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【hideのゲーム音楽伝道記】第5回:時間移動がテーマの正統派RPG『ラジアントヒストリア』

インサイドをご覧の皆さま、こんにちは。ゲーム音楽好きライターのhideです。
ゲーム音楽の連載記事「hideのゲーム音楽伝道記」第5回目となる今回は、2010年にアトラスから発売されたニンテンドーDS用RPG『ラジアントヒストリア』をご紹介します。

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インサイドをご覧の皆さま、こんにちは。ゲーム音楽好きライターのhideです。
ゲーム音楽の連載記事「hideのゲーム音楽伝道記」第5回目となる今回は、2010年にアトラスから発売されたニンテンドーDS用RPG『ラジアントヒストリア』をご紹介します。



◆RPGに、シナリオ分岐型のアドベンチャー要素をプラス


本作の舞台は、西からじわじわと迫る砂漠化の影響で、ゆっくりと滅亡へと向かいつつある「ヴァンクール大陸」です。残り少なくなってゆく緑の大地を巡って戦争を行う二つの国、「アリステル」と「グランオルグ」。両者ともに一進一退の攻防が繰り広げられていましたが、やがて戦況はアリステルにとって徐々に厳しい方向に傾いていく――というストーリーです。


プレイヤーは、アリステルの情報部に所属する主人公「ストック」となって、ゲームを進めていきます。ひょんなことから出会った時の狭間の案内人・ティオとリプティから、謎の書物「白示録(びゃくしろく)」を授けられ、時間移動の能力を得たストック。彼は、白示録を使って時間移動しながら、歴史を正しいものになるよう導いてゆくのです。

本作のジャンルはRPGになりますが、選択肢による物語の分岐要素があります。当然、誤った選択をしてしまうと、仲間が死を迎えるなどのバッドエンドになってしまうこともあるのですが、そんな時こそ白示録の出番。白示録には、シナリオ分岐型アドベンチャーゲームで言うところの「フローチャート」機能があり、これを使うことで、好きなシーンから歴史をもう一度やり直すことができるのです。間違った選択を正すことで新たな道が開け、正しい歴史を作り上げていくことができる、というわけです。

基本的にはそうやってゲームを進めていくのですが、バッドエンドにも色々な展開が用意されているので、むしろ積極的にバッドエンドを集めたくなります(笑)。このへんは、アドベンチャーゲームに近い面白さがありますね。時間移動ものが好きで、RPGが好きで、アドベンチャーゲーム(特に『かまいたちの夜』や『428 ~封鎖された渋谷で~』といった、サウンドノベル作品)がお好きな方なら、文句なしにオススメです。


◆主人公・ストックがとてもかっこいい!



『ラジアントヒストリア』の大きな魅力、それはなんといっても、主人公のストックです。もう、彼のかっこよさは尋常じゃないですよ! なんせ、男性である僕が惚れてしまったくらいですから(笑)。

ストックは一見クールに見えますが、実はとても熱いオトコなんです。近年のRPGは、クセが強くて、あんまり感情移入できない主人公も少なくないのですが、ストックは自然に感情移入することができましたね。やさしくて仲間思いで、いつも一生懸命で……とても好感の持てる人物でした。「hideの選ぶ、RPGでかっこいい主人公ランキング」では、ベスト3に入ります。


本作にはストックのほかにも、アリステル情報部の仲間であるレイニーとマルコ、アリステル軍新兵部隊のロッシュ隊長、王女エルーカ、元気で可愛らしい巫女・アトなど、魅力的かつ人間味にあふれるキャラクターがたくさん登場します。皆それぞれが信念を持っていて、物語を盛り上げてくれます。


◆下村陽子氏が音楽を担当


本作の音楽は、『キングダム ハーツ』シリーズなどで著名な作曲家の下村陽子氏が全曲を担当しています。重厚かつ美しく、切なさを帯びた楽曲群は、本作の世界観によくマッチしており、物語を盛り上げてくれます。「さすが下村氏!」とうなるほどの出来栄えですよ。また、下村氏が作詞・作曲を手掛け、霜月はるか氏が歌った主題歌「-HISTORIA-」も素敵です。美しく透明感のある霜月氏の歌声が、物語に華を添えてくれます。

本作の音楽について、下村氏は、『ラジアントヒストリア』公式サイトのインタビューで次のように語られていました。

「“過去に戻って歴史を変える”ということは、決していいことばかりではないと思うんですよ。歴史を変えてしまうことによる切なさもあるだろうと。そういった想像をしたので、ちょっと切なめの曲が多かったりします」

その言葉通り本作は、切なく、しっとりした音楽が多めになっています。それがこの『ラジアントヒストリア』という作品に本当にぴったり合っているんですよね。下村氏の手腕が遺憾なく発揮された出来栄えで、下村氏の数ある作品の中でも僕は特にお気に入りです。下村氏のファンの方にも是非おすすめしたいです! サウンドトラックも発売されていますので、まずは音楽から聴いてみるのもよいかと思います。



僕が本作の音楽で特に良いと思ったのが、バトル曲です。RPGなので当然幾度となく敵と戦うわけですが、通常バトル曲「Blue Radiance」の出来が非常に良く、僕はバトルのたびにノリノリでプレイしていました。激しい戦いを思わせる重厚さがありながら、同時に軽快さも併せ持っていて、重すぎず軽すぎない絶妙な味わいを醸し出しています。この楽曲は今までにもう500回以上は聴いているはずなのですが、まったく飽きる気配がありません(笑)。下村氏がこれまで手掛けてきた数ある楽曲の中でも、特にお気に入りの1曲です。そのほかにも、緊張感のあるボスバトル曲「The Edge of Green」や、イベントバトル曲「The Red Locus」も素晴らしい出来で、激しい戦いを彩ってくれます。

音楽面が素晴らしい『ラジアントヒストリア』ですが、実はこの作品、効果音で大きな難点があるのです。……それは、「ストックの足音がやけに大きい」ということ。せっかくの下村氏の美しい音楽が、やけに大きなストックの足音にかき消されがちなのです。これは、個人的に本作でいちばん残念なところでした。ここはもうちょっと何とかならなかったのかな、と思います。ストックは密偵として静かに任務を遂行してゆくキャラクターなのですが、大きな足音を鳴らして移動するのは、密偵というゲーム中の設定から考えても不似合いですし(笑)。本当にこの点は残念です。まあ、足音については、遊んでいるうちに慣れると思いますので、問題点としては些細なことかなと思います。


◆戦略性の高い“グリッドバトル”


 

本作のバトルシステムについてもご紹介しましょう。本作のバトル画面は昔の『ファイナルファンタジー』シリーズのような横から見たタイプで、右側にストックたち、左側に敵が表示されています。また、DSの上画面には敵とストックたち各キャラの行動順が表示されており、行動の順番を自由に入れかえることもできます。ストックたちが連続して攻撃するように順番を調整し、コンボをつなげて大ダメージを与えるという戦い方も可能です。ちなみに、オートバトルに切り替えもできるので、面倒くさがりな方でも大丈夫ですよ(笑)。

そして、本作のバトルにおける最大の特徴が、“グリッドバトル”と呼ばれるシステムです。敵側のエリアは、タテ3×ヨコ3=合計9マスのグリッド構造になっているのですが、ストックたちの必殺技の中には、“敵の位置を動かす”ことができるものがあります。たとえば「プッシュアサルト」は、敵にダメージを与え、かつ、後ろのマスに吹き飛ばす。「レフトアサルト」は、左に吹き飛ばすという具合ですね。

これらの必殺技と、行動順の入れ替えをうまく使うと、「複数の敵を1ヵ所にまとめた後、強力な攻撃を連続で叩き込み、一気に大ダメージを与える」という戦略も可能になります。狙い通りに、敵を一気に倒せた時は爽快ですよ!

あとは、敵が前列(ストックたちに近いマス)にいるほど攻撃力が高くなるので、「前列にいる敵を後列に押しやって、敵からのダメージを抑える」といった戦略性もあります。グリッドバトルシステムをうまく使えば、バトルを有利に進めることができるというわけですね。


◆古き良きRPGの香りがある作品


『ラジアントヒストリア』には、ムービーやボイスは入っていません。そのため人によっては演出面がやや淡白に感じられるかもしれませんが、シナリオ自体が面白く、グイグイと物語に引き込まれたので、僕はあまり気になりませんでした。

本作のプレイ感覚は、スーパーファミコンの頃の、古き良きRPGに近いように思います。過剰な装飾でごまかすことなく、作中の各要素をきっちりと作りこんでいる姿勢は、僕は非常に好印象を受けましたし、その作品世界に僕は魅了されました。

先の展開が気になるシナリオ、魅力的なキャラクター、丁寧に描き込まれたドット絵、独創的なバトルシステム、そして下村陽子氏の紡ぐ美しい音楽。“ゲームそのものの面白さ”で純粋に勝負している、正統派ファンタジーRPGです。RPGがお好きな方なら、遊んで損は無い作品だと思いますよ。ご興味をお持ちになった方は、ぜひプレイしてみてください。

果たしてストックは、砂漠化で滅びゆく世界を救うことができるのか。そして彼がどのような運命をたどるのか――。ぜひ、あなたの目で見届けてほしいと思います。

【筆者プロフィール】
 hide / 永芳 英敬

ゲーム音楽ライター&ブロガー。ゲーム音楽作曲家さんへのインタビュー記事、ゲーム音楽演奏会レポート記事など、主にゲーム音楽関係の記事を執筆しています。うなぎと焼き鳥とパンケーキが大好物!

[Twitter] @hide_gm
[ブログ] Gamemusic Garden
《hide/永芳英敬》
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