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【レポート】ゲームクリエイターが“憧れの職業ではない”ことに危機感…CC2松山洋の全国ツアー開始、「プロになれない理由」とは

サイバーコネクトツー(以下、CC2)代表の松山洋氏は、創業20周年を記念して全国47都道府県を巡回し、昼間は大学や専門学校で講演、夜は地元のゲームファンと交流する試みを開始しました。

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サイバーコネクトツー(以下、CC2)代表の松山洋氏は、創業20周年を記念して全国47都道府県を巡回し、昼間は大学や専門学校で講演、夜は地元のゲームファンと交流する試みを開始しました。

5月25日には最初の訪問地である山口県に上陸し、東亜大学とYICビジネスアート専門学校で講演した後、山口市内の居酒屋でファンミーティングを実施。本稿ではYICビジネスアート専門学校での講演内容を中心にレポートします。



山口に7校、京都に4校を数え、文部科学大臣が認定する職業実践専門課程に県内で初めて認定されるなど、県下最大級の総合専門学校YICグループ。これまで1万3000人の卒業生・職業訓練生を輩出しています。JR新山口駅南口に校舎を構えるYICビジネスアート専門学校・ITクリエイター学科では、Unityを用いたアプリ開発の授業も実施。講演会では同コースの学生を中心に約30人が参加しました。

一方で社員10人からスタートし、今では230人を数える大所帯に成長したCC2。今夏にはモントリオールにもスタジオ開設を予定しています。人材教育にも積極的で、毎年15-6人の新卒を採用し、独自に「スーパーゲームスクール」を実施するほど。しかし「少子化の影響で学生数が減っていることや、ゲームクリエイターが憧れの職業でなくなっている」(松山氏)ことに危機感を覚え、あらためて全国の学校を講演して回ることにしたといいます。

◆スマホゲーム全盛だから家庭用に注力する


講演はパブリッシャーとディベロッパーの違いから始まり、一部のヒット作に売上が集中する業界事情の解説から始まりました。松山氏は「昨年日本で発売された新作タイトルは382本。これに対して子ども達が年間に購入するタイトル数は平均3.5本で、熱心なゲーマーでも7.5本。当然ヒット作から売れていくため、上位1割とそれ以外の売上本数の差が非常に大きい。大半が赤字だが、少数のヒット作で埋め合わせされている」と説明します。

これは漫画・音楽・映画などに比べて、ゲームの商品単価が高い点が背景にあります。しかもヒットの法則があるわけではありません。松山氏は「だからこそ、みんな夢をもってゲームを作っている」と解説。特にここ数年でモバイルゲームにシフトした日本市場と異なり、欧米では家庭用ゲームの市場規模が大きく、同社としても改めて注力しているところだと説明されました。

「弊社でもスマホゲームを作っていて、ここはこれからも続けていきます。しかし、日本ではここ数年で、業界全体がスマホゲームに移行してしまいました。日本は世界でも珍しいくらい、高額な課金をしてくれる市場でもありますしね。みんながそっちに行ってしまったので、うちは逆にいきます。作る以上、世界で売れるゲームにしますよ。世界ではまだまだ家庭用ゲームが求められていますからね」(松山氏)

◆全員で企画書を育てるCC2のスタイル




後半では「企画・制作・仕上げ・発売」という、ゲーム開発の流れについて説明されました。中でもCC2では不定期でアイディアコンペを行い、ペラ企画を全社で持ち寄って検討し、みんなで育てて企画書にしていくとのこと。正式にプロジェクトがスタートしたら、仕様書の作成・シナリオの作成・キャラクターのデザインやCGグラフィック・アニメーション・背景制作、サウンド制作、プログラミング、デバッグなどと進んでいきます。

完成したデータは、発売日の1-2ヶ月前に納品されます。パッケージゲームの場合、ディスクを工場で焼いて全国のゲームショップに物流する必要があるからです。納品終了後も発売日に向けて盛り上げるため、体験会やサイン会、該当イベントなどのプロモーションが行われます。なお、同社ではゲームの発売後もファンミーティングを実施するなど、一般的なディベロッパーの枠を越えて、宣伝・広報にも力が入れられています。

ゲーム制作のやりがいについて、若手社員の声も紹介されました。「お客様に喜んでもらえたとき」「自分の手で世界をつくりだせること」「お客様の『おもしろい』のひとこと」などです。松山氏もゲームの発売日には量販店やゲームショップを巡り、売れ行きをチェックするとのこと。実際に店頭で、お客様がゲームを買っている姿を見ることほど、達成感が感じられる瞬間もないといいます。

◆学校と継続的なコネクション作りを実施


最後にゲームクリエイターとしての姿勢も語られました。漫画雑誌を毎月60冊以上、単行本を100冊以上読破し、映画も年間100本以上を鑑賞、放映中のアニメのチェックも怠らないという松山氏。しかし、すべて「好きで見ているし、まったく大変ではない。ゲームクリエイターになっていなくても、こうした生活をしていると思う」と語ります。好きを突き詰めたらプロになった、プロになれないのは「本当は好きではないから」だというわけです。

「クリエイティブな仕事をしたいのなら、とことん好きなことだけやってください。自分も親や先生から『いつマンガやアニメを卒業するのか』と言われ続けましたが、好きでいつづけることを諦めなかった結果、プロになっていました。実際、クリエイターになるのは簡単です。なると決めて、すべてを捧げることです。悪魔に魂を捧げてください。24時間、すべてクリエイティブだけを考えてください。楽しいですよ」(松山氏)

優秀な学生がいれば何十人でも採用したいが、残念ながら学生が求めるスキルに達していない。しかし、これには求める人材像を明確にしてこなかった企業側の責任もあるという松山氏。学校側と、今後も情報交換や連携を密にしていきたいといいます。講演終了後、さっそく学生から提出されたポートフォリオの内容を確認する光景もみられました。真剣に内容をチェックしながら、将来に向けてアドバイスを送っていました。



その夜は山口市内に移動して、ファンミーティングが開催されました。萩・新南陽・そして小倉のファンにまじって、研修室の学生をCC2に送り出した山口大学の教員や、中国からの留学生も参加。山口県の銘酒「獺祭」を堪能しながら、さまざまな話題で盛り上がりました。会話を聞きつけた店員が、実はCC2のファンだったという一幕もあったほど。特に『.hack』シリーズのファンが多く、新作を望む声が多かったことが印象的でした。

《小野憲史》
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