定できないものがあります。個々の技術レベルはなかなか比べにくいですが、ピンの部分ではいい勝負をしていると思います。彼らを見習ったほうが良いと思うのは、技術を投資対象と見て長期的に取り組む点です。GDCに行っても関心するのは、彼らのアウトプットもそうですが、それに対して非常に長い年月をかけて継続的に研究している人間がいることです」(吉岡氏)

「日本だとどうしてもタイトル単位の考え方での技術開発が多く、5年、10年の単位で技術開発するのはなかなか稀ですからね」(斎藤氏)

■次に来る技術は?

続いて、今後注目を集めそうなゲーム関連技術について聞いてみました。2011年とも2012年とも言われる次の世代のゲーム機も睨み、ハードの性能が更に上がることで、ビジュアルやサウンドが進化するだけでなく、生産性を上げるための技術が注目されるのではないかということです。

「まず絶対に外さないだろうというのは"メニーコア"でしょう。ゲーム機云々というよりも、コンピューターの進化を考えるとメニーコアは間違いないはずです。性能が上がることによって表現に関するテクノロジーも当然、継続的に進歩を遂げていくものだと思います」(吉岡氏)

「一方、劇的に進化するであろうのは生産性に関する技術です。一つはいま話題のプロシージャルですね。アーティストが一つ一つ手作りすれば、計算で表現するよりも圧倒的にいいものが出来ます。ただ、規模が大きくなる中でそれは不可能に近くなってきます。一方で計算機のパワーはどんどん上がっていきます。今後はどこを計算機でやって、どこを人間がやってメリハリを付けるかというのが重要な課題になってくると思います。これはここ数年で一番注目すべき技術だと思いますね」(吉岡氏)

斎藤氏も生産性が今後の焦点になるというのには同意見のようで、「絵を綺麗にするのとは違う分野かもしれませんが、結果的に製品のクオリティアップに関わる重要な部分です」と言います。今回のCEDECで、ビジュアルアーツの分野でも「コンテントパイプライン」のセッションが用意されています。

そして最も必要とされるのは、どうコストを有効活用するかという考え方だと吉岡氏は言います。

「コストや生産性を議論すると、ともすれば"雑に作る"ということと混同されてしまう場合があります。そうではなく重要なのは、必要なコストをどう有用に活用するかという問題です。生産性を上げるというのは、どこのクオリティに集中するかを決めるということで、クオリティにこだわる人であればあるほど生産性は無視できない問題になっていくと思います」(吉岡氏)

■CEDECは刺激を受けるための場

最後に今回のCEDECにかける意気込みを聞きました。


手前:斎藤氏、後方:小林氏
「一番意識したのは、モノを作りだす気持ち、クリエイター魂を持ち帰って欲しいということです。その上でテクニックとして色々なジャンルの技術について、学ぶきっかけを得られるセッションを用意しました」(斎藤氏)

「誤解を恐れずに言えば、80分間のセッションで伝えられる内容はそう多くはありません。CEDECに来るというのは、同じような現場で課題に挑戦した人たちに刺激を受けてもらい、会社に戻って更に勉強するということで初めて意味を持つものだと思います」(吉岡氏)

「10周年の記念すべき年になり、基調講演をはじめとして今までにない種類のセッションも多数用意しました。新しくプロフェッショナルがプロフェッショナルの技術的な功績に対して表彰するCEDEC AWARDSも始めます。講師も参加するパーティも用意していますので、刺激を受け、同業者と交流し、今後の仕事につなげていく為の場となっていますので、ぜひ参加してみてください」(小林氏)

■CEDECは9月9日〜11日に昭和女子大で開催

今回は3名の方にお話を伺うことができました。CEDECは1999年の秋の東京ゲームショウに併催という形で開催されたのが最初で、今年で10周年を迎えました。年々規模を拡大し、日本語で提供されるゲーム関連のカンファレンスとしては最大かつほぼ唯一のものと言っていい存在になりましたが、ゲーム業界の将来を真剣に考える人たちによって健全に発展してきたものだという印象を受けました。

インタビュー中に3名の口から何度も聞かれたのは「参加するだけでなく、発表する側にも立って欲しい」ということです。講師は毎年公募されていて、それなりの数の応募があるそうですが、「審査し切れないくらい来てもいい!」とのこと。成功も失敗も、経験は共有されることで、自分自身の力になるだけでなく、ゲーム業界全体の財産となり、岐路に立つ日本のゲーム業界にとって重要な宝になるはずです。ちなみに「講師は全セッションが無料で受講できるので、来年はぜひ講師に(笑)」(小林氏)とのこと。講師だけによるパーティも予定されているそうです。

CEDEC 2008は9月9日 (火) 〜11日 (木) に昭和女子大学 (東京都世田谷区) で開催されます。チケットは3日間有効のレギュラーパスが一般4万円、CESA会員2万5000円。1日のみ有効のデイリーパスが一般1万5000円、CESA会員1万円となっています。パスがあれば事前登録なしに全てのセッションを自由に選んで受講することができます。講師も参加する親睦パーティも10日に予定されています。

見聞を広め、交流を深める貴重な機会ですので、興味のある方は公式サイトをチェックしてみてください。

《土本学》
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