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東京ゲームショウに欠けたピースは埋まるのか?【オールゲームニッポン 第25回】

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東京ゲームショウに欠けたピースは埋まるのか?【オールゲームニッポン 第25回】
  • 東京ゲームショウに欠けたピースは埋まるのか?【オールゲームニッポン 第25回】
ゲームクリエイターで角川ゲームス代表の安田善巳氏と、ゲームアナリストの平林久和氏によるトーク番組「オールゲームニッポン」。盛況に開催された東京ゲームショウですが、欠けたピースがあると平林氏は言います。それが埋まる日は来るのでしょうか?



土本
 
東京ゲームショウが終わりました。おつかさまでした。さっそくですが、今年はどんな印象でしたか?

安田
 
ビジネスデイは例年以上の活気がありましたね。実際に来場者の数も多かったそうですが、数字以上の活力を感じました。

平林
 
私も同感です。出展企業のバリエーションが豊富でしたし、来場者の国籍もさまざまで「いつもとは違う」という印象がありました。

安田
 
コンシューマソフト、スマホゲーム以外にもいろいろなブースがありましたよね。まず目についたのはYouTubeやAmazonといった大手IT企業でした。相対的に動画配信の価値が高まってきてるんですね、やはり。あとはアクセス解析などの技術を売り物にしたマーケティング企業の出展も目立っていたんじゃないですか。視線を使ってゲームを操作するなど新しいデバイスがあり、学校や地方自治体でも人材発掘が盛んに進んでいることをアピールしていましたし、どのブースも頑張っているな、と思いました。

平林
 
それにVRの出展もあったじゃないですか。私はVRがいい感じで目立たなかったと思うですね。

土本
 
いい感じで目立たない?

平林
 
はい。ゲームのイベントでありがちな光景として、どの企業もいっせいに新技術になびいてしまう。「社運を賭けている」感じがするときってありますよね。もしかしたら今年のゲームショウはVRに傾くかな、とも想像していたのですが、それほどでもない。「ちなみにVRもあります」と業界全体が余裕を持って構えているようで、そこにかえって頼もしさを感じました。爆発的でなくていいから、じわじわとVRのゲームは売れてほしいと私は思っているので、あのバランス感覚は心地よかったです。

安田
 
平林さんと訪問した南国ソフトのブースもおもしろかったですね。Oculusとリープモーションを使ってかるたの対戦をするコンテンツを展示していました。ヘッドマウントディスプレイを使って競技かるたをするというのは、なかなか斬新な発想です。

平林
 
『Miyabi VR』というゲームでした。プロデューサーの方から直接お話をうかがったのですが、本業はビジネス系ソフトのUXデザインを行っているのだとか。そうしたノウハウをいかせる新規事業ということでVRゲームの開発することになったそうです。ほかにもkinectを使ったお習字のゲームなど、いわゆる大手ゲームメーカーでは採用されないようなアイデアのゲームをまじめにコツコツとつくっておられるようで、好きになっちゃいました。有力IPの大作ソフトばかりではなくて、こうした試みが見られたのも今年のゲームショウでの収穫でした。

安田
 
あと勢いを感じたのは、アジアマーケットですね。コンテンツの販売先としても開発先としても、やはりこれから成長するでしょう。ゲームショウを離れた話題になりますが、当社のソフトをアジア地域で販売しますと、最近はうれしいことに予想した数量よりも上回る傾向にあります。アジア、特にASEAN諸国の開発力も上がってきています。日頃はまったく知らない開発会社さんから、新タイトルのプレゼンテーションを受けることがありますが、そのクオリティは年々高まってきています。

平林
 
というわけで、出展企業が多彩になった今年のゲームショウはギスギスしていないとも思いました。今までのゲームショウは、何かにつけて戦いが煽られてきました。古くは「ゲーム機戦争」と言われましたし、近年では「コンシューマゲーム対ソーシャルゲーム」と対立の構図が描かれてきました。こうやって戦いにフォーカスして語ろうとするのは、一般マスコミの性質ともいえます。ところが今年は出展企業、出展内容が多様になりすぎていて、戦いを煽ろうとしても煽れなかった。そんな印象があります。

安田
 
戦いを煽るといえば、昔はよく「◯◯陣営」なんて物騒な言われ方をされましたよね。

平林
 
ありましたね。プレイステーション陣営とか、セガ陣営とか。そんな雰囲気も薄れて、もはやゲーム業界に「陣営」はなくなったのかもしれません。

安田
 
距離感や濃淡はそれぞれであるものの、あらゆる業種の企業が何らかのかたちでゲームとかかわりを持つようになってくると……言い替えると懐が広い産業構造になってくると「陣営」という概念はかすむのかな、などと思っています。

平林
 
なるほど。懐が広くなったゲーム産業! これは今年のゲームショウを総括するキーワードかもしれません。私もそんなことを感じていたからでしょうか。今年は幕張からの帰り道に強く思ったことあるです。

安田
 
何ですか?

平林
 
やはり任天堂も東京ゲームショウに出展してほしいと思ったんです。
任天堂不参加の理由についてまとまったものをあまり見かけないので私の責任で解説してしまうと、これは東京ゲームショウの主催団体CESA設立時にさかのぼります。CESAができたのは1996年のことでした。当時のCESAはソフト会社が集まってつくった業界団体でした。その背景には、ゲーム業界をリードするのはハードではなくソフトだ、という思想がありました。CESAの結成は、業界のリーダーを自認する任天堂、特に当時の山内社長にとって歓迎すべきことではなく、したがって任天堂は第1回のときから東京ゲームショウに出展してきませんでした。まさにハードか、ソフトかの陣営同士の主導権争いでもあったんですね。
しかし、任天堂が東京ゲームショウに出展しないのは、イベント開始前後に些細なボタンの掛け違いがあったにすぎない、ととらえています。じつは大きな障壁はないんです。CESAは2002年に改組します。「コンピュータエンターテインメントソフトウェア協会」として設立されましたが、同2002年には「コンピュータエンターテインメント協会」と名称を変更しています。ソフトウェアの文字を外したんです。英語名称もComputer Enter-tainment Software Associationから Computer Entertainment Supplier's Association、略称はともにCESA)に変わりました。こうした変更は、任天堂が警戒した「ソフト陣営」の色合いを薄めた動きでもあるわけで。これはある意味でCESA側からの歩み寄りでもあります。

土本
 
一時期、東京ゲームショウが近づくと今年は任天堂が出展するのか? と注目されましたが、最近はあまりこの話題が出てきません。

平林
 
はい。あきらめムードが広がって今にいたる、という感じでしょうか。私もなまじっか過去の経緯や双方の事情を知っていたので「任天堂も出展すべきだ」などとは数年来言ってこなかったんです。けれども、今年は気持ちが変わりましたね。陣営の概念が薄れた。懐が広くなった今のゲーム業界です。任天堂も環境が変わって君島新社長が就任されたことでもありますし、来年はぜひ任天堂も幕張に来てほしいです。今年も東京ゲームショウではさまざまなイベントがありました。そのひとつに『スプラトゥーン』や『スーパーマリオメーカー』のゲーム大会があったらいいのにな、と。そんなことを夢想して会場から帰ってきました。


(次回配信は10月30日予定です)


■パーソナリティの紹介


安田善巳 (やすだ よしみ)
角川ゲームス代表取締役社長、フロム・ソフトウェア代表取締役会長。日本興業銀行、テクモを経て、2009年に角川ゲームスの設立に参画。経営者でありながら、現役のゲームプロデューサーとして『ロリポップチェーンソー』『デモンゲイズ』などを手掛け、現在は『Projectcode -堕 天-』『Projectcode -月 読-』の開発に取り組む。



平林久和(ひらばやし ひさかず)
インターラクト代表取締役社長。ゲーム黎明期の頃から専門誌編集者として従事。日本で唯一のゲームアナリストとしてゲーム評論、ゲーム産業分析、商品企画などの多方面で活躍してきた。著書に『ゲームの時事問題』『ゲームの大學』(共著)など。「今のゲームを知るためには、まず日本を知ることから」が最近の持論。
《平林久和》

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