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【hideのゲーム音楽伝道記】第25回:『ラスト・オブ・アス』― 滅亡寸前の世界での二人旅を彩る音楽

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【hideのゲーム音楽伝道記】第25回:『ラスト・オブ・アス』― 滅亡寸前の世界での二人旅を彩る音楽
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インサイドをご覧の皆さま、こんばんは。ゲーム音楽好きライターのhideです。ゲーム音楽連載「hideのゲーム音楽伝道記」第25回目となる今回は、『The Last of Us(ラスト・オブ・アス)』をご紹介します。


『ラスト・オブ・アス』は、2013年6月20日にプレイステーション3でソニー・コンピュータエンタテインメントから発売されたサバイバルアクションゲームです。2014年8月21日には、プレイステーション4にてHDリマスター版の『The Last of Us Remastered(ラスト・オブ・アス リマスタード)』が発売されました。

本作の開発を担当したのは、『アンチャーテッド』シリーズなどを手掛けたアメリカの開発会社「Naughty Dog(ノーティドッグ)」。全世界で200以上のゲームアワードを受賞し、非常に高い評価を得た作品です。



本作の舞台は、原因不明の病原菌によるパンデミック(感染症の大流行)によって荒廃したアメリカ。病原菌に感染した人々は「感染者」と呼ばれる凶暴な存在となり、生き残った生存者は、残り少ない物資をめぐって互いに争う。そんな荒んだ世界を、ブラックマーケットでの取引を生業とする主人公・ジョエルが、ある仕事がきっかけで出会った14歳の少女・エリーをとある場所へ運ぶために旅をしていきます。

本作は、生きるためなら手段を選ばない非情なジョエルと孤独な少女エリーが、過酷な旅をする中で育まれる絆を描く物語です。最初はぎこちない関係だった二人が、感染者や、物資を奪うため襲いかかる生存者との戦いなど、さまざまな困難を力を合わせて乗り越えていくうちに、少しずつ打ち解け、絆が生まれていきます。


さて、そんな『ラスト・オブ・アス』の魅力のひとつが音楽です。本作の作曲を手がけたのはアルゼンチン出身のミュージシャン、グスターボ・サンタオラヤ氏。映画『バベル』、『ブロークバック・マウンテン』で、アカデミー作曲賞を2度受賞した経歴の持ち主です。

本作は、「ロンロコ」という南アメリカのアンデス地方に伝わる弦楽器を使用した楽曲が多いのが特徴です。控え目ながらも存在感のあるロンロコの哀愁に満ちた旋律が、荒んだ世界の退廃的な雰囲気と、そこで繰り広げられる重厚な物語に非常にマッチしています。

本作の音楽で印象深いのは、なんといってもメインテーマ曲の「The Last of Us」ですね。悲哀を帯びつつも力強く響くロンロコの奥深い旋律が、この荒廃した世界の切なさとやるせなさ、そんな中でも力強く生き抜くジョエルとエリーの熱さを表しており、この1曲だけで作品そのものを表現していると言っても過言ではないほどの素晴らしい出来栄えです。また、本作ではこのメインテーマが物語中いくつもの形にアレンジされて使われており、とても重要な楽曲となっています。

本作では、ほとんどのシーンに音楽が無く、環境音や効果音のみが流れるようになっています。そのため音楽が流れるシーン自体は少ないのですが、絶妙なタイミングで音楽が流れ、不安や焦り、安堵など、キャラクターの感情を巧みに表現しています。それがプレイヤーの感情を大いに揺さぶり、物語に引き込んでくれるのです。上質な音楽演出がされています。


ゲーム中、「感染者」などの敵と遭遇した時には、不穏な音楽が流れ出します。そして戦闘になると、ティンパニやパーカッションなどを使用した、重々しく緊張感をあおる旋律になります。また、本作は効果音も非常にリアルで、足音や銃声などはもちろん、「クリッカー」と呼ばれる凶暴な感染者が近づいてきた時の「クケケケケケェ…!」という異様な音など、サウンドでも緊張感と恐怖感を大いにあおってくれて、手に汗握るゲームプレイ体験を盛り上げてくれます。

本作はどちらかというと重苦しい戦闘シーンが多いゲームなのですが、ずっと戦闘が続くわけではありません。荒廃して廃墟となった街の、退廃的ながらも美しい景観を楽しむこともこのゲームの魅力のひとつです。

僕がこのゲームでもっとも感動したのは、ゲーム終盤に訪れるソルトレイクシティで、ジョエルとエリーが“とある動物”と触れ合い、動物の群れを眺めるというシーンですね。それまでずっと戦いを続けながら旅をしてきて疲弊した2人が、荒廃したビル群の片隅に生い茂る緑の中で、たくましく生きる命を目の当たりにするのです。そして、そのシーンで流れる、非常に穏やかで美しい旋律の「Vanishing Grace」という楽曲がとても素敵でした。生命の息づくさまが広がる美しい景色と、穏やかな音楽が胸にじんわりと沁みわたってくる、非常に印象深いシーンでしたね。僕はそのシーンではコントローラーを動かす手を止めて、ジョエル&エリーと一緒に動物の群れをずっと眺めながら、美しい景色と音楽に浸っていました。とても安らげて癒される、素敵な時間でした。


また、「音」に関することで特筆すべき点としては、ジョエル役の山寺宏一氏、エリー役の潘めぐみ氏の演技が大変に素晴らしいです。2人の情感あふれる熱演で、物語にどんどん引き込まれていきます。特に、山寺氏はオリジナルの英語版音声の波形データを見て、それに合うように演技をしたのだそうです。途方もなく大変な収録だったそうですが、そのぶん人間味と情感にあふれた、熱のこもった演技になっています。物語を大いに盛り上げてくれますよ。

ジョエルとエリーは、初めはお互いにぎこちなさと距離感があるのですが、しだいに打ち解けてゆき、お互いを信頼していくようになります。この作品は、2人をはじめとする人間ドラマの描き方がとても秀逸です。僕はこのゲームをプレイしていて、何度となく感情を揺さぶられました。感染者や生存者との戦いにドキドキしながら先へと進んでいくスリル、ジョエルとエリーを中心に描かれる物語が本当に魅力的で、止めどきが見つからないくらいハマりましたね。とてつもない没入感のある作品でした。



本作のラストは意外な結末を迎えます。賛否両論があると思われる終わり方です。でも、最後までジョエルを操作してきた僕は、ジョエルに共感できました。「もし自分がジョエルだったら、最後にどんな行動を取るだろうか――?」。僕はスタッフロールを見ながら、そんなことを考えました。この荒みきった絶望的な世界で、もしジョエルと同じ状況に置かれたら、自分はどうするだろう。生きることって、なんだろう?と、深く考えさせられました。きっと、この作品をプレイした方は皆、生きることについて考えさせられると思います。この物語はぜひ多くの人に体験してみてもらいたいです。


ちなみに、本作の追加シナリオ「Left Behind -残されたもの-」では、本編中盤のとあるシーンの補足と、エリーの過去が交互に描かれ、エリーの心情が深く掘り下げられるものになっています。エリーの過去では、エリーの親友・ライリーとのエピソードが描かれるのですが、このエンディングの音楽「Left Behind」が素晴らしかったです。とある過酷な出来事が起こり、絶望するエリー。しかし、ライリーに諭され、戦うことを決意するエリー。その心情を巧みに演出する、切なさと熱さを合わせもった楽曲が、物語と共に心に残りました。こちらのシナリオも、ぜひ体験してみていただきたいです。


本作はCERO Z指定(18歳以上対象)作品で、ホラー表現や暴力的な描写が多く含まれます。そのため人を選ぶ部分はあるかと思いますが、そうした表現が大丈夫な方はぜひプレイしてみてほしいと思います。ゲームプレイ中、オプションでいつでも難易度を切り替えられたり、銃の照準をある程度自動的に敵に合わせてくれる機能もあるので、アクションゲームが苦手な方でもプレイしやすいかと思います。ご興味をお持ちの方は、ぜひプレイしてみてくださいね。


なお、本作のサウンドトラックは、海外盤となりますが『The Last of Us ORIGINAL SCORE』および、『THE LAST OF US Volume 2』の2枚が発売されています。ご興味をお持ちの方はお聴きになってみてください!

【筆者プロフィール】
 hide / 永芳 英敬


ゲーム音楽ライター&ブロガー。ゲーム音楽作曲家さんへのインタビュー記事、ゲーム音楽演奏会のレポート記事など、主にゲーム音楽関係の記事を執筆しています。今いちばん気になる新作ゲームは『いけにえと雪のセツナ』!

[Twitter] @hide_gm [ブログ] Gamemusic Garden

(C)2013,2014 Sony Computer Entertainment America LLC. Created and developed by Naughty Dog LLC
《hide/永芳英敬》

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