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【インタビュー】『MTG』『ハースストーン』のトップレイヤー浅原晃に、アナログTCGとデジタルTCGの違いを訊いた

22年前にWizards of the Coast社が生み出した世界初のトレーディングカードゲーム(TCG)『マジック:ザ・ギャザリング(MTG)』。同ジャンルの元祖として国内でも根強い人気があり、プロとして活動する人も少なくありません。

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22年前にWizards of the Coast社が生み出した世界初のトレーディングカードゲーム(TCG)『マジック:ザ・ギャザリング(MTG)』。同ジャンルの元祖として国内でも根強い人気があり、プロとして活動する人も少なくありません。

その1人が独創的なデッキ構築で有名な浅原晃さん。2003年には国内グランプリ優勝、2005年には世界選手権でベスト4を達成しました。現在は公式大会の実況や記事執筆も担当しており、Hobby JapanでTCG『ラストクロニクル』の開発にも関わっています。

浅原さんはまた『MTG』以外にも様々なジャンルのゲームをプレイしており、Blizzardのデジタルカードゲーム『Hearthstone』でも公式のポイントランクで国内プレイヤー中5位という成績です。

トッププレイヤーはどんなふうにゲームと接しているのでしょうか。浅原さんに『MTG』との出会いや大会に臨む心構え、アナログの『MTG』とデジタルの『Hearthstone』の違いなどを訊きました。


◆授業中もデッキを考える日々


――『MTG』を始めたきっかけを教えてください。

浅原晃: 17年前で大学1年生のときだと思います。第5版と「テンペスト・ブロック」の頃だったので1998年頃でしょうか。「ゲームを皆でプレイしよう」というサークルがありまして、そこで先輩に教えてもらったんです。

最初の2年間は身内で遊んでいるだけだったんですが、大会に参加するようになってから自分の中に変化が生まれました。「自分で考えたデッキで試合に勝てると楽しい!」と。以来狂ったように『MTG』にのめり込むようになりました。

――当時の生活はどんな感じだったんでしょうか?

浅原晃: 平日は大学に行って、週末は『MTG』の大会に出て……。1日中デッキのことを考えているのが多かったですね。講義を受けている間とか、先生の話を聴きながら紙にガーッとデッキ構成を書いてました。

――先生には一見「ちゃんとノートを取ってるな、真面目だな」と思われそうな姿ですね(笑)。

浅原晃: ええ(笑)。そのときは『MTG』がめちゃめちゃ面白くて、周りの仲間も皆似たような感じでした。実のところ『MTG』にはまりすぎて大学を辞める人も多かったです(笑)。

――浅原さんも?

浅原晃: いや、僕は普通に卒業してますよ(笑)。当時の人間としては珍しい「卒業組」です(笑)。でもやっぱり「一番上を目指そう」と思ったら『MTG』が最優先になっちゃいますね。

――そのぐらいやり込んでいる人が強くなれるわけですね。当時の仲間でプロになった人もいますか?

浅原晃: たくさんいますね。地元の神奈川つながりでは「プロツアープラハ06」で優勝した大澤拓也とか、「日本選手権07」の北山雅也とか。でも始めたばかりの頃は皆「世界で勝てる」なんてぜんぜん考えてなかったですよ。

◆関連活動で収入を得る


――浅原さんが頂点を意識するようになったのは?

浅原晃: 「グランプリ京都」に参加してからだと思います。確か1999年頃でしょうか。今の「グランプリ」には数千人が参加しますけど、当時の人数は500人ぐらいでしたね。そこで30位という悪くない成績を収めたんです。「大きな舞台で戦うのって面白いな」とも思いましたね。

――『MTG』のプロになったのはいつ頃から?

浅原晃: なんか、「プロ」という意識はずっと無いですね。「大会で賞金をもらった」というだけの認識でしょうか。スポンサーと契約しているわけでも、賞金だけで暮らしているわけでもないので。

あえて言うなら、2005年の世界選手権でベスト4になったときかなと思います。『MTG』には「プロプレイヤーズ・クラブ」という公式の制度があるんですが、そこでレベル6(各地の大会に航空券付で招待され、参加する毎に報酬として1,250ドルが贈られる)になったのがベスト4を達成したときだったんです。

――ほかのプロの方々も似たような感じなんでしょうか?

浅原晃: 自分の世代には「『MTG』が好きでずっとやっていたらプロツアーまで来てしまった」という人が多いですね。「賞金をがっつり稼ごう」といった人たちは少ないと思います。今はカードショップと契約したりする方もいますし、プロプレイヤーズ・クラブの制度も一新されたので少し違うかもしれません。

――当時の雰囲気がよく伝わってきますね。ところで、今は大会に参加するよりも実況される機会が多いとか。選手活動は休止中なんでしょうか?

浅原晃: 今はご縁があってプロツアーの実況や解説をさせていただいています。ライターとして公式の記事を担当することもあり、プロツアーには出ていないですね。

――公式サイトのコラムでは「中村シウ平殺人事件(※)」等、非常に独特なコラムを書かれていますよね。『MTG』プレイヤーではない私も、気になってつい全部読んでしまいました。

浅原晃: 物語調とか、けっこう好き勝手に書いてる記事が多いですね(笑)。新しいもの好きな性格なんですよ。デッキもそうなんですが、同じことを繰り返すよりも「新しいことを試したい」と思っています。


――『MTG』関連で記事を執筆するようになったのはいつからでしょうか?

浅原晃: 10年以上前なのでけっこう古いですね。当時『MTG』の代理店だったHobby Japan発行の「ゲームぎゃざ」という雑誌がきっかけです。

――「選手一本」というよりは『MTG』に関連する活動からも収入を得ているんですね。

浅原晃: そうですね。大学卒業後も仕事に就くのではなく、『MTG』をやりながら記事を書いたりして収入を得ていました。「でも『MTG』の活動だけで生計を立てられていたか」というと怪しいですね(笑)。アルバイトもしてましたし、今もHobby Japanに勤務していますから。

◆面白すぎて表現できない『MTG』の魅力


――浅原さんがそこまではまるようになった「MTG」は何が魅力なんでしょうか?

浅原晃: やっぱり、デッキを作るのが楽しいですよね。自分でカードの組み合わせを考えて、その強さを試合で表現できる。「リミテッド」という「数個のブースターパックから出たカードだけでデッキを組む」フォーマットも面白いですよ。特に8人前後で順番にカードをピックする「ドラフト」とか。

――「与えられた条件の中でものを作る過程が面白い」ということですか。

浅原晃: ええ。あとは「同じ興味を持つ仲間同士、集まると楽しい」というのもありますね。

――ゲーム自体の面白さはどうでしょう?

浅原晃: 「難しいゲーム」ではあると思います。ずっと攻めているだけじゃなくて、守らないといけないタイミングもある。それを自分で考えて決断しないといけないんです。そういう意味で「相手との駆け引き」もカードゲームの面白さでしょうか。

ただ、僕が感じている「劇的な面白さ」は言葉で表現するのが難しいですね。やりすぎちゃってて…。やったことのない人に勧めるとしても「とりあえずやってみようよ!」としか言えない(笑)。

――なるほど(笑)。ところで、『MTG』に限らずTCGはけっこうお金がかかりますよね。その点で敷居は高くありませんでしたか?

浅原晃: 希少度が高くて強いカードが1枚5000円で、デッキには最大4枚入りますから…大会で勝ちたいと思ったらそのぐらいはかかりますね。

でも僕自身は「お金がすごくかかる」という印象は特になかったです。身内でカードをシェアしていたので「自分が買えば皆が使える」というのもありました。デッキを作れれば良いので、必要なカードの量もそこまで多くないですね。歴史の長いゲームですけど、基本的なフォーマットなら古いカードは使えませんし。

◆『MTG』はプロでもミスが多いゲーム


――大会で勝つために心がけていることは?

浅原晃: 試合中なら「ミスしても切り替える」という精神ですね。『MTG』って本当にプロレベルでもミスが多いゲームなんですよ。「あ、やっちゃったな」とか(笑)。長い戦いになるので、それを引きずるようでは厳しいですね。自分も試合中は「気持ちの切り替え」を意識してやってました。

試合前だと「自分のデッキを回し、想定されるマッチアップの理解を増やしておく」ことでしょうか。これがいわゆる「練習」ですね。「意見を交換しながら一緒にできる仲間がいること」も大事だと思います。

――強くなるには仲間が必要ですか。

浅原晃: うーん、必須ですね。仲間が一緒だと楽しいですし、「楽しいから伸びる」というのはあると思います。振り返って思うのは、「こういうシステムでやったから伸びた」というよりは「楽しかったから伸びた」ということでしょうか。

――そのほかご自身が意識していることは?

浅原晃: 「独自のデッキを使いたい」というふうに思っています。「自分が考えた、強いと思うデッキ」で出たい。コピーデッキとかはあまり大会で使わないですね。

もちろん練習などで使うことはあるんですけど、やっていくうちに「こっちのほうが強いんじゃないかな」と感じていろいろ試すんですよ。自分が強いと思った方向に行っているだけなんですが、それが結果的に「周りから見るとユニークなデッキになっている」ことはよくあります。

※2ページ目: アナログの『MTG』とデジタルの『Hearthstone』を語る
《Game*Spark》
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