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ゲーマーにもお勧めしたい「ダンジョン飯」はなぜ面白い?その「味付け」から現在の入手状況までご紹介

「ハルタ」にて好評連載中の「ダンジョン飯」は、その名が指すとおりダンジョンにおける食事をテーマとしたファンタジー漫画。その大胆な切り口が多くの読者を惹きつけ、先日発売された第1巻は多くの書店で売り切れが続出しました。

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ゲーマーにもお勧めしたい「ダンジョン飯」はなぜ面白い?その「味付け」から現在の入手状況までご紹介
  • ゲーマーにもお勧めしたい「ダンジョン飯」はなぜ面白い?その「味付け」から現在の入手状況までご紹介
「ハルタ」にて好評連載中の「ダンジョン飯」は、その名が指すとおりダンジョンにおける食事をテーマとしたファンタジー漫画。その大胆な切り口が多くの読者を惹きつけ、先日発売された第1巻は多くの書店で売り切れが続出しました。

「ダンジョン」という響きだけで、心が沸き立つゲームファンも少なくありません。古くは、テキストオンリーで表示される冒険世界や名作「ウィザードリィ」で広まった、コンピューターゲームによる地下迷宮への冒険。多くのプレイヤーが様々なゲームでそれぞれの「ダンジョン」に挑み、時には目的を達し、時には全滅の憂き目に遭いました。


迷宮に挑むRPGが好きな方ならば、数多くの思い出を持つ「ダンジョン」。その妖しくも魅力的な舞台に、「飯」というユニークなモチーフを組み合わせた九井諒子さんが世に放った「ダンジョン飯」は、漫画ファンはもちろん、ゲームファンにもお勧めできる会心の一作です。

「埋もれてしまってはもったい、ゲームファンにこそ知って欲しい」との想いから、ゲーム的な側面も絡めつつ、この「ダンジョン飯」を紹介させていただきます。

◆ダンジョンズ&ゲーマーズ


長く続く迷宮探索に挑むため、ダンジョンに蔓延るモンスターを料理して食す「ダンジョン飯」ですが、ゲームでも「ダンジョンと食事」を組み合わせたものはあり、『ダンジョンマスター』や『ローグ』、比較的最近のものでは『不思議のダンジョン』シリーズや『新・世界樹の迷宮』シリーズなどがあります。

RPGと食事の関係はゲームシステムに直結しているケースが多く、「空腹になるとステータスが低下、もしくは死亡」「食事をすることで特定のステータスが上昇」といった形になる傾向にあります。このため、前者の場合は「食えるなら何でもいい」、後者は「より(ステータス的に)効果の大きいもの」という一面が重視され、味や美味しさなどは軽視されがちです。

どれだけ美味しかろうとプレイヤーが実際に食べられるわけではないので、軽く見てしまうのも仕方のない話かもしれません。そのためゲーム方面、特にダンジョン攻略に挑むシステムにおいて、「食事」要素を深く掘り下げるタイトルはあまり多くないのが現状です。

余談になりますが、『ドラゴンズクラウン』や『朧村正』、『オーディンスフィア』など、ヴァニラウェアが手がけたタイトルには、その見た目だけでも食欲をそそる「美味しそうな食事」が多数登場します。ゲームにおける食事描写の最前線と言えるでしょう。ゲームとして面白いのは大前提ですが、こういった側面にも独特な魅力を持つタイトルというのも、今後増えて欲しいばかりです。

◆一般的なグルメ漫画と「ダンジョン飯」の違い


ゲームではあまり大きくピックアップされない「食事」ですが、「受け手側が食べられない」という面では同じはずの漫画界では、食事にフォーカスした作品が数多く出版されています。

グルメ漫画といえば外せない「美味しんぼ」をはじめ、一人飯を描く「孤独のグルメ」、人と食事の風景を浮き彫りにする「深夜食堂」、可愛らしい絵柄ながらも2巻で意外な展開も見せた「花のズボラ飯」など、例を挙げればきりがありません。もちろんこの他にも、様々な角度から「食事」をモチーフとした漫画が多数存在します。

では「ダンジョン飯」の面白さやヒットの理由が、このような先駆者が切り開いた道があってこそかと言えば、一概に首を縦には振れません。上記の作品群に見られる傾向と「ダンジョン飯」の間には大きく異なる点があります。それは「食べることが可能か否か」です。

「美味しんぼ」などのグルメ漫画の多くは、入手困難であったり高額なものこそあれ、基本的には現存している材料や料理を扱っており、労力さえ払えば受け手側がその味を享受することも不可能ではありません。また、「子供の頃食べた懐かしの味」などを題材にしているものもあり、かつて食べたものやこれから食べられる(可能性がある)ものがその大半と言えます。

漫画を読んでいるその瞬間に味わうことができずとも、過去もしくは未来において共有できる「味」を読むことができる……それが、グルメ漫画におけるポイントのひとつ。だからこそ、ダンジョンに住むモンスターを食材とする=読者は決して食べられない料理を題材とした「ダンジョン飯」は一線を画しており、それは本作でしか「味わえない」魅力なのです。

◆「ダンジョン飯」に込められた魅力


モンスターを食材にするので、「創作料理」なのはもちろんのこと、「創作食材」でもあります。実存する食材をモチーフとして用いる際には、「こう調理したらこうなる」という事実を曲げることができませんが、「創作食材」はそのルールに則る必要がなく、ルールそのものを作り出すことも許されます。

こう書くと、「作者の都合に合わせて好き勝手に書けるんだから、楽なのでは」と感じる人がいるかもしれませんが、それは大違いです。確かに実際の食材を扱う場合はちゃんとした下調べが必要ですし、活かし方も限られていますが、その代わりに「説得力」「リアリティ」という大きな武器を手に入れます。

「創作」は確かに自由度が高いものの、前述の「都合の良さ」と受け止められることも多々あり、いかにして説得力を出すのかが問われます。「荒唐無稽だからこそ面白い」といった例外を除けば、説得力を欠く創作が面白さに繋がることは非常に稀です。

この厳しい「創作」で食材、食事を描く「ダンジョン飯」は、ダンジョンに生態系の概念を当てはめ、また個々のモンスターに関してもその構造を再構築することで、見事にこの「説得力」を持たせることに成功しています。

例えば一話で登場する“スライム”は、ダンジョンものに限らず多くのRPGに登場しますが、本作ではこのスライムの構造を独自に構築。脳や内蔵を持っており、それらを粘着度の高い胃液で包むことで保護し、そのため不定形の生物に見える──といった具合に、知られている既存のモンスターを現実味のある「生き物」へと落とし込んでいます。

この他にも、頭と胴が鶏で尻尾が蛇という“コカトリス”は「実は尻尾が本体(なので卵は、柔らかく細長い)」だったり、中身がカラッポと思われていた“動く鎧”は「鎧に見える貝のような生き物の集合体」など、ユニークなアイディアばかり。この秀逸な発想がモンスターと料理を結びつけており、面白さへと昇華しているのです。

本作の独自解釈とはいえ、大蝙蝠の下ごしらえやマンドレイクの皮の剥ぎ方などを、他の作品で知る機会はないでしょう。こういう部分も丁寧に描いているので、説得力も倍増です。

◆「ダンジョン飯」の面白さは、食事だけにあらず


説得力ある「モンスター料理」が毎回登場する「ダンジョン飯」ですが、本作の魅力は食事だけに留まりません。主人公・ライオス一行の個性豊かな面々も、欠かせない大きな要素です。

そもそも本作は、ライオスたちを救うために身代わりの形となり、ドラゴンに食われてしまったファリンの救出に端を発します。食われたといっても、蘇生技術が進んでいるこの世界、みじん切りになっても蘇生した例があるほど。消化が極端に遅いドラゴン相手なので、救い出す猶予は十分にあります。

そのためダンジョン探索も時間をかけて描写されており、実はモンスターの調理にずっと興味があったライオスの変人ぶりや、10年以上も魔物食の研究を続けたセンシの魔物食優先な価値観などが垣間見えてきます。

素直で感情豊かなエルフの魔術師・マルシルが、皮膚下に種を植え付ける寄生植物に拘束された直後、大丈夫かといった一言よりも先に「(締め付け具合は)どうだった?」と興味津々にライオスは訊ねてしまいます。これには流石に、マルシルもしぶーい顔で切り返すしかありません。またセンシが、今の食事状態では脂分が足りないことを暗に指摘した一幕では…

センシ「昨日はサソリ鍋。そして人食い植物の実を食べた。どれも栄養価は豊富な食材だが、足りていない物が分かるか?」

マルシル「常識」


と、小気味よい切り返しを放ちます。こういった会話のやり取りから見えてくる関係性も、本作を彩る魅力に欠かせない存在です。ちなみにこのマルシルは常識的な観念を持っており、「モンスター料理」に最も拒否反応を示します。しかしいざ魔物食を口にすると、その美味しさに一番顔を綻ばせる人物でもあり、その多彩な表情も見どころのひとつです。

◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆


本作独自の味付けで再構築されたモンスターと、全滅寸前の窮地を立て直す暇もなくファリン救出に臨んだため食料事情も逼迫しているライオス一行が、ダンジョンという舞台で遭遇する、この「ダンジョン飯」。本作の魅力はまだまだ語り尽くせませんが、その一端だけでも伝えることができていれば幸いです。

しかしあまりの人気ぶりのため、数多くの書店や大手通販サイトでは売り切れが続出。今回の記事をきっかけに読みたくなった人や、ずっと探し求めている方にとっては、厳しい状況と言えます。ですがまさに本日、いくつかの朗報がTwitter上に到着しました。










これらの店舗に入荷したのは無論ですが、他の書店でも同じタイミングで入荷されている可能性は低くないでしょう。本として欲しい方は、身近な書店に足を運んでみるのも一興です。また、残念ながら近所の書店になかった方や、電子版でも構わないという人には、すぐに読むことができるAmazonのKindle版もお勧めです。

Kindle版は専用アプリの導入こそ必要となりますが、iOSやAndroid端末はもちろんのこと、Windows8.1/8/7にも対応しており、PCで閲覧することも可能です。アプリ自体は無料な上に、Kindle版「ダンジョン飯」1巻は書籍版よりも安い429円。売り切れる心配もないので、一刻も早く読みたい方は選択肢のひとつとして考えてみてはいかがでしょうか。

その面白さゆえに人気も高い「ダンジョン飯」。ゲームでも漫画でも「隠れた名作」というものが多数ありますが、日が当たり「隠れていない名作」になって欲しいもの。本作も隠れることなく、より多くの人に楽しんでもらいたい一作です。

(C)KADOKAWA CORPORATION 2015
《臥待 弦》

楽する為に努力する雑食系ライター 臥待 弦

世間のブームとズレた時間差でファミコンにハマり、主だった家庭用ゲーム機を遊び続けてきたフリーライター。ゲームブックやTRPGなどの沼にもどっぷり浸かった。ゲームのシナリオや漫画原作などの文字書き仕事を経て、今はゲーム記事の執筆に邁進中。「隠れた名作を、隠れていない名作に」が、ゲームライターとしての目標。隙あらば、あまり知られていない作品にスポットを当てたがる。仕事は幅広く募集中。

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