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公認会計士が任天堂を分析 数字でビジネスモデルを分析

任天堂 その他

「公認会計士による人気企業分析 「任天堂」」
  • 「公認会計士による人気企業分析 「任天堂」」
  • 製品別売上高(2014年3月期)
  • 地域別売上高(2014年3月期)
  • ハード、ソフト販売実績(2014年9月末時点)
  • 主要ソフトの販売実績
  • 損益計算書と売上高100円あたりのコスト構造
  • 任天堂の業績の推移
  • 事業領域の拡大
 公認会計士による企業分析、今回は「任天堂」についてお送りします。ビジネスモデルや財務面の分析を分かりやすく丁寧にお伝えしています。ぜひ企業分析の参考にしてみてください。

◆1. 沿革と経営理念
*沿革
 任天堂の歴史は、1889年に山内房治郎氏が花札の製造を開始したことから始まります。その後、1902年には日本初のトランプ製造に着手、1947年に株式会社丸福(現・任天堂株式会社)が設立されました。1953年には日本初のプラスチック製のトランプの製造に成功し、1959年にはディズニーキャラクターを使用したトランプを発売しています。

 1962年に大阪証券取引所市場第二部および京都証券取引所に上場した任天堂は、この頃からゲームの開発に力を入れるようになります。
 1973年には業務用レジャー・システムの「レーザークレー射撃システム」を開発し、1977年には家庭用テレビゲーム機の「テレビゲーム15」「テレビゲーム6」を発売しました。
 そして、1980年に発売した「ゲーム&ウオッチ」が爆発的なブームとなり、1983年には「ファミリーコンピュータ」の発売、1985年に「スーパーマリオブラザーズ」が大ヒットして、ゲームメーカーとしての不動の地位を築くことができました。

 その後も任天堂の勢いは止まらず、1989年には「ゲームボーイ」を発表、さらに1990年には「スーパーファミコン」、2001年には「ゲームボーイアドバンス」を発売しました。2004年には「ニンテンドーDS」、2006年には「Wii」を発売し、この2つのゲーム機がヒットしたことで、2009年3月期の売上高は1兆8,000億円を超え、過去最高となりました。
 その後2008年には「ニンテンドーDSi」、2011年には「ニンテンドー3DS」、2012年には「Wii U」を発売しています。

*経営理念
 任天堂の経営の基本方針(経営理念)は「当社グループはホームエンターテインメントの分野で、健全な企業経営を維持しつつ新しい娯楽の創造を目指しています。事業の展開においては、世界のユーザーへ、かつて経験したことのない楽しさ、面白さを持った娯楽を提供することを最も重視しています」となっており、人々のQOL(Quality of Life)を楽しく向上させることを目指して、ビジネスを行っています。

 任天堂の歴史や経営方針について詳しく知りたい方は、下記のページをご覧下さい。

*会社の沿革
http://www.nintendo.co.jp/corporate/history/index.html
*経営方針
http://www.nintendo.co.jp/ir/management/policy.html

◆2. 数字を使ってビジネスモデルを分析する
 製品別売上高や地域別売上高、コスト構造などを分析していくと、企業のビジネスモデルが見えてきます。
 そこで、ここでは以下の5つの視点から、任天堂のビジネスモデルを分析したいと思います。

 1. 製品別売上高
 2. 地域別売上高
 3. ハード、ソフト販売実績
 4. 主要ソフトの販売実績
 5. 損益計算書と売上高100円あたりのコスト構造

5項目から見えてくる任天堂のビジネスモデルは、下記リンクより次ページへ

◆2-1. 製品別売上高(画像一覧から、図1参照)
 任天堂の2014年3月期の売上高は、5,717億円あります。
 その内訳を見ると、ハードウェアが3,160億円で全体の55.3%、ソフトウェアが2,538億円で44.4%、トランプ・かるた他が19億円で0.3%となっています。任天堂の創業当初の主力事業であったトランプやかるたの売上は0.3%しかなく、1970年代から本格化したゲーム事業の売上が全体の99.7%を占めています。

 ハードウェアの売上げを見ると、ニンテンドー3DSなどの「携帯ゲーム機」が2,018億円、Wii Uなどの「ホームコンソールゲーム機」が896億円となっています。
 ソフトウェアの内訳を見ると、「携帯ゲーム機用のソフトウェア」が1,673億円、「ホームコンソールゲーム機用のソフトウェア」が648億円、「コンテンツ収入他」が218億円となっています。

◆2-2. 地域別売上高(画像一覧より、図2参照)
 それでは、次に、任天堂製品の地域別売上を分析したいと思います。

 日本での売上は1,770億円で全体の31%、米大陸が2,196億円で38.4%、欧州が1,586億円で27.7%となっており、全売上高の7割程度は海外で売り上げていることが分かります。
 また、日本を除くアジアなどでの売上が2.9%しかないため、新興国への成長の余地は大きいと考えられます。
 日本と海外ではハードやソフトの売れ方に違いがあり、日本では非常に早いペースで売れていきますが、海外は日本よりもゆっくりとしたペースで長い期間に渡って売れていくそうです。

 ちなみに、日本で2012年11月に発売された「とびだせ どうぶつの森」は、海外では2013年6月に「Animal Crossing New Leaf」として発売され、日本で2013年4月に発売された「トモダチコレクション新生活」は、2014年6月に「Tomodachi Life」というタイトルで発売というように、日本でヒットしたソフトが暫くしてから海外で発売されています。

◆2-3. ハード、ソフト販売実績(図3参照)
 それでは、次に、ハード、ソフトの種類別売上高を見てみたいと思います。なお図3は、任天堂のホームページのデータより作成しました。
(参照)http://www.nintendo.co.jp/ir/sales/hard_soft/index.html

 任天堂は2014年9月末までに、ニンテンドーDSやWiiなどのハードを6億7,383万台、ソフトを42億6,592万本販売してきました。

 ハードの販売実績を見ると、ニンテンドーDSが1億5,401万台、ゲームボーイが1億1,869万台、Wiiが1億123万台と、上位3機種が1億台を超えています。
 ソフトの販売実績を見ると、ニンテンドーDSが9億4,548万本、ゲームボーイが5億111万本、Wiiが9億141万本となっています。
 ゲーム機1台あたりのソフト売上を見ると、ニンテンドーゲームキューブが9.6本、Wiiが8.9本、ファミリーコンピュータが8.1本となっています。

◆2-4. 主要ソフトの販売実績(図4参照)
 それでは次は、主要ソフトの販売実績を見てみましょう。なお、図4の売上本数は、任天堂のホームページに掲載されているWii、ニンテンドーDS、ニンテンドー3DS、Wii Uの4つの主要ソフト販売実績をベースに作成しています。
(参照)http://www.nintendo.co.jp/ir/sales/software/index.html

 主要ソフトの販売実績を見ると、次のようになっています。

 ・Wii Sports:8,254万本
 ・マリオカートWii:3,553万本
 ・Wii Sports Resort:3,258万本

 上位10本の中の7本までがWii、残りの3本がニンテンドーDSとなっています。Wii Sportsが8,254万本と飛び抜けて売上本数が多いのは、北米や欧州ではWiiのハードに同梱して販売を行ったからです。

◆2-5. 損益計算書と売上高100円あたりのコスト構造(図5参照)
 ここまで製品別売上高や地域別売上高、ソフトの販売実績など、任天堂の売上に係わるデータを分析してきました。そこで次は、企業の損益計算書を使って任天堂のコスト構造を分析したいと思います。
 任天堂の損益計算書の数字を見ると、次のようになっています。

 ・売上高:5,717億円
 ・売上原価:4,085億円
 ・売上総利益:1,632億円(売上総利益率28.5%)
 ・販売費及び一般管理費:2,096億円
 ・営業損失:464億円
 ・当期純損失:232億円

 売上高100円当たりのコスト構造を見ると、売上原価が71.5円とコストの大部分を占めており、販売費及び一般管理費が36.7円となっています。
 販売費及び一般管理費の内訳は、研究開発費が12.5円と広告宣伝費が12.3円、その他が11.9円となっています。
 任天堂はゲームメーカーであるため、ゲーム機器やゲームソフトの開発費用や、消費者にゲームの魅力を伝えるための広告宣伝費が多額に発生します。
 このような多額なコストをまかなえるヒット作が出れば良いのですが、最近は以前ほどヒット作に恵まれないため、会社全体として赤字が発生しました。

 任天堂の決算数値について、もっと詳しく知りたい方は下記のページをご覧下さい

*任天堂 株主・投資家向け情報
http://www.nintendo.co.jp/ir/management/index.html

業績回復へ向けた2つの新たな戦略とは? 下記リンクより次ページへ

◆3. 戦略等
 企業の戦略は、その企業が置かれている経営環境によって異なってきます。
 そこで、最初に任天堂の過去5年間の損益計算書の数字を見ながら、任天堂の経営環境を分析していきます(図6参照)

 売上高の数字を見ると、2010年3月期は1兆4,344億円と大きな売上を上げていましたが、その後年々減少し、2014年3月期には、5,717億円となってしまいました。
 同様に当期純利益の金額も、2010年3月期の2,286億円から大きく減少し、2014年3月期は232億円の赤字となりました。
 2010年頃までは、ニンテンドーDSやWiiなどの専用ゲーム機でゲームをするのが普通でしたが、その後はスマートフォンやタブレットでゲームをする人が増えたため、任天堂のゲームで遊ぶ人が減少しました。ちなみに、2010年にはiPhone 4が発売されています。

 任天堂のゲームで遊ぶためには、最初にお金を払わなければいけませんが、スマホやタブレットのゲームは安価もしくは最初は無料で、ゲーム内のアイテムを購入したときに課金するのが一般的です。任天堂のゲームの面白さは昔から変わらないと思いますが、課金システムの違いなどによって任天堂のゲームで遊ぶ人が減り、任天堂の売上もだんだんと減少していきました。

 過去5年間で売上は大きく減少しましたが、健全経営の指標である自己資本比率は85.6%(2014年3月期)と、高い数字となっています。
 また、2014年6月19日の日本経済新聞(電子版)によると、上場企業全体の2014年3月期末の自己資本比率は約39%(金融などを除く)であり、任天堂の自己資本比率は平均の倍以上もあるため、財務状況については問題がないと言えます。

 このように売上が大きく落ち込んでしまった任天堂ですが、業績を回復させるための様々な戦略を考えています。
 任天堂のこれからの戦略について(1)キャラクターIPの積極的な活用、(2)事業領域の拡大、この2つをそれぞれ順番に説明していきます。

(1)キャラクターIPの積極的な活用
 任天堂にはマリオやルイージ、ポケモンなど多くのキャラクターIP(Intellectual Property:知的財産)があります。
 このキャラクターIPを自社のゲームの中で使うだけではなく、他社にライセンスすることによってロイヤリティ収入を上げたり、NFCチップを搭載した「amiibo」というゲームと連動して遊べるフィギュアを販売しています。
 この「amiibo」を使って「大乱闘スマッシュブラザーズ for Wii U」で遊ぶと、最初は弱かった「amiibo」がだんだんとレベルアップし、それに従いゲームの中のキャラクターも強くなっていきます。

 任天堂の「amiibo」の紹介動画では、自宅で鍛えた「amiibo」を持ち寄って友人の家でゲームをするという遊び方が紹介されていました。ゲームと連動したキャラクターフィギュアを販売するという発想は任天堂らしいと感じます。

*「amiibo」紹介動画
http://www.nintendo.co.jp/amiibo/movie/index.html

(2)事業領域の拡大
 任天堂は娯楽を「人々のQOL(Quality of Life)を楽しく向上させる」と定義し、現在の主要事業であるビデオゲームだけではなく、2016年を目処に健康をテーマとした事業に進出する予定となっています(図7)。

 任天堂が最初に取り扱う健康のテーマは、「睡眠と疲労の見える化」です。
 現在でも様々な測定機器を使えば「睡眠の見える化」は可能ですが、寝る前に測定器を付けたり、朝の眠い中で測定器をつけたりするのは面倒です。
 そこで、任天堂は「Five“Non”Sensing」というコンセプトで睡眠を見える化し、健康のためのアドバイスを行うというサービスを検討しています(図8)。

「Five“Non”Sensing」というのは、QOLセンサーをベッドサイドに置くことによって、寝るときに機器を身につけたり寝る前にスイッチを入れたりという面倒くさい操作をすることなく、睡眠状態を自動的に計測するというコンセプトです。
 QOLセンサーで読み取ったデータは、インターネット上のQOLクラウドサーバーに送られた後に分析され、睡眠状態と疲労状態が「見える化」されます(図9)

 睡眠と疲労を「見える化」した後は、QOLを改善するための食事や運動などのアドバイスを行うことを予定しています。

 1899年に創業した任天堂は、2014年時点で創業125年となります。ビデオゲームが主要事業となったのはファミリーコンピュータが発売された1983年以降で、現在まで30年しかたっていません。
 今後の任天堂はビデオゲームだけではなく、健康をテーマにしたビジネスにも取り組むことによって事業領域の拡大を目指しています。

 任天堂の戦略について詳しく知りたい方は、「2014年10月30日(木)経営方針説明会 / 第2四半期決算説明会」のページをご覧下さい。
(参照)http://www.nintendo.co.jp/ir/library/events/141030/index.html

更に深く任天堂について知るためには、下記リンクより次ページへ

◆4. 参考情報
 任天堂の株主・投資家情報ページで素晴らしいのは、決算説明会の質疑応答がすべて文章で開示されているところです。アナリストからの質問の中には、以下のようなビジネスについての厳しい質問もあります。

「QOLで改善策を提案してもらっても、お客様がそれを継続できなければ、一時的に売れても長期的にビジネスにはならないのではないかと思うが、その辺りについて具体的にどう解決していくつもりか。」
(参照)http://www.nintendo.co.jp/ir/library/events/141030qa/02.html

 このような質問についても、岩田社長をはじめとした経営陣が誠実に答えていきます。質疑応答の中には仕事をしていく上で役立つ知恵がたくさん詰まっていますので、興味のある方はご覧になってください。

*任天堂 株主・投資家情報ページ
http://www.nintendo.co.jp/ir/index.html

執筆者:望月 実(もちづき・みのる)
1972年名古屋市生まれ。立教大学卒業後、大手監査法人入社。
2002年に独立し、望月公認会計士事務所設立。
現在は、就活やキャリアアップにおいて「数字センス」で状況を切り開いていく方法を伝えることをミッションとしている。
執筆、講演などを通じ、わかりやすく親身なアプローチと温かな視点には定評があり、切実な悩みを抱えながらもがんばっている就活生やビジネスマンの支持を集める。
主な著書に以下がある。
『内定をもらえる人の会社研究術』
『学生のうちに知っておきたい会計』
『有価証券報告書を使った決算書速読術』
『最小限の数字でビジネスを見抜く決算書分析術』
http://ac-intelligence.jp/

公認会計士による人気企業分析 「任天堂」

《望月 実@My Career Center web》

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