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【レポート】小野義徳が考える『ストリートファイターV』と格闘ゲームコミュニティーの未来

ソニー PS4

 
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現地時間12月7日、サンフランシスコで開催された『ウルトラストリートファイターIV』の世界大会「カプコンカップ ファイナルズ 2015」で、日本のかずのこ選手が優勝トロフィーと賞金約1500万円を手にしました。併催されていたソニーのイベント「PlayStation Experience」でも、最新作『ストリートファイターV』の最終ローンチファイターや追加キャラクター情報が一挙アナウンスされて、ストリートファイター熱が一気に高まった週末だったと言えます。

インサイド/Game*Spark編集部では、そんなカプコンカップ開催中の合間をぬって、『ストリートファイター』プロデューサー小野義徳氏の国内メディア向けインタビューに同席。『ストリートファイターV』の新情報に関することはもちろん、e-Sports周りやオンラインシステム設計、2016年の計画まで、多肢にわたって話を聞いてきました。



――PlayStation Experienceのキーノートで発表された、追加ファイター6人のシーズンパス価格はいくらになるのでしょうか?

小野義徳氏(以下 小野): 日本では今後発表しますが、海外ではおよそ30ドルの設定になります。

――その追加ファイターにバイソンが含まれていて、ベガとバルログもローンチファイターで登場しますが、四天王のあとひとり、サガットが不在です。それはどういうことなのでしょうか……?

小野: けっこうカプコン社内でも、「サガットいたほうがいいんじゃないか」という声もあったのですが、ご存知のとおり、現状の参戦ファイターをカテゴリ分けすると、飛び道具キャラが多いんですよね。だから、ボンちゃんがどうとか、そういうのは全く関係なくて、ひとまず今回のローンチとシーズン1についてはいいかなと……。(手元にあるブランカのフィギュアを指して)この人もいなくなったぐらいですから。サガットを意図的に外したのではなくて、とりあえずローンチはあまりキャラ数を増やしすぎたくもなかったので。逆に言うと、50キャラいる『KOF 14』はびっくりですけど(笑)。あれはすごいなと思いました。もう覚えられないから無理だと。


新たに公開された四天王ステージにもサガットの姿はない…

――追加ファイター6名がシルエットと名前だけ発表されて、ローンチ後の1年以内に配信していくということですが、その1年間、それ以外のファイターは一切追加されないのでしょうか?

小野: 今のところは出さないように考えています。今回、ずばっと先に発表したのは、格闘ゲームとしては珍しいと思います。順番にひとりずつ発表していくべきか迷ったりもしたのですが、そういうやり方は、まだゲームを誰も触っていないローンチ時までだけでいいと考えました。というのも、ローンチ後に何のキャラが追加されるのか全くわからないと、どのキャラを使って、どのキャラを育てて、どうキャラ対策をするのか、プレイヤーも計画を立てづらいし、スポーツ的な意味でも酷かなと。

我々も『スーパーストリートファイターV』は出さない、と明言している以上は、こういうラインナップでシーズン1は戦ってもらいますというのを言ってあげたほうが、プレイヤーが対策を考えやすいはずです。2017年のシーズン2以降の展開については、おそらく来年のカプコンカップでまた発表することになるんじゃないでしょうか。「カプコンが作るな!」と言われないかぎり、追加はしていきます。シーズン1のシルエット6キャラも絶賛開発中の段階で、どんどんキャラクターが増えて、調整も追いつかなくなるので、日本人、アメリカ人問わず、大阪で働けるスタッフを募集しています(笑)。

――2016年に6キャラクターを追加をしていくにあたって、カプコンカップはもちろん、Evoだったり、大きな大会がいくつかあります。そのような大会の直前にキャラが追加されるときついですよね。

小野: おっしゃる通りです。どのタイミングで、何を追加するのかは悩みどころですが、どこにしてもカプコンプレミアムは来てしまうんです。年末のカプコンカップと、6~7月のEvoは大きい大会なのでまだいいですが、最近大きくなってきているDreamHackとか。今作ではPCにも対応する以上は、ないがしろにはできなくて、重要視していたり、様々なバランスを考えるのがいちばん難しいです。

できることなら、カプコンカップがはじまるタイミングまでに、キャラクター追加のロードマップを決めてしまえるといいのですが。ただ、開発が間に合わないということになっては困るので、開発やチューニングのスケジュールはしっかり立てたいと思います。いくつか課題があるなかで、不公平がないようにしたいです。そうはいっても、『ストリートファイターV』は既存のファイターも初キャラのように変わっているので、過去シリーズで得意だったとしても、そこまで大きな優位性はないはずです。

『ストリートファイターV』はいちどリセットするというコンセプトもあるので、もちろん『VI』でうまかった人はランキングが上がるも早いと思いますが、最初からランクトップを走るわけではなくて、とりあえず上手い人もそうではない人も同じスタートラインから始めてもらうことになります。みんなにチャンスがあると思ってもらえればいいですね。


PlayStation Experienceのカプコンブースでは大勢のファンが
『ストリートファイターV』の対戦を楽しんでいた

――ところで小野さんは、これまでフランスやブラジル、ドバイ、世界各地のゲームイベントに自ら出向いて、新キャラクターの発表を行ってきました。世界のいろんな場所でファンと交流して、各国の盛り上がり、リアクションはいかがでしたか?

小野: 『ストリートファイターV』のキャラクターを世界中で発表するにあたって、『ストリートファイターIV』シリーズではあまり行かなかった地域を積極的に選んでいます。サンフランシスコの大きなイベントで私が登壇するというのも初めてですし、メキシコに行ったり、サンパウロに行ったり、ドバイなんて私も生まれてはじめて行きました(笑)。ただそれらの場所に行ったのは意味があります。ここ3~4年カプコンプロツアーをやってきて、イベントの参加人数だったり、PSNの接続数だったり、急激にプレイヤー数が拡大している地域を積極的に回ったのです。だから、盛り上がりの部分では確信犯ですね(笑)。そして、それら国を出身とするキャラがいない場合は『V』で新しく出していこうと、グローバルのカプコングループでも話し合っていました。各地域ごとの出身ファイターというのは、やはりファンも思い入れがありますから。その場所で来年カプコンカップのイベントを考えたりして、盛り上がる土壌をもっと作っていくのが、今私が積極的に動いている理由でもあります。

――カプコンカップを1年間やってきて、印象に残ったこと、次にどうつなげていくかを教えてください。

小野: 日本でこの話題を出すのは難しい部分もありますが、今年のカプコンカップの賞金総額は500万ドルという莫大な金額で、最後の優勝者には、日本円でおよそ1500万円の賞金が贈られたので、全世界の腕に覚えのあるプレイヤーはかなり注目したのではないでしょうか。日本のプレイヤーで今までそんなに積極的でなかった人も、「カプコンプロツアーでポイントを稼げば、もしかしたら自分にもチャンスがあるかも」と思ってくれたり、そんなムーブメントが出てきたと思います。一方で、日本では法律的な問題もあって大会が多く開けれないので、ここはもう海外でやるしかないと。近くの台湾、上海、香港といった場所なら日本のプレイヤーもアクセスしやすいです。

いちばん面白いのは、新しい地域から地元の新星プレイヤーが生まれてくるということです。今回カプコンカップの32人まで残れなかった選手も数多くいますが、イギリス代表だったり、ブラジル代表のプレイヤーなどは、ここ最近ぐっと伸びてきている存在です。去年今年とEvoで活躍したももち選手やLuffy選手も、3年前くらいからぐっと上がってきましたからね。そういった新しい光が今年は特に多かったです。カプコンカップやカプコンプロツアーだけでなく、『ストリートファイターIV』シリーズのサービスを、7年間途切れることなく続けてきた甲斐がやっと出てきたかなという印象です。

――彼らが『ストリートファイターV』でも活躍してほしいですね。

小野: 格闘ゲームというものに慣れ親しんだ、今の選手たちは賢いです。どう見せたらオーディエンスがファンになってくれるか、それをわかっているんですよね。賛否両論ありますが、私はInfiltrationが好きです。彼自身、「勝つ」ことがプライオリティのAだとわかっていながら、「ここでこれを言ったら盛り上がる」というのも絶対ねらっているはずなんですよね。それでも勝てるという強さもあります。キャラの選び方が汚い、と言われても、あんなに大舞台で汚くても勝てるのはやっぱり確固たる実力があるからだと思います。その上に「魅せる」ことがわかっているのはプロゲーマーとして頼もしいです。我々としても、見る人が楽しめるのは、野球などと同じで、「彼みたいなバッターになりたい」と思うような雰囲気も出始めています。


ソニーのキーノートで数々の発表を行った小野氏

――『ストリートファイターV』でPSNとSteamのクロス対戦ができるようになるのは、ほとんど前例のない画期的な試みだと思うのですが、実現にむけてどう取り組まれているでしょうか?

小野: 日本はコンソールゲームが主導ですが、世界的なゲーム人口でみたら、やはりPCです。もちろん、Free-to-Playタイトルの人気もありますが、コンソールとPCマルチプラットフォームのタイトルでもかなりの数がPCで売れています。世界全体の流れで見た時に、コンソールゲームはシェア的に厳しいところがあります。PS4はそんな中でも善戦していて、我々が選択した理由のひとつではあります。では、善戦しているPS4と、どんどん拡大しているPCゲーミング、このふたつは分けるべきではなくて、融合したいと考えました。PCゲームのために、PS4のために何かするというより、コンソールとPCは箱が違うだけであってその先のコンテンツはつなげていきたいです。とはいえ、PCは人によってスペックや求めるもの違うので、将来的には「PCではこういう機能があったほうがラクだよね」というものがあったほうが良いとは思っています。やはりキーボードの存在は大きいです。ただ、キーボードで格闘ゲームをするわけではないので、これをどう使えば格闘ゲームコミュニティーをどううまく設計していけるか、大会やフレンドとの集まりをどう作れるのかを考えたいです。特に海外では移動の問題もあり、日本のようにオフラインで容易に人が集まれませんから。じゃあどうするかというと、バーチャルな空間が必要になります。単にオンラインでマッチングできればいいというわけではなく、PCゲーミングならコミュニティーをバーチャルな場所でもっとうまく広げていけると思っています。これはあくまで私の将来の設計であって、現時点では、PCとコンソール両方を同時にやっていくという考えが強いです。

クロス対戦についてはすでに実装は終わっています。ただ先日のベータ2でも初日トラブルがあって、2日目くらいから急に快適になったのですが、やはり1日目にコケてしまうのは、まだ我々もノウハウが足りない部分があります。オンライン部分の設計は、基本部分はすぐにできても、人それぞれ、国それぞれ色々な条件が変わってきて、それらに対応する必要があります。準備はもうできました。マスターもほぼ終わっています。あとはもう、その他の周辺部分をいかに安定させていくか、カプコン社内、Valveさん、ソニーさんの三社で詰めていっているのが現状です。我々も手探りの部分はあって、PSNも経由して、Steamも経由して、その先をどうコネクトするか、カプコンはどの部分を引き取るか、いくつか話し合っている部分です。何より、地域によってネットワークの速さ、使われているプロバイダの環境も異なるのが難しいです。オンラインゲーム永遠の課題でもあるNAT超えをどうするのか、各地域で売られているルーターの傾向を調べたり、そういった部分まで見ています。だから、ひとつのコミュニティーを作ろうと謳っている以上、私自身も開発チームも逃げたくないし、「すいません、やっぱり無理でした」なんて言いたくないですから。

――でも実現すれば、e-Sports系のタイトルとしてもはじめてだと思うので、期待しています。

小野: 本当にそこはとことん追求していきたいかなと。

――カプコンカップはやはり上級者が出るものですし、アーケードがなくなるので、初心者や中級者が気軽に集まれる場所がコンソールだけだと、なかなかユーザーが定着しづらく感じるのですが、何か取り組みはされないのでしょうか?

小野: 今回CFN(カプコン・ファイターズ・ネットワーク)を作った時に、いくつか相手の情報がわかるようなプロファイリングシステムを用意するという話をしたと思いますが、その行き着く先は、草野球と、少年野球と、おじさんの日曜日の野球と、プロ野球とを上手にプレイグラウンドを自動でわけていくというものです。草野球から野球に行きたい時は、ある一定の条件をクリアすればいい。でも行きたくないなら今のままでやればいい。初心者が来てすぐに倒されて、気持よくないので離脱してしまう、ということはやはりあると思うので、レバガチャならレバガチャ同士で楽しめるようにプロファイリングの人を集めるとか、ランキングやBP/PPではなくて、その人の遊び方というのも、サーバー上でラベリングした上でやっていきたいのが、我々の構想です。そういったデジタルコミュニティーのサービスをうまく提供して、オンラインの土壌を定着させたうえで、リトルリーグのような外のオフラインイベントも用意していきたいです。

――最後のユーザーにメッセージをお願いします。

小野: 『ストリートファイターIV』シリーズは本当に7年間も皆様のおかげで続けてこれました。まさか7年も続くとは思っていなくて、過去のシリーズと同じく3年くらいが限度だと思っていたので、感謝しています。それがあったからこそ、会社的にも、開発チーム的にも次の『ストリートファイターV』というステップに踏み込むことができました。『V』は『IV』の延長ではないので、『IV』のプレイヤーが積み上げたものは、『IV』の中でそのまま行ってほしいです。我々は『IV』を突然止めるつもりはありません。ただ、『V』で、もう一度新しいカルチャー、新しい息吹の中でスタートしてもらいたい想いがあります。カプコンプロツアーも開催して来年も盛り上げていくので、新しい格闘ゲームとして楽しんでいただけたらと思っています。

――本日はどうもありがとうございました。

記事提供元: Game*Spark
《Game*Spark》

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