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【CEDEC 2016】『バイオハザード7』VR化への道のり...全編完全対応への難しさ語る

横浜で開催されたゲーム開発者向けカンファレンスCEDEC 2016。8月25日には、人気シリーズの新作がどのような経緯で完全VR対応となったのかが語られたパネルセッションが開催されました。

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横浜で開催されたゲーム開発者向けカンファレンスCEDEC 2016。8月25日には、人気シリーズの新作がどのような経緯で完全VR対応となったのかが語られたパネルセッション「『バイオハザード7 レジデントイービル』におけるVR完全対応までのみちのり、歩みの中の気づき」が開催されました。

今パネルセッションでは、同作に用いられた新エンジン「RE Engine」の開発にもプログラマとして携わった高原和啓氏が、エンジンとゲームを同時に開発する上での苦労や開発途中の作品をVR対応させることへの難しさが語られました。

■シリーズ新作をVR完全対応にするという試み


RE Engineの開発と『バイオハザード7』のVR完全対応のサポートという、同時並行開発に携わった高原氏。RE EngineにVR対応機能を組み込みつつ開発は進められたのだそうです。

「VR完全対応」は、VRヘッドマウントディスプレイを装着したまま最初から最後までVR体験としてプレイできるという意味。『マインクラフト』をはじめとしたVR対応ゲームは、タイトルアップデートやプラグインでVRに対応させたものが多いですが、最初から最後までVRでプレイできる新作ゲームとしては世界初であると高原氏は説明します。開発中は、他社がVRコンテンツを発表するたびに先を越されないかドキドキしていたのだそう。なぜ、同じようなことを他社がやらなかったかについては、VR専用タイトルに比べてVR対応タイトルはコストがかかるので、誰もやりたがらなかっただけかもしれないとのこと。

『バイオハザード7』は2014年1月に開発が開始されましたが、当初からVRを組み込む計画はありました。しかし、実際にVR対応を開始したのは開発も進んだ2015年10月。1年9カ月の間に、システムやデザインなどは現在配信されている体験版と変わらない状態にまで実装されており、この状態からVRに完全対応させなければならなくなりました。


VR対応の転機は、2015年6月に発表したVRデモ『KITCHEN』だったと語る高原氏。まだ「Project Morpheus」と呼ばれていた頃のPS VR向けの技術デモとして2015年のE3で発表されたもので、VR開発の基礎検証であるとともに、VRとホラーの組み合わせでどのようなリアクションが得られるかの検証でもあったとのこと。


『KITCHEN』はユーザー体験を均一にするために、謎解き要素などは一切オミット。縛られた主人公目線の3分強のプレイ体験となっています。プロモーションでは、ゲーム画像を一切出さず、プレイヤーのリアクションを撮影した映像だけが使われました。E3会場では、プレイヤーの叫び声で人が集まってくる光景を高原氏は見ているのだとか。


ネットで検索しても出てこない『KITCHEN』のゲーム画像。規制することによって、ユーザーに恐怖を想像させるというプロモーションである。


会場で『KITCHEN』を実演する高原氏。椅子に座ってプレイする前提のため、360度見渡せるほかはコントローラーのトラッキングで縛られた手を動かすだけのシンプルな内容。

『KITCHEN』は、タイトルロゴに「7」の数字が入っていることからわからるように、『バイオハザード7』の素材を使った技術デモとなっています。『バイオハザード7』の体験版『ビギニングアワー』のラストシーンが『KITCHEN』のゲームプレイ部分。ナイフを突きつけられるという非日常的な体験を表現しています。

HMDを装着してトラッキングする際に、画面が暗すぎるとわかりづらくなっていまうので、明るめに設定されています。効果音もサラウンドで再生され、その場にいるかのような臨場感が味わえるとのこと。

■「VR疲れ」対策


開発チームでは、VRに適切に調整されていないコンテンツで発生する疲労を、「VR疲れ」と呼称。いわゆる「VR酔い」や眼精疲労によって起こるものと定義づけています。「VR酔い」は、ベクション(実際は止まっているのに動いていると錯覚すること)が主な原因とされており、眼精疲労は、「ステレオ違反(左右の映像が立体視表現以外の違いを持っている状態)」「深度違反(被写界深度を無視して描かれたものが他と重なった状態)」、解像度の低さにる映像のちらつきや、フォーカス距離の急激な変化などが要因とされています。

もし「VR疲れ」を感じたら、目を閉じたりHMDを脱いだほうが良いと高原氏は語ります。「VR疲れ」は蓄積されていくので、もうちょっといけると思っても、その時点ですでに酔っている可能性もあるのだとか。


「VR疲れ」によってユーザーがVRは合わないと感じてしまうと、VR対応をうたった通常のゲームからも離れていってしまう可能性がある。

「VR疲れ」は人体へのダメージそのものなので、瞬間的に面白ければよいというのは過信であると高原氏は強調。現段階では、面白さよりも「VR疲れ」を考える必要性を説きました。また、「VR疲れ」は個人差があり、開発者は仕事で繰り返しプレイすることにより耐性がついたり疲れづらい操作を覚えたりしますが、他のプレイヤーは必ずしも同じではないために常に気を配るほうが良いとしています。

■通常版とVR版の表現の違い


『バイオ7』の体験版『ビギニングアワー』をPS VRで実演する高原氏。

PS VRでの『バイオハザード7』は、通常のゲームプレイとは異なったシステムが多く実装されています。移動では右スティックを倒すと視界が30度回転するようになっており、画面の切り替わりは数フレームの補完処理が施されています。これは酔わないようにパラメーターが細かく調整されているとのこと。VR版では目に入る情報が多く、歩行スピードが加速しているように感じてしまうためにやや遅めに設計、カメラの揺れもカットされています。


オブジェクトを動かすときやアイテムを拾う際のカメラが揺れる演出をカット、そのため腕の表示自体省略。オープニングの起き上がるシーンをカット、ゲーム中に主人公が倒れるシーンのカット。しゃがみモーションは通常版は0.5秒の補完が入っていますが、VR版では0フレームに。通常版ではやや遅延して追従してくるライトの演出ですが、PS VRでみると画面自体が遅延しているように感じてしまうので、カメラに追従するように調整されているなど、VR酔いを考慮した多くの調整が施されています。また、イベントリ画面も空間に浮いているようなイメージに変更。



複雑なリアルタイムイベントは、VR空間上にスクリーンを表示する方式で描写。これにより大きな画面ぶれ等の演出でも酔いづらくなるが、あくまでも最後の手段だと高原氏は語る。



手持ちの武器の表示は近すぎると眼精疲労を引き起こしやすいので、通常よりも引き気味になっている。

■開発途中からVRに対応させることの難しさ

開発途中からVRに対応することは非常に大変であったと高原氏は語ります。すでに実装されているほとんどの要素に手を入れなければならず、全く別のゲームを同時に開発しているようなものだったのだとか。このような場合、要素を思いきってカットすることも重要であるとしています。また、考えることよりも試すことのほうが重要であり、既存の手法に惑わされないことが開発者にとって大事であると強調し、パネルセッションは終了しました。
《Daisuke Sato》
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