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【インタビュー】「ダンガンロンパ3」はなぜアニメなのか…小高和剛が語る挑戦と裏話

TVアニメ『ダンガンロンパ3 -The End of 希望ヶ峰学園-』がこの7月より放送スタートする。本作で総指揮を手がける小高和剛氏にインタビューを敢行。アニメならではの挑戦や制作の裏側など話を訊いた。

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TVアニメ『ダンガンロンパ3 -The End of 希望ヶ峰学園-』がこの7月より放送スタートする。超一流の才能を持つ高校生たちが、閉鎖された学園内で“コロシアイ”を繰り広げ、さらにその犯人を見つけ出す“学級裁判”を描いた『ダンガンロンパ』の最新アニメだ。「希望ヶ峰学園」シリーズの完結編となる本作は、「未来編」「絶望編」の2部構成。しかも、同じ週に2タイトルが放送されるという、異例の放送形式で、原作ファンのみならずアニメファンからの注目度も高い。
今回アニメ!アニメ!では、シリーズの生みの親であり、本作で総指揮を手がける小高和剛氏にインタビューを敢行。アニメならではの挑戦や制作の裏側など話を訊いた。
[取材・構成:沖本茂義]

TVアニメ『ダンガンロンパ3 -The End of 希望ヶ峰学園-』
http://www.nbcuni.co.jp/anime/danganronpa3/
未来編7月11日(月)、絶望編7月14日(木)よりW放送

※本記事では『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生』を『1』、『スーパーダンガンロンパ2 さよなら絶望学園』を『2』、『ニューダンガンロンパ∨3 みんなのコロシアイ新学期』を『∨3』、『ダンガンロンパ3 -The End of 希望ヶ峰学園-』を『3』(『3』の各作品を指すときは『未来編』、『絶望編』)と表記することがあります。

■「未来編」と「絶望編」 異例の同週ダブル放送

――シリーズ完結編となる『ダンガンロンパ3 -The End of 希望ヶ峰学園-』がこの7月より放送スタートです。まずはなぜ完結編を「ゲーム」ではなく「アニメ」で描こうとしたのかお聞きしたいです。

小高
新しいナンバリングタイトルとして『ニューダンガンロンパV3 みんなのコロシアイ新学期』の製作が決定していましたが、一方で「希望ヶ峰学園」シリーズを完結させたいという想いが強くありました。ただ、ゲームだと描ける物語が制限されてしまう。なので今回はゲームではなくアニメで完結編を描こうと。

――原作ファンにとって、アニメでの完結は驚きのニュースだったと思います。

小高
僕はメディア自体にそこまでこだわりはないんです。ゲームとアニメ、それぞれ描けるものや魅力が違い、今回は物語を完結させるうえでアニメのほうが向いていたんです。

――『ダンガンロンパ3』の企画はいつ頃から動き出していたのでしょう?

小高
前回のTVアニメ『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生 The Animation』が終わったころから「次は何をやろうか?」と企画を練っていました。『スーパーダンガンロンパ2 さよなら絶望学園』をアニメ化せずに続きの話をオリジナルをつくろうと決まり、実際に企画が動き出したのは2年ぐらい前ですね。

――『ダンガンロンパ3』は、後日譚である「未来編」と、前日譚である「絶望編」の2部構成です。なおかつ同週W放送というTVアニメにおいても異例の放送形式を採用されました。

小高 
『1』と『2』のその後の物語を描くだけでは、シリーズ完結とは言えないと思ったんです。シリーズ全体を通して回収していない伏線もあるし、希望ヶ峰学園について描いていないエピソードもあった。それらをちゃんと拾いたかったんです。
ただ、そのときは「未来編」と「絶望編」の週2回放送は考えていなくて、過去と未来が交互に進む一本のストーリーとして考えていました。

――そこからどうして同週W放送となったのでしょう?

小高
僕のプロットを受けて、ラルケのプロデューサーが「週2回で放送するのはどうですか?」と提案してくれたんです。たしかに僕もそれがベストだと思いました。「未来編、絶望編、未来編」と1週間ごとに交互で放送してまうと、全然出ないキャラクターも出てくるし、作品への没入感も薄くなってしまう。だったら「週に2本で」とお願いして今の形となりました。

■アニメならではの仕掛けが満載

――物語についてお聞きしたいのですが、「未来編」と「絶望編」でそれぞれ何が描かれるのか教えてください。まずは「未来編」からお願いします。

小高
希望ヶ峰学園でのコロシアイ生活から晴れて脱出した苗木誠たちですが、世界は絶望に侵食されて危機的状態に陥ってました。そんな絶望に満ちた世界を救うべく“未来機関”が結成され、そこに苗木たちが所属すると。そこで再び現れたモノクマによって、新たなコロシアイを突きつけられてしまう……そんなストーリーですね。
見どころとしては、ゲームでは“学級裁判”というルールが存在していましたが、今回はアニメオリジナルということでより動きのある“コロシアイ”となります。


――これまでの『ダンガンロンパ』シリーズでは、“学級裁判”が中心的要素となっていましたが、それを今回無くしたのはなぜでしょう?

小高
殺人事件が起きて推理して……という“学級裁判”はゲームでは良いテンポなんですが、動きが制限されてしまうのでアニメだと難しい。前回のアニメをやったときにそれを強く感じました。なので今回はアニメに合わせた新しいタイプの“コロシアイ”にしようと。

――トリックなどは登場するのでしょうか?

小高
トリックや推理というよりは、むしろ心理戦や読み合いがメインになりますね。一定時間が経つと睡眠薬が投与されたり、それぞれのキャラクターにNG行動が用意されていて、それをすると死んでしまう。だから互いのNG行動が何なのか……という読み合いが白熱します。バラエティ番組でよくありますよね、おでこにNGワードを貼ってその人が言っちゃいけないことを当てるみたいな(笑)。そんなイメージです。

――一方、「絶望編」はいかがですか?

小高
希望ヶ峰学園がいかにして滅んでいったのか、それを『2』のキャラクターたちの目線で描いています。ゲームのなかでもざっくりとしか説明していな部分だったので、ファンのみなさんが最も見たい部分だろうと。
「未来編」は誰でも観られるようにつくっているんですけど、「絶望編」はこれまでシリーズを応援してくれたファンに向けてつくっています。いろんなキャラクターが登場したり、これまで謎だった部分が明らかとなります。

――以前小高さんが発言されていましたが、今回の『ダンガンロンパ3』は新規ファンよりは、むしろこれまでずっと応援してくれた人をターゲットにしているそうですね。

小高
ええ。とくに絶望編がそうなんですけど、初見の人をエクスキューズしようとしたら説明が多くなってしまう。だったら「『3』を見る前に『1』、『2』をやってください!」と割り切ってつくったほうがいいだろうと。もちろん、初見の方も楽しんでもらえると思いますけどね。

■ダンガンロンパを知り尽くしたスタッフ陣

――本作で小高さんは、原案に加え「総指揮」とクレジットされています。どのようなことを担当されているのでしょう?

小高
作品全体の統一感をとるために何でもやってます。シナリオ会議やアフレコ現場に出席したり、絵コンテやラッシュをチェックしたり。今回はオリジナルではあるけれどナンバリングシリーズを謳っているので、ダンガンロンパらしさを担保するためにあらゆるところでチェックをさせてもらっています。

――制作チームについては、岸誠二さんが総監督を務め、アニメーション制作はラルケと、前作の体制を引き継ぐ形となっています。

小高
オリジナルでナンバリング作品をつくろうとしたとき、新しいスタッフよりは『ダンガンロンパ』を知り尽くしている人たちにお願いするほうがいいだろうと。Lercheさんは『絶対絶望少女 ダンガンロンパ Another Episode』のゲーム内のアニメーションも制作してもらっていますので。

――前回のTVアニメシリーズは振り返っていかがですか?

小高
正直いうと、あとは2話ぐらい欲しかったなと(笑)。ただ、限られた尺のなかでベストを尽くせたし、アニメを入り口に新規のファンの方も増えてよかったです。
『1』のアニメは『ダンガンロンパ』の間口を広めるという役割が大きかった。むしろ今回の『3』は、今までのファンの方を喜ばせるようにつくっています。


――小高さんはシナリオ原案を手がけられていますが、そこから実際の脚本へどのように仕上げているのでしょう。シリーズ構成の海法紀光さんとのやり取りなどいかがですか。

小高
基本的には僕が書いたプロットをもと、海法さんに脚本へと仕上げてもらっています。僕のプロットもけっこう詳しく書いているのですが、海法さんはアニメならではの違った視点の面白さを加えてもらっています。さらに海法さんが脚本として仕上げたあと、僕が引き取りセリフなど微調整を行っています。

――今回、海法さんをシリーズ構成に起用されたのは何故ですか?

小高
海法さんは『ダンガンロンパ』にすごい詳しかったようですし、作家性なども踏まえてラルケのプロデューサーが推薦してくれたんです。実際、話し合いもすごくスムーズに進みましたね。
今回はオリジナルということもあって、岸総監督を筆頭にみんなでアイデアを出し合いながらつくっています。とはいえ「ダンガンロンパ」というベースがあるので、そこは外れないように注意しながら。

■ダンガンロンパらしさとは?

――オリジナルということでスタッフ間の共通認識が大事だと思うのですが、『ダンガンロンパ』をつくるうえで「ここは外せない!」というポイントはどこになるのでしょう?

小高
何がダンガンロンパらしいかは、というのはひと言では難しいんですが……それでもスタッフの間で「これ、ダンガンロンパっぽくないよね」みたいな共通認識はあるんですよね。強いて言うなら、見ている人の心を揺さぶること、でしょうか。希望を持たせたり、絶望させたり……そのあたりはそのあたりは意識しています。

――原作ゲームにはじまり、アニメ化、舞台化と広がりを見せる「ダンガンロンパ」ですが、どのあたりがファンの心に響いていると思いますか?

小高
そうですね……まずはキャラクターかなと。あとは、先ほどの話にもつながりますけど、ひと言では言い表わせないところがあって、それが替えのきかない特別なタイトルになっているのかなと。

――では、最後にダンガンロンパファンの方に向けてメッセージをお願いします。

小高
週2回で『ダンガンロンパ』をご覧いただけるということで、この3ヶ月間はかなり感情を揺さぶられると思います(笑)。濃密な体験ができると思いますので、最後までぜひお付き合いください。
シリーズ未見の方でも、第1話を見たら続きが気になるほど面白いとは思いますが、『1』、『2』を知っているとより深く楽しめるので、ぜひゲームやアニメで旧作に触れてみてください!



『ダンガンロンパ3 The End of 希望ヶ峰学園』
「未来編」
TOKYO MX 7月11日より毎週月曜日23:00~
BS11  7月11日より毎週月曜日24:30~
AT-X  7月11日より毎週月曜日23:00~
     リピート:毎週(水)15:00~/毎週(土)7:00~/毎週(日)16:00~

「絶望編」TOKYO MX 7月14日より毎週木曜日23:30~
BS11 7月14日より毎週木曜日24:30~
AT-X 7月14日より毎週木曜日23:30~
   リピート:毎週(土)15:30~/毎週(日)16:30~/毎週(水)7:30~

アニメ公式サイト
http://www.nbcuni.co.jp/anime/danganronpa3/
公式ツイッター
https://twitter.com/dangan_official

「ダンガンロンパ3 -The End of 希望ヶ峰学園-」シナリオ原案&総指揮・小高和剛氏インタビュー 完結編をアニメで描くその意義とは?

《沖本茂義》
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