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【インタビュー】「ハルチカ」橋本昌和監督・辻充仁プロデューサーに訊く

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「ハルチカ~ハルタとチカは青春する~」橋本昌和監督 辻充仁プロデューサー インタビュー
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「ハルチカ」シリーズは初野晴が2005年から発表している青春推理小説。幼なじみの穂村千夏(チカ)と上条春太(ハルタ)が学園内外の謎に巻き込まれるミステリや、廃部寸前の吹奏楽部を舞台としたストーリー、少し不思議な三角関係など多彩な魅力で人気を博している。
2016年1月からは『ハルチカ~ハルタとチカは青春する~』のタイトルでテレビアニメがスタートする。アニメーション制作は『SHIROBAKO』『true tears』のP.A.WORKSが担当。『TARI TARI』で合唱部5人の青春を描いた橋本昌和監督と辻充仁プロデューサーが再びタッグを組んだ。人気ミステリーをどのように映像化していくのか。原作への想い、キャスティング秘話、そして気になる音楽についてなど、様々な話題が飛び出した。
[取材・構成:高橋克則]

『ハルチカ~ハルタとチカは青春する~』
http://haruchika-anime.jp/

■ 等身大の高校生たちを描く

――『ハルチカ~ハルタとチカは青春する~』に参加することになった経緯を教えてください。

橋本昌和監督(以下、橋本)
P.A.WORKSの社長である堀川(憲司)さんから原作小説を渡されて、「面白いですね」と返したら「それじゃ、よろしく」という流れで、わりとすぐに決まりました(笑)。『ハルチカ』はミステリーですが、殺人事件を解決するといったタイプの物語ではない。吹奏楽をやりながら日常の中にある謎を解いて人と繋がっていく青春ものなんです。今までありそうでなかった不思議な作品でとても惹かれましたね。

辻充仁プロデューサー(以下、辻)
まずは原作のどの要素を一番強く出していくのかについて話し合いました。謎解き、吹奏楽、三角関係など色々なモチーフがある中で、監督は「キャラクターの魅力をアニメで表現したい」とおっしゃったんです。確かにそれは『ハルチカ』の最も大切な部分だなと。

橋本
原作を読んだとき「登場人物がちゃんと高校生してるな」と感じたんです。設定上は高校生なんだけど、中身は大人と変らない作品も結構多い。でも『ハルチカ』はテーマを語るために、キャラクターが急に大人びたりはしない。常に高校生の目線から物事が描かれていて、登場人物を大切にしている印象を受けました。

――キャラクターを描く上で気を付けたことはありますか?


監督はキャラクターの芝居にもこだわりがあって、アニメのテンプレ表現を嫌うんですよ。たとえばコップを取るという何気ない動作も、喉が渇いているのかいないのか、コップが熱いのか冷たいのかによって芝居を変えてくる。普通だったら見逃してしまいそうな細かい表現でキャラクターを浮かび上がらせていくんです。

橋本
登場人物がどういう気持ちでいて、どういう状況に置かれているのか。それをしっかり把握した上で描けばキャラクター性は自然と浮かび上がってきます。楽器の扱いにしても、慣れている人やそうでない人、丁寧な人、がさつな人、登場人物によってそれぞれ違ってくる。その部分をきちんと描けるかどうかだと思っています。

■『ハルチカ』はロボットアニメ!?


楽器自体の描写もハードですよ。『TARI TARI』は合唱部でしたが『ハルチカ』は吹奏楽部なので、沢山の楽器を把握するだけで一苦労です。さらに動かすとなると「このパーツを押さえるとどこが動くのか」といった構造まで頭に入れておく必要がある。それを作品に反映させるためには、スタッフの中に統一した知識を持った人がいないと難しい。そこで今回は楽器作監を立てて、杉光(登)さんに担当してもらいました。

橋本
杉光さんがすごいのは、もともと吹奏楽に詳しかった訳ではないところなんです。膨大な資料を読み込んで、楽器のどこを押すとへこむのかまで調べ上げている。楽器監修に近いこともやっていただいて助かっています。


杉光さんはメカのような固いものを描くのが大好きな方なので楽器にも興味を持っていただけました。

――どちらも金属という共通点がありますね。アニメーターにとって楽器はメカに近い存在なのでしょうか?


完全にメカです(笑)。

橋本
部員全員が違うメカに乗っているロボットアニメに近いですね。しかもメカによって操縦方法がバラバラで、どのスイッチを押すとミサイルが出るのかという設定も違う。


普通のロボットアニメよりも大変かもしれないですよ。というのも、演奏シーンでは指の動きまで合わせていますから。通常の作画スケジュールでは間に合わないので、音楽の浜口(史郎)さんから先に音源をいただいて、楽器の指合わせをすることもありました。音楽と作画の間では密なやり取りをしています。



■ キャスティングの決め手

――キャストはどのように決めていきましたか?


チカとハルカと草壁先生の3人をメインにオーディションを行いました。他のキャラクターは、このオーディジョンに参加した人の中でもし良い人がいれば決めようという話でした。

――チカ役にブリドカットセーラ恵美さんを起用した理由を教えて下さい。

橋本
チカちゃんは人の気持ちをダイレクトに受け止めることができる子なんです。少し抜けたところがあって理屈で考えることも苦手なんだけれど、誰にも負けない包容力がある。それこそ彼女がいなければ吹奏楽部のメンバーは増えなかったでしょうし。ブリドカットさんの声は嫌みのない明るさがあって、チカちゃんのイメージに一番近かったんです。


アフレコ現場はこれまでのP.A作品や橋本監督の作品でメインキャラを演じてきた声優さんが多いんですよ。『TARI TARI』からは瀬戸麻沙美さん、島崎信長さん、花江夏樹さんと、合唱部の5人中3人が出演しています。そういった意味でブリドカットさんは挑戦に近い部分があったのかも知れません。


――『ハルチカ』が初主演ですし、楽器初心者のチカと重なる部分もありますね。

橋本
ブリドカットさんは事前に僕の監督作品を見て、どういう芝居を求められるのか研究してきてくれたんです。現場でも頑張っているし作品のことも考えてくれている。その姿を見て大丈夫だなと安心しました。


『ハルチカ』では新しいブリドカットさんが見られるといいですよね。

橋本
そうですね。きっと見られると思います。

――ハルタ役の斉藤壮馬さんはいかがでしょうか?

橋本
男性っぽさよりは柔らかい声の人がいいなと思っていました。ただ推理ではかっこいいシーンもあるので、普段の柔和な感じとも両立させたい。斉藤さんはその二つの側面をしっかり演じることができていて、オーディションではほぼ全会一致で決まりました。

■ 草壁先生は26歳の悩める若人

――草壁先生役の花江さんもオーディションなんですね。

橋本
花江さんはハルタ役としてオーディションに参加していました。僕は草壁先生をあまり先生っぽくしたくなかったのですが、オーディションでは頼れる大人のような声の人が多かったんです。それだとイメージしていた草壁先生よりも強くなってしまう。そこで花江さんに「先生の声も出してもらえますか」とその場でお願いして、後日スタッフと相談した上で決めました。

――先生らしく描きたくなかったのはなぜですか?

橋本
草壁先生は将来を嘱望された指揮者でしたが、今はその道を捨てて新任の音楽教師として登場します。後半では彼の謎に触れる部分も出てくるので、視聴者に向けてちょっとした違和感を出したかった。生徒たちに信頼される良い顧問としてだけではない、悩みを抱えている人間的な部分を感じていてほしかったんです。
それなら少年っぽさが残っている花江さんの声がぴったりじゃないかと。あと彼がすごい努力家であることは『TARI TARI』ですでに知っていましたから、真面目に取り組んでくれるという信頼もありました。


個人的には草壁先生が花江さんというのは少し気がかりだったんです。彼の瑞々しい声が頭にあったせいで、先生役にはどうしても結びつかなかった。どうしても若すぎるんじゃないだろうかと。それがアフレコでは回を重ねるごとに微妙なラインでセリフを調整していって、今ではもう完全に草壁先生になっています。本当に驚きましたね。

橋本
イケメンの先生だと、太めで低い声の人が演じることが多いので、若く聞えるんじゃないかと不安になるのは分かります。けれど草壁先生はまだ26歳なんですよ。現実でいえば26歳なんて将来に対して悩んでいる時期じゃないですか。P.Aの制作進行だってそのぐらいの年齢ですよ(笑)。


――アニメスタッフとして考えれば若手ですね(笑)。そのほかに理由はありますか?


花江さんの声にいやらしさがないのも良かったですね。

橋本
劇中ではチカとハルタと先生の三角関係が描かれますが、『ハルチカ』はその関係が主軸になって進展する物語ではないんです。もし草壁先生がダンディで色気のある声だったら三角関係が崩れてしまいかねない(笑)。花江さんのちょっと中性的な声色なら、ハルタともチカとも、先生と教師として適切な距離感を保つことができる。それは声が持つ雰囲気なので芝居で表現するのは難しい。

――なるほど。恋愛ではなく青春を描くためでもあるんですね。

橋本
はい。三人の恋愛関係を描く作品なら先生は大人の雰囲気で良かったのかも知れません。チカとハルタの恋愛を描く物語ではないところが『ハルチカ』のユニークな部分ですね。

■ 音楽に対しての嫉妬心

――辻プロデューサーは『TARI TARI』でも橋本監督と作品を手がけています。


実は『TARI TARI』より以前から、P.Aが制作元請をする前からの付き合いなんです。監督がまだ演出で僕は進行でしたから……もう10年ぐらい経つのでしょうか。だから監督の考えていることは大体分かるんですよ。「これは言ってもダメだな」ということも含めて(笑)。

――プロデューサーから見て橋本監督はどのように映っていますか?


作品のビジョンを明確に持っている演出家ですね。監督として譲れない部分を持っているので、作品には必ず“らしさ”が備わってくる。音楽もその一つです。橋本監督は主題歌が作品の重要な位置を占めると考えていて、ストーリーと照らし合わせた上で歌詞に対して様々な提案するんです。


――そういえば橋本監督は自作で作詞も担当していますね。

橋本
作詞は僕が「やらせてくれ!」と無理に頼んでいる訳じゃないんですよ(笑)。『TARI TARI』の校歌も誰が書くのか決まらなくて「それじゃ監督が書けば良いじゃん」みたいなノリで決まってしまったんです(笑)。『クレヨンしんちゃん』の映画も歌うシーンも同じような感じです。

――しかし『TARI TARI』や『ソウルイーターノット!』などの監督作では歌が重要な場面で使われています。それはなぜなんでしょうか?

橋本
僕は音楽に対して嫉妬に似た想いがあるんですよ。アニメは一本作るのにすごく時間がかかるけれど、音楽はその場で歌ったり弾いたりして人の心を動かすことができる。そんなアニメにないライブ感を持つ音楽に対して憧れのような気持ちを抱いています。

――原作者の初野晴さんは「活字で果たせなかったことをアニメに託したい」とコメントしていました。小説では大会の演奏シーンは書かれていませんが、アニメには登場するのでしょうか?

橋本
初野先生とお話をした際に、小説は音楽を流せないことや短編のため色々と切り詰めて書いたことなどを伺いました。吹奏楽の演奏も先生がおっしゃった「アニメに託したい」ことの一つだと僕は思っています。アニメでは大会も含めて、演奏シーンをきちんと描いていきたいですね。

――放送を楽しみにしています。本日はありがとうございました。


『ハルチカ~ハルタとチカは青春する~』
2016年1月6日(水)
TOKYO MX、テレ玉、チバテレほかにて放送開始

「ハルチカ~ハルタとチカは青春する~」橋本昌和監督 辻充仁プロデューサー インタビュー

《高橋克則》

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