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【レポート】今明かされる『Rez』の隠されたストーリー…実は精子が卵子へとたどり着き受精するまでを描いていた

【レポート】今明かされる『Rez』の隠されたストーリー…実は精子が卵子へとたどり着き受精するまでを描いていた

2016年3月24日(木) 19時13分

米サンフランシスコで開催されたGDCにて、往年のセガの名作を数多く手がけてきた開発者でエンハンス・ゲームズCEOの水口哲也氏によるセッション「Classic Game Postmortem: Rez」が開催されました。2001年にPS2とドリームキャストでリリースされた『Rez』はどのような経緯で開発されたのか、開発者の水口氏の口から直接語られました。

◆『Rez』のインスピレーション


水口氏は15年前にどのようなインスピレーションを得て『Rez』を開発したのでしょうか。まず、同氏が最も影響を受けたという2つのゲームが紹介されました。1982年にアーケードでリリースされた『ゼビウス』と89年にAmigaでリリースされた『ゼノン2: メガブラスト』です。高校生の時、『ゼビウス』をプレイしていると自分のプレイしているサウンドエフェクトがまるで音楽を奏でているように感じ、これが実際に音楽になっていったらどうなるのだろうという妄想をしていたのだそうです。大学生の時に友人に勧められてプレイしたという『ゼノン2』の音楽は、いつも自身の頭のなかでリピートされているのだと語っています。


水口氏にとって『ゼノン2』が重要なゲームになったのは、サウンドトラックを手掛けたBitmap Brothersのように、アーティストがゲームを作ったという事実に衝撃を受けたからでした。当時、ゲームはアーティストやクリエイターが作るという雰囲気はありませんでしたが、このゲームが示した新しいメディアフォームを自分も作りたいという夢を持ち始めたのだそうです。

その後、セガに入社した水口氏はレーシングゲームの開発に携わりますが、初めて手掛けたアーケード版『セガラリー』で、ゲームの作り方と世界のゲーム市場を体験し、体感ゲームを通じて、ビジュアルや音だけでない複数の感覚を使ったものを作るベースができてきます。いつか音楽を使った新しい体験を作りたいという気持ちも当時からぼんやりとあった水口氏は、1997年、いくつかのレースゲームを開発する途中でスイスのチューリッヒで行われた「Street Parade」というテクノの音楽イベントに行き、大きな影響を受けることになりました。


DJのテクノ音楽に合わせ、スタジアムの約10万人の観客や照明が「動く」という光景を見て、「Synesthesia(共感覚)」という言葉が頭に入ってきます。もともと、芸術系の学校に通っていた水口氏にとって「共感覚」は知ってはいたものの、その言葉と体験が初めて重なった瞬間だったそうです。

続いて、1900年代初頭に音や音楽をモチーフとして創作を行っていたロシア出身の抽象絵画家、ワシリー・カンディンスキーの作品を紹介。


モスクワを朝から夜まで歩いた印象を絵として表現した作品。

彼らと現在の人の感じ方や創造力は同じであると語る水口氏。カンディンスキーのインスピレーションは、絵のキャンバスなのかコンピューターなのかというアナログやデジタルの違いだけであるとして、100年後の体験として自分が同じものを表現するとどのようなものが産まれるのかと考え始めます。ゲームと音楽が結びつくとどのようなものができるのか、『ゼビウス』で感じていたようにプレイした時の効果音が音楽化していったらどうなるのか、ゲームでの共感覚的なものとは何か、という考えが水口氏の頭の中に湧き上がり、そこから長い旅が始まります。

◆音が生み出す快感


当時は音楽ゲームというカテゴリがなかった時代でしたが、ミュージシャンやパフォーマーは何を考え何を感じながら表現しているのかという分析を行ったり、音楽を体験に変える演奏ゲームなどを考えていたころ、水口氏の友人が南アフリカのケニアで撮影された非常に長いビデオを見せてくれます。静かな手拍子から歌へと、どんどんグルーヴが湧き上がってくるという内容で、ビデオを何度も見てはどこからグルーヴが来るのか、何もないところから始まって1分後には皆が湧き上がる状況とはなんなのかを研究していきます。

ゲーム開発では馴染みのある「コール&レスポンス」と、音楽の持つそれは感覚が似ており、ここに一つのアナロジーがあるというところから様々な実験を行っていくことになります。また、音楽においてDJは何をやっているのかを研究し、サウンドによって気分やムードのデザインを行っているのだと分析。そこに照明効果が入ることでさらに高揚感が高まるとしています。DJが良い気分であることをキープするためにレベルをどんどん変えていますが、これと先ほどのグルーヴによる気持ちよさが一緒になったら、音楽をプレイするという一人称の体験は非常に気持ち良いものになるのではないかと考えつき、どのように組み合わせていくかという実験を始めることになります。


水口氏が上映した研究用ビデオ。クラブの映像や和太鼓による祭りの様子が収められていた。

ビデオを見ながら、グルーヴが生まれる瞬間というのを、スタッフ全員でスローモーションで頭の中にイメージし、何が音楽による化学反応を起こしているのかの考察を行ったのだそうです。


デザインアートチームによる、ゲームのメカニズムを製作する様子。


試作段階では、基本的なシステムの設計までには最低限の素材を用いた数多くの試行錯誤が行われた。


メカニズムが見え、デザインもでき上がってきた状態。


最終形に近い状態。

これらのプロセスを経て開発チームが得たものは、音楽リズムのシンクロが快感を呼ぶことへの「Quantization(数値化)」でした。自分にリズム感がなくても、バラバラに撃った攻撃をプログラムが少しずつ気持ちのいいリズムに補正して音楽化していったときに、マジックが起こったのだと水口氏は言います。コールとしてのサウンドに対してレスポンスとしてのサウンドが起こると音の波のようになり、そこに快感が生まれていったのです。このメカニズムは、水口氏が後に手掛けたPSP用パズルゲーム『ルミナス』へも受け継がれていきました。ここまでたどり着くのには果てしなく長い道で、まるで宝物を見つけたかのような気持になったのだそうです。

◆『Rez』のアバターと隠されたストーリー


『Rez』のプレイヤーアバターがなぜ人の形をしているのか、そしてゲームにはどのような隠された物語があったのかを水口氏は明らかにしました。『Rez』では、プレイヤーはサイバースペースのハッカーとして世界を守るという物語が説明されていましたが、実は、誰もがはるか遠い記憶の中で経験している「精子」の物語を表現しているのだそうです。『Rez』では、精子が卵子へとたどり着き受精するまでを描いており、アバターが赤ちゃんであることや、最終ボス戦にて女性キャラクターが出現してプレイヤーと結合するのは、新しい命の誕生を表現しているのだそうです。

水口氏は、プレイによって快感を得てもらうことの他に、新しいメディアフォームとしてゲームという「体験」をデザインしたのだと語りました。そして、そこにたどり着くまでの自分の経験自体も決して忘れることはない宝物であると付け加えました。


2001年に開催された「PlayStation Paty」。前日に髪をシルバーに染めたという当時の水口氏による『Rez』のプレイデモの様子。

◆『Rez』というタイトル

『Rez』というタイトルは、「Resolve(決意)」「Resolute(毅然)」「Resonate(共鳴)」といった多くの意味を持っていますが、15年前に水口氏の友人であるサイモン・コックス氏らがスタジオを訪問した時に、映画『トロン』の世界にでてくるプログラム「Rez」みたいだと発言したことが切っ掛けとなっています。


ゲームプレイを通してサウンドやビジュアル、バイブレーションなどすべてを一緒にするというコンセプトから、「トランスバイブレーター」というPS2用のバイブレーションデバイスも発売していた。

◆さらなる共感覚性を求めて


インタビューで語っていたように長年VRを研究してきた水口氏は、昨年の「PlayStation Experience 2015」にてPS VR向けの『Rez infinito』を発表しました。そこでは、さらに共感覚性を高めるための専用スーツ「Synesthesia Suit」をお披露目し、水口氏自らデモンストレーションを行っています。26個のバイブレーターを内蔵しサウンドアクチュエーターによって振動を制御できますが、その上の層にはLEDが組み込まれているため、振動だけでなくライティングによる共感覚も得られるようになっています。「Synesthesia Suit」は、六本木ヒルズで開催されたテクノロジーアートの祭典「MEDIA AMBITION TOKYO 2016」でも展示が行われました。

◆エリアX


最後に、水口氏はコード「エリアX」と呼ばれる『Rez infinito』のステージを製作していることを明らかにしました。これは現在の最新技術で作られるもので、まったく新しい体験ができるものであるとのこと。また、『Rez infinito』は、PS VRのローンチに間に合うように製作が行われてることもアナウンスされました。

◆まとめ

音楽ゲームが確立されていなかった15年前に新しいジャンルとして生まれた『Rez』と、VRというこれからスタートするメディアへの挑戦となる『Rez infinito』。あらゆる体験を再デザインし、これまでにないものを作り出す水口氏の姿勢は、どの時代でも変わらないようです。

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(Article written by Daisuke Sato)

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