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【レポート】「黒川塾25」古川登志夫、榎本温子が語る声優という職業

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5月8日、デジタルハリウッド大学にて25回目となる黒川塾が開催されました。早くも3年目に突入する黒川塾。毎回、ゲーム業界の話題の人をゲストに興味深い議論が行われてきましたが、今回のテーマは少し趣きを変えて「声優は一日にしてならず・・・声優事情変遷史」です。

昔から洋画ファンで自身も映画配給の経験がある黒川文雄氏。洋画の吹き替え版がきっかけで声優の世界にも興味を持っていたそうです。そこで今回のゲストは声優業界から豪華声優の2名とそれぞれのプロダクションから2名です。

古川登志夫氏は言わずと知れたベテラン名声優。洋画の吹き替えからナレーション、さらには『ONE PIECE』のエース、『ドラゴンボールZ』のピッコロ、『機動戦士ガンダム』のカイ・シデンといった人気キャラクターを演じてきました。池田克明氏は古川氏が所属する株式会社青二プロダクションの営業制作部部長。1996年に入社。TVCMやラジオCMのナレーションキャスティングを行い、現在は声優のマネージメントの他、アニメ、外国映画、ゲーム等のキャスティングや音響制作も行っています。

一方、今年でデビュー18年目になる声優の榎本温子氏は、1998年の『彼氏彼女の事情』の主役からキャリアをスタート。『ふたりはプリキュアSpiash Star』の美翔舞や、『鋼鉄天使くるみ』のくるみの他、ネットラジオなどで活躍しています。百田英生氏は榎本氏が所属する株式会社81プロデュースの営業部統括部長。1999年に入社、NHKの子供番組の制作に関わってきました。その後、営業部で声優の育成、マネージメント、プロデュースを行っています。

■世代の異なる声優が語る声優事情

まずはベテランの古川登志夫氏から声優の歴史的変遷を聞くことから始まりました。昔は声優という言葉自体がポピュラーではなく、あくまでも俳優やタレントが仕事としてアニメーションとかドラマの吹き替えをやるというだけでした。「声優」という言葉を嫌っている人も多く、古川氏の世代から徐々に定着してたそうです。

当時の声優の多くは新劇の舞台俳優がつとめていました。古川氏自身は児童劇団出身、舞台俳優の劇団に入り、そこの座長から声優に誘われたそうです。当時の声優にはとてもお洒落で自由な雰囲気。『ルパン三世』で有名な山田康雄氏は本当にルパンのような出で立ち仕事をこなしました。今では考えれませんが、スタジオでタバコをくわえている人もいたそうです。

古川氏は25歳で声優デビュー。当時は俳優として大河ドラマにも出演。その際にスタッフロールで本名の「利夫」が誤って「登志夫」で流れ、それが今の芸名につながっています。俳優と声優をかけもちしながらも、徐々に声優の仕事が増えていき、青二プロに移籍。30歳のときにアニメの主人公をつとめました。

気がつけば声優になっていた古川氏ですが、俳優との一番の違いは雨が降っても仕事はあるという点。当時の俳優は撮影時の天候によって仕事が左右されることが多かったそうです。結果的に声優で安定した収入を得ましたが、演劇への思いは変わらず、古川氏は何度も劇団にお金を費やしてきました。

対して榎本温子氏がデビューした頃は、すでに声優という職業が確立した後です。学生時代から声優に憧れ、インタビューを読み、ラジオ放送を熱心に聴いていたそうです。そして高校時に特待生狙いで声優学校に応募。一年目は不採用でしたが、次の年に合格。新しい事務所の立ち上げと共に17歳でデビューしました。

デビュー当時は実力ではなく若さを買われたと思っていたため、声優を続けていけるかどうか不安に感じていたそうです。しかしながら、少しずつ声優業界のことが好きになり、現在に至っています。それでもデビュー作『彼氏彼女の事情』では原作のガイナックスの脱税事件や放送枠をとっていた代理店の倒産など、数々のトラブルに見まわれました。そういった波乱の中でも淡々とアフレコをこなしていったそうです。

■プロダクションが語る声優という仕事と歴史

次にプロダクションの2人から声優という職業とその歴史が説明されました。池田氏のつとめる青二プロは業界でも老舗のプロダクション。そのため、声優の仕事は洋画吹き替え、アニメーション、ナレーションと幅広く手がけています。池田氏自身はプロレス業界出身で、レスラーに憧れつつ、営業、制作、プロモートを行ってきました。当時のリングアナウンサーが青二プロの声優だったことがきかっけで、1996年に青二プロに入社しています。

最初はナレーションのキャスティングを行い、声の世界の奥深さに気づいていったそうです。声優といえばアニメーションや洋画の吹き替えばかり思いつきますが、実際には町中でなっているほとんどの声は仕事として作られたもの。例えば、JRのアナウンスも青二プロのクリスタル・チアリ氏が務めているそうです。

その後はアニメの部署に編入。声優業界はマネージャーがそれぞれのタレントの担当をするのではなく、それぞれの取引先を担当します。よって、芸能界のマネージャーというよりも営業マンに近い存在。青二プロには現在30名ほどのマネージャーと300名くらいの声優を抱えています。

百田英生氏の株式会社81プロデュースも30年以上の歴史があるプロダクション。声優業界ではギャランティーは明確に声優のランクに応じて支払われ、どのプロダクションでもほぼ同額であるそうです。そのため事務所を移籍しても、同じようなスタイルで働けるという安心感があります。

とはいえ、今のような声優の地位は歴史によって獲得したものです。もともとは洋画や海外ドラマとかに声をあてることで始まった声優。当時は「アテ師」という名前でアルバイトのような形で雇われており、不安定な立場にあったそうです。そのため、日本俳優連合などの業界団体が団体交渉を行ってきました。時には声優が直接、ストライキやデモにも参加。安定した収入や二次使用の権利などを獲得してきたそうです。現在ではそれらの権利が守られており、業界は健全な状態にあるそうです。

■声優のプロ意識とは

ここで話題は先日、堀江貴文氏がTwitter上で放った「声優って実際そんなにスキルいるの?」という問題発言に移りました。これに対して同じくTwitter上で強く反論した榎本氏。現在でもその考えは変わっておらず、プロにはプロのスキルがあると主張します。もちろん、技術革新のため、アフレコ自体は以前よりも容易になっているそうです。それでも声の出し方、完成動画ではなくコンテを見ながらの生き生きした演技には技術が必要です。

古川氏のようなベテラン声優は数多くの役柄をこなしてきました。古川氏は時代に合わせて演技を変えることで、この役柄の幅に対応してきたそうです。中でもアニメ『たまゆら』では、若手声優が小声でささやくような演技をみせたのに衝撃を受けたそうです。これまでは声量たっぷりに声をあげるのが当たり前でしたが、現在はマイクの進化によって小さな声でも拾えるそうです。か細い声によって表現された乙女心は、技術に合わせて演技を変える重要性を古川氏に悟らせたそうです。

さらに古川氏は企業秘密としながらも、自身が心がける「プラスアルファ」の演技を教えてくれました。古川氏はどんな役を演じるときも、そのキャラクターの2つの部分を意識するそうです。例えば、悪役の場合にはその反対の善なる部分、優しい男の場合はその反対の強い部分。それらを意識することで演技の深みが増すそうです。実際、『ドラゴンボール』のピッコロには強面だけど優しいところがあり、『北斗の拳』のシンは憎たらしい悪役の裏に純粋な部分があります。そういった両面性によってファンからの人気も獲得できたと振り返っています。

対して榎本氏はキャラクターになりきることをいつも考えています。結果、自分とよく似た性格の役がハマることが多いそうです。またアニメは監督のものだという考えが強く、監督の表現を実現するためにいつも努力しているとのこと。さらにプロの声優としてアフレコ現場をいつも大切にし、他の声優さんから学ぶことも多くあるそうです。

また現在では声優の活躍する場はテレビやラジオに留まりません。榎本氏はニコニコ生放送といったインターネットでも積極的に活躍していますが、そこではプロとアマの差は曖昧になります。プロダクション側の百田氏も池田氏もプロの声優以外が起用されることも認めていますが、そこにはプロモーション、限られた制作費など様々な理由があるそうです。結果として、プロとしてのスキルは歴然としてありながらも、それだけでは起用されないという厳しい世界のようです。

■声優業界を目指す人へのメッセージ

今回の黒川塾はいつにも増して多くの方が来場していましたが、特に声優業界に関心がある若者が多かったようです。最後にはそういった業界を目指す若者へのメッセージが登壇者から述べられました。

81プロデュースの百田氏は声優業界はまだまだ夢のある世界なので、ぜひとも飛び込んできて欲しいとのこと。青二プロの池田氏からは仕事は忙しいが、やりがいはものすごくあると。声優を目指す人には、またこの人と仕事がしたいという声優を目指して欲しいと語りました。

榎本氏はいつもは声優になりたいと言われたら「やめとけ」と答えているそうです。しかしながら、それを乗り越えて活躍する人にとっては、素敵なものがあると述べています。一方、古川氏は現在、声優は人気の職業になり、業界自体は活気づいていると説明します。新人発掘熱は高く、声優養成所はたくさん存在します。自分がデビューしたときに比べると、ある意味では恵まれているため、ぜひとも今日の来場者には頑張って欲しいとエールを送りました。
《今井晋》

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