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スマホゲームはブラックオーシャン、挑戦者の一人として戦う・・・ガンホー・オンライン・エンターテイメント森下一喜社長

国民的スマホゲームにまで成長した『パズル&ドラゴンズ(パズドラ)』を筆頭に、PCオンラインゲーム、スマホゲーム、そしてコンシューマゲームと、さまざまなゲームを発信し続けるガンホー・オンライン・エンターテイメント。

ゲームビジネス 開発
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■中国版『パズドラ』は全く違うゲームに?



―――海外展開について伺います。その前に一つ確認させてください。2014年8月にスーパーセルの株式を親会社のソフトバンクに357億円で売却されました。遡ること2013年10月にソフトバンクと共同で特別目的会社(SPC)を設立し、スーパーセル株式51%を1515億円で取得されてから、10ヶ月で提携解消となります。今後はアジア展開に注力したいとのことでしたが、実際は何があったのでしょうか?

ご存じの通り、スーパーセルさんの『クラッシュ・オブ・クラン』と『パズドラ』で共同プロモーションを実施しました。特に北米向けでは一定の効果があり、提携の効果があったと思います。ただ、一方で両者ともに社内スタジオを抱えるパブリッシャー同士です。そのためコラボに関して、お互いに利害が相反する事態もあったんです。そりゃ社内で作っているゲームの方が可愛いのは当たり前ですよね。自分たちのゲームを売りたいのに、コラボしているから相手を優先しなくちゃいけない、うーんそれって何なんだろうと。ぶっちゃけ、コラボなどは資本関係がなくてもできます。株式をあえて持っている必要性が薄いことに、今さらながらに気がついたんです。

―――それで売却されたと。

そこは見極めの判断ですね。もちろん提携解消でスーパーセル側にデメリットがあるのなら別ですが、特にありませんでした。お互いにすっきりしたと思います。

―――日本とフィンランドの巨人同士が提携することで、導線だけではなく、何かもっと大きなものを期待した人も多かったのではないでしょうか?

それは最初からなかったんですよ。特に開発についてはお互いにスタンスが違うのがわかっていました。僕らは天邪鬼というか・・・。 ともかく他社がやらないようなことに突き進む。プロダクトアウトでゲームを作っています。でも彼らはそうではなくて、マーケットインのスタンス。基本的に上手くいっているゲームを、さらに磨いていく考え方です。だから噛み合わないし、そこを無視してやってもうまくいかないですから。

―――その一方で台湾版がリリースされましたね。中国ではテンセントと提携してパブリッシュされるとのことですが、期待度はいかがですか?

実は台湾・香港についてはプロモーションしなくても勝手に広がってしまったんです。実際ガンホーフェスティバルでも普通に台湾・香港からメディア取材が来ます。中国版『パズドラ』は絶賛開発中です。現地の意向を取り入れながら、パズルバトルの部分以外はほとんど別モノじゃないかというくらいの改良を加えていっています。

―――テンセントには『WeChat』というチャットサービスがあり、ゲームとの連動サービスなどもありますが、それらとも対応するのですか?

そうですね。だからUIからして違いますよ。僕らももともとPCオンラインゲームの時代から、さまざまなローカライズやライセンスアウトなどを行ってきました。しかしスマホはより生活に密着したデバイスなので、日本と中国では位置づけがPCゲーム以上に異なります。そのためカルチャライズにはかなり力を入れています。開発は日本で行っていますが、仕様についてはテンセント側とがっつり詰めて決めています。

―――他の市場ではいかがですか?

そこは国によって異なりますね。市場に向けた最適化は必要ですが、そこは文化もインフラ環境も違いますから。たとえば、アメリカでは比較的オリジナルのままリリースして運営を続けています。それぞれ違いが出てくると思うので、結果を比較してみたいですね。

■市場はブラックオーシャンで、自分たちもチャレンジャー



―――良くも悪くも『パズドラ』の会社というイメージがあるかと思いますが、ポスト『パズドラ』に向けてはどのように考えられていますか? 

昔は『ラグナロクオンライン』の会社だと言われていましたからね(笑)。それが今は『パズドラ』の会社になった。こんな風に言われるのは2回目なんですよ。とてもありがたいことだと思っています。実際『ラグナロク』の会社だと言われ続けて、経営上それでいいのかなと思っていた時期もありましたが、ある時期から吹っ切れました。僕らはゲーム会社だから、『○×の会社』と思ってもらえるほどヒットするゲームが世に出せたというのは、大変な名誉です。1本も作れない会社の方が多いわけですから。

―――たしかにそのとおりですね。

ただ、これは会社としての意見であって、個人的には「もっとおもしろいゲームを作りたい」と常に思っています。人間って欲深いですね。「既存価値の最大化」と「新規価値の創造」を今後もやっていきますよ。

―――任天堂とコラボレーションした『パズマリ』の手応えは如何でしたか?

正直なところ、現状の数字は当初の想定に届いていません。お客様に対して『パズマリ』の魅力をきちんと伝え切れていなかったかもしれません。ただしマリオシリーズはロングテールで売れる傾向にあるので、それを想定して今後もやっていきたいですね。すでに発表したとおり、新ダンジョンやランキングボードなどのアップデートを実施します。他にも長く遊んでもらうための仕掛けを投入していきます。

―――テレビ番組『情熱大陸』とコラボして作られた『モジポップン』も良くできていますね。

初日のダウンロード数は従来のどのゲームよりも良かったんです。完全無料なのでプロモーションはしませんでしたが、そこからの導線で『パズドラ』のインストール数も伸びました。最初は3ヶ月くらいでパパッと作れといったんですが、これがやっぱり手が抜けなくて・・・一年くらいかかっちゃいました。二度とやりたくないですね(笑)

―――番組効果で、ゲームクリエイターをめざしたいという人も増えたのでは?

ゲームっていまだに工場みたいなところで、流れ作業的に作っていると思われがちなんですよ。でも作っているのは人間で、お互いがぶつかりあいながらできている、すごくウェットなものなんですね。たぶん、もっと賢いやり方もあると思うんですが、僕らはあんな感じで作っています。

―――『パズドラ』がリリースされた2012年と比べて、今はアプリランキングの上位が固まってきていて、ビギナーズラックがほとんどなくなりました。こういった現状についてどう捉えられていますか?

うーん、でも僕らもチャレンジャーなんですよね。いまだに新作を出す時はドキドキしますよ。最近ではインディーズゲームが人気ですよね。でも僕らも作りたいものを作って出しているだけで、気持ち的にはインディーズです。よく社内でも「柳の下の二匹目のドジョウは追わない」と言っていますし、それこそ三振かホームラン以外は狙わないくらいのフルスイングで挑まないと、遊んですらもらえないですから。今ってタイトルが圧倒的に供給過多で、アプリを出したらあっという間にランキングの底にずぶずぶと沈んでいく、ブルーでもレッドでもないブラックオーシャン。その中でいかにお客様に「何これ!?」と、驚いてもらえるものを出せるかだと思います。

―――ブラックオーシャンとは言い得て妙ですね。

いやもう、ホントにそんな感じですよ。だから大変なのはみんな同じです。

―――そんな中、下半期はいかがでしょうか? 新作を期待して良いですか?

出したいとは思っています。実際に開発もしています。でも中途半端なままでは出せません。それくらい厳しい市場だと思っています。

―――期待しています。本日はどうもありがとうございました。



●取材後記●

私が森下さんに初めて会ったのは2005年、日本オンラインゲーム協会(JOGA)の前身のオンラインゲーム協議会の定期ミーティングでのことでした。すでにラグナロクオンラインのユーザーは100万人を超えており、会合の席でのストレートな物言いは自社のコンテンツと運営に関する自信を感じさせるものでした。

その後、2012年10月12日に「黒川塾 参(3) ガンホーナイト」でゲストとして登壇をいただいてから、森下さんを公式に取材するのは3年の月日が経過していました。

すでに「パズドラ」は3600万ダウンロードを超え、その勢いを海外に拡げています。スマートフォン向けの新作はもちろんこと、家庭用ゲームソフトのジャンルにまでチャレンジをしています。森下さんのインタビューにあるように「チャレンジャー」としての面目躍如といったところでしょう。

今回、インタビュー取材をして改めて思ったのは2005年当時から変わらない自分たちのコンテンツや運営に関しての森下さんとガンホー社の自信です。

それはパブリッシャー側の一義な自信ではなく、ユーザーの立場に依ったコンテンツ開発・運営に対しての自信だと思いました。

私の意地悪な質問に対しても誠意をもって回答し、自らの弱み強みを明らかにし、常にチャレンジャーと言い切ることは並大抵の経営者にはできません。

ダイナミックに見えるコンテンツ開発や経営も日々の努力の積み重ねの結果であると思います。年末に向けての運営や新作導入に期待しています。

■黒川文雄
くろかわ・ふみお 1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、ギャガにて映画・映像ビジネス、セガ、デジキューブ、コナミデジタルエンタテインメントにてゲームソフトビジネス、デックスエンタテインメント、NHNJapanにてオンラインゲームコンテンツ、そしてブシロードにてカードゲームビジネスなどエンタテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家であり、行動するジャーナリスト。黒川メディアコンテンツ研究所・所長。「黒川塾」主宰。コラム執筆、コンテンツプロデュース作多数。
ツイッターアカウントku6kawa230
《小野憲史》
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