──デバッグなども含め、すでにプレイをされた方がいるかと思いますが、実際に遊んだ方からどのような感想が上がりましたか？
溝上氏：こういう見た目のゲームなので、最初は舐めてかかると言いますか（笑）、そこまで怖いゲームとは思わずに始める人が多い感じでしたね。ですが実際にプレイを進めると、悲鳴が聞こえてきたりして（笑）。
──舐めてかかると痛い目に遭いそうですね（笑）。ユーザーさんからの反響も楽しみです。
溝上氏：プレイを通して、お化けたちのこともちょっと気に入ってもらえたら嬉しいですね。
──プレイの中で、お化けたちのことも分かったりするんでしょうか？
溝上氏：はっきりとは語りきらないんですけども、匂わせるような形にはしています。考察してもらえるくらいには。
──そこも想像して楽しめる部分なんですね。
溝上氏：デフォルメだけども、どこか現実味のある出来事を表現したかったので、そういった部分が伝わると嬉しいですね。
──町中のものは、かなりリアルに表現されていますよね。電柱や道路の側溝など。光と影の演出も相まって、細部のリアルさも印象的です。
溝上氏：リアルな状況に落とし込むというのも、ひとつのテーマでしたね。
──PS Vitaということで、必然的に没頭しやすい環境でのプレイになりますから、『夜廻』が持つリアルさというのも、いっそう伝わりやすいかもしれませんね。
溝上氏：確かにそうですね。PS Vita向けの内容だと思います。あと、実況プレイも盛り上がるかと思います。プレイヤーによって進むルートが違う場合もあるので、プレイ済みの方が視聴しても新たな発見や驚きがありますし。ランダムのお化けが出て、一緒に驚いたりとか（笑）。石やお金などの“拾い物”を使うかどうかでも、進めやすさが変わりますしね。
──使う人、使わない人、意外な使い方をする人など、様々でしょうね。一通りクリアした後に、初プレイ中の実況主さんの配信を見るのも楽しそうです。ちなみにクリアまでのボリュームというのは、大まかにどれくらいでしょうか。
溝上氏：探索型のゲームなので、寄り道する時間が長い人の場合だと、20時間くらいプレイしている方もいますね。ゲーム慣れしている人だと、10～15時間くらいでしょうか。あと収拾物とかを集め出すと、もっと長くなります。“拾い物”とか結構ありますので。
──遊ぶスタイル次第でプレイ時間もかなり変わりそうですね。ちなみに『夜廻』を開発するに当たって、意識した作品などはありましたか？
溝上氏：『夜廻』を作ると決まった時は、ホラー映画を見まくりましたね（笑）。新川社長がホラー映画好きなので、ビデオやDVDを沢山持ってきてくれまして。一時期、ホラー一色の生活でした。
──新川社長直々のサポートも（笑）。
溝上氏：ホラー好きなので、期待していただいていると思います。あと本なども貸していただきまして、お化け屋敷プロデューサーとして知られている、五味弘文さんの著書なども目を通しました。人を驚かせる仕組みや感情の動きなどを、参考にしています。
──怖さの分析もされたんですね。
溝上氏：怖さもあり、“夜”が持つ静けさや優しさもあり、そんなゲームになったと思います。
──魅力から裏話まで、幅広く聞かせていただきました。それでは最後になりますが、『夜廻』を楽しみにしている人へのメッセージと、「怖そうだから・・・」と悩んでいる方の背中を押すような一言をお願いします。
溝上氏：繰り返しになってしまいますが、『夜廻』は怖いだけでなく、“切なさ”や“子供の頃のノスタルジー”など、色々な感情が生まれるゲームです。夜というシチュエーションで味わう様々な場面、体験をぜひ楽しんでください。
怖そうだからと敬遠している方も、勇気を持って夜の町に挑んでもらえれば、怖さの向こうにある“何か”に出会えます。それと、PS Vita TVで遊ぶのもいいかもしれません。みんなでワイワイ言いながら遊ぶのも、面白いと思いますよ。
──本日はありがとうございました！
◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆
こうしてインタビューは無事に終わり、果たして辻氏の姿は失われたままでした。戻る気配のない闇を見つけ続ける勇気を失った私たちは、夜に沈む公園を急ぎ後にし、目の前に飛び込んだ人工的な明かりに縋りつくように飛び込みます。そこは、公衆電話でした。
念のためにと溝上氏が会社に電話をかけてみると・・・なんと辻氏は、もう会社に戻ってきているとのこと。その報告を耳にした私たちは、緊張感が一気にほどけ、胸をなでおろしました。プリニーの一件はあれども、辻氏が無事だったという朗報が、私たちの心を大きく支えてくれます。
──ですが後日、溝上氏からひとつの連絡をいただきました。確かに辻氏は会社に戻っていたそうですが、いつも携えている「あのカバン」も持っていたと。では、公園で我々が見つけたカバンと計画書は、一体なんだったのでしょうか。そして疑問は、別の疑惑も呼び起こします。今も会社にいるであろう辻氏は、本当に辻氏なのだろうか、と。
それを溝上氏が確かめてみるのか、それとも蓋をして忘れてしまうのか。それは我々には分かりません。しかしこの得体の知れない出来事は、例え忘れたとしても、きっといつか思い出す日が来ることでしょう。私たちが忘れたはずの夜の街への恐怖も、『夜廻』が思い出させてくれるように・・・。
『夜廻（よまわり）』は、2015年10月29日発売予定。価格は、パッケージ版が5,980円(税抜)、ダウンロード版が 5,143円(税込)です。
※このインタビュー記事は、会話形式の部分以外は全てノンフィクションではありません。
※展開には一部脚色された部分があります。
※記事中で使用されたプリニーは、この後スタッフが美味しくいただきました。
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