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ゲーム上で“生きている”アイドルを表現する―『うたの☆プリンスさまっ♪ Shining Live』のLive2D事例を紐解く

スマートフォン向けリズムアクションゲーム『うたの☆プリンスさまっ♪ Shining Live』におけるLive2Dの表現方法などを紹介したKLabのセッション「~アイドルの個性を引き出すLive2Dの表現方法~」についてお届けします。

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ゲーム上で“生きている”アイドルを表現する―『うたの☆プリンスさまっ♪ Shining Live』のLive2D事例を紐解く
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Live2Dは、12月4日にLive2Dのカンファレンス「alive 2017」を秋葉原UDXにて開催。ここでは、スマートフォン向けリズムアクションゲーム『うたの☆プリンスさまっ♪ Shining Live』におけるLive2Dの表現方法などを紹介したKLabのセッション「~アイドルの個性を引き出すLive2Dの表現方法~」についてお届けします。

『うたの☆プリンスさまっ♪ Shining Live』は、アニメやゲームで人気を集める「うたの☆プリンスさまっ♪」の楽曲をリズムアクションゲームとして遊べるアプリ。アイドルたちのお仕事の様子を描いたストーリーやコミュニケーション要素も用意されていて、24時間365日アイドルと過ごすことができます。

◆制作テーマは「生きているアイドルをゲーム上で表現」


本セッションには、Live2Dの業務全般・品質管理、モデル/モーション制作を担当した原脩司朗氏、Live2Dの業務全般、Live2Dモデル/モーション/表情制作を担当した青柳里奈氏が登壇。まずは、アプリ内のどの部分にLive2Dを使用しているか説明していきます。


アプリでは主にストーリーパート、ホーム画面、衣装替えモードにLive2Dを使用。ストーリーパートでは最大3体を同時に表示してアイドル同士の掛け合いをアニメのように楽しむことができるようになっています。ホーム画面ではアイドルをタップして親密度を高めることができ、タップする場所によってアイドルがさまざまな反応を見せてくれます。アイドルに好きな衣装へ着替えてもらうことも可能で、現在は24テーマの衣装をLive2Dモデルとして用意しています。

続いて、モデルの基本仕様について解説。素立ちの状態からさまざまな動きへ推移できる方式を取っていて、使用ソフトバージョンは「Live2D Cubism 2.1」、mocの書き出しのみ3.0を使用しています。テクスチャサイズは2048×2048px、テクスチャ枚数は1、ポリゴン数は4000~6000ポリゴンとなっていて、このレギュレーションはストーリーで3体同時の表示を考慮した条件となっています。


アプリの総制作期間は約1年4カ月、Live2Dの制作は2016年4月から本格的にスタートしました。モデル・モーション・表情の仕様決めから始まり、仕様決定後の2016年11月から素体モデル、モーション・表情制作を開始。併せて衣装量産に向けたモデル仕様の改修やモーション・表情のブラッシュアップを行い、素体制作が完了したキャラクターから順次初期リリース分の衣装モデルの制作、ブラッシュアップといった流れを経て2017年8月28日にリリースとなりました。


約1年4カ月のうち、制作上のテーマとして掲げられたのは「生きているアイドルをゲーム上で表現する」でした。そこで目標となったのは、目の前にいる臨場感を演出するための「自然な動きの追求」、大好きなアイドルをもっと好きになってもらうため「アイドルの個性を引き出す」といった2点です。では、こうした理想の実現に向けてどのような手法を採用していったのでしょうか。


◆自然な動きを追求するために生まれた「腕の動き手付け手法」



まずこだわったのは、滑らかで自然な軌道を描く「腕の動き」だと原氏。これまでのLive2Dにはない、本作ならではの特徴です。衣装替え前提のLive2Dで使用されている方式には、一般的にパーツ切り替えやモーションフェードによるモーション間の自動補完があります。パーツ切り替えとは、腕パーツを複数用意して、モーション間、ポーズ間の推移時に腕パーツごと切り替える方式。モーションフェードによる自動補完は、腕パーツは一つで前腕の回転域を大きく設定し、モーション間・ポーズ間の推移をパラメータの自動補完によって行う方式です。

当初はこの2つを検討していましたが、パーツ切り替えは腕の切り替え時に透明度のフェードアウト・インが入ってしまい、一連の腕の動きとしては不自然さが出てしまいました。モーションフェードのほうでは、本作のアイドルは頭身が高くて腕もかなり長いので、自動補完の前腕の回転の動きでは体をなでるような立体感のない動きに。そのため本作ではどちらも使用せず、奥行きの動きを取り入れた「腕の動き手付け手法」を採用しました。モーション間の自動補完は使用せず、腕パーツは1つで前腕の回転域を大きくもたせ、奥行きの動きを持たせるパラメータを追加し、腕の動きを一連の流れとして自然な軌道を描くようにモーションの手付けで表現するという手法となります。


まずは前腕の奥行きの動き、上腕の奥行きの動き、前腕の回転の360度の可動域、この3つを仕様として取り込みました。まず前腕に奥行きを持たせる動きは、前腕を縮めて腕を前方に動かして、前方に出ているような立体感を出すパラメータになります。一定の数値で前腕の服部分をよりパースのかかったテクスチャに切り替え、自然な流れでの腕の動きの推移を表現しています。

このパラメータは腕の上げ下げの動作のほか手前方向へのアクションなど、立体的な表現にも使用。テクスチャを切り替えないと立体感が出ずに無理な変形をかけてしまい、見た目を損なうデメリットがあったため前腕テクスチャを2枚使って切り替えています。また、上腕に奥行きを持たせる動きは、上腕を縮めて奥行きをつけることが可能なパラメータとなっていて、ケープなどの特殊な衣装では上腕の奥行きの動きに連動し、ケープの裏地が見えるなど立体的な表現も行っています。

前腕の可動範囲は、前腕の回転のパラメータのプラス値とマイナス値の可動域を合わせると360度すべての角度を表現できる仕様となっています。これによりさまざまな角度のモーションへの表現が可能となりました。


以上のモデル仕様を使い、デフォルト状態から前腕を縮め、前腕や上腕を奥行きの動きで縮め、1フレームで前腕の回転を反対方向へ反転し、前腕を伸ばして決めポーズといった流れでモーション手付けを行いました。こうした仕様やパラメータを駆使し、人として自然な動きをするアイドルたちを表現することができたと言います。

◆アイドルの個性を引き出すための取り組み



アイドルの個性を表す最大のポイントとしてこだわったのは、表情のクオリティだと青柳氏。本作ではすでに築き上げられたアイドルのイメージを損ねないよう、アニメやゲームのアイドルをLive2Dで忠実に再現することが必要となりました。そのため「共通の表情モーションを使わない」「1つの感情に対して複数の表情パターンを用意」「眉の表現について工夫」という形を取ったといいます。



本作では、アイドル1人ずつに喜怒哀楽、困り顔、呆れ顔など20種類以上の表情モーションをモーションファイルとして用意。これはストーリーパートで並んだ際に、共通モーションだと全員が似たような表情になってしまい、個性が目立たなくなる懸念があったからです。そして、例えば「笑顔」という1つの表情についても、元気な印象のあるはつらつとした笑顔、眉が少し下がった微笑むような印象の笑顔など複数のパターンがあります。多彩な表情を用意したことで、よりボイスに合う表情を割り当てることが可能となりました。微細な表情の差は目と眉の変形が特に重要なので、小数点以下の微妙な数値の調整をアニメーションファイル上で行ったそうです。

しかし、スマートフォンやタブレット程度のサイズではモデル自体がかなり小さく表示されるため、顔の印象が伝わりにくいという課題もあります。そこで、眉の動きや目の動きを分かりやすく見せるために取り入れたのが「髪に透ける眉」という表現です。これは動きを付け終わった眉のパーツを複製し、不透明度を下げて髪よりも上に描画順を重ねて表示するというやり方で作成されました。

さらに、アイドルそれぞれの個性的な動きを表現するために20種類以上のモーションを制作。可動範囲を大きく取り、動きを制限していないためバリエーション豊かな動きを可能としています。手は表情の次に個性を特徴付ける要素と捉え、出来る限りアイドルごとに違う手の形を用意しました。加えてコントラポストを意識したポーズを取れるパラメータを実装し、構図に柔らかさもプラスしています。

青柳氏は、セリフに合わせた最適なモーションと表情の組み合わせこそが個性を引き出す大切なポイントと解説。モーションは同じでも照れの表情と困りの表情では印象が違うという例を紹介し、目線の操作も加えてアイドルの魅力を引き出しました。


一方、腕や表情の表現にこだわった分、制作全体のコストが増加したという問題も生まれました。そこで、あらかじめ作りたい動きを具体的に想定し、制作上のコストを重視するのか、表現を重視するのか、仕様をしっかりと確定させておく必要があると訴えます。コスト面での問題はあったもののユーザーからの反応は非常に好意的で、制作のテーマとしてきた「生きているアイドルをゲーム上で表現」への確かな手応えを感じたというコメントでセッションは締めくくられました。なお、Klabでは『うたの☆プリンスさまっ♪ Shining Live』を一緒に盛り上げてくれるLive2Dメンバーを募集中とのことですので、興味のある方はぜひ問い合わせてみてください。

《近藤智子》
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