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Shoot It! - #050 日本のPCゲーム市場は「裸足の島」

日本製ゲーミングマウス「DHARMA TACTICAL MOUSE」を触りつつ、ついに日本のPCゲーム関連市場に日本のメーカーが参入したことに感動しています。日本市場として、日本のPCゲーム市場の復興を願う者として、これほど嬉しいことはありません。

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Shoot It! - #050 日本のPCゲーム市場は「裸足の島」
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日本製ゲーミングマウス「DHARMA TACTICAL MOUSE」を触りつつ、ついに日本のPCゲーム関連市場に日本のメーカーが参入したことに感動しています。日本市場として、日本のPCゲーム市場の復興を願う者として、これほど嬉しいことはありません。

国産ゲーミングマウスダーマポイント。ついに国内メーカーも動き出した!


2005年にプロゲーマーに支持されているRAZERのゲーミングマウスが正規輸入代理店を通じて販売されて以来、日本ではさまざまなゲーム用マウスが登場しました。特に昨年はマウスメーカーのトップブランド、ロジクールが「G9」を日本市場に投入し、マイクロソフトはRAZERとコラボレーションした「Habu」や自社のゲームデバイスブランドを復活させた「サイドワインダー」を日本で発売しました。年末にはSteelSeriesから「Ikari」シリーズが発売されました。その流れの最後に日本製の「DHARMA TACTICAL MOUSE」が誕生しました。日本のゲーマーの声に耳を傾け、最終テストでは元世界代表のKENNY選手も参加したそうです。そのせいか、やはり海外製のマウスに比べると持ちやすく、扱いやすいような気がします。設定用ユーティリティが初心者には難しい気がしますが、これも道具やそのカスタマイズにこだわる日本人向きの仕様かもしれません。

最近、日本のPCゲーム市場が元気だと思いませんか。ゲーミングマウスが続々と登場しただけではなく、オンラインゲームポータルも会員数を着実に伸ばしているそうです。日本では流行らない、と誰もが思っていたFPS(一人称視点の射撃)ゲームの分野も人気が高まっています。先日、『アラド戦記』のイベントでハンゲームさんに伺ったところ、FPSの『スペシャルフォース』は200万IDに届きそうな勢いだそうです。同様のFPSのサドンアタックや『テイクダウン』、『WarRock』も会員数を伸ばしているそうです。
(編集部注:『SPECIAL FORCE』は1月27日に会員登録者数200万人を突破しています)

日本ではPCゲームは流行らない。日本では長い間そう信じられてきました。しかし、その認識はもはや時代遅れといっていいでしょう。日本のPCゲーム市場は廃れたわけではありません。ここは「裸足の島」だったのです。

マーケティングを学ぶときの初歩的な質問に「裸足の島」があります。あなたは靴のセールスマン。しかし訪れた島の住民は誰も靴を履いていません。さて、あなたはどうしますか。「この島の人々は靴を履く習慣がない。だから靴は売れない。すぐにこの島を出て別の島に売りに行こう」とあきらめますか。それとも「もしこの人々全員が靴を買ったらたくさん売れるはず」と考えて、売るための方策を考えますか。マーケティングの分野では、この問題の答えは後者が正しいとされています。しかし、そうとは知ってか知らずか、前者の考え方のままで諦められた市場がありました。日本のPCゲーム市場です。

テレビゲーム機が登場するまで、日本、いや世界では、家でコンピューターゲームをするといえばPCゲームで遊ぶことを指していました。8ビットパソコンが普及し、MSXというフレンドリーな価格帯のPCも登場しました。雑誌に掲載されたプログラムリストを打ち込んだり、カセットテープに記録されたゲームを購入したり。かなり面倒で苦労しながらですが、ゲームが好きという情熱で遊び続けました。それに前後する形で日本ではテレビゲーム機が続々と登場し、いわゆるファミコンブームの隆盛が始まります。PCゲームユーザーが激減したわけではありませんが、安価で手軽なテレビゲーム機は爆発的に市場を拡大しました。ゲーム市場のシェアは圧倒的にテレビゲーム機になり、次いでアーケードゲーム機に。相対的にPCゲームのシェアは下がり、国内ゲームメーカーのPC離れが進みます。その結果、PCゲームユーザーは遊びたいゲームがほとんどなくなってしまいました。

「PCゲームはアダルト専用。PC向けにゲームを作っても売れない」という認識が一般的になりました。日本ではPCゲームで遊ぶ習慣がない。だからPCゲームを作っても売れない。だからテレビゲーム用のソフトを作ろうというわけです。国内のほとんどのゲームメーカーはPCゲームから離れてしまいました。彼らにとって、日本のPCゲーム市場は夢の跡でした。本当はPCゲームファンのいる「裸足の島」になっただけなのに。

もちろん海外でもテレビゲーム機がヒットしました。相対的にPCゲームのシェアは下がったかもしれません。しかし、欧米のゲームメーカーはPCプラットフォームを見限ったわけではありませんでした。高精細な画面でマウスを操作するRTS(リアルタイム・ストラテジー)ゲームが登場したり、PC/AT互換機の自由なプラットフォームで技術を磨き、ビデオカードの進化に合わせて美麗な3Dグラフィックを採り入れたFPSゲームが誕生しました。さらに、当時のテレビゲーム機では採用されていなかったオンライン対戦機能を実装しました。クリエイターたちはPCゲームならではのゲームを作り、革新を続けました。新しいゲームが投入され続けたことでPCゲーム市場は保たれ、LANゲームパーティ、Eスポーツなどの、新しい、そしてパワーのあるPCゲーム文化が誕生しました。

そのころ、日本でのPCゲームは限られた分野で細々と続けられていました。しかし、海外で生まれていたRTSやFPSに追随するメーカーはありません。私は内心悔しくて仕方ありませんでしたが、これは仕方ないことでした。PCならではのゲームは、やはりPCゲームにしかなりません。市場がない、売れないモノを作っても仕方ないと誰もが考えていたわけです。日本が裸足の島だとは誰も気付いていなかったのかもしれません。

皮肉なことに、日本のPCゲーム市場が「裸足の島」だと気付いたのは、日本ではなく海外の会社でした。海外製の周辺機器、海外製のゲームソフトのおかげで、日本のPCゲーム市場は盛り上がりを見せています。最近、台湾のゲーム用メモリメーカーGAILが日本人ゲーマーENZA氏と契約しました。GAILは今年の春に日本進出を計画しており、WCGの日本代表選手としても活躍したENZA氏のスポンサーになることで、日本のPCゲーマーのコミュニティに関わろうとしています。世界のPCゲーム関連産業が「裸足の島」に注目しています。嬉しいことですが、日本のメーカーはまだ気付かないのだろうか、と忸怩たる思いでした。

「DHARMAPOINT」というブランドの製品、その品質、使いやすさについては、今後、多くのゲーマーたちが検証し、語り継がれていくことになるでしょう。しかし私はいま「DHARMAPOINT」という日本発のブランドが登場したことがただただ嬉しい。日本のPCゲーム市場が「裸足の島」だと気付いた。そういう会社があることが嬉しい。そして、「DHARMAPOINT」に続き、ゲームソフトウェアメーカー、PCメーカー、周辺機器メーカーなど、他の日本企業もぜひPCゲーム市場に活路を見出して欲しいと思います。
《杉山淳一》
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