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【hideのゲーム音楽伝道記】第27回:『ファイナルファンタジーIX』― 生きる意味を探す者たちの冒険を彩る音楽

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【hideのゲーム音楽伝道記】第27回:『ファイナルファンタジーIX』― 生きる意味を探す者たちの冒険を彩る音楽
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インサイドをご覧の皆さま、こんばんは。ゲーム音楽好きライターのhideです。ゲーム音楽連載「hideのゲーム音楽伝道記」第27回目となる今回は、『ファイナルファンタジーIX』をご紹介します。



『ファイナルファンタジーIX』(以下『FFIX』)は、2000年7月7日にスクウェア(現スクウェア・エニックス)からプレイステーションで発売されたロールプレイングゲームです。2010年5月20日にはPSのゲームアーカイブスで配信され、2016年2月10日からはスマートフォン版(iOS/Android)の配信が開始されました。また、今後PC(Windows)版の販売も予定されています。

本作は“原点回帰”をテーマとしており、初期の『FF』を彷彿とさせる、王道のファンタジックな世界観と物語が堪能できます。劇団兼盗賊団の「タンタラス」が、アレクサンドリア王国の王女・ガーネットを誘拐するため、劇場艇プリマビスタで城を訪れるところから幕を開ける本作。タンタラスの一員である主人公・ジタンや、黒魔道士の少年・ビビらを中心とした魅力的なキャラクターたちが大冒険を繰り広げていきます。

また、冒険が進む中で、ジタンやビビたちは、自らの生きる意味や、存在意義を探し求めていくことになります。「何のために人は生きるのか?」という哲学的なテーマも織り込まれた物語が、『FFIX』では展開してゆくのです。

◆ファンタジー世界を彩る、植松伸夫氏渾身の名曲群!


本作の作曲を担当したのは、シリーズ第1作から関わる『FF』音楽の生みの親・植松伸夫氏です。本作で流れる音楽はなんと140曲にものぼり、植松氏が担当した『FF』シリーズの中では、もっとも楽曲数の多い作品となっています。荘厳でシリアスな楽曲あり、やさしく癒される楽曲あり、緊張感あふれるバトル曲あり、「振りカエルと奴がいる」というタイトルだけでクスッと笑ってしまうようなユニークな楽曲もあり(笑)。変幻自在な音楽性を持つ植松氏が紡ぐ、多彩で美しい音楽をたっぷり堪能することができますよ。

それでは、本作の中で印象的な楽曲をピックアップしてご紹介していきたいと思います。

●「いつか帰るところ」
本作のタイトルデモ画面で流れる楽曲です。素朴なリコーダーで奏でられる、切なさと温かみを合わせもった音色が素敵ですね。なお、この楽曲はゲーム中さまざまな形にアレンジされて登場する、非常に重要な存在になります。

●「アレクサンドリアの空」
ゲーム冒頭、タンタラスの作戦会議後に流れる、タイトルクレジット・ムービーで流れる楽曲です。黒魔導士のビビが、何かの影に気づいて空を仰ぐと、ゆっくりと飛来する巨大な劇場艇プリマビスタ。同時に響くオーケストラの雄大かつ壮麗な音色が、冒険の幕開けを華々しく彩ってくれます。「ファイナルファンタジー」のメインテーマのフレーズが含まれているのも、『FF』が始まる!と実感できていいですね。

●「この刃に懸けて」
ゲーム序盤にタンタラスによって行われる演劇、『君の小鳥になりたい』の中で流れる音楽です。途中でバトルに移行するのですが、この時の曲の盛り上がりが非常に熱いですよ! ゲーム中、たった1度きり、このシーンにしか流れないのが惜しいほどの名曲です。PSの内蔵音源とは思えないほどの美しい音色も魅力的だと思います。

●「Vamo'alla flamenco」
演劇『君の小鳥になりたい』で、ジタンとタンタラスの団員・ブランクがチャンバラ演技をするミニゲームで流れる、フラメンコ調の楽曲です。ギターやベース、カスタネット、ハンドクラップで織りなされるフラメンコのリズミカルな音色がクセになります。ちなみにこの楽曲は、ゲーム中盤で遊べるようになるミニゲームの「ここほれ!チョコボ」でも流れます。僕はどちらかと言うと「ここほれ!チョコボ」の印象が強いですね。チョコボに乗って地面を堀り、お宝を探し出すというミニゲームなのですが、コレが本当によく出来ていて面白かったので、僕はハマりまくってずーっとこの曲を聴いていまして…。そのせいか、音楽が耳にこびりつきました。脳内再生余裕です(笑)。

●「あの丘を越えて」
フィールドマップで流れる音楽です。本作のエンディングテーマ、「Melodies Of Life」(詳しくは後述)を穏やかにアレンジした楽曲となっています。浮遊感のあるやさしい音色で奏でられるこの楽曲は、牧歌的でファンタジックな本作の世界観に完璧にマッチしていて、聴いているととても癒されますね。

●「辺境の村 ダリ」
ゲーム序盤に立ち寄る、ダリという村で流れる音楽です。あたたかみのあるアコースティックギターと木管の音色がとても癒されますよ。……実はこの村には“とある秘密”があるのですが、そんなことは微塵も感じさせないほど平和的な音楽です。

●「黒魔道士VS黒魔道士」
ダリの村外れから、カーゴシップという飛空艇に乗りこむジタンたち。そこに突如現れたガーネットを狙う刺客・黒のワルツ3号に襲われ、カーゴシップに同乗していた黒魔道士たちが落下していく際の音楽です。哀しさがありながらも美しくもある、ピアノとヴァイオリンの旋律が心に残ります。哀しいシーンなのに、美しい音楽を当てるというギャップがたまらないですね。

●「南ゲート突破」
執拗に追撃してくる黒のワルツ3号を振り切って、南ゲートをカーゴシップで突破するムービーシーンで流れるオーケストラ楽曲です。今にも閉じてしまいそうなゲートに向かって突き進んでゆくスリリングさを、アップテンポで疾走感あふれる音楽が盛り上げてくれて、プレイヤーのハラハラドキドキ感を増幅させてくれます!

●「永遠の豊穣 Eternal Harvest」
「クレイラの樹」という大樹の最上部にある街のイベントで流れる楽曲です。この街は侵入者を防ぐため、大樹の周りに嵐を起こしています。その嵐を強めるため、女竜騎士のフライヤと巫女たちが古くから伝わる儀式を行う際に、この楽曲で舞いを披露するのです。ハープから始まり、木管やパーカッションも加わってどんどん盛り上がりを見せてゆく、神秘的かつ華麗な旋律が魅力的ですよ。

●「ローズ・オブ・メイ」
アレクサンドリア王家に仕える女将軍、ベアトリクスのテーマ曲です。憂いを帯びつつも美しく奏でられる繊細なピアノの旋律が、胸中に苦悩を抱えながらも気高く振るまうベアトリクスという人物を、これ以上ないほど上手く表現していると思います。

●「守るべきもの」
アレクサンドリアの城下町に霧の魔獣が侵入した際、ベアトリクスが“とある人物”と共に闘うシーンで流れます。「ローズ・オブ・メイ」がフラメンコ調の勇ましいアレンジになっていて格好いいですよ! 未プレイの方のために伏せておきますが、ここで一緒に戦う“とある人物”とベアトリクスはとってもお似合いな二人だと思いますね。

◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆

挙げていくとキリがないくらい多数の名曲がある『FFIX』ですが、僕がこの作品で一番印象に残っているのは、ゲーム終盤のパンデモニウムという城のイベントで聴くことができる、「独りじゃない」という楽曲です。とある衝撃的な事実を知り、己の存在意義を見失い、自暴自棄になるジタン。そんな彼のもとに集まり、まっすぐな想いをぶつける仲間たち――。ジタンの心情を表現した悲壮感とともに、仲間との深い絆をひしひしと感じさせてくれる熱い楽曲です。聴いていると、胸に熱いものがこみあげてきます…! このシーンは『FFIX』の中でも屈指の名シーンだと思いますね。

もうひとつ、僕が印象に残っているのは、長い旅の果てに迎えるエンディングですね。とあるキャラクターの独白で進んでいくのですが、セリフのひとつひとつが胸が締め付けられるほどせつなく、考えさせられるものでした。また、ラストにはゲーム冒頭と同様、タンタラスによる演劇があるのですが、このシーンが非常に感動的なのです。詳細は伏せますが、セリフ回しや演出が本当にニクくて! そして、この直後のムービーで流れる「その扉の向こうに」という楽曲がまた素晴らしいです。高揚感と歓喜にあふれる感情が、壮大なオーケストラで盛り上がりますよ。映像と音楽のシンクロ具合も見事でした。これはぜひ最後までゲームをプレイして聴いていただきたいと思います。


◆胸に沁みわたる生命賛歌「Melodies Of Life」



上記のトレーラーで「Melodies Of Life」を聴くことができます。

そして『FFIX』の世界に欠かせない楽曲が、歌手の白鳥英美子氏が歌う本作のエンディングテーマ、「Melodies Of Life」です。生命の尊さをまっすぐに歌いあげる白鳥氏の歌声は、包み込まれるような優しさと、揺るぎない力強さがあり、ダイレクトに胸に響いてきます。音楽単体でも名曲ですが、最後までゲームをプレイしてこの歌を聴くと、その感動はより大きくなりますね。ゲームを最後までやった人にしか味わえない、格別な感動があります。

なお、「Melodies Of Life」は、作中の色々なシーンにさまざまな形にアレンジされて使用されている重要な楽曲です。ガーネットがジタンに誘拐を依頼するシーンで流れる「奪われた瞳」や、ガーネットが歌う子守唄のようにやさしい「記憶の歌」など、重要なシーンでたびたび流れ、演出として効果的に使用されています。断片的な音の記憶が積み重なっていって、ラストで主題歌として堂々と流れる「Melodies Of Life」を耳にすると、ゲームをクリアした達成感とともに、深い感動がしみじみと胸に響いてきますね。

◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆

本作は、数ある『FF』シリーズの中でも純然としたファンタジー世界での冒険が描かれており、「命の尊さ」をテーマにした物語が繰り広げられます。植松氏が紡ぐ音楽は、そんな『FFIX』の喜怒哀楽にあふれる物語を、情感たっぷりに盛り上げてくれます。笑いあり、涙ありの長い冒険の果てに、ジタンやビビをはじめとする『FFIX』の登場人物たちは果たして何を見つけられたのか――。ぜひ、あなたの目で確かめてみてください。活き活きと描かれる、熱い心を持った登場人物たちが織りなす物語は、きっとあなたの胸にも、忘れられない思い出を残してくれると思います。

個人的な意見ですが、本作のゲームとしての総合的な完成度は、歴代の『FF』シリーズの中でも相当高いと思っています。特に、キャラクターの心理描写がとても素晴らしいです。本作の登場人物たちは、さまざまな出来事を通しての人間的な成長が描かれており、序盤と終盤ではまったく別人のような成長ぶりを見せます。その生き様からは、きっと勇気や元気など、たくさんのものをもらえると思いますよ。先日スマートフォン版の配信も開始されましたので、ぜひ多くの方にプレイしてみてもらえればと思います。




なお、本作のサントラCDは、『ファイナルファンタジーIX オリジナルサウンドトラック』(CD4枚組)と、ムービーシーンの楽曲を収録した『ファイナルファンタジーIX オリジナルサウンドトラック PLUS』が発売されています。あわせてCD5枚組、計140曲以上にものぼる、植松氏渾身の楽曲群が詰まった名盤です! ぜひサントラも合わせてお楽しみください。

少し余談になりますが、僕は16年前、最初に発売された『FFIX』のサントラを買って聴いた時、大好きな楽曲の「南ゲート突破」が収録されていなかったのが非常にショックでしたね。のちに発売された『PLUS』サントラのほうに収録されていたので、とても安心したことを今でもよく覚えています(笑)。

最後に……植松氏がとある専門学校で特別講義を行った際、「音楽を作る時に心がけていることはありますか?」という学生からの質問に対して、「あたたかい、やわらかい、人が喜ぶ普遍的なものを目指しています」と回答されていたことがあります。今回ご紹介した『FFIX』の音楽には、人をやさしく包み込むような植松氏の穏やかで温かい人柄と音楽性が、特に強くにじみ出ているように僕は思います。植松氏が生み出した『FFIX』の楽曲たちを、ゲームとともに、ぜひ体験してみてくださいね。いつまでも語り継ぎたい、素敵な作品だと思います。

【筆者プロフィール】
 hide / 永芳 英敬


ゲーム音楽ライター&ブロガー。ゲーム音楽作曲家さんへのインタビュー記事、ゲーム音楽演奏会のレポート記事など、主にゲーム音楽関係の記事を執筆しています。『FFIX』発売当時、『FF』のフィギュア欲しさにコカコーラを飲みまくっていたクチです(笑)。好きな『FFIX』のキャラはスティルツキン!

[Twitter] @hide_gm [ブログ] Gamemusic Garden

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《hide/永芳英敬》

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