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Shoot it! - #036 ゲーマー専用マウス『Microsoft Habu Laser Game Mouse』

2007年7月20日にMicrosoftは2機種のマウスを発売しました。ひとつは「Microsoft Basic Optical Mouse」。商品名にBasicとあるように、基本的な性能のマウスです。スタイリッシュなデザインが特徴で、マウス本体とクリックボタン部分が分割されず一体となっています。6色のカラーバリエーションがあり、女性にも男性にも好まれそう。高精度の光学式センサーを搭載してメーカー希望小売価格は1890円(税込)。Microsoft製のマウスとしてはもっとも安価なマウスです。

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Microsoft Habu Laser Game Mouse
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2007年7月20日にMicrosoftは2機種のマウスを発売しました。ひとつは「Microsoft Basic Optical Mouse」。商品名にBasicとあるように、基本的な性能のマウスです。スタイリッシュなデザインが特徴で、マウス本体とクリックボタン部分が分割されず一体となっています。6色のカラーバリエーションがあり、女性にも男性にも好まれそう。高精度の光学式センサーを搭載してメーカー希望小売価格は1890円(税込)。Microsoft製のマウスとしてはもっとも安価なマウスです。

もうひとつは「Microsoft Habu Laser Game Mouse」。Game Mouseという商品名にあるように、ゲームプレイヤーをターゲットとしたマウスです。こちらはレーザーセンサー方式の高性能マウスで、メーカー希望小売価格は8610円(税込)です。なんと「Microsoft Basic Optical Mouse」の4.5倍の価格です。同じマウスなのにどうしてこんなに高額なのでしょうか。そこで今回はゲーム専用マウス「Habu」の性能と魅力を紹介します。

「Habu」の開発にはMicrosoftのほかに、Razerというマウスメーカーが参加しています。Razerのユニークなところは、ゲーマー専用に特化したマウスを作り続けているという点。Microsoftは広範囲なPCユーザーを対象としたマウスを作っていますが、Razerはコアゲーマーを対象しており、同じマウスメーカーではありますが、直接のライバル関係ではなく、ユーザー層が異なっているのです。「Habu」を理解するには、Razerという会社を知っておく必要がありそうです。

1998年。カリフォルニア州サンディエゴで創業したRazerは、当時流行し始めたFPS(一人称視点の射撃)ゲームのプレイヤーたちが、マウスに不満を持っていることを重視しました。当時のマウスは「画面上をカーソルが動けばいい」というだけの道具でした。もちろんそれは、PCの用途の中心がビジネスアプリケーションだったからで、誤った判断ではありません。「カーソルが動いてさえくれたら安いほうがいい」という消費者が多いことも事実です。ゲームユーザーはパッドやハンドル、ジョイスティックを好みました。マウスはゲームのなかではオプションを選択するとき使う補助的な道具でした。

しかし、FPSプレイヤーの多くは移動するときにキーボードのASDWキーを使い、射撃時はマウスで狙いを定めます。正確な射撃のために性能の良いマウスを求める需要があったのです。オンライン対戦が定着すると、ライバルに勝つためにはライバルより良い道具を使いたくなりますよね。そこでRazerが送り出した製品が「Razer Boomslang」です。当時のほとんどのマウスの解像度は200dpi、高性能モデルが400dpi、製図、CAD、グラフィックなどに最適とされた超高性能モデルでも800dpiの時代にRazerは2000dpiというハイスペックなマウスを販売しました。これがゲーマーに大ヒットしたのです。

オンラインゲームの世界では大規模な賞金付きゲーム大会が開催され、スタープレイヤーが誕生した時期でした。Razerは当時もっとも強いプレイヤー、Fatal1tyとスポンサー契約を結びます。その契約内容は、「毎月一定額の提供」、「マウスの無制限提供」「全米及びヨーロッパのゲーム大会の参加費用すべてを提供」というもの。ただし、「常にRazerのマウスを使用して勝利すること」という条件が付けられていました。これが世界初のプロゲーマーに対するスポンサー契約だと言われています。Fatal1tyの強さと人気、そしてBoomslangの性能とデザインは、世界中のゲーマーから支持されました。Boomslangは1999年のクリスマスに10万個以上を販売し、マウスとしては異例の超ヒット商品となりました。

Razerのマウスの特徴は3つあります。
・高性能なセンサーを搭載していること
・仕事っぽさを排除し、ゲームに似合うカッコいいデザインであること
・マウスの性能をカスタマイズし、ユーザーのプレイスタイルに合うように調整できること
現在の主力商品はレーザーセンサー搭載の「Copperhead」、光学式3Dセンサー搭載の「Deathadder」、光学式7ボタン搭載の「DiamondBack」などをラインアップしています。どれも上記の3条件を満たしています。

Microsoft Habuを見ると、そのデザインにはRazerのカラーが強く押し出されていることがわかります。クリアパーツをボディ側面に一周させて光らせ、ホイールボタンも光ります。先端を広げてクリックスペースを広く取っています。このデザイン思想はまさしくRazerの血統です。従来のMicrosoftマウスは個性を控え目にし、誰にでも親しみやすいデザインでした。エルゴノミクスデザインを採用したモデルは奇抜でしたが、それもユーザーの健康と使いやすさに配慮したためです。そんなMicrosoftのデザインもHabuには垣間見られます。真上から見るとMicrosoftマウスの特長でもある左右非対称デザイン、通称「ナスビ型」の面影があります。また、指があたる部分にはラバー素材を使って滑り止め加工をしています。マウス自体の重さもMicosoftの思想に近いようです。Razerの「Copperhead」はこれよりずっと軽く、華奢な印象です。Habuは重めで安定感があります。

Habuには両社になかった新要素も盛り込まれました。付属品として左側サイドボタンパネルとソウルがついています。サイドパネルはボタンの位置を変更するためにあります。手首をマウスの後ろに置いて使う人は、交換用パネルのほうがボタンを押しやすく感じるでしょう。ソウルはゲーマーがこだわるアイテムのひとつです。マウスの裏に装着して滑りやすさを調節します。ゲーマー用パーツを扱う店では、ソウルだけを販売する棚があります。この部分の素材にも気を配り、磨り減ったときのために交換用ソウルを添付しているわけです。Microsoft側もRazer側も、新しいプロジェクトに自社のノウハウを流用するだけではなく、新要素も盛り込もうとしたようです。

高性能センサーと検出回路はRazerのアイデアが活きています。センサー部分は前回も紹介したようにアバゴ社製を使っています。このセンサーに限らず、マウスのセンサーはマウスが未使用状態のときは稼働を停止して待機モードに入ります。しかし、Habuはマウスの静止中もセンサーの検出処理を稼動させています。これもRazerのアイデアです。射撃ゲームでは静止状態から急に動くという操作が繰り返されるため、休止モードに入ってしまうと次に動かしたときに立ち上がりが遅れてしまうからです。ゲーマーにとって、省エネやパーツ寿命を延ばすための仕様は必ずしも善ではない、というわけです。これも「丈夫で長持ち、環境にやさしい」Microsoftの思想とはちょっと違います。

そしてドライバです。設定画面を表示すると、そこはもうMicrosoftの面影はほとんどありません。Razerのブランドイメージである「黒地に緑」の奇抜なウインドウが現れます。ここでマウスの解像度やボタンの割り当てができます。自分の手の動きと画面上のマウスカーソルの動きを一致させるため、X軸とY軸の微調整機能まで付いています。これがHabuの最大の特徴といっていいでしょう。ゲームプレイのために、プレイヤーが自由にセッティングできる。スポーツチューンドカーのような考え方。これはRazerがEスポーツプレイヤーと築きあげたノウハウだといえます。唯一Microsoftのポリシーが見られる場所は、ヘルシーコンピューティングというサイトへのリンクでしょうか。快適かつ健康に配慮した姿勢やマウスの使い方などが表示されます。

Habuの外観にはMicrosoftのロゴしかありませんが、内部はRazerのマウスそのものです。このコラボレートにより、Microsoftは自社のマウスのラインアップにゲーマー向けプライオリティの製品を加えました。マウス市場のすべての要望に応える製品展開となったわけです。Razerにとっては、マイクロソフトの世界的な販売網で製品を売るだけではなく、自社ブランドも引き立ててもらった形になります。どちらにとっても有利で記念碑的な製品ですが、その目的は「ゲーマーのために」です。

Habu の名前の由来は沖縄に生息するヘビの「ハブ」です。実はこれもRazerの命名手法です。ちなみにRazerのほかの製品、「Copperhead」はマムシ、「Diamondback」はガラガラヘビ、「deathadder」はトゲオマムシです。ヘビにちなんだ名前をつけている理由は、他社のネズミ(マウス)を丸呑みにする、という意味かもしれません。Habuは英名ではLanceheadですが、あえて和名のHabuを採用したところに、日本市場への強い期待があるような気がします。
《杉山淳一》
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